

バットマンカラーのCL450を見て「かっこいい」で終わらせると、5万円以上の損につながることがある。
CL450の「バットマン」という愛称は、タンクのカラーリングに由来しています。特に1972〜1973年式のK5モデルに採用された黒とシルバーのツートンカラーが、コミックのヒーロー「バットマン」のコスチュームを連想させることから、ライダーたちの間でそう呼ばれるようになりました。
公式の車名でもメーカーが付けたニックネームでもない。これは完全にユーザーサイドから生まれた愛称です。
CL450には製造年式によってK0(1968年)からK5(1972〜73年)まで複数のモデルバリエーションが存在します。初期の1970年式(国内販売開始)はキャンディ系のカラーが多く、後期型であるK5がバットマンカラーとして特に人気を集めています。5ちゃんねるのバイク板でも「バットマンカラーのK5が好きで5年以上探しているが見つからない」という書き込みがあるほど、程度の良い個体は玉数が少なく入手困難な状況が続いています。
国内では1970年9月25日に発売が開始され、当時の新車販売価格は27万8,000円でした。CB750 Fourが38万5,000円だった時代ですから、けっして安い買い物ではありませんでした。
バットマンカラーのタンクには特徴的なブリッジ付きのワイドハンドルが組み合わさり、全体的なスタイルに統一感を生み出しています。「足し算ではなく引き算のカスタム」と現代のオーナーが表現するように、このシンプルで引き締まったデザインが今なお多くのスクランブラー愛好家を魅了し続けています。
参考:Webikeニュース「英車の香りがする国産スクランブラー!ホンダCL450バットマン」オーナーインタビューで、バットマンカラーや引き算カスタムの詳細が確認できます。
Webike NEWS|ホンダCL450バットマン オーナーインタビュー
CL450を語る上で外せないのが、ベース車であるドリームCB450の存在です。CB450は1965年(アメリカ市場では1965年〜)に登場した、当時のホンダが世界に向けて放った技術的な回答でした。
量産市販バイクとして世界初のDOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)2気筒エンジンを搭載した点が最大の特徴です。それが普通じゃない。
当時ホンダは1959年のマン島TTレースへの参戦をきっかけにロードレース世界GPで実績を積み上げており、その技術が市販車にフィードバックされたのがCB450でした。排気量を「あえて450cc」に設定したことにも意味があります。650ccが主流だった当時の英国車(BSAやトライアンフ)に対して、「技術力で補えばより小さい排気量でも渡り合える」というホンダのチャレンジスピリッツの表れでした。
このDOHCエンジンはCV(コンスタント・ベキュウム)キャブレターを組み合わせ、最高出力43PS/8,000rpm・最大トルク3.88kgf・m/7,500rpmという数値を実現しています。CL450はスクランブラーとして低中速トルクを重視したチューニングが施されており、CB450より最高出力を若干抑えた特性になっています。つまり街乗りや林道ライクな走りに適したセッティングということです。
車重は178kgと、現代のミドルバイクと比べても大きな差はなく、アップライトなスクランブラー姿勢と相まって扱いやすさも確保されています。タンク容量は13リットルで、燃費は当時のカタログ値で35km/Lとされていました。
参考:Honda公式グローバルサイトに1970年当時のニュースリリースが残っており、CL450発売時のスペックや価格が確認できます。
Honda Global|ドリームCL450 1970年発売ニュースリリース
CL450をリアルに知っているライダーたちが必ず言及するのが「弁当箱マフラー」です。これは車体左側にまとめられた2本のアップマフラーが、箱型のサイレンサーを持つことから付いた通称で、現代のスポーツバイクとはまったく異なる、低く籠もったような独特のバチバチサウンドを奏でます。
このサウンドが貴重です。
アップマフラーはCLシリーズの最大の特徴のひとつで、左側2本出しという配置はCL72の時代から受け継がれたCLシリーズの流儀です。機能的にも理由があります。悪路走行時に地面に接触しないよう高く跳ね上げられたマフラーと、クランクケースを守るアンダーガードの組み合わせが、オンもオフも走れるスクランブラーとしての実用性を支えていました。
2023年に登場した現行のCL250/CL500もアップマフラーを採用しており、60年を超えて受け継がれたCLシリーズのDNAを感じ取ることができます。ただし現行モデルは水冷エンジンに現代の排出ガス規制に対応した設計のため、旧CL450の「空冷4サイクルDOHCが奏でる音」は二度と同じ方法では再現できないものです。意外ですね。
オーナーたちがCL450に格別な愛着を持つのはそこにあります。エンジンをかけた瞬間に出会うあの「生きている」感覚は、現代のインジェクション制御バイクとは明らかに違うものです。数十年前に設計されたDOHCとキャブレターの組み合わせが生み出す、個体差や気温・湿度による挙動の変化も含めて「乗る楽しみ」とするライダーが旧車を選ぶ大きな理由のひとつと言えます。
参考:ヤングマシン「異端の原点と黎明期のスクランブラー」記事では、CLシリーズ全体の設計思想とCL450の位置づけが詳しく解説されています。
現代のCL450オーナーに多く見られるカスタムのアプローチは、「足し算」ではなく「引き算」です。これはパーツを増やして装飾を加えるのではなく、不要なものを取り除いてシンプルに仕上げる考え方で、スクランブラーという車種が本来持っているタフでストイックなスタイルを引き立てる効果があります。
Webikeのオーナーインタビューで紹介された横浜在住の放送作家・おのぐちさんのCL450(1972年式)が好例です。もともとBSA victor 441という英国車に乗っていた彼は、トラブルに懲りて日本車へ乗り換えた経緯を持ちます。購入したCL450に対して行ったカスタムは以下の通りです。
これが基本です。
このCL450にはさらに注目すべき点があります。外装はオリジナルCL450のままですが、フレームベースにCB500Tを使用し、エンジンもCB500Tのユニットに載せ替えているのです。つまり外見はバットマンカラーの純正CL450に見えるのに、心臓部は500ccという構成になっています。
「でかいエンジンへの憧れ、それだけの気持ちで作った」というオーナーの言葉が、旧車カスタムの本質を突いています。現代のバイクのように数値で語るのではなく、「自分が惚れた形」を軸に機能を重ねていくスタイルは、旧車スクランブラーカルチャーならではの美学と言えるでしょう。
こういったカスタムに踏み込む場合、信頼できる旧車専門店との繋がりが不可欠です。鳥取県の「田口自動車」はCB450/CL450を専門とするショップとして知られており、遠方からでも電話でレクチャーを受けられたという実例があるほどアフターサポートが手厚いと評判です。旧車の維持においては、「どの店を頼るか」が整備費の差として大きく出ます。
CL450バットマンに憧れて実際に購入を検討する場合、中古市場の現状を把握しておくことが重要です。業者間オークションデータ(2026年2月時点)によると、ドリームCL450スクランブラーの買取査定相場は平均40.8〜46.7万円、上限では59.8万円に達します。
玉数が少ない、ということが前提です。
バットマンカラーのK5は特に人気が高く、程度の良い個体を5年以上探し続けているライダーがいるほど流通量は限られています。市場に出てくる台数は年間でも片手で数えられる程度であることは、データからも裏付けられています(直近10年間の業者間取引台数がわずか4台)。
気をつけたいのは購入後の費用です。旧車の場合、車両本体価格の他に以下のようなコストを想定しておく必要があります。
これは覚えておけばOKです。
事故車・不動車の場合でも買取相場は18.6〜30.4万円とそれなりの値がつくため、仮に手放す局面でもゼロにはなりません。ただし、部品取り用として購入した車両が状態不明のまま高額になるケースもあるため、購入前に実動確認できる状態で判断することが基本です。
維持に関しては「特別な苦労はない」と語るオーナーも多いですが、それは旧車専門ショップとの関係が構築されていることが前提です。近くに信頼できる整備士がいない状態でCL450を維持しようとすると、思わぬところで時間と費用が膨らむリスクがあります。購入前に整備を頼める店を確保してから動くことが、旧車オーナーにとっての鉄則と言えます。
参考:バイクパッションのCL450買取査定相場ページでは業者間オークションデータをもとにした詳細な相場が確認できます。
バイクパッション|ドリームCL450スクランブラー買取査定相場