

フレームサイズが同じ「52cm」でも、メーカーが違えば乗り味は全くの別物になります。
ロードバイクやグラベルバイクのカタログを見ていると、必ず「ジオメトリー表」というページが存在します。数字と角度が並んでいて、最初は読む気にもなれないという人も少なくありません。しかし実はこの表こそが、バイクの走りの性格をすべて決定づける設計の核心部分です。
ジオメトリーとは、フレーム各部の「長さ」と「角度」の総称です。たとえばシートチューブの長さ、トップチューブの長さ、ヘッドチューブの角度、ボトムブラケットの下がり量など、フレームの骨格を形成するすべての数値がここに集約されています。これらの数値の組み合わせによって、「前傾姿勢がきついレース向けか」「上体が起きた楽な快適系か」「ハンドリングがクイックか安定しているか」という、バイクの根本的な性格が決まります。
つまり一言で言えば、ジオメトリーが基本です。
カーボンかアルミかという素材の話、コンポーネントのグレードの話、タイヤの太さの話——これらはすべてジオメトリーという土台の上に成り立っています。どれだけ高価な素材を使っていても、ジオメトリーが自分の体型や用途に合っていなければ、乗るたびに腰が痛くなったり、思うようなポジションが出なかったりということになってしまいます。
バイクを選ぶ前に、まずジオメトリーを知ること。これが、後悔しないフレーム選びの第一歩です。
ジオメトリー表に登場する主要な数値と、それがバイクのどんな性格に影響するかを整理します。それぞれを頭に入れておくと、カタログを読むのが一気に楽になります。
① シートチューブ長
シートチューブとはサドルが挿さるパイプのこと。以前はここの長さがそのままフレームサイズの表記(500mmや52cmなど)として使われていました。現在はスローピング設計が主流のため参考値に留まりますが、シートポストの露出量を把握する際には有効です。
② トップチューブ長(ホリゾンタル換算)
サドルとハンドルの距離感に影響する長さです。長いほど前傾が深くなり、短すぎると窮屈で膝が肘に当たることも。カタログには「実寸」と「ホリゾンタル換算値」の2つが記載されている場合があります。乗車ポジションの比較には「ホリゾンタル換算値」を参照しましょう。
③ ヘッドチューブ長
ハンドルの高さに直接影響します。長いほどハンドルを高く設定でき、楽なアップライトポジションになります。短いとハンドルが低くなり、レース向けの前傾姿勢になります。エンデュランスロードはここが長く、エアロロードはここが短い傾向があります。
④ BBドロップ(ボトムブラケット下がり)
前後のハブ軸を結んだ水平線から、BBの中心までの下がり量のことです。これが大きいほど重心が下がり、コーナリングや直進の安定性が増します。一般的なロードバイクでは65〜72mm程度が多く、TTバイクでは45mm程度と低く設定されています。
⑤ チェーンステー長
後輪軸からBBまでの距離です。短いほど加速時の反応が鋭くなり、スプリンターやレース向きになります。長いほどホイールベースが伸びて直進安定性が高くなり、ロングライドや荷物を積むツーリング向きになります。
⑥ ホイールベース
前後のタイヤ接地点の間隔です。Canyon Ultimateというレーシングロードのホイールベースは約1,004mm(Lサイズ)、対してグラベルバイクのCanyon Grizlは約1,050mm(Lサイズ)と、同じメーカーでも用途によって50mm近く異なります。長いほど高速安定性が高まりますが、小回りは利きにくくなります。
これらはすべて独立した数値ではなく、相互に影響し合っています。まず全体像を把握することが大切です。
参考リンク(ジオメトリー各部の名称とイラスト解説 – Canyon公式)。
ロードバイクのジオメトリーについて:ジオメトリーとは何か?なぜ重要なのか? – Canyon
「身長170cmなら52サイズ」というような身長早見表でフレームを選ぶのは、実は大きなリスクを伴います。なぜなら、同じ「52サイズ」という表記でも、メーカーによってスタックハイトとリーチの値は全く異なるからです。
スタック(Stack) とはBBの中心からヘッドチューブ上端までの垂直方向の高さです。ライダー目線で言えば「ハンドルをどのくらい高く設定できるか」の目安になります。スタックが高いバイクはアップライトなポジションが取りやすく、低いバイクはより前傾を深くとれるレーシー寄りになります。
リーチ(Reach) とはBBからヘッドチューブ中心までの水平方向の長さです。「ハンドルがどのくらい遠いか」に対応します。リーチが長いほど腕を前に伸ばしたポジションになり、短いほど上体が起きた楽な姿勢になります。
たとえばCanyonのレーシングロード「Aeroad」のMサイズと、エンデュランスロードの「Endurace」のMサイズは、どちらも同じMサイズ表記ですが、スタックとリーチの値が異なるため乗り味の性格は別物です。これが「同じMサイズなのになんか違う」という感覚の正体です。
現在乗っているバイクがあれば、そのスタックとリーチの値を測っておくと、次のフレームを選ぶ際に非常に役立ちます。今より楽に乗りたければスタックをプラス20〜30mm程度大きくしたフレームを、もっと攻めたポジションを出したければスタックを下げたフレームを選ぶという考え方が使えます。
スタックとリーチが基本です。ここさえ押さえれば、失敗のないバイク選びに一歩近づけます。
参考リンク(スタックとリーチの重要性を解説 – Specialized公式ブログ)。
フレームサイズ選びで迷えるライダーのみなさんを助ける謎の数値「スタックとリーチ」 – Specialized
「あのバイクはハンドリングが安定している」「このバイクはクイックで面白い」という感覚の差は、多くの場合ヘッドアングルとトレイル値の違いによるものです。ここはジオメトリーの中でも特にマニアックな部分ですが、バイクの操縦性格を直感的に理解するためにはとても重要な項目です。
ヘッドアングル(Head Tube Angle) とは、前フォークのコラム軸が地面となす角度のことです。一般的なロードバイクでは71〜73度の範囲が多く、角度が立っている(数値が大きい)ほどハンドリングはクイックになり、寝ている(数値が小さい)ほど直進安定性が増します。MTBではさらに寝た角度(64〜68度)が採用され、オフロードでの安定性を重視した設計になっています。
トレイル値 とは、フォークコラムの軸線を地面まで延長した点と、前輪の接地点の間の水平距離のことです。この数値が大きいほど直進安定性が高く、小さいほど軽快でクイックなハンドリングになります。一般的なロードバイクでは、トレイルの適正範囲として55〜58mmが目安とされており、許容範囲としては50〜64mm程度と言われています。
注意が必要なのは、ヘッドアングルだけではトレイル値は決まらないという点です。フォークオフセット(フォークレイク)という数値との組み合わせでトレイル値は算出されます。つまり、ヘッドアングルが同じでもフォークオフセットが異なれば、全く別のハンドリングになります。逆に言えば、設計者はこの2つを組み合わせることで、意図したトレイル値を実現しています。
たとえばJ SPORTSの記事でプロメカニックが述べているように、「ヘッド角73度・フォークオフセット45mm」というセッティングは、ダンシングのしやすさとクイックなハンドリングのバランスが特に良いとされる組み合わせの一例です。これはあくまで個人差のある話ですが、複数の数値が絡み合っていることを示す良い例と言えます。
| トレイル値の傾向 | 特徴 | 向いているバイク |
|---|---|---|
| 50mm以下(小) | クイック・軽快 | レーサー向けTTバイク |
| 55〜58mm(標準) | 安定とクイックのバランス | 一般的なロードバイク |
| 60mm以上(大) | 直進安定性が高い | エンデュランスロード・ランドナー |
参考リンク(トレイル値とハンドリングの関係を詳しく解説)。
2台目以降のロードバイク選び!トレール値からハンドリングを予想する方法
フレームの「シルエット」を決定づける設計として、スローピングフレームとホリゾンタルフレームという2つの方向性があります。これは単なる見た目の好みの問題と思われがちですが、実はジオメトリーの根幹に影響を与える重要な設計思想の違いです。
ホリゾンタルフレーム は、トップチューブがほぼ水平に伸びたクラシックなスタイルです。フレーム三角形が大きく取れるため、チューブに長さが出て、それが路面からの振動を分散・吸収する「しなり」として機能します。クロモリ(スチール)素材との相性が非常によく、長距離ツーリングでの疲れにくさという点で根強い人気があります。ただし、サイズのバリエーションが作りにくく、フレームが重くなりやすいというデメリットも持ちます。
スローピングフレーム は、トップチューブがシート側に向かって下がる現代的な設計です。フレーム三角形が小さくなるため、同じ素材・同じ設計であればホリゾンタルより剛性を高めやすく、軽量化もしやすいという特徴があります。また、シートポストの露出量が増えることで適正サイズの幅が広がり、身長の異なるライダーにも対応できる汎用性があります。現代のカーボンロードバイクのほとんどがスローピングを採用しているのはこのためです。
ここで見落とされやすい視点があります。スローピングフレームはトップチューブが低いため、シートポストが長く突き出します。このシートポストの露出部分の長さそのものが、振動吸収性に大きく貢献するのです。特にカーボンシートポストを使った場合、露出が長いほどたわみが生まれて乗り心地が柔らかくなります。つまりスローピングフレームは「素材の特性×シートポストのしなり」という組み合わせで、ホリゾンタルに負けない快適性を実現できます。これは意外ですね。
一般に「スローピング=硬くて速い」「ホリゾンタル=柔らかくて快適」というイメージを持つライダーは多いですが、実際にはシートポストの素材や長さという変数が大きく介入します。同じフレームでもシートポストをカーボン製に変えるだけで乗り心地が劇的に改善されることがある理由は、まさにここにあります。
| 比較項目 | ホリゾンタル | スローピング |
|---|---|---|
| 剛性 | やや低め | 高め |
| 重量 | やや重め | 軽量化しやすい |
| 振動吸収 | フレームのしなりで吸収 | シートポストのしなりで補完 |
| サイズ展開 | 身長に合わせた個別設計が必要 | 幅広いサイズに対応しやすい |
| 見た目 | クラシック・美しい | モダン・スポーティ |
ここまでの知識を踏まえて、実際にフレームを選ぶ際のフローとフィッティングの考え方を整理します。ジオメトリーの読み方がわかっても、それを選択に活かせなければ意味がありません。
ステップ1:自分の用途を明確にする
まず「何のためにバイクに乗るのか」を言語化します。週末のロングライドが中心なのか、レースやタイムトライアルに出たいのか、グラベルや山道も走りたいのか。用途によって最適なジオメトリーの方向性は大きく変わります。
- ロングライド・ツーリング向き:スタックが高め、ホイールベースが長め、BBドロップが大きめ(安定重視)
- レース・ヒルクライム向き:スタックが低め、リーチが長め、チェーンステーが短め(反応性重視)
- グラベル・オールロード:スタックが高め、タイヤクリアランスが大きめ、BBドロップが小さめ(悪路対応)
ステップ2:現在の乗り心地を数値で把握する
すでにバイクを持っている場合、今の愛車のスタックとリーチをメジャーで実測するか、メーカーサイトのジオメトリー表で確認します。「今は楽すぎて物足りない」「今は前傾が深すぎて腰が痛い」という感覚を、プラスマイナス何mmという数値に変換するイメージです。サドルがあと10mm下げたい、ハンドルをあと20mm高くしたいといった感覚があれば、それがそのまま次のフレームのスタック値の増減目標になります。
ステップ3:メーカーをまたいでスタック・リーチで比較する
フレームが決まったら、候補となるモデルのジオメトリー表からスタックとリーチの数値を抜き出し、横並びで比較します。ここでは必ず「同じサイズ表記」ではなく「スタックとリーチが近い値」を探すようにします。ブランドをまたいで比較する際は表記方法が異なる場合があるため、必ずBB基準の数値を使いましょう。
ステップ4:プロフィッティングを受ける
ここまで自分で下調べをしたうえで、バイクフィッティングサービスを受けると効果が倍増します。専門の計測器で体の各部位のサイズや柔軟性を測定し、最適なスタックとリーチ、シートポジションを割り出してくれます。費用はショップや内容によりますが、1回1万〜3万円程度が相場です。高価なフレームを何本も買い替えるコストと比べれば、最初の1回として受けておく価値は十分あります。
プロのバイクフィッティングを受けることで「自分の理想のスタックとリーチの数値」が明確になると、次のバイクを買う際の迷いがなくなります。これは使えそうです。
バイクフィッティングサービスを提供しているショップは全国に増えています。たとえばSpecialized認定フィッターによる「Retül Fit(レトゥールフィット)」や、各地のプロショップが独自に提供しているフィッティングサービスを「バイクフィッティング +自分の地域名」で検索すると見つかります。まずは1店舗、相談がてら足を運んでみることから始めてみましょう。
参考リンク(フレームサイズとジオメトリーを組み合わせた選び方を解説 – サイクルベースあさひ)。
自転車のフレームジオメトリって大事!後悔のないロードバイク選び。 – サイクルベースあさひ

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