

シート高820mmでも、停車時には745mmまで自動で縮む。
ムルティストラーダV4Sのシート高は、一つの固定値ではなく、シートの種類・サスペンションの設定・自動低下機能の有無によって幅広く変化します。まずは全パターンを整理しておきましょう。
| 仕様・組み合わせ | シート高(低〜高) |
|---|---|
| 日本仕様(ローシート+ローサス) | 795mm〜815mm |
| 日本仕様+自動車高低下装置(ALD)作動時 | 最大745mm〜 |
| 欧州標準仕様 | 840mm〜860mm |
| ハイアップサスペンションキット(オプション) | 840mm〜860mm |
| ハイシート(アクセサリー)装着時 | 835mm〜855mm |
| ローフォームシート+ローサスキット(V4) | 795mm〜815mm |
これだけ見ると「どれが自分に合うのかわからない」と感じるかもしれません。それが普通の反応です。
シート高の数字だけで判断しようとすると迷います。実際には「どのシート高で停車時に足がどこまで届くか」という視点で考えるのが基本です。一般的に身長170cm前後のライダーが標準シート高840mmに跨ると、つま先だけが辛うじて着く状態になります。一方で日本仕様のローシート+ローサスなら795mm〜815mmとなり、身長170cm程度であれば両足の爪先がほぼ同時に地面に届く感覚で停車できます。
さらに2025年モデルから追加された自動車高低下装置(ALD)が加わると、停車直前に自動でシート高が約30mm下がります。つまり、走行中は815mmの安定した姿勢を保ちながら、交差点で止まる瞬間にはおよそ785mm程度まで下がる動作をします。日本仕様ではローシート装着が前提のため、その組み合わせで745mmという数値も報告されています。
| 身長の目安 | 推奨シート高の目安 |
|---|---|
| 155cm前後 | 745〜790mm(ALD作動時が安心) |
| 160〜165cm | 795〜810mm(ローシート+ローサス) |
| 170〜175cm | 810〜840mm(日本仕様標準〜欧州仕様) |
| 180cm以上 | 840mm〜(ハイシート・ハイアップサスも選択肢) |
つまり、シート高は「一つ選ぶもの」ではなく「組み合わせて最適化するもの」という理解が条件です。
参考:ドゥカティ公式の日本向けV4Sスペック・シート高記載ページ
新型ムルティストラーダ V4 公式スペック|Ducati Japan
2025年モデルの最大トピックが、自動車高低下装置(ALD/オートマチック・ロワリング・デバイス)の搭載です。この機能が、アドベンチャーバイクにおける足つき問題を根本から変えました。
仕組みはシンプルです。速度センサーが時速10km以下を検知すると、リアショックアブソーバー内部の油圧機構が自動的にプリロードを抜く動作をします。その結果、リアアクスルが約50mm下がり、シート高換算で最大約30mm低くなります。停車中はずっとその低い状態を維持し、発進して加速を始めると自動的に元の走行姿勢に戻ります。これは意識して何かを操作する必要がありません。
意外ですね。
この機能が実用的な理由は「走行中の安定性を犠牲にしない」点にあります。通常のローダウンキットを使った場合は常に車高が低くなるため、バンク角が減少したりサスペンションストロークが短くなったりするデメリットが生じます。ALDは走行中は元の車高に戻るため、コーナリング性能や悪路走破性を損なわずに足つきだけを改善できます。つまり、走りとの両立が条件です。
このALDは従来モデルの後期からイージーリフト機能(キーオン状態でサスの減衰が抜ける補助機能)として存在していましたが、2025年モデルではさらに精度を高め、時速10km以下という明確なトリガーで自動作動するよう進化しました。
以前のムルティストラーダV4Sで「シート高が高くて怖い」と感じていたライダーにとって、この機能はまさに購入の背中を押す一手と言えます。身長158cmの女性ライダーが、ローシート+ローサス+ALDの組み合わせで「停車時はかかとが少し浮く程度」でコントロールできたという実走レポートも公開されています。
参考:ドゥカティ新型ムルティストラーダV4Sの日本初公開レポート(Webike NEWS)
【名古屋MCショー】ドゥカティ「ムルティストラーダV4S」日本初公開!車高調整で745mmの超低シートを実現|Webike NEWS
ムルティストラーダV4Sで足つきを改善したいなら、主に3つのアプローチがあります。それぞれの効果と注意点を正確に把握しておくことで、余計な出費を防げます。
① ローシートへの交換(アクセサリー)
ドゥカティ純正のローシートに交換することで、シート高を標準より約20〜25mm低くできます。日本仕様ではローシートが標準装備として設定されているため、新車購入時に追加費用なしで手に入ります。シートの厚みを削っているため、長時間走行での座り心地が若干変わりますが、クッション性はきちんと確保されています。これは使えそうです。
② ローサスペンションキット(ローダウンパーツ)の装着
リアサスペンションのリンクを変更することで、シート高をさらに約20mm下げられます。日本仕様ではこのローサスも標準設定として組み込まれており、ローシートと組み合わせると欧州仕様の840mmから一気に795〜810mm程度まで下がります。ただしバンク角が若干減少するため、峠道でのスポーツ走行をメインにする場合は検討が必要です。
③ サードパーティ製ローダウンキット
ドゥカティ正規店以外でも、リアサスのロッド変更などによってシート高を50mm以上下げるカスタムが可能です。最大で80mm程度まで下げた事例もあります。ただし大幅なローダウンはバンク角の激減・サスペンションストローク不足・車体バランスの変化というリスクが同時に伴います。走行性能への影響が大きいカスタムは必ず専門店に相談する、これが原則です。
なお、ローシートと聞くと「ハンドルとの位置関係が変わってポジションが悪化するのでは?」と心配する人も多いです。ドゥカティが公式に認めているデータでは、日本仕様ローシート装着時にはハンドルグリップとシートの高低差が標準より約20mm増加する(気持ち遠くなる)とされています。体の大きさによっては腕が伸び気味になる可能性があるため、身長が低めのライダーはハンドルバーライザーの併用も視野に入れておくと快適なポジションを維持しやすくなります。
参考:ムルティストラーダV4Sのローシート・ローサス仕様についての詳細インプレ
Ducati Multistrada V4 S このパッケージ、ファンタスティック!! 試乗記|Mr.Bike
シート高だけを数字で比較しても、実際の足つき感覚は体型によって大きく異なります。見落とされがちですが、股下の長さと足の開き方(O脚・X脚傾向)によっても同じ身長でも数センチ以上感覚が変わります。ここは意外ですね。
アドベンチャーバイクはシートが横に広いため、足を地面に降ろす際にシートの張り出し部分で太もも外側が持ち上げられます。シート幅が広いほど足が外に押し出されてしまい、同じシート高でも「実質的に着地点が高くなる」効果が生まれます。ムルティストラーダV4Sの場合、シートの張り出しがスリムに設計されており、同クラスのアドベンチャーバイクと比べると足の置き方がスムーズです。それでも初めて跨ると腰を少し前にずらすことで安定感が増す場合が多いです。
また、信号待ちで「片足だけ着く」という方も多いですが、これはシート高820mm前後のアドベンチャーバイクでは一般的なスタイルです。両足フルベタは求めなくていいということですね。重要なのは「停車時に転倒しないだけの安定感が確保できるか」であり、片足の爪先でも体重が乗せられれば十分なケースが多いです。
停車時に不安を感じるライダーに向けた実用的な方法として、スパイラルバックプロテクターなどのプロテクター装備と合わせて「停車時の手順を固定化する」ことも有効です。具体的には「速度が落ちてきたら利き足側を先に地面に出す準備をする」「信号手前では早めに減速してゆっくり停車する」という習慣が、万が一の転倒リスクを大幅に下げます。走行習慣の見直しだけでもリスクは減ります。
参考:身長158cmのライダーによるV4Sローシート+ローサス仕様のインプレ(Yahoo!ニュース)
シート高の議論はほとんどが「停車時の足つき」に終始しますが、実はムルティストラーダV4Sのシート高は走行中にも変化しています。これを理解しておくと、ライディングポジションとサスペンションへの理解が一段深まります。
V4Sに搭載されるセミアクティブサスペンション「ドゥカティ・スカイフック・サスペンション(DSS)エボ」は、ライディングモードに連動して車高を変化させます。たとえばモードを「アーバン」から「スポーツ」へ切り替えた瞬間に、リアサスペンションが自動的に固くなりプリロードが増し、リアが少し上がります。これにより車高が走行中に変動することになります。体感できるほどの差ではないものの、数値的には数mmから最大で10mm程度の変化が生じています。
さらに2025年モデルから追加された「バンプ検知機能付きスカイフックサスペンション」は、フロントサスペンションが大きな衝撃を検知した瞬間にリアサスをリアルタイムで制御します。荒れた路面でフロントがバコンと沈んだときに、リアも同じように底突きしないようリアショックを瞬時に制御する仕組みです。これは走行中の姿勢安定にも直結しており、シート高の「感じ方」が結果的に安定する効果をもたらします。
つまり「停車時のシート高」と「走行中のシート高」は別物として考えると理解が深まります。走行中はALDによって車高が低い状態ではなく、スポーツライディングに最適な高い状態で維持されます。これが「足つきを改善しながらも走行性能を犠牲にしない」という設計思想の核心部分です。
こうした動的なサスペンション制御は、同クラスのアドベンチャーバイクとの最大の差別化ポイントでもあります。たとえばBMW R1300GSなどのライバルも電子制御サスを積んでいますが、バンプ検知の連携制御という点ではV4Sの2025年モデルが一歩進んだ対応を見せています。結論はシート高問題とサス制御は切り離せないということです。
参考:ドゥカティ浜松による2025年モデルの技術的変更点の詳細解説
ムルティストラーダV4、新型で何が変わる?見た目じゃ分からない進化を解説|ドゥカティ浜松公式ブログ

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