

政府認証マフラーを買えば、それだけで安心して走れる。
「政府公認マフラー」という言葉を聞いて、国が直接認めた完璧な製品だと思うライダーは多いはずです。ところが実態は、少し異なります。
JMCA(一般社団法人全国二輪車用品連合会)は、国が直接運営する機関ではなく、日本全国のバイクパーツメーカーが集まって結成した業界団体です。法律を制定・執行する権限は持っていません。ただし、国土交通省が定めた騒音規制・排出ガス規制の基準に則って独自の試験を行い、合格した製品にJMCA認証プレートを発行する活動を行っています。
平成22年規制以降、JMCAは国交省に「登録性能確認機関」として認定されており、ここで合格したマフラーは事実上の政府認証品として扱われます。これが「政府認証マフラー」「政府公認マフラー」と呼ばれる由来です。
試験の内容は、大きく分けて「騒音規制」と「排出ガス規制」の2軸です。騒音規制では、近接排気騒音と加速走行騒音の2項目を測定します。125cc超のバイク向けマフラーであれば、近接排気騒音が94dB(A)以下、加速走行騒音が82dB(A)以下であることが必要です。さらに平成28年10月以降に生産された新車向けには、欧州規制「ECR R41-04」に基づく3種類の音量測定すべてを通過しなければなりません。
JMCAでは年間なんと400種類ものマフラーをテストしています。東京ドームのグラウンドで試合が行われるほどの数——つまり一シーズン分以上の試合数を超えるマフラーが、毎年審査を受けて市場に出回っているわけです。それだけ多くの選択肢があるからこそ、選び方の注意点も増えてきます。
プレートの種類はA〜I型など複数あり、バイクの年式・排気量・触媒の有無によって対応するプレートが異なります。年式ごとの規制をクリアした正しいプレートが付いていることが大切です。
JMCA公式:認定・認証プレートの種類と対応規制年一覧(騒音・排ガス規制ごとのプレート区分を確認できます)
「JMCAプレートが付いているから安心」と考えるライダーが多い中、実は認証プレートがあっても車検に通らないケースが存在します。これは知らないと1回の車検で数万円単位の追加費用が発生することになる、無視できない問題です。
最も多い落とし穴が「年式の不一致」です。マフラーに付いたJMCAプレートは、そのマフラーがどの年式の規制をクリアしているかを示すものですが、これが自分のバイクの型式認定日と合っていなければなりません。たとえば、平成22年規制対象の車両には平成22年規制対応プレートのついたマフラーでなければ違法となります。中古市場でJMCA認証マフラーを購入する際は、プレートの種類だけでなく「そのマフラーが自分のバイクの年式に対応しているか」を必ず確認してください。
次に見落とされがちなのが「排出ガス試験成績証明書」の問題です。251cc以上のバイクで、触媒内蔵タイプのフルエキゾーストマフラーを装着している場合、車検の際に排出ガスの測定が必要になります。このとき、マフラーメーカーが発行する「排出ガス試験成績証明書」を提出しなければ、JMCA認証品であっても受験すら認められないことがあります。書類は紛失すると再発行に時間がかかるため、購入時から専用ファイルに保管しておくのが原則です。
また、フルエキゾーストシステムではなく「スリップオン」タイプのマフラーを選ぶライダーも多いですが、これにも注意が必要です。スリップオンはサイレンサー部分のみを交換するタイプで、エキパイ(エキゾーストパイプ)はノーマルのまま使用します。エキパイに触媒が組み込まれている車種の場合、サイレンサーだけを変えても触媒は残るためOKです。
しかし、走行距離が長い車両では触媒が経年劣化しているケースがあります。純正マフラーやJMCA認証品であっても、触媒が劣化して排ガスの規制値をクリアできなくなった場合は、車検に通りません。触媒劣化は目視だけでは判断しにくいため、自信がなければ車検前にバイクショップで事前チェックを依頼するのが安心です。
ヤマモトレーシング spec-A:マフラー認証制度の詳細と新認証プレート未装着の場合のリスクについて(違法マフラーの判定基準が詳しく解説されています)
250cc以下のバイクには車検がないため、「どんなマフラーをつけても取り締まられることはない」と思っているライダーは少なくありません。これは危険な思い込みです。
平成28年4月の法改正により、250cc以下の車検不要車両に対しても同様の騒音規制・排ガス規制が適用されています。車検がないのは「2年ごとに陸運局に持ち込む検査義務がない」というだけで、保安基準を満たす義務は変わりません。つまり規制値を超えた違法マフラーを装着して公道を走れば、その瞬間から法令違反です。
JMCA公式Q&Aでも「250cc以下の車検なし車両は、車検のための規制・認定ではないので、法律にのっとった対応をする」と明記されています。つまり車検がないからといって野放しではなく、常に法律の範囲内でマフラーを選ぶ義務があるということです。
違反した場合の罰則は以下の通りです。
| 違反の種類 | 根拠法 | 罰則 |
|---|---|---|
| 不正改造マフラーの装着 | 道路運送車両法第99条の2 | 6ヶ月以下の懲役 または 30万円以下の罰金 |
| 整備不良車両の運転 | 道路交通法第62条 | 3ヶ月以下の懲役 または 5万円以下の罰金・違反点数2点・反則金7,000円 |
| 消音器不備車両の運転 | 道路交通法第71条の2 | 5万円以下の罰金・違反点数2点・反則金6,000円 |
| 騒音運転(空ぶかし等) | 道路交通法第71条第5号の3 | 5万円以下の罰金・違反点数2点・反則金6,000円 |
罰則が重いですね。特に不正改造は懲役刑まで規定されており、軽く見ることはできません。さらに、違法マフラーを取り付けたショップや整備士も処罰の対象になることも忘れてはなりません。取り付けた従業員本人だけでなく、その監督責任者まで罰則の対象になり得ます。
違法マフラーを装着した場合、路上で整備命令が出され、15日以内に保安基準に適合した状態で再検査を受けなければなりません。それを無視するとナンバープレートと車検証が没収されます。250ccでも例外ではありません。これが条件です。
バイクライフラボ:バイクの騒音問題と罰則の全容(違反の種類ごとに根拠法・罰則点数・反則金を詳しく解説)
政府認証マフラーを選ぶときの手順を間違えると、後から「合法だと思っていたのに車検で引っかかった」という事態になります。手順を一度整理しましょう。
まず最初に確認するのは、自分のバイクの「型式認定日」です。これは車検証に記載されています。この日付が、どの規制年次の対象になるかを決定します。型式認定日が平成28年10月1日以降であれば、新基準(ECR R41-04)に対応した「新認証プレート」が付いたマフラーでなければなりません。平成28年9月30日以前のモデルであれば旧規制の対応品でも使用できます。
次に確認するのは「スリップオンかフルエキか」という選択です。スリップオンはサイレンサー部分だけを交換するため、取り付けが簡単でコストを抑えられます。価格は5万〜10万円程度が相場です。フルエキゾーストはエキパイからサイレンサーまですべてを交換するため、より大きなパワーアップや軽量化が期待できる反面、10万〜25万円以上になるケースも珍しくありません。
フルエキゾーストを選んだ場合は、触媒を内蔵するかどうかで手続きが変わります。触媒内蔵タイプは排ガス試験成績証明書の管理が必要になるため、購入時から書類を大切に保管してください。
次に「適合車種リスト」を必ず確認します。JMCAが運営するマフラー検索システムでは認定・認証番号から対応車種を確認できます。ネットオークションや中古パーツで購入する際は、このリストとの照合が必須です。
JMCA公式:認定・認証マフラー検索システム(認証番号・車種・メーカーから適合製品を検索可能)
マフラー装着後も定期的なメンテナンスが必要です。グラスウール(マフラーの内部にある吸音素材)は走行距離が増えるにつれ消耗し、音量が上がっていきます。走行距離が1万〜2万kmを超えたあたりで内部の状態を確認することが推奨されています。グラスウールの交換は製品によっては自分でも可能で、費用は2,000〜5,000円程度です。また、社外マフラーのサイレンサー内部は構造上、純正より水分がたまりやすいことがあり、錆による穴あきで音量が増してしまうこともあります。定期的な確認が基本です。
あまり語られない話ですが、中古市場やオークションサイトには、JMCAプレートを流用・偽装した状態で販売されているマフラーが存在することが業界内では指摘されています。プレートだけを正規品から転用し、本体は規制に適合していない粗悪品に取り付けているケースです。
一見するとJMCAプレートが貼ってある「合法品」に見えますが、実際には認証番号とマフラー本体が一致していないため、違法品と判定されます。このようなマフラーを知らずに購入し装着した場合でも、取り締まり対象になる可能性は否定できません。厳しいですね。
見分け方のポイントとしては、まずJMCA公式サイトの認証マフラー検索システムで、プレートに記載された認証番号を入力して照合することが有効です。適合車種と自分のバイクが一致するか、認証番号が実在するかを確認できます。番号検索で合致しない場合は要注意です。
次に、プレートの状態をチェックします。正規のJMCAプレートは専用の金属製で、刻印や印刷が鮮明です。貼り付け跡がある・プレートの端が不自然に折れている・印刷がにじんでいるなどの場合は疑ってみてください。
また、格安すぎる価格のJMCA認証品には注意が必要です。正規の認証試験を通過するためにはマフラーメーカーが相応のコストをかけているため、信頼できるメーカー品が定価から大きく逸脱した価格で売られているのは不自然です。たとえばヨシムラ・モリワキ・BEAMSなどの国内主要メーカーの新品マフラーが相場より70〜80%も安い価格で出品されている場合は、偽装品の可能性を視野に入れてください。
これは使えそうです。安さに飛びついた結果、30万円の罰金リスクを抱えることになれば、節約どころか大損になります。信頼できるショップや正規販売店から購入するのが、結果的に最もコストパフォーマンスが高い選択です。
購入後はレシート・保証書・適合証明書類を一式まとめてバイクの書類と一緒に保管しておきましょう。次の車検や万一の取り締まりの際に、合法品であることをすぐに示せる状態にしておくことが大切です。これが条件です。

ヤマモト(YAMAMOTO) SPEC-Aマフラー '19~22 GSX-R1000R SLIP-ON TYPE-S 認証