

シート高820mmでも、身長160cm台のライダーが両足をべた付きで乗れます。
ムルティストラーダV4Sのシート高は、カタログ上では標準仕様で820mm〜840mm(可変式)と表記されています。この数字だけ見ると「自分には無理かも」と感じるライダーも多いですが、実態は少し違います。
まず前提として、シート高はあくまで「地面からシート表面までの垂直距離」です。大切なのは、その高さに到達したとき足がどこまで届くか、つまり「太もも〜膝〜かかとの角度」と「車体のスリムさ」が大きく影響します。ムルティストラーダV4Sはシート前部の幅が意図的に絞られた設計で、足を下ろすときに太もものふくらみが車体に当たりにくくなっています。
| 仕様・設定 | シート高 | 備考 |
|---|---|---|
| 標準(ノーマル・ローポジション) | 820mm | 出荷時の基本設定 |
| 標準(ノーマル・ハイポジション) | 840mm | シート付け替えで変更 |
| ハイアップサスペンションキット装着 | 840〜860mm | オプション |
| ハイシート(アクセサリー)装着 | 835〜855mm | アクセサリー |
| ローシート(アクセサリー)装着 | 790〜810mm | アクセサリー |
| 日本仕様(2025年)ローシート+車高自動低下 | 745mm〜 | 停車時に最大30mm追加で低下 |
820mmという数字ははがきの長辺(210mm)をおよそ4枚分積み重ねた高さです。一般的な国産スポーツバイクのシート高が790〜820mm程度であることを考えると、ムルティストラーダV4Sはその上限に位置していますが、極端に突出した高さではありません。
実際に身長172cmのジャーナリストがローシート(810mm)装着状態で試乗したレポートでは、「かろうじて両足が同時に地面に届く」という評価でした。つまりローシートを使えば、170cm前後のライダーでも両足接地が不可能ではないということですね。
なお、2025年モデルでは日本仕様として「ローサスペンション+ローシート」の組み合わせが標準採用されており、さらに車高自動低下装置との組み合わせでシート高を745mmまで引き下げることが可能です。これはホンダCRF1100Lアフリカツイン(830mm)やBMW R1250GS(870mm前後)と比較しても、相当低い水準まで対応できます。
ドゥカティ公式:ムルティストラーダV4 テクニカルスペック(シート高・装備重量など正式数値)
「自分の身長で乗れるかどうか」は、シート高の数字だけでは判断できません。足つき性に影響する要素は、身長・股下の長さ・体型(太ももの太さ)・靴底の厚さなど複数あります。ここでは実際のインプレッション事例をもとに、目安を整理します。
まず、ムルティストラーダV4Sの場合、ローシート(810mm)装着で実際に試乗・展示を行ったインプレッションデータがいくつかあります。
- 身長158cm:シート高840mm時点でも両足がつま先立ちで接地可能(ドゥカティ東京大田ディーラーによるSNS記録)
- 身長168cm:ローダウン仕様(シート高は標準比-40mm相当)で片足ベタ付き、両足もつま先がしっかり接地(ディライトグループのブログより)
- 身長170cm:ローシート(810mm)付け替えで両足が同時に地面に届く(ドゥカティ埼玉南ディーラー)
- 身長172cm:ローシート(810mm)でかろうじて両足が地面に届く(GQジャパン試乗記)
- 身長179cm:標準シート高840/860mmでも特に問題なし(autoby.jpインプレッション)
これで大丈夫でしょうか。上記はあくまでインプレッション時の主観が含まれており、同じ身長でも股下の長さや体型によって体感は変わります。重要なのは、「購入前に必ず跨ってみること」です。
ただ、一つ注意したいのが片足着地と両足着地の違いです。アドベンチャーバイクでは一般的に、停車時にどちらか片足のみを地面につける「片足着地」が推奨されています。体重移動でバイクをわずかに傾けることで、片足なら一段と深く着くようになるためです。これが条件です。
身長が165cm前後で不安な場合、ムルティストラーダV4Sには以下のような段階的な対策オプションがあります。
| 対策 | 効果(シート高低下量) | 費用目安 |
|------|-------------------|----|
| ローシート(純正アクセサリー)| -20〜30mm | 数万円 |
| ローサスペンションキット(純正)| -20mm | 数万円 |
| 車高自動低下装置(2025年モデル標準) | 停車時-15〜30mm | 標準装備 |
| 社外ローダウンカスタム(フォーク・リアサス・シート加工) | -40mm以上 | 合計15〜17万円前後 |
これは使えそうです。複数の手段を組み合わせれば、標準シート高820mmから大幅に下げることができます。
ディライトグループ(鈴鹿):Multistrada V4Sのローダウン仕様紹介。40mmローダウン時の身長168cmスタッフの足つき比較写真あり
シート高の調整は何も社外カスタムだけの話ではありません。ムルティストラーダV4Sには純正レベルで3種類のアプローチがあります。これが原則です。
① シートポジションの付け替え(ハイ/ロー 2段階)
ライダーシートはシートマウントの差し込み位置を変えることで、ハイポジション(840mm)とローポジション(820mm)の2段階で調整できます。工具不要の作業で、ディーラーや自分で変更が可能です。20mmの差は小さく聞こえますが、足の接地感では体感できる差です。
② アクセサリーシートの換装
ドゥカティ純正アクセサリーとして、以下のシートが用意されています。
- ローシート:790〜810mm(標準比 -30mm)
- ハイシート:835〜855mm(標準比 +15mm)
ローシートへの換装はディーラーで依頼するのが確実です。シート形状がスリム化されているため、数値差以上に足つきの改善を感じるライダーも多いです。
③ ローサスペンションキット(純正アクセサリー)
フロント・リアのサスペンションセッティングを変更する純正オプションです。スプリングプリロードの変更によって約20mm低下します。
ローサスキット単体では劇的な変化ではありませんが、ローシートと組み合わせることで合計-50mmの効果が得られます。つまり820mmのシート高を770mm程度まで下げることができるということですね。
2025年モデルで追加された「車高自動低下装置(DSS EVO)」
2025年型ムルティストラーダV4Sには、特に注目すべき機能が追加されました。DSS EVO(ドゥカティ・スカイフック・サスペンション EVOリフト)は、速度が時速10km以下になると自動的にリアサスのプリロードを調整してシート高を最大30mm引き下げ、時速50km以上になると元の高さに戻る仕組みです。
これにより、信号で止まる前から自動でシート高が下がり始め、停車時には足がより着きやすくなります。従来のイージーリフト機能(キーオン状態でサスが抜ける)をさらに進化させたもので、ライダーが意識せず恩恵を受けられる点が大きな進歩です。
日本仕様(2025年)では「ローサス+ローシート+車高自動低下装置」の3点組み合わせによって、シート高を最大745mmまで下げることが可能です。745mmというのは、一般的なネイキッドバイク並みの高さ水準です。厳しいところですね、と思っていた人にとっては朗報と言えます。
ドゥカティ浜松公式ブログ:2025年型ムルティストラーダV4の新機能解説。車高自動低下装置の仕組みと30mmダウンの効果を写真付きで紹介
純正の手段で十分でない場合、社外のローダウンカスタムという選択肢があります。ここでは、実際にかかる費用と作業内容を確認しておきましょう。
ディライトグループ(三重・鈴鹿)の事例では、以下の組み合わせで40mmのローダウンを実現しています。
| 作業内容 | 参考価格(税別) |
|---------|--------------|
| シートスポンジ加工 | 42,000円 |
| フロントフォーク突き出し調整 | 12,000円 |
| リアサスペンション加工(部品代+工賃) | 65,000円 |
| ハンドルバー両端カット(各20mm) | 30,000円 |
| サイドスタンドアシストスペーサー | 18,500円 |
| 合計(概算) | 約167,500円 |
このカスタムによって、身長168cmのスタッフが片足なら足裏ベタ付き、両足でもつま先がしっかり地面に届く状態になっています。「つま先ツンツンで不安定だった」状態が、「膝に曲がりのゆとりができて安定した着座」に変わったとのことです。
痛いですね、価格面では。ただ、安全に乗り続けるための投資として考えると、立ちゴケによる修理費用(外装部品だけで10〜30万円になるケースもある)と比較すれば合理的な判断です。
P&Aインターナショナルなどの社外メーカーからも、比較的安価なローダウンキットが販売されています。スプリングシートの交換で30mm低下できる製品があり、工賃を含めても純正ディーラーのフルカスタムより大幅に安く済む場合があります。ただし、車検への適合や走行特性の変化には注意が必要です。ローダウンは車検でも基本的に適合範囲内ですが、変更内容によってはサスペンション特性が変わるため、乗り味や接地感も変化することを念頭に置いてください。
P&Aブログ:Multistrada V4S用ローダウンキット紹介。スプリングシート交換による30mmダウンの詳細
ここは検索記事ではあまり語られない独自視点の話です。シート高の議論は主に「停車時・乗り降り時」に集中していますが、実は走り出してしまえばシート高の高さはほとんど関係がありません。むしろ逆に、シートが高いバイクは走行中の快適性やコーナリングのしやすさに優れているケースが多い。結論はここです。
ムルティストラーダV4Sのシート高が高く設計されている理由の一つは、ライダーの腰・膝・股関節が自然な角度になるポジション設計にあります。シートが低すぎると、長距離走行で膝が曲がりすぎて疲労が蓄積します。820〜840mmというシート高は、長時間乗り続けるツーリングバイクとして人間工学的に最適化された数値です。
実際、GQジャパンの試乗記では「ステップも自然に足が伸びる位置にあり、疲れにくい」と評されています。身長172cmのライダーがローシートでかろうじて足が届く、という状況でも、走行中のポジションは快適だったということですね。
また、ムルティストラーダV4Sの車体スリム化設計は「走行中のホールド感」にも貢献しています。シート前部がスリムになっているため、足を下ろすときに邪魔になりにくいだけでなく、ニーグリップ(膝でタンクを挟む動作)がしやすく、走行中の安定感が高まります。
もう一点、見落とされがちなのが重心の低さです。ムルティストラーダV4Sは見た目が大柄ですが、乾燥重量218kgと同クラスの中では比較的軽量です(BMW R1250GSは約249kg)。重心が低く軽いバイクは、多少シート高が高くても引き起こしや取り回しが楽です。シート高だけ見て「重くて怖い」と判断してしまうのはもったいないと言えます。
実際、ムルティストラーダV4Sのアドベンチャーバイクカテゴリにおける馬力ランキングは1位(170ps)です。走行性能と足つき対策の両方を持ち合わせた、現時点では希少な選択肢です。

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