

見た目で選んで維持費で後悔するライダーが、GB400TTオーナーの中に少なくありません。
GB400TTという車名は、一見するとただのモデル名に思えますが、実はホンダの歴史そのものが凝縮されています。まず「GB」はGreat Britain(グレートブリテン)の頭文字で、英国王国の正式名称「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」から取られたものです。一方「TT」は、イギリスのマン島で開催されるツーリストトロフィー(Tourist Trophy)レースの略称です。
ホンダはモーターサイクルメーカーとして世界に名乗りを上げたきっかけが、まさにこのマン島TTレースでした。1961年には125ccクラスと250ccクラスで上位を独占し、「世界のホンダ」としての地位を確立したのです。そのゆかりの地・英国への敬意とリスペクトを込めて、このバイクには「GB」と「TT」の両方が冠されました。
GBシリーズの命名には、もう一つ大事な背景があります。つまり「時代に逆行するイメージ」です。
1983年にGB250クラブマンが登場した当初、車名に「CB」を与える案もあったと言われています。しかしCBは「常に時代をリードする先進的な車両」の称号。1960年代の英国ブリティッシュスポーツを彷彿とさせるクラシカルなスタイルには、CB(CB750Fなど)の名は「国内的に相応しくない」という判断が下り、GBという名称が採用されました。
このエピソードからわかるのは、ホンダがGB400TTを単なるバイクとしてではなく、「英国クラシックスポーツへのオマージュ」として市場に送り出したという姿勢です。レプリカブームが席巻していた1985年当時、あえて「時代に逆行する」スタイルで勝負したホンダの信念が、このネーミングに集約されています。
なお、GB400TTの正式車名は「GB400ツーリストトロフィー」、MkⅡは「GB400ツーリストトロフィー マークII」です。サイドカバーには「TT」の文字がチェッカーフラッグを模したデザインで刻まれており、デザイン上でもそのこだわりが表現されています。
参考:GB400TTの名称由来とGBシリーズの歴史
GB400TTのエンジンは、外見のクラシカルさとは裏腹に、非常に実戦的なベースを持っています。搭載されているのは空冷4ストロークSOHC単気筒4バルブ399ccエンジンで、そのベースとなったのはホンダのオフロードレーサー「XR500R」のエンジンです。これが意外と知られていない事実です。
XR500Rは当時の量産4ストオフロードモデルの中でも最高峰に位置するマシン。そのエンジンをロードスポーツ向けに大幅に改良し、GB400TTに搭載したのです。具体的には、デュアルキャブレターからシングルキャブレター(VE10)への変更と、セルフスターターの追加によって日常使いのしやすさも確保されています。
最大の特徴が「RFVC(Radial Four-Valve Combustion chamber)」という燃焼室構造です。これはバルブを燃焼室の頂部から放射状に配置した独自設計で、混合気の充填効率が高く、優れた燃焼効率を実現します。通常の4バルブとは異なる、ホンダ独自のアプローチです。
さらに、潤滑方式には「ドライサンプ式」を採用しています。これは、オイルをエンジン外部のオイルタンクに貯めておき、ポンプで圧送する方式です。エンジン本体をコンパクトに設計できるうえ、走行中のオイル撹拌が少なく、効率よく冷却・潤滑できるメリットがあります。
エンジンスペックは以下の通りです。
| モデル | 最高出力 | 最大トルク | 始動方式 |
|---|---|---|---|
| GB400TT | 34ps / 7,500rpm | 3.4kgf-m / 6,000rpm | セル+キック |
| SR400(同世代) | 27ps / 7,000rpm | 3.0kgf-m / 6,500rpm | キックのみ |
| SRX400(1985年) | 33ps / 7,000rpm | 3.4kgf-m / 6,000rpm | キックのみ |
同クラスのライバルであるSR400と比べると、GB400TTは最高出力で7psも上回っています。実走性能でも、SR400より高回転域の伸びが明確に感じられると評されており、「飛ばせるシングル」という点ではクラス最高水準でした。
スロットルを開けたときの反応がXR500R仕込みのシャープさを持ちながら、中低速域でのトルクフルな扱いやすさも兼ね備えているのがGB400TTの強みです。これは基本だけ覚えておけばOKです。
また、燃費性能も特筆すべき点があります。カタログ値は60km/h定地走行で45km/Lと高水準で、実用でも30~35km/Lを記録するオーナーが多く見られます。17Lという大容量タンクと組み合わさることで、ワンタンクで500km以上の航続距離を実現できます。これは使えそうです。
GB400TTには、標準モデルのほかに「MkⅡ(マークII)」と呼ばれる特別仕様車が存在します。1985年8月の発売時に4,000台限定で製造されたモデルで、その希少性は年を追うごとに高まっています。
MkⅡの最大の特徴は、大型のロケット型ハーフカウルとシングルシートの標準装備です。通常モデルがタンデム可能な二人乗り仕様なのに対し、MkⅡはシングルシートによる一人乗り専用で、よりカフェレーサーとしての佇まいを前面に出したモデルです。コックピットはカウルが2連メーターを抱え込む独特のデザインで、見る者の心をとらえる造形になっています。
現在の中古市場を見ると、その希少性がはっきりと数字に表れています。グーバイク(2026年2月時点)でのMkⅡの流通台数はわずか1台、平均価格は64.8万円です。一方、標準モデルのGB400TTは29台(業者間取引、直近24ヵ月)で、買取相場は14.6〜23.9万円、上限は41万円という状況です。
MkⅡは希少車です。
注目すべきは、MkⅡのカウルがオークション市場でも単体で高額取引されている点です。純正カウルのみで数万円に達するケースもあり、部品単体の価格だけでも維持コストの一端が見えてきます。また「スペシャルエディション(1987年発売の特別仕様車)」は、ツートンカラーリングやクロームメッキの前後フェンダー、立体エンブレムなどを装備しており、MkⅡと並んでプレミア価値を持つ存在です。
中古車を探す際に確認しておきたいポイントは以下の3点です。
なお、車両本体の中古相場(ウェビックバイク選び)では、2025年後半から2026年初頭にかけてGB400の流通価格が60万円台後半〜70万円台まで上昇傾向にあります。価格が動いているということですね。早めに探し始めることをおすすめします。
参考:GB400TT/MkⅡの現在の買取・中古相場情報
グーバイク|GB400TT買取・査定相場(2026年2月更新)
GB400TTをこれから購入しようとしているライダーが見落としがちなのが、「維持費」と「部品の入手性」の問題です。外観の美しさや歴史的な価値に目が向きがちですが、旧車である以上、維持には覚悟と知識が必要です。
まず純正部品については、製造終了から約40年が経過しているため、廃番(生産終了)になっている部品が多数あります。特に深刻なのがエンジン内部の部品です。知恵袋やバイク専門サイトの情報では、「ピストン・シリンダー周りの維持が困難」という声が複数確認されています。ホンダの純正部品として供給が止まっているものも多く、入手できたとしても中古品や流用品での対応になるケースがほとんどです。
社外品についても同様で、ペイトンプレイスのバックステップやPLOTのフルエキなど、かつて人気だったGB400TT専用の社外パーツの多くがすでに絶版となっています。部品によっては数年単位で探す必要があります。これは痛いですね。
では、現実的にかかるコストはどのくらいでしょうか?
ただし、定期的なメンテナンスさえ継続できれば、エンジン自体の基本設計はXR500R譲りの頑丈な構造です。オイル交換を適切に行い、チェーンやブレーキ等の消耗品を早めに交換することで、長く乗り続けているオーナーも多くいます。
旧車専門のメカニックや、GB/XR系に知識の深いショップとのつながりを作っておくことが、長期維持の最大のコツです。事前にショップをリサーチして1店は顔見知りを作っておく、これが原則です。
また、消耗品については現在もウェビックやモノタロウなどで対応部品が流通しているものも多いため、まず消耗品リストを整理して在庫状況を確認しておくと安心です。
GB400TTは1985年に登場し、1988年に販売を終了しました。生産期間はわずか3年です。この「短命」という事実を見て「失敗作だった」と判断するライダーは少なくありませんが、実際は逆の見方ができます。
1985年当時の国内バイク市場は、ホンダVF400F・ヤマハFZ400R・スズキGSX-R400といったレーサーレプリカが席巻していた時代です。4気筒・高回転・高出力が「正義」とされ、単気筒のビッグシングルは「時代遅れ」と見られていました。GB400TTはその真っ只中に登場したわけで、売れなかったのは「バイクの魅力が足りなかったから」ではなく、「時代と市場の好みがズレていたから」にすぎません。
皮肉なことに、レプリカブームが終わった1990年代以降、ビッグシングルへの需要は逆に高まりました。SR400が長寿を誇り、ホンダ自身もGB350として2021年にGBシリーズを復活させたことは、その証左です。
つまりGB400TTです。
GB400TTが今なお熱狂的なファンを持つ理由は、まさにこの点にあります。レプリカ全盛時代においても「乗り味」「鼓動感」「エンジンとの対話」を追求し続けたモデルであったからこそ、時代が追いついた結果として再評価されたのです。
当時のカタログには「味覚の領域で勝負したい」「知り尽くした人にこそ美味しい、モーターサイクルグルメたちのGB」という言葉が記されていました。当時は刺さらなかったこのフレーズが、今の時代には的確に読み手の心をとらえます。
さらに見逃せないのが、GB400TTが「欧州市場向けXBR500の兄弟車」という事実です。XBR500はアルミコムスターホイールを採用したベーシックスポーツとして欧州市場で展開されており、厳しい欧州の高速道路でのクルージングにも耐えうる強靭なフレームとエンジンを持つ設計でした。つまりGB400TTは、外観こそ「1960年代風クラシック」ながら、本質は「欧州基準を満たす高性能ロードスポーツ」として設計されていたのです。
この視点で見ると、GB400TTはレプリカブームの「反対側」にいたバイクではなく、方向性が異なっていただけの高性能車だったという評価が正確でしょう。骨太なフレームと高出力単気筒エンジンを持つGB400TTが、今の価値観で見ると実はスポーツバイクとして非常に本質的なものを持っていたということです。これは意外ですね。
参考:GB400/500TTの開発背景と欧州市場との関係について詳しく解説しているバイクブロス記事
バイクブロス|ホンダ GB400/500TT(1985)の詳細解説

調整可能なダンピング バイク用リアサスペンションスプリングショック に適合するホンダ GB 400 TT CM200T GB400TT 1985-1992 320mm 200kg エアショックアブソーバー ダンピング オートバイ用 サスペンション