

NC21型VFR400は、1986年にホンダが世界耐久選手権とTT-F3クラスで培ったHRCテクノロジーを惜しみなく投入した400ccレーサーレプリカです。発売から約40年が経過した現在でも、そのV4カムギアトレーンエンジンは熱烈なファンに語り継がれています。この記事では、NC21の基本スペックから教習車としての知られざる側面、さらに現在の中古市場での価格動向まで、一気にまとめています。
NC21について調べているあなたが「えっ、知らなかった」と感じる情報が、この記事には詰まっています。
NC21型VFR400R/Zのエンジンは、型式NC13E・水冷4サイクルDOHC90度V型4気筒399ccです。最高出力59ps/12,500rpm、最大トルクは初期型で3.7kg-m/11,000rpm(後期モデルで4.0kg-m/10,000rpm)。変速機は常時噛合式6段リターンを採用しています。
このエンジンで最も注目すべきが「カムギアトレーン方式」です。従来のチェーン駆動でカムシャフトを回していた時代に、ホンダはあえて「歯車(ギア)の組み合わせ」でカムシャフトを駆動する方式を採用しました。チェーンに比べて伸びや弛みがなく、高回転時の動力伝達効率が格段に高い。12,500rpmまで正確かつ滑らかに回るエンジン特性は、この機構なしには成立しませんでした。
フレームは2本の極太メインパイプで構成されるツインチューブ・ダイヤモンド式アルミフレームです。エンジン本体をフレームの剛性部材として使う設計でもあり、車体の軽量化と高剛性を同時に実現しています。車両重量はカウルレスのVFR400Zで178kg、フルカウルのVFR400Rで182kgと、当時の400ccクラスの中でも比較的軽量な部類でした。
フロントブレーキには油圧式ダブルディスクを採用し、ブレーキパッドには軽量で断熱性・耐摩耗性に優れたセラミック素材を使用。これも当時最先端の技術でした。タイヤサイズは前100/90-16、後130/70-18で、今でいうスポーツバイアスタイヤを装着していました。
まとめると、NC21はRVF400というワークスレーサーの技術を市販車に落とし込んだバイクです。
| 項目 | VFR400R (NC21) | VFR400Z (NC21) |
|---|---|---|
| 全長×全幅×全高 | 2,010×705×1,125mm | 2,010×695×1,010mm |
| 車両重量 | 182kg | 178kg |
| 最高出力 | 59ps/12,500rpm | 59ps/12,500rpm |
| 最大トルク | 3.7kg-m/11,000rpm | 4.0kg-m/10,000rpm |
| 燃料タンク容量 | 16L | 16L |
| シート高 | 765mm | 765mm |
| 当時の新車価格 | 659,000円 | 629,000円 |
参考:NC21の詳細スペックや系譜について詳しく解説しているページです。
VFR400R(NC21)-since 1986- バイクの系譜
NC21と聞けば多くのライダーが「1500台限定のレーサーレプリカ」と思い浮かべるかもしれません。しかし実際には、NC21の兄弟車であるVFR400Zが教習車仕様「VFR400K」として全国の自動車学校に広く採用されていました。これが意外です。
VFR400Zはフルカウル版のVFR400Rからカウルを省いたネイキッドモデルで、デュアルヘッドライトが個性的なスタイルが特徴でした。このVFR400Zをベースに教習車仕様のVFR400Kが作られ、デチューンされてはいるものの本質的にはV4カムギアトレーンエンジンのまま採用されたのです。
80年代後半から90年代前半にかけて、「中型免許を取るならVFR400K(またはCBR400K)の教習所へ」というのが多くの地域での常識でした。CB400スーパーフォアが普及するまでの時代、全国のライダーが最初にまたがったバイクがV4エンジンだったわけです。厳しいですね。
この事実は、NC21の生産台数がいかに多かったかを示しています。教習車として大量に納入された分、現在の中古車市場では一般市販車体よりも状態が悪い個体も多く流通しています。購入時には、教習車上がりかどうか確認することが欠かせません。
加えて、NC21には白バイ仕様の「VFR400P」も存在しました。一般市販・教習車・白バイという3つのルートで社会に普及したバイクだということです。NC21が特別な1台だったのは間違いありません。
参考:NC21の教習車仕様(VFR400K)や白バイ仕様(VFR400P)の存在を含め、VFRシリーズ全般の詳細な機種一覧が確認できるページです。
VFRファミリー・再検証 – CBR-MANIA FC2ブログ
NC21を維持するうえで避けて通れないのが、エンジン整備のコストです。カムギアトレーン機構はチェーン駆動よりも高精度・高耐久ですが、40年近く経過した現在では消耗と部品入手難という問題が現実になっています。
年間維持費のシミュレーション(年間10,000km走行・ガソリン155円/L想定)を見ると、軽自動車税6,000円・重量税2,500円・自賠責保険6,820円・燃料代43,790円・タイヤ交換24,000円・オイル交換6,000円・任意保険40,000円で合計約129,100円という計算になります。これは"基本的な維持費"にすぎません。
問題はここに加算される修理費です。V4エンジンのキャブレターは4連キャブで、同調調整だけでも工賃が高め。エンジンのオーバーホールが必要になった場合、V型4気筒という構造上、作業工数が直4エンジンより多くなり、専門のショップへ依頼すると数十万円規模になることも珍しくありません。
部品入手の面では、純正パーツは廃番になっているものが多く、ヤフオクやガレージセールなど個人間取引で探すしかないケースも増えています。NC21固有のパーツは特に入手が困難です。これが条件です。
一方、NC30やNC35(後継モデル)との部品の互換性が一部あるため、そちらから流用できる部品もあります。購入前に「NC21専用パーツか否か」を確認しておくと、維持費の見通しが立てやすくなります。
旧車V4の整備は奥が深いものです。信頼できるショップを早めに確保しておくことが、長く乗り続けるための最大の近道と言えます。
2026年2月現在、VFR400R(全型式)の中古車平均価格はグーバイクの掲載情報で約100万円超という状況です。当時の新車価格が64.9万円(VFR400R)・62.9万円(VFR400Z)だったことを考えると、40年経過した旧車が新車時を大幅に上回る価格で取引されているという驚きの現象が起きています。
ただし、型式別の買取相場で見るとNC21は約23.6万円(グーバイク調べ)と、後継のNC30(約89.9万円)やNC24(約37.9万円)に比べると低め。これはNC21が教習車として大量に普及したことで状態の悪い個体が多く、玉数自体は他の型式よりも流通しているからと考えられます。プレミアとしての希少性では、NC30やNC35(RVF400)のほうが上です。
一方、販売価格(購入側から見た相場)は別の話です。走行距離が少なく程度の良い個体、あるいはフルレストア済みの個体になると、販売価格は100万円近くまで跳ね上がることがあります。中古車を見る際は「買取相場」と「販売価格」を混同しないことが大切です。
また旧車全般の価格高騰の背景には、コロナ禍以降のバイク需要増加・円安による海外流出・リターンライダーによる需要増・コレクション目的での保有増加という複合的な要因があります。つまりNC21の相場は今後も安定しない可能性があります。
購入を検討する場合は、整備済みかどうかの確認と合わせて、購入後のレストア・維持費も含めたトータルコストで判断することが重要です。
参考:VFR400Rシリーズの買取相場・査定価格の最新情報を確認できます。
VFR400R【1986〜92年】最新買取相場 – バイクパッション
NC21が持つもう一つの大きな魅力が、1986年7月に発売された「スペシャルエディション」の存在です。これは全日本選手権ロードレース・TT-F3クラスチャンピオン、山本陽一選手(HRC所属)が駆るワークスマシン「RVF400」と同一カラーリングを採用した限定モデルです。
カラーは「シャスタホワイト×ウィスタリアブルー×ローザンヌブルー×ファイティングレッド」という4色のハンドペイントに近い多彩な塗装で仕上げられていました。生産台数はわずか1,500台。当時の発売価格は669,000円と通常モデル(659,000円)より1万円高く設定されていました。
1,500台というのはどのくらいの希少さかというと、例えば現在の人気モデルが年間数万台規模で販売されることを考えれば、非常に少ない生産数です。日本全国に1,500台しか存在しないバイクということです。これは使えそうです。
このスペシャルエディションは、現在の旧車市場において特にコレクターから高い評価を受けています。同じNC21型でも、スペシャルエディションと通常モデルでは流通価格に大きな差が生まれることがあります。
NC21を購入する際には、車体のフレーム番号や書類と合わせて「スペシャルエディションかどうか」を確認するポイントが一つ追加されます。知っておくと、購入交渉の場でも正確な価値判断ができます。知っていると得する情報です。
参考:NC21スペシャルエディションの発表当時のホンダ公式プレスリリースです。
Honda公式:スーパースポーツバイク「VFR400R」特別仕様車の限定発売(1986年)

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