

深くバンクさせるほど曲がると思っているあなたは危険です。
スリップアングルとは、タイヤの向いている方向と実際の進行方向のズレの角度を指します。
参考)スリップアングルについて考察する|奥本雅史/二輪ライディング…
バイクがコーナーを曲がる時、タイヤは向いている方向とは少しずれた方向に進みます。このズレによってタイヤのゴムがねじれ、元に戻ろうとする力が発生します。つまり、タイヤが曲がりたい方向へ引っ張られるのです。
この現象が旋回力の源となります。
四輪車では停止状態でハンドルを切れば簡単にスリップアングルがつきますが、走行中に大きくハンドルを切ると危険です。バイクでも同じ原理が働いており、適切な荷重配分と適度なタイヤの向きのズレという絶妙なバランスが求められます。
走行中の定常円旋回では、常に向きを変え続けている状態と考えられ、タイヤは内側に曲げようとして内側に向いている角度がスリップアングルなのです。
スリップアングルの詳しい考察と二輪ライディングへの応用(奥本雅史氏による解説)
スリップアングルが大きくなるほどコーナリングフォース(旋回力)は増大しますが、約10度で最大値に達します。
ヨコハマタイヤの公式資料によれば、スリップアングルの発生と増加に応じてコーナリングフォースは増えますが、最大は約10度とされています。つまり、10度を超えるとコーナリングフォースは頭打ちとなり、逆に減少する傾向があるのです。
これ以上の角度は危険です。
タイヤグリップの限界に達すると、タイヤのグリップ力が限界に達し、横方向の力を支えきれなくなります。接地面の一部で滑りが発生し、コーナリングフォースが不均一になるため、タイヤ全体が発揮する旋回力が限界を迎えるのです。
アスファルト路面では約10度で最大摩擦力が発生するとされており、この角度を超えると向きが変わらずに直進してしまうリスクが高まります。スリップアングルが急激に増加すると、前輪の横力が大きくなるだけでなく、その向きも急激に変化して旋回半径が小さくなろうとし、前輪のグリップが簡単に限界を超える域に到達します。
バイクの旋回力は、キャンバースラストとコーナリングフォースの2つの要素で構成されます。
キャンバースラストはバイクのバンク角によって決まるため、バンク角で不足する分をコーナリングフォース、つまりスリップアングルで補う必要があります。高速走行や深いバンク角になるほど、キャンバースラストだけでは不十分になり、コーナリングフォースの役割が重要になるのです。
両者のバランスが鍵となります。
コーナリングフォースはグリップ力とタイヤのねじれに対する抵抗力で決まってくるため、各メーカーはスリップアングルについて独特の方法で味付けをしています。タイヤの向きと実際の進行方向のズレによって抵抗力が発生し、この抵抗力がコーナリングフォースとして機能するわけです。
キャンバーアングルはバイクのバンク角で決まるため、キャンバースラストで不足する分、コーナリングフォースが発生できるようにスリップアングルがついているという関係性があります。適切なスリップアングル特性を持つタイヤを選ぶことで、より安全で快適なコーナリングが可能になります。
セルフアライニングトルクとは、スリップアングルを減らす方向に働くモーメントのことです。
タイヤが路面に接している間、タイヤが変形して生まれるズレ(スリップアングル)は接地面のゴムがねじれることで生じます。ゴムは元の形状に戻ろうとする性質を持っており、この復元力がセルフアライニングトルクを生み出すのです。
復元力が安定性をもたらします。
サイドフォースの作用点とタイヤ接地面の摩擦力の発生位置にズレがあり、これがスリップアングルと反対方向のモーメントを生じさせます。結果としてスリップアングルをやや減らす効果があり、ライダーにとってはハンドルを通じてタイヤの状態をフィードバックしてくれる重要な情報源となります。
スリップアングルが増すとねじれ量が増え、セルフアライニングトルクも増加しますが、スリップアングルが過大になり接地面が滑り始めると、タイヤのねじれによる復元力が減少し、セルフアライニングトルクが低下します。極端なバンク角により接地点がタイヤの端に達した場合もセルフアライニングトルクが減少するため、ライダーはハンドルを通じてグリップの限界を感じ取ることができるのです。
二輪車用のタイヤは、どんなバンク角でも接地面積が大きく変化しないように設計されています。
ブリヂストンのデータによれば、接地幅はバンク角に依存せずおおよそ約30mmとされています。タイヤ品種や車重、空気圧でもかなり変わりますが、この数値が目安になります。幅180mmのタイヤで計算すると、タイヤのラウンド部分の半径は約101mmとなり、接地幅30mmは角度で約17度に相当します。
参考)https://ameblo.jp/bluechecker/entry-12665032108.html
つまり限界が見えてきます。
タイヤの端(63度)まで使っているときは46度~63度の領域を接地させていることになり、バンク角としては中心の54.5度程度です。これ以上バンクさせると接地面積が減って危険な状態に入ります。
DUNLOP SPORTMAX Q4は脅威の62度までバンクできるとされていますが、通常のタイヤでは54度付近が実用的な限界と考えられます。バンク角が特に深いときにアクセルを開けてしまえばリアが滑ってコントロールが効かなくなる恐れもあり、最悪の場合ハイサイドで転倒する可能性も見えてきます。まずは浅いバンク角でアクセル一定で曲がる練習をして、慣れてきたら少しずつバンク角を深めていくことが安全な上達法です。
フロントタイヤとリヤタイヤでは、バンク角に対する接地の仕方が異なります。
リヤタイヤは路面に対し荷重を受けて凹んでいるため、トレッドの端まで路面に接しているのがわかりますが、フロントはトレッドのサイド部分まで路面に触れずにいます。この違いは、フロントタイヤとリヤタイヤの役割の違いから生まれています。
機敏さが求められるからです。
フロントタイヤのプロファイル(断面形状)は、トレッドの両サイドが路面に接する前提よりも、センター部分から機敏に車体の傾きにレスポンスしやすい尖った形状にしているのです。これにより、ライダーがハンドルを切った時やバンクを始めた時に、素早く反応して旋回を開始できます。
リヤタイヤは駆動力を路面に伝える役割があるため、より広い接地面積を確保する必要があります。そのため、フロントよりも丸みを帯びたプロファイルになっており、深いバンク角でも安定した接地を維持できる設計になっています。
タイヤを選ぶ際は、フロントとリヤで異なる特性を持つことを理解し、メーカー推奨の組み合わせを選ぶことが重要です。前後で異なるメーカーやモデルを混ぜると、スリップアングル特性のバランスが崩れ、予期しない挙動を示すリスクがあります。バイク専門店で相談する際は、この点を確認しておくと安全です。

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