

77PSカタログ値のCBR750スーパーエアロ、実は体感100PS超えで走ります。
1987年2月に発売されたCBR750スーパーエアロ(型式RC27)は、多くのバイク乗りから「CBR1000Fをそのまま750ccに縮めたモデル」と思われてきた経緯があります。たしかに車体フレームはツインチューブダイヤモンドフレームをベースに共用し、フルカバードのエアロボディは一見ほぼ同じに見えます。しかし実態はまったく違います。
ホンダは750専用のRC27Eエンジンをゼロから設計しました。CBR1000F用のSC21Eエンジンとは別物です。最もわかりやすい違いはカムシャフトの駆動方法で、1000Fがタイミングチェーン駆動であるのに対し、750はカムギアトレーン機構を採用しています。カムギアトレーンとは、ギアの歯車でカムシャフトを直接回す方式で、チェーン伸びによるバルブタイミングのズレが発生しない精密な構造です。
さらにエンジンの物理的なサイズも別物です。シリンダーの傾斜角を12°に設定した結果、エンジン全幅で20mm狭く、軸間距離(エンジン長)も13.5mmコンパクトに仕上がっています。車重も乾燥重量で23kgも軽い199kgに抑えられています。つまり750は1000の廉価版ではなく、750専用のスポーツマシンとして徹底的に作り込まれたモデルなのです。
エンジンの別設計は車体レイアウトにも好影響を与えました。シリンダーの傾斜角を活かすことでステアリングヘッドに対するエンジン搭載位置を1000Fより下げることができ、キャスター角を28°から26°へ、トレール量を117mmから104mmへと改善。前輪荷重は1000Fと同じ50.5%を確保しながら、より攻撃的なコーナリング特性を実現しています。大柄なフルフェアリングから想像する「重くて鈍い」イメージとは真逆の仕上がりです。
参考リンク(CBR750スーパーエアロの専用設計とコーナリング性能について)。
CBR750スーパーエアロは1000とエンジンから異なるナナハン独自の熟成でスポーツ性が光っていた!【ride-hi.com】
カタログスペックは最高出力77PS/9,500rpm、最大トルク7.0kgm/6,500rpmです。これは当時の日本国内二輪車の自主規制上限値です。そのままの数字を受け取れば「750ccにしては控えめ」と感じるかもしれません。ところが実際に乗ったライダーたちの一致した感想は「体感100PS以上」というものでした。
カラクリはレッドゾーンの設定にあります。CBR750スーパーエアロのタコメーターは、レッドゾーンが12,000rpmからはじまります。これは自主規制値の77PSをいちおう守ったとしても、高回転域での実力がそれをはるかに上回っていることを示唆しています。カムギアトレーン機構による精密なバルブ制御と大きなカムリフトによって、1000FにはないDOHCの高回転ポテンシャルがそのまま生かされているのです。
0→400m加速タイムは10.85秒、実測最高速は約250km/h超(動画記録では253km/h)を叩き出しています。当時の同クラスライバルであるヤマハFZR750、スズキGSX-R750、カワサキGPX750と並んで語られる実力機です。
加速の鋭さについては特筆すべき点があります。直線の最高速こそCBR1000Fに劣りますが、コーナーからの立ち上がり加速は750が1000を上回るとテスト記事で評価されています。体重が23kg軽く、コーナリング特性もシャープに設定されているため、実際の公道やワインディングでは750のほうがより速く感じられるシーンが多かったのです。これが「意外なほど速い」という評価につながりました。
また燃費については60km/h定地走行で38.1km/Lというスペックが公表されており、21Lのタンクを満タンにすれば理論上800kmの航続距離を確保できます。これは東京から広島まで一度の給油なしで走り切れる計算で、スポーツ性と長距離対応力を両立した設計が伺えます。
CBR750スーパーエアロという車名の「スーパーエアロ」は空力性能を全面に押し出した命名です。ボディ全体をフルカウルで覆ったデザインは、前年1986年に登場したCBR400R AEROで採用されたコンセプトを大型クラスで具現化したものでした。フルカバードデザインによる空力性能の追求は当時としては非常に先進的で、単に「レーサーレプリカ風」ではなく「空力設計を徹底的に追求した量産車」という哲学がありました。
注目すべきは、このバイクが通産省(現在の経済産業省)のグッドデザイン賞(通称Gマーク)を受賞していることです。バイクがグッドデザイン賞を受賞するのは珍しく、デザインの完成度が公的機関からも認められた証と言えます。
車体各部を見ると、ハンドルとトップブリッジにはバフ研磨仕上げを採用。ステップとピリオンステップホルダーはアルミ製、チェンジペダルとブレーキペダルはジュラルミン鍛造製と、素材選定にもコスト以上のこだわりが感じられます。これらは「機能美」を貫くホンダのものづくり哲学が随所に反映されたものです。
車体に貼られた「HURRICANE(ハリケーン)」のロゴも印象的です。これは大西洋で発生する大型台風を意味し、CBR250Rシリーズとも共通するCBRシリーズのニックネームでした。フルカバードの巨体が発する風圧とスピードをそのまま表現したネーミングで、乗り手の気持ちを高揚させるブランディングとしても機能していました。
参考リンク(グッドデザイン賞受賞とデザインコンセプトの詳細)。
【グッドデザイン賞受賞バイク】CBR唯一のナナハン!迫力のCBR750スーパーエアロ【レネゲード】
製造・販売が1987〜1988年の2年間のみという非常に短命なモデルだったCBR750スーパーエアロは、2026年現在で製造から37〜38年が経過した旧車です。この事実は購入・維持を考えるすべての人にとって最初に向き合うべき課題です。
最大の問題は外装パーツの入手困難さです。ウェビックなどのパーツ通販サイトに登録されている中古パーツは2026年2月時点で361点あるものの、フェアリングやカウル類などの外装は特に希少で、状態のよいものはオークションでも高騰しています。ウェビックで確認できる中古タンクの価格は27,300円〜という水準で、市場に出回る数自体が極めて少ない状況です。
消耗部品であるタイヤについては選択肢が残されています。ブリヂストンやIRCの適合タイヤカタログにはCBR750スーパーエアロ用として前110/80-17・後140/70-18サイズが現在も記載されており、現役で対応可能です。ただし18インチの後輪という組み合わせは現代のスポーツバイクでは少数派のサイズで、選べる銘柄は限られます。
エンジン系のメンテナンスについては、カムギアトレーン機構は耐久性が高く正しく整備すれば長期間使用できますが、キャブレターのオーバーホールは定期的に必要です。VG60A型キャブレターを4基搭載しているため、全基の同調と清掃には相応の時間と費用がかかることを覚悟しておく必要があります。サービスマニュアルとパーツブックは必ず入手しておくことが基本です。
中古車相場については、グーバイクで確認できる平均価格は36.6万円前後(2026年2月時点)で、市場に出回る台数は非常に少ない状況です。車体の年式と状態を慎重に確認することが条件です。購入前に専門のメカニックによる点検を受けることを強くおすすめします。
CBR750スーパーエアロが登場した1987年は、日本の大型二輪市場でV4エンジン搭載車が全盛だった時代です。ホンダ社内でも同じV4のVFR750F(RC24)が高評価を受けており、直列4気筒(直4)は「V4より地味」「パフォーマンスで劣る」という見方がされつつある時代でした。
そのような状況でCBR750スーパーエアロは「直4で本気のスポーツを実現する」という社内プロジェクトの結晶として生まれました。カムギアトレーン、専用フレームレイアウト、コーナリング優先のアライメント設定はすべてその哲学のもとに選択されたものです。V4のVFR750Fとは「同じ社内のライバル」として共存する形で市場に投入されたのは、当時のホンダの開発文化の多様性を象徴しています。
当時の同クラス競合車と比較すると以下の通りです。
| 車種 | エンジン | 車重(乾燥) | 発売年 |
|---|---|---|---|
| ホンダ CBR750スーパーエアロ | 水冷直4 748cc | 199kg | 1987年 |
| ヤマハ FZR750 | 水冷直4 749cc | 198kg | 1985年 |
| スズキ GSX-R750 | 油冷直4 749cc | 176kg | 1985年 |
| カワサキ GPX750 | 水冷直4 748cc | 210kg | 1987年 |
GSX-R750が油冷エンジンと176kgという軽量ボディで際立つ中、CBR750スーパーエアロはフルカバードボディの質感とグッドデザイン賞という付加価値で差別化していました。スズキのGSX-R750が軽さと戦闘性能に振り切ったのに対し、CBRはスポーツツアラーとしての快適性も両立しようとした設計が特徴です。21Lの大型タンクと800kmを超える航続距離はその証明です。
なお1987年モデルの希望小売価格は789,000円(北海道・沖縄除く)でした。1988年のマイナーチェンジモデルは799,000円に値上がりしましたが、年間販売目標は8,000台から1,500台へと大幅に縮小されています。この販売目標の急減が、当時の750ccクラス市場の厳しさと短命に終わった理由を物語っています。
参考リンク(ホンダ公式プレスリリース1987年)。
水冷4サイクルDOHC4気筒エンジン搭載の「ホンダ・CBR750スーパーエアロ」発売について【本田技研工業 公式】

オートバイのブレーキパッド に適合する ホンダ VFR750F CBR750 FRC27 に適合する スーパーエアロ CBR1000F ST 1100 に適合する パンヨーロピアン GL 1500 に適合する ヴァルキリー F6C バイク用フロント&リアブレーキパッド