サスペンションストロークをバイクで正確に測定する完全手順

サスペンションストロークをバイクで正確に測定する完全手順

サスペンションストロークのバイクでの測定と正しいセッティング手順

プリロードを最強にしても、実はサスが「固く」なることはなく転倒リスクだけが30%上がります。


この記事でわかること
📏
ストローク測定の3ステップ

0G・1G・乗車1Gの3段階でサスペンションの沈み量を数値化する基本手順を解説します。

🔧
タイラップで走行中の実測も可能

インナーチューブにタイラップを巻くだけで、実走中の最大ストロークを可視化できます。

⚙️
プリロード調整との正しい連動

測定値を基にプリロードを調整することで、体重に合った適正な乗車姿勢と路面追従性を実現できます。


サスペンションストロークとは何か|バイクの動きを数字で理解する



サスペンションストロークとは、サスペンションが伸び切った状態(最大伸長)から最も縮み込んだ状態(フルボトム)までの移動量のことです。この幅が「サスペンションが仕事できる全体の範囲」であり、ここを基準にすべてのセッティングが始まります。


具体的な数字で言うと、一般的なロードスポーツバイクではフロントフォークのストローク量がおよそ100〜120mm程度、アドベンチャーバイクでは約200mm、オフロードバイクになると最大250mm前後にもなります。120mmというのはだいたいはがき1枚の短辺(100mm)より少し長い程度。この限られた範囲の中で、凸凹の路面からの衝撃を吸収し、コーナリング中の荷重変化に対応しているわけです。


つまりストローク量が基本です。


ここで重要なのが「どの位置でサスペンションを使っているか」という点です。ストローク全体の中でどこを使っているかによって、路面への追従性や転倒時のリカバリー能力が大きく変わってきます。「とりあえず乗れる」状態と「適切にセッティングされた」状態では、同じバイクでも安全性に雲泥の差が出ます。


バイクメーカーは設計段階で「想定ライダーの体重」を元にサスペンションの基準値を設定しています。たとえばドゥカティはハンドブックに「ライダーの衣料込みで80〜90kgを想定」と明記しており、装備なしの体重でいうとおよそ70kg前後が各社の基準です。体重が70kgより大きくずれている場合、出荷時のセッティングのままでは適正なストローク位置とはなりません。これが「測定」が必要な理由です。


























バイクのカテゴリ フロントストローク量の目安 リアストローク量の目安
ロードスポーツ 100〜120mm 110〜130mm
アドベンチャー 180〜200mm
オフロード 230〜260mm
ネイキッド 120mm前後


ストローク量はメーカーの仕様書や取扱説明書に「ホイールトラベル」として記載されていることが多いです。まずこの数字を手元に用意してから測定を始めると、作業がスムーズに進みます。


参考リンク:バイクのストローク量の一般的数値とカテゴリ別の違いを解説(バイクブロス
https://www.bikebros.co.jp/vb/sports/sfeat/sfeat-20100712-03/


サスペンションストロークのバイク測定に必要な道具と事前確認

測定を始める前に、準備すべきことがいくつかあります。ここを怠ると正確な数値が出ず、セッティングがかえってズレてしまうので要注意です。


まず必要な道具はシンプルです。



  • 🔩 メジャーまたは金属製の直尺(30〜50cm程度):柔らかいテープメジャーより、曲がらない金属製の方が精度が出ます。

  • 🖊️ マスキングテープまたはガムテープ:計測の基準点をバイクにマーキングするために使います。

  • 📋 メモ帳またはスマートフォン:0G・1G・乗車1Gの3つの数値をその場で記録します。

  • 👤 手伝ってくれる人(最低1名、できれば2名):これが最大の準備ポイントです。


人手が必要なのが条件です。


「一人でできないの?」と思う方も多いですが、特にリアのストローク測定は「ライダーが両足をステップに乗せた状態で乗車したまま計測」する必要があります。そのため最低でも1人は計測担当者が必要です。バイクを支える人も含めると3人いると安心です。一人でやる場合は後述のタイラップ法が現実的です。


測定前に確認しておく事項は次の通りです。



  • 🔍 タイヤの空気圧が適正値に設定されているか:空気圧が低すぎると車高が下がり、ストローク測定値に誤差が出ます。必ず標準空気圧に合わせてから測定しましょう。

  • ガソリンをほぼ満タンにしておく:燃料の量で車重が変わり、1G(バイクの自重での沈み量)の値に影響します。毎回同じ条件で測定するためにも燃料は満タン近くにしておきます。

  • 🔗 チェーンの張りを確認する:チェーンが張りすぎているとリアサスが沈み込まず、正確な乗車時ストロークが測定できません。張りが規定値内かどうか先に確認してください。

  • 📐 水平な場所で行う:前後に傾いた場所で測定すると荷重が片側に偏り、数値に誤差が出ます。なるべく平らな地面で計測しましょう。


装備は当日と同じ状態が基本です。当日乗るときと同じウェア、ヘルメット、ブーツを着用して測定に臨みましょう。装備の重さは合計で10〜15kgになることも多く、素の状態との差が測定値に直接影響します。


0G・1G・乗車1Gの3段階でサスペンションストロークを測定する手順

測定は3つのフェーズに分かれています。これが「サグ出し」の核心部分です。順番通りに進めていきましょう。


【STEP 1】0G計測:サスペンションが伸び切った状態を測る


リアタイヤを地面から浮かせ、サスペンションが完全に伸び切った状態での長さを計測します。センタースタンドがあるバイクはそのまま使えます。スタンドがない場合は複数人でリアを持ち上げます。


計測場所は「リアアクスル(リアホイールの軸)の中心から、その真上にある目印になるポイント(テールカウルウインカーの付け根など)まで」の距離です。マスキングテープで計測の終点をマーキングしておくと、次回以降もズレなく測れます。


例として:0G計測結果が525mmだったとします。この数値はリアショックを交換したり車高調整機能を操作しない限り変化しません。


【STEP 2】1G計測:バイクの自重だけで沈む量を測る


タイヤを地面に降ろし、ライダーは乗らずにバイクを直立させた状態で同じポイントの距離を測ります。サイドスタンドやレーシングスタンドは使わず、誰かにハンドルを持って直立を保ってもらうのがポイントです。


例として:1G計測結果が515mmだった場合、0Gから1Gへの沈み込み量は525mm−515mm=10mmとなります。この沈み量はプリロード調整を行うと変化します。


【STEP 3】乗車1G(1G')計測:ライダーが乗った状態で沈む量を測る


ここが最重要フェーズです。ライダーが完全にバイクに跨り、両足をステップに乗せた状態で計測します。足を地面につけてはいけません。荷重が変わってしまいます。


計測担当者がメジャーで同じポイントを測ります。


例として:乗車1G計測結果が485mmだった場合、1Gから乗車1Gへの沈み込み量は515mm−485mm=30mmです。


この「30mm」という数値こそがリバウンドストロークであり、プリロード調整の目標値です。バイクジン誌が推奨する適正値は「1G−乗車1Gで25〜30mm」。この範囲に収まっていれば、まずOKです。



  • 📌 25mm未満の場合 → プリロードを弱める(スプリングへの初期荷重を減らす)

  • 📌 30mm超の場合 → プリロードを強める(スプリングへの初期荷重を増やす)


フロントフォークの場合、トップブリッジ上端からフォークブーツ下端までの距離が計測基準として使いやすいです。フロントはロードスポーツバイクでフルストロークの30〜35%が「一般的な適正沈み量」とされています。


参考リンク:0G・1G・乗車1Gの測定とプリロード調整の基礎(バイクジン)
https://www.bikejin.jp/ridersclub/933/


参考リンク:GRAによるリアサスペンションのプリロード調整解説(権威ある非営利団体)
https://gra-npo.org/lecture/bike/rear_preload/rear_preload_4.html


タイラップ1本でできる!走行中のサスペンションストローク実測法

一人でバイクに乗っている方、ヘルパーが用意できない方、あるいは「実際に走っているときにどこまでストロークしているのか」を確認したい方にとって、タイラップを使った方法は非常に実用的です。これは知っておいて損なし、の知識です。


方法は驚くほど簡単です。


フロントフォークのインナーチューブ(ぴかぴか光っているシルバーの細い棒部分)に、タイラップ(結束バンド)を緩めに巻きつけます。「緩めに」がポイントで、手で軽く動かせる程度にしておきます。アウターチューブのダストシールのすぐ上の位置に装着すると、走行後に確認しやすくなります。


走行後、タイラップの位置を確認します。アウターチューブに押し込まれてタイラップが下方向にズレていれば、そこが「実走中の最大ストローク位置」です。ズレ量がそのままフロントフォークの最大沈み量の目安になります。


これは使えそうです。


ただしこの方法はあくまで「どのくらいストロークを使っているか」の目安確認が目的で、精密な数値計測には向きません。確認できる情報として次のようなものがあります。



  • 🔶 フォークが底付きしていないか:タイラップがインナーチューブの根本付近まで移動している場合、フルボトムに近い状態になっている可能性があります。

  • 🔶 ストロークを使いすぎていないか:ストロークの7〜8割以上を常用している場合、底付きリスクが高いです。プリロードや減衰力の見直しが必要なサインです。

  • 🔶 ほとんどストロークしていない場合:プリロードが強すぎてサスが動いていない可能性があります。路面追従性が低下しているサインです。


リアサスにも同様の方法が使えます。リアサスのアウターチューブとインナーロッドの境界部分に同様にタイラップを巻いておき、走行後にズレ量を確認します。ただしリアはカウルで見えにくいケースが多いため、フロントで確認する方が簡単です。


より正確な測定を求める場合は、市販のストロークセンサー(電子式)も存在します。データロガーとセットで使うもので、走行ログとして沈み量を記録できます。ただし本体価格が2〜5万円程度になるため、一般的なツーリングライダーにはタイラップ法で十分です。


参考リンク:タイラップを使ったフォークストローク確認の実例(個人ライダーブログ)
https://shiro-maigo.com/220925-kpr/


測定値を活かすプリロード調整とリバウンドストロークの正しい考え方

ストローク測定で数値が取れたら、次はその数値を使ってプリロードを調整します。ここで多くのライダーが誤解していることがあります。それが「プリロードを強くするとサスが硬くなる」という思い込みです。


プリロードとはスプリング(バネ)を初期状態から縮めておく量のことです。バネ自体の硬さ(スプリングレート)は変わりません。変わるのはサスペンションが動く「位置の範囲」だけです。これが原則です。


では、プリロードを変えると何が変わるのかというと、「乗車時にサスペンションがどの位置にいるか(車高)」が変わります。プリロードを強めると乗車時のサスが高い位置に保たれ、弱めると低い位置になります。


乗車1Gでの沈み量が少なすぎる(25mm未満)場合は、プリロードを弱める方向で調整します。リアサスの調整リングを反時計回りに1〜2段階回して、再び乗車1Gを計測します。逆に沈みすぎている(30mmを超える)場合はプリロードを強めます。


調整の際に気をつけることは次の通りです。



  • ⚙️ 一度に大きく調整しない:一度の調整は1〜2クリック、または専用レンチで1/4回転程度にとどめ、毎回計測して確認します。

  • ⚙️ 調整後は必ず再計測する:感覚での判断は誤差が大きいです。数値で確認する癖をつけましょう。

  • ⚙️ 前後バランスも考慮する:フロントのみ、またはリアのみを大きく変えると前後の重量バランスが崩れ、ハンドリングに悪影響が出ます。前後を同時に見直すのが基本です。


もう一つ意識したいのが「リバウンドストローク」です。ライダーが乗ってサスが沈んだ状態から、さらに路面の凹みに対して伸びていく余地のことです。この余地がないと、路面の凹みでタイヤが浮きやすくなり、グリップ力の低下を招きます。コーナリング中にリアが滑り始めたとき、リバウンドストロークが十分あれば「じわっと」戻りますが、余地がないと一気にスリップダウンするリスクがあります。


乗車1Gで適正なリバウンドストローク(25〜30mm)が確保されているということは、転倒時のリカバリー能力の確保でもあります。単なる「乗り心地の好み」ではなく、安全に関わる数値として捉えることが大切です。


なお、プリロード調整で対応できる範囲を超えた体重差の場合(例:体重90kg超、または45kg以下など)はスプリングレート自体の変更が必要になる場合があります。その際はバイク用品店やショップに相談するのが確実です。


参考リンク:サグ出しとリバウンドストロークの役割について詳しく解説(RIDE HI)
https://ride-hi.com/pickup/ride-knowledge_079.html


サスペンションストローク測定で見落としやすい「フロントとリアの連動」という独自視点

多くの解説記事ではフロントとリアを別々に解説しています。しかし実際のライディングでは、フロントとリアのサスペンションは常に連動して動いており、どちらか一方だけを調整しても理想のハンドリングには近づけません。この「前後の連動」という視点は、検索上位の記事にはほとんど書かれていない実践的なポイントです。


たとえばブレーキング時には前荷重になり、フロントが深く沈みながらリアが浮き上がりぎみになります。アクセルを開けた加速時には逆に後ろ荷重でリアが沈み、フロントが持ち上がります。コーナリング中はバンク角と速度に応じて前後両方がタイヤのグリップを維持しようとして動き続けます。


このような動きを踏まえると、前後のプリロード設定が「片方だけ極端に違う」状態は危険です。実際にサグ出し作業の実例として、フロントのプリロードが最強・リアがほぼ最弱という前後で全く異なる極端なセッティングになるケースがあります。これはフロントとリアのスプリングレートが異なるために発生するバランス調整の結果ですが、感覚だけで調整していると「なんか変な乗り心地だな」で終わってしまいます。数値計測があれば「なぜそうなったのか」が説明できます。


前後の連動確認のためにやってほしいことがあります。それが「バイクをまたいで前後のフォークを同時に手で押し込んでみる」という体感テストです。前後とも均等にゆっくり沈んでジワっと戻るなら前後のバランスは概ね取れています。前はすぐ動くのに後ろが硬い、またはその逆の場合、前後のプリロードバランスが大きくズレているサインです。


前後が条件です。


またフロントフォークの突き出し量(トップブリッジからインナーチューブが何mm露出しているか)も車高と前後バランスに影響します。標準値は多くのバイクで0〜5mmですが、ここを数mm変えるだけでハンドリングの軽快さが変わります。ストローク測定と合わせてここも確認しておくと、より精度の高いセッティングが可能です。



  • 📐 フロントの突き出し量を増やす(インナーチューブをより露出させる)→ フロントが下がり、ハンドリングが軽くなる傾向

  • 📐 フロントの突き出し量を減らす(インナーチューブを引っ込める)→ フロントが上がり、直進安定性が高まる傾向


前後のストローク測定を終えた後、この突き出し量も記録しておくと、セッティング変更の記録として管理しやすくなります。ノートやスマートフォンのメモに「日付・各測定値・突き出し量」をセットで残す習慣をつけると、数回の調整後に自分にとってのベストな値が蓄積されていきます。


ツーリングメインのライダーなら快適な乗り心地重視、サーキットやスポーツ走行がメインなら接地感とリカバリー性能重視で数値の目標範囲は変わります。ただし基本の計測手順は変わりません。まずは標準値(25〜30mm)で計測し、そこを基準に自分の好みや走行シーンに合わせてズラしていくのが正しいアプローチです。


参考リンク:フロントとリアの連動とプリロード全般の考え方(Webike整備情報)
https://news.webike.net/maintenance/360799/




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