

CEマークが付いたヘルメットなら、どれを選んでも安全性は同じだと思っていませんか?
「CE承認」「CE認証」という言葉は、バイク用品を買うときによく目にします。しかし、その意味を正確に把握しているライダーは少ないのが現実です。
CEとはフランス語の「Conformité Européenne(コンフォルミテ・ユーロペエン)」の略で、日本語に訳すと「欧州適合性」という意味になります。これはEU(欧州連合)域内で製品を流通・販売する際に、統一された安全基準をクリアしていることを示す制度です。
この制度は1993年にスタートしました。それ以前はEU各国がバラバラな基準を持っていたため、流通が複雑でした。統一することで、加盟国間の貿易をスムーズにする目的がありました。つまり、もともとは「安全証明」というよりも「貿易円滑化」のための仕組みです。
重要なのは、CEマークは製品カテゴリごとに異なる規格が存在するという点です。ヘルメットだけを取っても、バイク用・自転車用・工業用・乗馬用など、それぞれ別の規格が設けられています。「CEマーク付き」と記載されていても、どの規格に基づくものなのかを確認しなければ、バイク用として適切かどうかは判断できません。
消費者庁も2024年に注意喚起を出しています。「CE安全基準認証済み」と表示しながら、実際には自転車ではなく産業用ヘルメットの規格(EN812)しか取得していない製品の存在を指摘しました。これは、見た目は立派に見えても、バイクや自転車の衝撃には対応できない製品が出回っている現状を示しています。
CEマーク単体では安全の根拠になりません。規格番号まで必ず確認することが原則です。
参考:消費者庁による自転車用ヘルメット安全性注意喚起ページ(CEマークの誤認に関する事例を掲載)
消費者庁|自転車用ヘルメットの安全性を示すマークについて
バイクに乗るライダーが知っておくべきヘルメットの安全規格は複数あります。特にCEとECEは混同されやすいので、それぞれの意味を整理しておきましょう。
まず「ECE規格」とは、国連欧州経済委員会(UNECE)が定めたバイク用ヘルメットの安全基準です。現行の最新規格はECE 22.06で、2023年6月以降はEU域内においてこれに適合しないヘルメットの新規販売は禁止されました。旧規格のECE 22.05は19年間使われてきましたが、2021年の改定で22.06に移行しています。
ECE 22.06のテストはフルフェイスモデルで合計18項目に及びます。旧規格22.05ではヘルメットのフロント・トップ・バック・サイド・チンガードの5ポイントのみを評価していたのに対し、22.06ではあらゆる角度からの衝撃を想定したより広い範囲での検証が求められます。さらにバイザーの耐貫通試験(スチールボールによる貫通テスト)も新設されました。その安全性の水準はSNELL規格と同等とされており、MotoGPからも承認を得ています。
次に「CE規格」との違いですが、上述のようにCEはEU加盟国向けの幅広い製品安全制度の総称です。ヘルメットに関していえば、バイク用はECE規格、自転車用はEN 1078という規格が該当します。つまり、バイク用ヘルメットとしてのCE承認を確認したい場合は「ECE 22.06」という表記が正しい根拠になります。
日本国内で流通するヘルメットの規格も整理します。
| 規格名 | 管轄 | 日本での位置づけ | 特徴 |
|---|---|---|---|
| PSCマーク | 日本(経済産業省) | 販売時に必須(法的義務) | 消費生活用製品安全法に基づく。なければ販売禁止。 |
| SGマーク | 製品安全協会 | 任意取得 | 事故時に最大1億円の賠償制度あり。 |
| JISマーク | 日本産業規格 | 任意取得 | 125cc以下用(JIS 1種)と無制限用(JIS 2種)の2種類がある。 |
| ECE 22.06 | 国連欧州経済委員会 | 国内義務ではないが高い安全水準 | 18項目テスト通過。2023年6月以降が最新版。 |
| SNELL規格 | スネル記念財団(米国) | 任意取得 | 5年ごとに改定。世界最高水準のひとつ。 |
| MFJ公認 | 日本モーターサイクルスポーツ協会 | MFJ公認レース出場時に必要 | JIS規格を前提にさらに厳しい耐貫通試験あり。 |
ECE 22.06が条件です。海外ブランドのヘルメットを選ぶときは、この規格番号を必ず確認しましょう。
参考:バイク用品の安全規格について詳しく解説したページ
Motorimoda|知ってるつもり?バイク用品の安全規格を徹底解説!
CE承認(ECE 22.06)を取得しているヘルメットでも、その形状によって頭部を守れる範囲は大きく異なります。ライダーとして正確に把握しておきたいところです。
フルフェイスヘルメットは、頭部と顔全体を一体型シェルでカバーする構造です。MotoGPをはじめとするプロレースで着用義務があるように、安全性は最も高いとされています。高速走行時の風切り音の低さ、空力の優秀さ、保護範囲の広さが強みです。一方で、夏場の熱がこもりやすい点や、メガネをかけているライダーには着脱がやや手間になる点がデメリットとして挙げられます。
ジェットヘルメット(オープンフェイス)は、あごの部分が開放された形状です。視界が広く、開放感があります。飲食もヘルメットを外さずにできるため、街乗りやツーリングで人気があります。ただし、顔面はシールドのみで保護されるため、事故時の顔への直撃リスクはフルフェイスに比べて高くなります。
システムヘルメットは、フルフェイスとジェットの両方の特性を兼ね備えた形状です。チンガード部分を上げることでオープンフェイス状態に切り替えられます。信号待ちでの水分補給や会話がしやすく、ツーリング用途で支持されています。ただし構造上パーツ点数が増えるため、重量がやや増す傾向にあります。また、チンガードを閉じた状態でのECE 22.06認証取得ヘルメットを選ぶことが重要で、開いた状態での使用はフルフェイスと同等の安全性を保証しません。
オフロードヘルメットは、前頭部にバイザーが付いた独特のデザインが特徴です。バイザーは前方を走る車両が跳ね上げた土砂から視界を守るためのものです。呼吸しやすい口元の開放構造が魅力ですが、バイザーが風の抵抗を受けやすく、高速道路での長距離走行には不向きな面もあります。
警視庁の2021年統計によれば、バイク乗車中の死亡事故において事故時にヘルメットが脱落していたケースが37.1%にのぼっています。これは顔や頭部の保護が失われる最悪の事態です。CE承認の有無だけでなく、あごひもの固定性能も規格のチェックポイントに含まれています。脱げないことが条件です。
参考:ヘルメットの種類と安全規格の選び方を詳しく解説
EuroGear|バイク用ヘルメットのおすすめは?種類や特徴、選び方のポイントも
ネット通販の普及に伴い、「CE承認済み」「EU安全規格適合」と表示しながら実際には基準を満たしていない粗悪なヘルメットが国内市場に流通しています。厳しいところですね。
消費者庁は2024年12月、自社ウェブサイト上で「CE安全基準認証済み」と表示していたにもかかわらず、実際にはEUの安全基準を満たしていなかった3社に対し措置命令を発しました。これらは景品表示法違反(優良誤認)にあたると認定されたものです。
偽物・粗悪品の代表的な特徴は以下の通りです。
本物のCE承認(ECE 22.06)ヘルメットには、内装またはシェル外側に規格番号と認証機関コードが必ず記載されています。具体的には「ECE 22.06」「E○○」(○○は国別番号)の表記と製品固有の認定番号が印字されています。
国内での購入時に安全性を担保するには、PSCマークとSGマークの両方が付いていることを確認するのが一番確実です。SGマーク付き製品は万が一の事故時に最大1億円の賠償制度の対象になります。これは使えそうです。
海外ブランドのヘルメットを通販で購入する場合は、日本正規代理店経由であるかどうか、また製品ページにECE 22.06の認証番号が明記されているかを確認する習慣をつけておきましょう。
参考:消費者庁が発表した粗悪ヘルメットへの措置命令の詳細
消費者庁|自転車用ヘルメットの安全性を示すマークについて(注意点掲載)
安全規格を満たしたヘルメットを購入すれば、それでずっと安心だと思っているライダーも多くいます。しかし、ヘルメットには「安全性を維持できる期間」があります。意外ですね。
ヘルメットメーカーの多くは使用開始から3〜5年程度を目安に交換を推奨しています。これはシェルの外側(ABS樹脂やポリカーボネート)が紫外線や汗の影響で劣化するためです。また内装の発泡スチロール(EPS)は、目に見えない微細な衝撃を繰り返し受けることで、本来の衝撃吸収能力が失われていく性質があります。
特に見落としがちなのが「一度でも大きな衝撃を受けたヘルメットはすぐに交換する」という点です。転倒はしていなくても、ヘルメットを落としたり、車のドアやミラーにぶつけてしまった場合も内部のEPSにダメージが入っている可能性があります。外見が無傷に見えても、内部の衝撃吸収材が破損していることがあるのです。
さらに見落とされやすい点として、CE承認(ECE規格)の版数があります。かつてECE 22.05認証のヘルメットを使い続けているライダーは、現在の最新規格ECE 22.06が要求するテスト水準に対応していない製品を使っていることになります。もちろん22.05品でも日本国内での着用自体は問題ありませんが、22.06品に比べると衝撃試験のカバー範囲が限定的です。
ヘルメットの劣化を防ぐ日常ケアについても触れておきます。洗浄には中性洗剤と水を使い、シンナーやガソリンなどの有機溶剤は絶対に使わないことが基本です。外装コーティングや塗装を溶かすだけでなく、シェル本体の強度にも影響します。また直射日光の当たる場所や、高温になる車のトランクに長時間保管することも劣化を早めます。
つまり、CE承認の取得時期だけでなく、購入後の保管・管理の仕方も安全性を左右するということですね。SGマーク付きのヘルメットを選ぶ際は、製品に記載された有効期間も必ず確認しましょう。
参考:AGVの安全規格説明ページで各規格の詳細と選び方を確認できます
Dainese Japan|最適なヘルメット選びのために知っておくべき安全規格