ブレーキングとバイクのサーキット攻略で速くなる技術

ブレーキングとバイクのサーキット攻略で速くなる技術

ブレーキングとバイクのサーキット走行を変える技術と知識

「サーキットではブレーキを強く踏むほど速くなる」と思っていたら、コーナーで曲がれなくなった経験はありませんか?


🏍️ この記事でわかること
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ブレーキングの基本原則

「最初に強く・後半で緩める」セオリーとその理由。ジワ~っとかけ始めると、後半で思わぬ強効きが起こる構造的な理由を解説します。

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フロント&リアブレーキの役割分担

サーキットでリアブレーキを使わないライダーが見落としている「車体姿勢を作る」という重要な役割を詳しく説明します。

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熱トラブルを防ぐ事前準備

サーキット走行6〜8周目にフェード現象が多発する理由と、純正パッドのままでは危険なラインを具体的な温度数値で解説します。


ブレーキングの基本:「最初に強く、緩めて調整」がサーキットの原則


サーキット走行を始めたばかりのライダーの多くが、まずジワ~っとレバーを引き始めて後から強く調整しようとします。気持ちはよくわかりますが、じつはこの順番が問題を引き起こします。


ブレーキをかけ始めた直後というのは、ディスクローターもパッドもまだ十分に温まっていないため、最初の入力に対して効きが弱くなっています。ところがブレーキングを続けることで両者が摩擦熱で温まり、後半に向けてどんどん効きが増してくるのです。そのため「後から強める」タイミングに合わせると、温度上昇による効き増しとのダブル効果で想定以上に強くかかってしまいます。


つまり制御が難しくなるのです。


正しいセオリーは逆です。ブレーキングの前半に強く入力して減速の大部分を終わらせ、後半はレバーを徐々に緩めながら調整に使う「最初に強く・緩めて調整」が基本です。直進状態でスピードが出ているときは慣性力が強いため、強くかけても車体は非常に安定しています。近年のバイクにはABSが装備されているので、強くかけてもタイヤがロックする危険はほぼゼロです。強くかけることへの恐怖心は、理由を知れば和らぎます。


また、ブレーキレバーの位置設定も大きく影響します。4本指でレバーをガッチリ「握る」操作だと、リリース時に微妙な力加減ができず「ポン」と一気に離してしまいがちです。これを防ぐために、中指の第1関節がやっと届く遠い位置にレバーをセットし、2本指で「引く」操作に変えると、強くかけることも、緩やかにリリースすることも格段にやりやすくなります。これは使えそうです。


コーナーに向けたブレーキングの後半では、フロントフォークが伸び切らないよう低い車体姿勢を保ちながら、向き変えポイントに合わせてスッとリリースしていくことが次のコーナリングへの繋ぎ方として重要です。ブレーキを最後まで一気に離すのではなく、フォークを吐き出さずにコントロールする感覚が核心です。


ブレーキのかけ方とレバー位置の関係についてKUSHITANIが詳しく解説(H3ブロック「ブレーキのかけ方、勘違いしていない?」参照)


ブレーキングのサーキットでのフォーム:下半身ホールドと頭の位置が決め手

サーキットでのブレーキングは、単にレバーを操作するだけではありません。フォームそのものがブレーキングの精度と、その後のコーナリングの質を左右します。


強いブレーキング時には大きな減速Gがライダーの身体にかかります。この荷重に対抗するため、腕を伸ばして突っ張った状態でハンドルを支えるフォームが基本とされています。「腕を張ったらセルフステアを妨げるのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、適切なタイミングでの適切な入力は問題になりません。意図的に腕を張ることと、パニックによる体の硬直はまったく別物です。


下半身のホールドも同じくらい重要です。


フルブレーキング時の荷重を腕だけで支えるのは限界があります。コーナー外側の脚の太ももの内側をタンク後端にしっかり当て、膝だけでなく足全体で車体とコンタクトする面積を広げることで、摩擦力が増し体を安定させられます。ステップを踏む際は「つま先乗り」になると膝の位置が下がってホールド性が落ちるため、土踏まずで踏みつつつま先を地面に向ける意識が大切です。


そして見落とされがちなポイントが「頭の位置」です。フロントブレーキをかけるとフロントフォークが縮み、バイクが前下がりになるため、そのままだとライダーの頭も下がります。人間の体は頭の位置が大きく変わると、次の動作がスムーズに行えなくなります。腕を突っ張って上半身を起こすことで、フォーク縮み分を相殺して頭の高さを維持でき、視界の確保と次の動作へのスムーズな移行が可能になります。


ブレーキングの精度が上がれば立ち上がりもスムーズです。筑波サーキット・コース1000のデータ比較でも、ブレーキが不安定なライダーはコーナリング中途で再加速・再減速を繰り返し、立ち上がりでのスロットルオープンが大幅に遅れることが示されています。ブレーキングはゴールではなく、速い立ち上がりへの入口です。


高田速人さんによるブレーキングフォームの詳細解説(RIDERS CLUB WEB)


ブレーキングのリアブレーキ活用:サーキットで曲がりやすい車体姿勢を作る

「サーキットではフロントブレーキだけで十分に止まれるからリアは使わない」というライダーは少なくありません。じつはその判断が、コーナーでの曲がりにくさを自分で作り出している可能性があります。


リアブレーキを使わずフロントブレーキだけでブレーキングを行うと、車体が大きく前のめりになります。前のめりの状態ではバイクはバンクしにくく、向き変えに大きな力が必要になります。反対に「バイクが最も曲がりやすい姿勢」とは、車体全体が低く均等に沈んでいる状態です。車体が高い状態よりも低い状態の方が、バンクするまでの移動距離が短いため、素早く向き変えができます。


リアブレーキが条件です。


コーナー手前でリアブレーキをほんの少しだけ先にかけ始めると、リア周りが沈みます。そこへフロントブレーキを加えると、リアが沈んだままフロント周りも沈むため、車体全体が低く均一に沈んだ「曲がりやすい姿勢」が作れます。フロントブレーキだけでは前のめりになるところ、リアブレーキを先にかけることでリアサスペンションの伸び上がりを抑え、バランスの良い低い姿勢を作れるのです。


リアブレーキの操作に不安を感じる場合は、ステップバーをしっかりと支点(軸)にすることが最初のステップです。支点が曖昧なままつま先だけを動かそうとすると、かかとが浮いてコントロール性が大きく落ちます。最初は土踏まずでステップバーとブレーキペダルの両方を同時に踏む感覚で練習すると、軸が安定しやすくなります。慣れてきたらつま先の円運動での操作に移行していきましょう。


なお、2018年以降に販売された125cc以上のバイクにはコーナリングABSやレースABSを装備したモデルも増えており、バンク中でも最適な前後ブレーキ配分を自動制御してくれます。これにより昔のバイクでは難しかったリアブレーキの積極活用が、現代のスポーツバイクでは格段に行いやすくなっています。


サーキットでのリアブレーキの役割と操作コツ(KUSHITANI RIDING METHOD)


ブレーキングポイントの見極めとトレイルブレーキングへの入り口

「ブレーキングポイント」という言葉は、サーキット走行の世界ではよく使われます。一般的には「このラインでブレーキをかけ始める地点」と解釈されがちですが、世界GP250チャンピオンの原田哲也氏はこの解釈に一石を投じています。


原田氏の考え方によると、ブレーキングポイント=曲がり始めるポイントであり、そこまでの間にブレーキングは済ませておく、というのが本来の意味です。多くのライダーが100mの看板に向けてブレーキを強めていくのに対し、原田氏は看板の手前でフルブレーキングを終わらせ、看板に近づくにつれてリリースしていきます。意外ですね。


これには明確な理由があります。ブレーキングによりフロントに強い荷重がかかると、車体は起き上がろうとしてバンクしにくくなります。曲がり始めるポイントでブレーキをリリースして荷重をリアに移し、前後バランスを適正にすることでバイクはスッと曲がります。逆にいえばオーバースピードでコーナーに突っ込み、そこでブレーキをかけても曲がれないのは、物理的な必然です。


さらに上達を目指すなら「トレイルブレーキング」が次のステップになります。トレイルブレーキングとは、コーナーへのバンクを開始した後もブレーキ力を緩やかに残し続けながらコーナリングを行う技術です。現代の高性能タイヤとバイクの進化により、ブレーキングとコーナリングをシームレスにつなぐ走り方が標準となっています。キャリアが長いライダーほど「ブレーキを終わらせてからコーナーに入る」という旧来のセオリーが染みついていることがありますが、現代のバイクとタイヤはその常識を超えた設計がされています。


初めてサーキットを走る際には、まず動画サイトのオンボード映像で各コーナーのブレーキングポイントを予習することが有効です。「何もない状態でコースに入る」より、視覚的にシミュレーションしてからコースインするだけで、無駄なあわてを大きく減らせます。


原田哲也氏によるブレーキングポイントの本当の意味(WEBヤングマシン)


ブレーキングの熱トラブル:純正パッドのままサーキットを走ると起こること

サーキットでのブレーキング技術を磨く前に、もうひとつ絶対に知っておかなければいけない事実があります。それがブレーキの熱トラブルです。


通常の公道走行でのブレーキローター温度はおよそ250℃ですが、サーキットでの全開走行では800℃近くまで上昇することがあります。ワインディングでも400〜500℃に達することがあるため、サーキットでの数値がいかに極端かわかります。この熱による問題が「フェード現象」と「ベーパーロック現象」です。


フェード現象とは、ブレーキパッドが高温になりすぎて摩擦係数が低下し、ブレーキが効きにくくなる現象です。一般的な純正ブレーキパッドの適正温度は約300℃までとされており、これを超えるとフェードが起きます。厳しいところですね。


ベーパーロック現象はさらに深刻です。ブレーキフルード(オイル)が熱で沸騰し気泡が発生すると、油圧が正しく伝わらなくなりブレーキがまったく効かなくなります。ブレーキレバーがフワフワした感触になったらベーパーロックのサインです。


特に注意したいのが「走り始めてからの周回数」です。富士スピードウェイ(FSW)のデータによると、コースインから全開走行を続けた場合、6〜8周目にフェード現象が多発するとされています。「最初の数周は大丈夫だったから」と安心していると、まさにその直後に危険な状態に入ります。


対策として最も重要なのは、サーキット対応のブレーキパッドへの交換です。また2〜3周全力走行したら1周クーリングラップを挟み、ブレーキを冷ます走り方も効果的です。ブレーキフルードはDOT規格の数値が高いほど沸点が高く、DOT5.1ならドライ沸点260℃以上を確保できます。半年以上使用したフルードは水分を吸収して沸点が大幅に下がるため、サーキット前には交換を検討するべきです。


サーキット向けのブレーキパッドは価格帯が広く、スポーツ走行用であれば1万〜2万円台から選べます。純正パッドのままサーキットを走ることの危険性と比較すれば、非常に合理的な投資です。


富士スピードウェイ公式資料:サーキットでのブレーキトラブル(フェード現象・ベーパーロック)の原因と対処(PDF)


ブレーキングと走行会:初めてサーキットに挑む前に知っておくべき独自視点

ここでは検索上位にはあまり取り上げられていない視点を1つ紹介します。それは「ブレーキングを練習しにサーキットへ行く」という考え方です。


多くのライダーはサーキットを「速く走る場所」「タイムを競う場所」と考えます。しかし原田哲也氏が提言するように、サーキットは「スピードを落とす練習をする場所」でもあります。公道では周囲への影響から思い切ったブレーキングができません。しかしサーキットであれば、フルブレーキングによりフロントに過荷重がかかると曲がれなくなること、リリースをコントロールすればスムーズに向き変えできることを、安全な環境でリアルに体験できます。


📋 走行会参加前に確認するポイント


| 項目 | 内容 | チェック |
|------|------|------|
| ブレーキパッド | サーキット対応品に交換済みか | ✅ |
| ブレーキフルード | DOT4以上・交換から1年以内か | ✅ |
| タイヤ | スポーツ系タイヤで著しい摩耗なし | ✅ |
| ウェア | 革ジャン・革パン・グローブ・ブーツ着用 | ✅ |
| 動画予習 | 走行する各コーナーのオンボード映像確認 | ✅ |


走行会に参加するために特別なレースライセンスは基本的に不要です。自分のバイクさえあれば参加できる走行会も多く、マイペースで走れる環境が整っています。参加料は1万〜3万円程度が相場で、1日かけてブレーキングを含むライディング技術を実戦で磨けることを考えれば、費用対効果は非常に高い経験です。


また「先に走行会に参加する前に、ライディングスクールで基礎を整える」という順番も効果的です。スクールでは自分では気づきにくいブレーキングのクセや体の使い方の問題点を、インストラクターが外から見て指摘してくれます。1日のスクールが、その後の何十回もの走行会の質を変えることは珍しくありません。


ブレーキングは地味なテクニックに思えますが、サーキット走行における安全確保・タイム短縮・コーナリングの精度すべてに直結しています。速い立ち上がりはすべて、正確なブレーキングから始まります。結論は「ブレーキングを制する者がサーキットを制する」です。まずは次の走行会の申し込みと同時に、ブレーキパッドの状態を確認することから始めてみてください。


サーキット走行会の参加メリットと準備の基本(BikeJIN WEB)




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