

フロントブレーキを最初にかけると、あなたのバイクは転倒する可能性が高くなります。
急制動は「どれだけ短い距離で安全に止まれるか」を証明する課題です。まず数字を整理しておきましょう。普通自動二輪・大型自動二輪の場合、制動開始地点を40km/hで通過し、乾燥路面では11m以内、雨で路面が濡れた湿潤路面では14m以内に停止しなければなりません。小型自動二輪(125cc以下)は30km/hで進入し、乾燥路面8m・湿潤路面11m以内が条件です。
11mというのは、どのくらいの距離感でしょうか。乗用車1台分の全長が約4.5mですから、バイク換算でも普通乗用車の約2.5台分に相当します。40km/hから「2.5台分の距離」で完全停止するのは、初めて意識すると非常に短く感じるはずです。
この課題で検定が中止になる失敗は2つあります。停止限界線をオーバーすること、そして転倒です。速度不足(40km/h未達)は1回目なら10点減点、2回目は検定中止となります。つまり「速度を出しすぎて止まれない」と「速度が足りなくて減点」の両方を避ける必要があります。これが急制動を難しく感じさせる最大の理由です。
| 免許種別 | 指定速度 | 制動距離(乾燥) | 制動距離(湿潤) |
|---|---|---|---|
| 普通二輪・大型二輪 | 40km/h | 11m以内 | 14m以内 |
| 小型自動二輪 | 30km/h | 8m以内 | 11m以内 |
なお、MT車の場合は急制動中にエンストしても減点対象ではありません。これは意外に知らない方が多いポイントです。エンストを恐れてクラッチを早めに切ってしまうと、エンジンブレーキが使えなくなり制動距離が伸びてしまいます。エンストはOKが原則です。
参考:急制動の基本ルールと制動距離のまとめ(ヤマハ発動機公式ブログ)
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/yamaha-motor-life/2015/11/post-370.html
多くのライダーが失敗するのは、速度の作り方と維持のタイミングです。よくある間違いが「制動開始地点まで全力加速してから止まろうとする」パターンです。これは一見合理的に思えますが、実際には大きなデメリットがあります。
直前まで加速し続けると、スピードメーターに気を取られてブレーキのタイミングが遅れます。制動開始地点(パイロン)を通過する瞬間まで「今何キロ出ているか」に意識がいくため、ブレーキ操作への切り替えが0.5秒ほど遅れるのです。0.5秒あれば40km/h走行では約5.6m進んでしまいます。11mの制限に対して5m以上のロスは致命的です。
正しい速度設定は以下の手順です。
アクセルを戻した後の惰性走行中は、すでにエンジンブレーキが弱くかかっています。これが制動距離を縮める第一の助けになります。大切なのが速度設定です。45km/hを超えてしまうと、制動開始地点での速度が高くなりすぎて制動距離が伸びます。制動距離は速度の2乗に比例するため、40km/hから45km/hへ速度が12.5%上がると、制動距離は約27%も伸びてしまう計算です。つまり過速度は禁物ということですね。
逆に40km/hを下回ると速度不足で減点です。メーター読みで42〜43km/hを制動開始地点の手前で確保し、そのままアクセルオフで惰性進入というのが現実的な正解ラインです。なお2速で進入すると、エンジンブレーキが強くかかりすぎてブレーキ直前に速度が大きく落ちてしまいます。サードギアが条件です。
参考:制動距離が速度の2乗に比例する仕組み(チューリッヒ保険)
https://www.zurich.co.jp/carlife/cc-whatis-braking-distance/
ブレーキ操作は「どのくらいの強さで」という問題よりも、「どの順番で」「どのように握るか」が重要です。
まず順番について。リアブレーキをフロントよりもコンマ1秒だけ早くかけましょう。これが制動距離を縮める鍵です。先にリアブレーキを踏むことで、リアサスペンション(後輪のバネ)が先に縮みます。その後フロントブレーキをかけると、フロントサスも沈んでバイク全体が水平に姿勢を保ちます。前後が均等に沈むことで、前後輪への荷重が分散されて安定して止まれるのです。
逆にフロントブレーキを先にかけると、フロントサスが一気に沈んで「前のめり」状態になります。そこへ慣性力が加わると最悪の場合、前転(ジャックナイフ転倒)につながります。
ブレーキの強さの割合はフロント:リア=7:3が目安です。
タイヤロックを防ぐのも重要です。フロントタイヤがロックすると高い確率で転倒します。リアタイヤがロックすると転倒は免れても後輪が滑って制動距離が伸びます。「もう少し握れる(踏める)余裕がある」と感じる強さで止めておくのが、ロックギリギリで最も制動距離を短くできる力の加え方です。
後輪がロックした際は「ザザッ!」という音が聞こえます。この音が聞こえたら踏む力を少し緩めましょう。タイヤが回転を取り戻せばグリップが復活します。
参考:リアブレーキを先にかける理由と制動距離への効果(グーバイク)
https://www.goobike.com/magazine/knowledge/beginner/17/
姿勢の話は「転倒しないために」という話だと思われがちですが、実は制動距離そのものにも直結しています。これが意外と知られていない点です。
ブレーキをかけると慣性力でライダーの体が前に引っ張られます。この力に耐えようとして「腕を突っ張ってハンドルを押す」動作は絶対に避けてください。腕に力が入るとハンドルが左右どちらかにわずかに切れてしまいます。ブレーキング中に1〜2cmでもハンドルが切れると、バランスが崩れて転倒します。
正しい姿勢の保ち方は次の3点です。
この3点で体を支えると、前後輪への荷重が均等になるため制動力を最大限に引き出せます。腕はリラックスした状態になり、ハンドルに不要な力がかからなくなります。これが制動距離を最短にする姿勢の正解です。
また、急制動中は「前傾姿勢をとらない」ことも重要です。加速時は前傾になりますが、急制動では上半身を起こします。これにより体の重心がお尻・ステップ方向に移動し、前輪への荷重集中を防げます。「加速は前傾、制動は上体を起こす」が基本です。
ニーグリップは急制動が終わった後も継続してください。停止直前が最も慣性力が強くかかっている瞬間です。このタイミングで左足を出そうとニーグリップを解除すると、バランスが崩れて転倒する可能性があります。足はバイクが完全に止まってから出すのが鉄則です。
参考:ニーグリップとステップ荷重が制動力に与える影響(BikeBros)
https://www.bikebros.co.jp/vb/ridetech-new/lesson08-02/
教習所で教わる基本をすべて抑えても、なぜか制動距離が伸びてしまう。そう感じる方が陥りがちな「見落とされやすい落とし穴」があります。
目線の問題
制動開始地点のパイロンを意識しすぎて、目線がパイロンに釘付けになってしまうケースが多いです。視線が落ちると体全体の前傾が強まり、腕に力が入ってブレーキ操作が乱れます。目線は停止限界線の少し先に置き、パイロンは視野の端で捉えるくらいで十分です。目線が遠いほど安定します。
ブレーキ開始のタイミングのズレ
「パイロンに前輪が並んだ瞬間にブレーキ」と意識すると、実際の体の反応が遅れてブレーキがかかるのはパイロンを1〜2m過ぎてからになります。意識と体の反応の間には0.1〜0.2秒のタイムラグがあるためです。「ちょっと早いかな?」と感じるくらいのタイミングでかけ始めると、ちょうど良いポイントになります。
クラッチを早く切りすぎる問題
「エンストが怖い」という心理から、制動開始と同時にクラッチを切ってしまうライダーが多いです。これは制動距離を伸ばす原因になります。クラッチを切るとエンジンブレーキが消えるため、制動力が一気に低下します。エンジンブレーキを有効活用するために、クラッチを切るのは停止直前(バイクが今にも止まりそうな瞬間)に留めましょう。繰り返しますが、急制動でのエンストは減点対象外です。潔くエンストするほうが制動距離は短くなります。
「速度を目視確認しながら制動開始地点へ向かう」習慣を捨てる
スピードメーターを見ながら走ることは日常の安全確認として大切ですが、急制動では逆効果です。制動開始地点を通過する前に「もうスピードメーターは見ない」と決め、視線を前方のラインに固定することで、ブレーキング操作への切り替えがスムーズになります。これが制動距離を安定させる、上達者が実践している意識の切り替えです。
また、路面状況を制動前に意識しておく習慣も重要です。湿潤路面では制動距離が14mに伸びます(乾燥時11mから約3m延長)。公道での緊急停止シーンでは路面が濡れていることも多いため、「雨が降っていたら制動距離が1.27倍になる」と体に刻んでおくと、実際の危険回避に役立ちます。
参考:急制動の落とし穴と正しいブレーキ操作の詳細解説(Bikelabo)
https://bikelabo.com/kyuseido

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