

力でバイクを押さえつけようとすると、コーナーで転倒リスクが3倍以上になります。
バイクのライテク記事やスクールの解説で頻繁に登場する「かじゅう」という言葉。実は漢字で書くと「加重」と「荷重」の2種類が存在し、読み方はまったく同じでも、その意味は大きく異なります。この違いを理解しているかどうかで、ライディングの方向性がまるで変わってしまうほど重要なポイントです。
まず「加重(かじゅう)」の意味を確認しましょう。「加」という漢字には「力を加える」「足す」というニュアンスがあり、「加重」とはバイクに対して何らかの力を積極的に加えることを指します。たとえばハンドルを強く押さえる、ステップを思い切り踏み込む、といった「力を使った操作」がこれにあたります。
一方の「荷重(かじゅう)」は、「荷」という文字が示すように「荷物のように重さを預ける」というイメージです。つまり、筋力で力を入れるのではなく、自分の体重という「重さ」をバイクの特定の部位に自然に乗せていく、という意味になります。つまり「荷重」が原則です。
ライディングの世界において、この2つは意味がまったく違います。専門誌で25年以上の経験を持つジャーナリスト・小川勤氏(元編集長)も、著名なライテク連載「ライテクをマナボウ」のなかで「ライテクにおける正しいカジュウは『荷重』であり、力を加える『加重』はむしろ避けるべき」と明言しています。
力ずくで操作する「加重」の乗り方は、若いうちは体力で補えてしまうため問題に気づきにくいです。しかし筋力が衰え始める年齢になると「バイクに乗るのがきつくなってきた」という感覚を持つライダーが増えてきます。これはまさに「加重」に頼りすぎていたサインです。
体重を自然に預ける「荷重」のコツをつかんだライダーは、年齢を重ねても長くバイクを楽しめます。これは大きなメリットですね。逆に「加重」を続けていると、体力の衰えとともに乗れなくなる可能性があり、長期的には非常に大きなデメリットになります。
| 漢字 | 読み方 | 意味 | ライテクでの評価 |
|---|---|---|---|
| 加重 | かじゅう | バイクに力を加えること | ❌ 疲労・転倒リスクにつながる |
| 荷重 | かじゅう | 体重をバイクに預けること | ✅ 安全で長続きする正しい乗り方 |
参考:バイク専門誌25年のキャリアを持つジャーナリスト・小川勤氏による「加重と荷重」の詳しい解説はこちら。
KUSHITANI RIDING METHOD「ライテクをマナボウ」加重と荷重 何が違う?
「荷重をかける」と言われても、具体的にバイクの動きとどう関係するのかイメージしにくいと感じる方は多いです。どういうことでしょうか?ここでは荷重がバイクのコーナリングに与える影響を、物理的な観点からわかりやすく説明します。
バイクがカーブを曲がるとき、タイヤが路面をどれだけ強く押しつけているか(=接地荷重)がグリップ力の源になります。この接地荷重が高いほどタイヤはしっかり路面をつかみ、安定した旋回が可能になります。逆に荷重が抜けると、グリップが低下して滑りやすい状態になります。
ライダーの体重は一定ですが、体の重心をどこにどう移動させるかによって、前輪・後輪・車体のイン側にかかる荷重の量が変わります。スキーやスノーボードでターン時にエッジに体重を乗せる感覚と、構造的にはよく似た話です。
たとえばコーナー手前でブレーキをかけると、慣性力によって体が前に押される分、自然にフロント(前輪)荷重が増します。これはブレーキによる「フロント荷重」の状態です。この状態を利用して倒し込みのきっかけを作り、コーナー後半にリア(後輪)荷重へ移行しながらスロットルを開けて立ち上がる、というのがコーナリングの基本的な荷重移動の流れです。
ここで注意が必要なのが「体を硬くすること」です。サスペンションは路面の凸凹に合わせて絶えず上下動しています。体に力が入っていると、そのサスの動きをライダーの体が邪魔してしまいます。いわばスキーで足を突っ張りすぎて、エッジに余計な力が入り横滑りを起こすのと同じ状態です。意外ですね。
逆に全身から力を抜いて体重をシートに「預ける」ようにすると、サスペンションが本来の動きをしやすくなり、タイヤの接地荷重が安定します。これが「荷重」の本質であり、グリップ力を最大限に引き出すための基本です。
参考:荷重がバイクのグリップ力・安定性とどう関係するか、専門的な解説はこちら。
RIDE HI「どう乗れば荷重は増やせる?」ライドナレッジ036
「荷重」といっても、シートにかけるのかステップにかけるのかで、バイクの動きはまったく変わってきます。ここでは実際のコーナリングシーンで使われる主要な3種類の荷重を整理します。荷重の種類を覚えるだけがゴールではなく、場面に応じて使い分けることが重要です。
まず「シート荷重」は、バイクに乗っている間のほぼすべてのシーンで基本となる荷重です。ライディングアカデミー東京の佐川健太郎校長も「コーナリング中の主体はシートへの体重預けであり、それが基本」と明言しています。実際にステップから両足を外してシートだけに体重を預けてみると、意外なほど安定してニュートラルに曲がれることがわかります。
次に「内足ステップ荷重(イン側ステップへの荷重)」は、コーナーの入り口・倒し込みのタイミングで有効です。イン側のステップを積極的に踏み込むことで車体の内側への傾きが促され、倒し込みのきっかけを作りやすくなります。
「外足ステップ荷重(アウト側ステップへの荷重)」はコーナーの後半・立ち上がりフェーズで使います。アウト側のステップを軽く踏むことで傾いた車体を起こす力が生まれ、スムーズな立ち上がりが可能になります。滑りやすい路面では、最初から外足荷重を意識しておくと安心です。
これだけ覚えておけばOKです。コーナー前半=内足荷重、コーナー後半=外足荷重、基本=シート荷重、という3段階の流れです。
注意点は、どれか1つに100%荷重するのではなく、走りの流れの中で「強弱をつけながら使い分ける」ことです。特に初心者のうちは大きな体の動きよりも、お尻半分だけ軽くズラす程度の微妙な重心移動から練習し始めると、荷重の感触がつかみやすくなります。
ライディングスクールへの参加も有効な手段の1つです。MFJ公認インストラクターが指導する各地のスクールや、メーカー系の体験イベントでは、荷重の使い方を安全な環境で実践的に学ぶことができます。Honda・Yamaha・Kawasakiなどのメーカーが主催する無料または低コストの安全運転講習会を確認してみましょう。
「荷重をかける」という話題では、その逆である「抜重(ばつじゅう)」についても理解しておくことが欠かせません。これは多くのライダーが知らない、けれど実は安全運転に直結する重要テクニックです。
「抜重」とは、特定の部位にかかっていた荷重を意図的に抜く操作のことです。たとえばコーナーリング中にスロットルを開けすぎて後輪が滑り始めたとき、シートから腰を一瞬浮かせてシート荷重を抜くと、同時にステップに荷重が移ります。この荷重変化が後輪のスライドを止め、グリップを回復させるきっかけになります。
痛いですね。後輪が滑るというのはパニックになりやすい場面ですが、「荷重を抜く」というシンプルなアクションで対応できることを知っているかどうかで、転倒を防げる確率が大きく変わります。
また、左コーナーでは右側のステップを踏み込むことで右わき腹に荷重をかけ(=右側の抜重の準備)、そのまま力を抜くことで左方向への重心移動を作り出す、という使い方もあります。抜重は「何もしないで力を抜く」ではなく、「意図的に荷重方向を切り替えるための積極的な操作」です。これが条件です。
荷重と抜重はセットで覚えることで、コーナリングの精度が大幅に上がります。スキーやスノーボードをたしなむライダーであれば、ターン時のエッジへの加重と抜重の組み合わせとほぼ同じ感覚です。まだ意識したことがない方は、次のコーナーで「シートから少し腰を浮かせてみる」という小さな実験から始めてみるのがおすすめです。
参考:荷重コントロールと抜重のメカニズムについて、ライディングアカデミー東京の佐川校長による解説は以下のページが参考になります。
バイクブロス「スマートなコーナリングとは?荷重コントロール」
ここまで「加重」と「荷重」の違い、コーナリングへの影響、具体的なテクニックを説明してきました。最後に、この漢字の本質が示す「ライディングの哲学」ともいえる考え方について深掘りします。
「荷重」という漢字の「荷」は、荷物・荷台・荷を担うといった言葉で使われるように、「重さを乗せる・重さを預ける」という意味を持っています。つまり「荷重をかける」という表現を正しく読み解くと、「力を入れてバイクを動かす」ではなく「自分の体重という荷物をバイクの特定の場所に預ける」という動作になります。これが原則です。
この感覚がつかめてくると、バイクに乗ることがぐっと楽になります。力任せにバイクを動かそうとしていた頃と比べて、疲労感が大幅に減るライダーが多いです。バイクに「乗らされている」状態から、バイクと「一緒に動く」状態へのシフトとも表現できます。
「荷重」という漢字を選んで使うことは、単なる言葉の問題ではなく、ライディングの根本的なアプローチを象徴しています。力を加える(加重)ではなく、重さを預ける(荷重)という思想の違いが、長期的な上達の差にもつながります。
実際、ライテク系スクールのインストラクターが口をそろえて言うのは「上手いライダーほど力を使っていない」という事実です。これは使えそうです。グランプリを制したトップライダーたちも、「いかに脱力してバイクの動きに自分を合わせるか」を突き詰めています。
なお、「荷重をかける」という動作は、バイクの種類によっても意識すべきポイントが少し変わります。ハーレーのようなクルーザーはほぼシート荷重がメインですが、スポーツバイクではステップ荷重との組み合わせがより重要になります。BMW R1200GSのようなアドベンチャーモデルでは、フロントサスの特性上、フロント荷重を高めることで倒し込みやすくなるという独自の特徴もあります。
「加重か荷重か」という漢字1文字の差が、ライダーとしての安全性・快適さ・上達スピードのすべてに影響します。まずは「力を入れる」ではなく「体重を預ける」という感覚に意識を切り替えることが、上達への最初の一歩です。
参考:GRA(グループ・ライディング・アカデミー)による荷重の本質的な解説はこちら。
GRA「Q&A 荷重の変化について?」楽しく安全に走るための荷重の考え方

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