

スプリングだけ換えてもバイクは別物にはならないと思っていませんか?実は前後スプリングを交換しただけで、制動距離が体感できるほど変わることがあります。
バイクのサスペンションに使われるスプリングには、大きく分けてシングルレートとプログレッシブレート(2段・3段)の2種類があります。シングルレートは荷重にかかわらずバネの反力が一定であるため、低速走行ではよく動く反面、高速やフルブレーキング時に底付きしやすい欠点があります。一方、2段レートは切り替わりポイントで「ガクン」とした引っかかり感が出ることがあり、そこを嫌うライダーも少なくありません。
ハイパープロが1990年代前半に開発した「コンスタントライジングレート(CRR)」は、この2つの欠点を同時に解消しようとした設計思想から生まれました。スプリングのコイル巻きピッチを1本の中で"連続的に変化"させることで、ストローク量が増えるにつれてバネレートが滑らかに高まっていきます。
つまり原理はこうです。
| スプリング種別 | 初期の動き | 高負荷時 | 切り替わりの感触 |
|---|---|---|---|
| シングルレート | 軽く動く | 底付きリスクあり | なし(一定) |
| 2段レート(純正多用) | 柔らかい | 踏ん張る | ガクン感がある |
| コンスタントライジングレート | しなやか | しっかり踏ん張る | ない(連続的に変化) |
ピッチが密な部分がストローク初期の柔らかさを担い、ピッチが広がるにつれて反力が増していきます。乗り心地とサポート力を1本のスプリングで両立できるのが最大の特徴です。
ちなみに、このCRRスプリングはハイパープロ独自の工作機械で製造された後、1本ずつ性能検査が行われます。さらにショット処理(表面に微細な鋼球を打ち付けて強度を高める加工)によって、経年劣化に対する耐久性も確保されています。品質管理が徹底されているということですね。
また、ハイパープロ本国オランダでは救急バイク全車にこのスプリングが採用されているという事実があります。救急バイクとは緊急時に交通渋滞を縫って高速・低速両方で走り続ける乗り物です。公道でのイレギュラーな状況に対して、これほど説得力のある実績はないでしょう。
ハイパープロ製品の日本国内販売は、株式会社アクティブが1994年から担っており、世界で最初の正規販売代理店でもあります。日本人の体格や路面環境に合わせた「ジャパンスペック」と呼ばれる専用セッティングが用意されているのも特徴です。
ハイパープロ公式(アクティブ):コンスタントライジングレートスプリングの技術解説ページ
一般的なサスペンションメーカーのスプリングラインナップは「100種類程度あれば十分な規模」とされています。ハイパープロのスプリングは現在、前後合わせて約3,000種類のラインナップがあります。この数字はとても大きいです。
なぜそこまで多いのかというと、「スプリングの自由長(全長)と径が合えばどの車種でも付く」という発想を採っていないからです。各車種のキャラクター・車重・ライダー体格を想定した専用スプリングを開発し、推奨セッティングデータも車種別に公開しています。その結果として対応スプリングがスタンダードタイプだけで約900車種に達しています。
価格の目安は以下の通りです。
例えばカワサキ Z900RS用の場合、フロント2万4,200円・リア2万6,400円で、コンビだと4万7,300円です。2つ別々で買うより3,300円お得になる計算です。
工賃を合わせた場合の目安としては、フォークオーバーホールと同時作業であれば工賃が別途発生しないショップもあります。CB650Rに装着したケースでは「工賃込みで5万円以下」というレポートも確認されています。これは使えそうです。
またリアスプリングの交換は特殊工具が必要な場合があることから、アクティブでは「リアスプリング交換サービス」を提供しています。純正リアショックと購入したスプリングを送るだけで、3,300円(税込、送料別)で1週間程度で戻ってくるサービスです。ショップに持ち込むよりもコストが抑えられるケースもあるので、覚えておいて損はないでしょう。
Webike NEWS:ハイパープロのツーリング向け特性と価格帯の詳細解説
交換前後の違いについて、実際に複数のライダーからレポートが上がっています。特にツーリングメインのライダーからの評価が高い傾向があります。
よく聞かれる「硬い・柔らかい」という評価ですが、正確には「初期が柔らかく奥で硬い」という特性です。乗り始めに感じる硬さは、純正の2段レートと比較すると「やや硬め」という意見が多いです。しかし段差を越えたときの細かい振動の処理が明確に改善し、長距離ツーリングでの疲労感が減ったというレポートが目立ちます。
実際の走行インプレを整理すると次の傾向があります。
CB400スーパーフォアのウェット路面での乗り比べテストでは、コンスタントライジングレートの「初期によく動く特性」により、滑りやすい路面でも前後のピッチングが引き出しやすくなったとの評価が得られています。荷重をかけにくい状況でもタイヤへの入力を作りやすい、というのはストリートで安全に走るうえで直接的なメリットになります。
一方で注意点もあります。フロントスプリングの換装はフォークオイルの油面変更を伴う車種が多く、次にオーバーホールするときは純正とは異なるセッティングが必要です。後日別のショップでフォークオイルだけ交換してもらう場合に「ハイパープロを入れている」と伝えることが条件です。セッティングが原則です。
CB650Rオーナーによるハイパープロスプリングキットの詳細インプレッション
ハイパープロのスプリングを装着したあと、多くのライダーが「ポン付けで終わり」にしてしまっています。しかし、スプリングの性能を正しく引き出すにはサグ出しとプリロード調整が欠かせません。
サグとは「ライダーが乗車した状態でのサスペンションの沈み込み量」を指します。ハイパープロでは車種別に推奨サグ値を公開しており、例えばリアの場合「10±5mm」を推奨している車種があります。沈み込みが推奨値より多い場合はプリロードを強める方向に、少ない場合は緩める方向に調整します。
| サグの状態 | 意味 | 対処 |
|---|---|---|
| 推奨値より沈みすぎ | スプリングが柔らかすぎる状態 | プリロードを強める(右回し) |
| 推奨値より沈まない | スプリングが硬すぎる状態 | プリロードを弱める(左回し) |
| 推奨値の範囲内 | 車体姿勢が正常な状態 | そのままでOK |
サグ出しの具体的な手順は①乗車なし(バイクだけ)で車高を計測し、②ライダーが乗車した状態で再度計測し、③その差(沈み込み量)が推奨値内かどうかを確認するというものです。数mm単位の調整ですが、走り味は明確に変わります。
プリロード調整でレートそのものは変わりません。あくまでスプリングの初期位置(荷重がかかり始めるポイント)を変えるだけです。これは基本です。
ハイパープロのスプリングキットには、車種別の推奨セッティングシートが付属しています。フォークオイルの油面、突き出し量、プリロードの初期値がすべて記載されているため、サスペンションのセッティングに不慣れなライダーでも基準が明確です。まず推奨値でセッティングし、そこから自分の体格や走りのスタイルに合わせて少しずつ調整していくのが効率的です。
減衰力の調整に先行してスプリングのプリロードを適切に設定することを、ハイパープロのアクティブ担当者は繰り返し推奨しています。「減衰力調整はあくまでスプリングの補助」という考え方で、土台となるスプリングセッティングを正しく行うことが大前提です。サスペンション調整に悩んでいるなら、まずサグ出しが先決です。
アクティブ公式:ハイパープロのサスペンションセッティング方法(サグ出し手順付き)
「足つきが悪いから車種を諦めた」というライダーは少なくありません。一般的なローダウン方法としてリンク交換やローダウンリンクが使われますが、これはレバー比が変わってサスペンションの動き自体が変質するというデメリットがあります。乗り心地が悪化したり、ハンドリング特性が変わってしまうのです。
ハイパープロのローダウンスプリングは、コンスタントライジングレートの「初期が柔らかい」特性を利用した独自の設計です。スプリングの自由長(全体の長さ)を大きく短くしなくても、乗車状態で初期の低レート部分がしっかり沈み込むため、足が地面に届きやすくなるという仕組みです。車重だけがかかっている状態(バイク単体)ではさほど車高は変わらず、実際にライダーが乗ったときに初めて効果を発揮します。
なお、リアのみをローダウンスプリングに換えると車体姿勢が後ろ下がりになります。フロントも同時にローダウンスプリングに換えるか、フロントフォークを突き出す(取り付け位置をトリプルツリーから下にずらす)かで前後バランスを調整する必要があります。前後セットで換えるのが原則です。
アクティブのウェブサイトでは対応車種を車名から検索できるので、まず自分の愛車のラインナップがあるかどうかを確認するところから始めるのが現実的です。ローダウンスプリング仕様でも推奨セッティングデータが付属するため、足まわりのカスタムに詳しくなくても適切な乗り心地を得やすくなっています。
足つきの悩みを抱えているライダーには、このローダウンスプリングという選択肢を頭に入れておくことを勧めます。ただし前後同時交換が推奨される分、コンビキットの費用(4万7,300円〜5万2,800円)+工賃が最低限かかる点は念頭においてください。
Webike NEWS:ハイパープロのローダウンスプリング詳細と対応車種・足つき改善の実例

HYPERPRO (ハイパープロ) バイク サスペンションスプリング リアスプリング HONDA NC750S 16~17 (TYPE-LD) (ABS) 16~17 (TYPE-LD) NC750X 16~17 (TYPE-LD (ABS) 16~17 (TYPE-LD) 22013311