

街乗りで蛇行運転してもタイヤは温まりません。
バイクのタイヤは温度によって性能が大きく変わるゴム製品です。一般的なツーリングタイヤの適正温度は20℃から30℃、スポーツタイヤは50℃から80℃の範囲でグリップが安定するように設計されています。
これが基本です。
路面温度が0℃近くになる冬場では、低温によってゴムが硬化しグリップ力が大幅に低下します。実際の計測データでは、外気温約10℃の街中で2km走行してもタイヤ温度は22.1℃までしか上昇せず、安心温度とされる36℃には遠く及びません。つまり街中では常に冷えゴケの危険性があるということですね。
ハイグリップタイヤの場合、温度依存性が極端に高く、冷間時は最大性能の10%程度しか発揮できません。逆にツーリングタイヤは温度依存性が低く、20℃でもしっかりグリップしてくれる特性を持っています。タイヤの種類によって必要な温度域が異なることを理解しておきましょう。
タイヤを温めるためには、摩擦・変形・ブレーキ熱の3つの要素が関係しています。
このうち最も大きいのは路面との摩擦です。
タイヤは走行中の運動エネルギーが熱に変わることで温まります。タイヤの構造を含めた変形(デフォメーション)によって発生するエネルギーも熱に変換され、ブレーキ熱も一部は貢献しますが、やはり摩擦が最も効率的な熱源となります。
重要なのは、タイヤ表面だけでなく内部まで温めることです。荷重を乗せてトルクをかけながらタイヤを揉むことで、摩擦と変形によるエネルギーが発生し、タイヤ内部の空気温度まで上げることができます。表面だけが温まって内部が冷えたままだと、ゴムが均質に摩耗せずグレイニング(ゴムが部分的に削れる現象)につながります。
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サーキットで使用されるタイヤウォーマーは、タイヤを70℃から80℃まで加熱しますが、取り外してから7分程度で55℃まで下がってしまうため、ピットアウト後も走行によって温度を維持する必要があります。
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街中で蛇行運転をしてもタイヤは効率的に温まりません。蛇行運転では路面にタイヤを触れさせることはできますが、タイヤを押し付ける荷重が不足するため、ほとんど意味がないのです。
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どういうことでしょうか?
サーキットのレースで蛇行運転(ウィービング)を見かけますが、あれはタイヤウォーマーで既に80℃程度まで加熱されたタイヤの熱を保持するために行っているだけです。冷えた路面・冷えたタイヤで蛇行運転するのは非効率的すぎる上に、車体が寝る状態になるため転倒の可能性もあり危険です。
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また、タイヤの空気圧を下げて走行してもウォームアップ効果に明確な変化は認められません。実験では前輪を0.2kgf/cm²、後輪を0.4kgf/cm²下げて走行した結果、到達する温度に差が出ませんでした。空気圧を下げすぎると一般公道では危険なシチュエーションも生まれるため、推奨される適正空気圧を守ることが重要です。
四輪のレースをイメージして蛇行運転をしているライダーを見かけますが、四輪と二輪ではタイヤへの荷重のかかり方が全く違うため、同じやり方をしても温まりません。
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効率的にタイヤを温めるには、加速と減速を繰り返してタイヤに荷重をかける方法が有効です。タイヤを地面に押し付けることで摩擦が生まれ、内部まで温度が上昇します。
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走行開始直後の1km地点でタイヤ温度は急激に上昇しますが、信号待ちの時間が長いと下降し、短いと上昇する傾向があります。そのため、冬場は特に慎重にじっくりとウォームアップすることが大切です。
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コースイン直後は後輪から温めるよう意識しましょう。前輪よりも後輪が滑る方が立て直せる可能性は高いため、リアの方がウォームアップさせやすいのです。走り出してから数回の加速・減速を繰り返し、数ミリずつ接地面をずらしていくことで、タイヤ表面全体を均等に温めることができます。
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本当に寒いときは、いくら走り込んでもタイヤ温度は一定以上には上がってくれません。タイヤを手で触って確認する方法も有効で、自分の体温と同じ温度(約36℃)になっていれば安心温度に達していると判断できます。これは東京ドーム約3個分の広さのサーキットを何周も走った後のような状態と言えます。
ハイグリップタイヤは絶対に36℃は欲しいところで、少なくとも30℃以上が必要です。一方、ツーリングタイヤなら20℃でもしっかりグリップしてくれます。
つまり温度依存性の違いということですね。
ハイグリップタイヤは高負荷がかかることで発熱し、その状態で最高のパフォーマンスを発揮できるように設計されています。最大性能を100%とすれば、冷間時は10%程度の性能しか出せないほど温度依存が極端に高いのです。安心して使えるのは気温がおよそ20℃を超える5月から10月までの約5ヶ月間に限られます。
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ゴムは暖まると柔軟性が高まり路面をグリップしやすくなりますが、ハイグリップタイヤはちょっとでも冷たい路面に触れると瞬く間にその柔らかさを失います。法定速度でのワインディングや高速道路走行では温まりきらないため、ツーリングメインで使用する場合は適切なタイヤ選びが重要です。
近年のバイク用タイヤは温度依存性が低くなり、ある程度は冷間時からグリップ力を発揮するように進化していますが、基本原則は変わりません。タイヤは表面のゴム(コンパウンド)と内部の金属(ベルト)から作られており、ある程度負荷をかけないとタイヤ内部まで温度が上がらないのです。
モータースポーツ用タイヤは一定の範囲のコンディションで性能が発揮できるように設計されています。一般の乗用車向けタイヤは様々な気候・路面・車種に対応する必要がありますが、レース用タイヤは適切な性能を発揮できる温度の領域が市販車用タイヤよりも狭く設計されているのです。
性能ギャップは80℃から100℃付近になっています。気温や路面温度が低い冬場は、その温度領域に到達するまでの道のりが遠いため、より大変になります。サーキットではタイヤウォーマーという電気毛布のようなものを使用し、タイヤを一定温度まで温めることでグリップ力を最適化します。
タイヤウォーマーは無料ではありません。
ミシュランが推奨するタイヤウォーマーの温度設定は90℃で、冷間時(最初の走行直前またはタイヤウォーマーを取り付ける直前)に空気圧を調整する必要があります。サーキットでのハイグリップタイヤ(MICHELIN POWER CUP2)の推奨空気圧は、冷間時フロント210kPa(2.1bar)、リア150kPa(1.5bar)です。
タイヤを温める際は、ゴムの芯から温めることが大切で、構造も"準備運動"が必要です。内圧上昇との兼ね合いも重要で、これら全てのタイミングを揃える温め方が理想的なウォームアップと言えます。予選であればこれらに加えて、コースインのタイミング(トラフィックジャムの回避)も考慮する必要があります。
参考リンク(タイヤウォームアップの詳細な実験データと安心温度の考え方)。
真冬のタイヤ温度を計測!バイクを冷えゴケさせないウォームアップ距離と時間 | MOTO-ACE-BLOG
参考リンク(タイヤ専門家によるウォームアップの科学的解説)。
ただ蛇行するだけでは温まらない? ウォーマーって実際どうなの? タイヤ加熱のイロハを専門家に聞く | motorsport.com

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