

接地面積を増やしてもグリップは上がらない
バイクが路面と接触している部分、つまりコンタクトパッチの面積は驚くほど小さいです。一般的なバイクのタイヤ1本あたりの接地面積は、計算上で約60〜70cm²程度になります。これは名刺1枚分(約55cm²)とほぼ同じサイズです。
前後2本のタイヤを合わせても、わずか120〜140cm²ほどしかありません。バイク本体の重量が200kgあるとすれば、この名刺2枚分ほどの面積で車体とライダーを支えていることになります。四輪車の場合はハガキ1枚分と言われますが、バイクはさらに小さいんですね。
参考)クルマを支える接地面積~葉書1枚分の奇跡~ - クルマの大辞…
しかも、さらに衝撃的な事実があります。タイヤメーカーのコンチネンタル社の研究によると、このコンタクトパッチ全体のうち、実際に路面と接触しているのはわずか15%程度だけです。つまり、見かけの接地面積の85%は路面の凹凸により空中に浮いている状態なんです。
参考)로드 자전거가 실제 지면에 접촉하는 면적은 매우 적다는…
路面は一見平坦に見えても、ミクロレベルでは凹凸だらけです。そのため、タイヤのゴムが実際に路面に触れている部分は極めて限られています。
これを「真実接触面積」と呼びます。
「太いタイヤにすれば接地面積が増えてグリップが上がる」という考えは、実は物理的には正しくありません。この誤解は多くのライダーが持っていますが、摩擦力の計算式を見れば理由がわかります。
参考)タイヤの接地面積を上げてもグリップ力は上がらないという誤解の…
摩擦力F = 摩擦係数μ × 垂直荷重N という式で表されます。一方、垂直荷重N = 圧力P × 接地面積S です。これらを組み合わせると、摩擦力F = μ × P × S となります。
ここで重要なのは、接地面積Sを2倍に増やすと、面圧Pが半分になるということです。バイクの重量は変わらないため、N(=P×S)は一定のまま。結果的に摩擦力Fも変わらないことになります。
つまり面積だけ増やしても意味がないということですね。
ただし、実際には太いタイヤの方がグリップが良いと感じるケースがあります。これは接地面積の増加ではなく、タイヤの剛性や構造、ゴムコンパウンドの違いによる影響が大きいのです。特にトレッド下のスチールベルトの幅が広がることで、ケース剛性が上がり、コーナリングフォースが向上します。
参考)『タイヤの接地面積とグリップ力の関係について教えて下さい。』…
タイヤの空気圧は接地面積に直接影響を及ぼします。計算式で考えると、接地面積 = 車重 ÷ 空気圧 となるため、空気圧を下げれば接地面積は増加します。
参考)タイヤの空気圧と接地面積 : またがり隊 No. 66
例えばBMW K1100LTの場合、後輪の荷重が165kgで空気圧が2.5kg/cm²なら、接地面積は66cm²と計算されます。空気圧を下げて2.0kg/cm²にすれば、接地面積は82.5cm²に増加します。
しかし、空気圧を下げることには大きなリスクが伴います。まず、タイヤの転がり抵抗が増加し、燃費が悪化します。同じ速度で走行するのに、より多くのスロットル開度が必要になるためです。
参考)グリップ力が欲しい時、空気圧は下げた方が良いの?|日本ミシュ…
さらに深刻なのは、タイヤの側面が過度にたわむことでバーストのリスクが高まることです。サーキットでは路面が平坦で高速連続走行をしないため、空気圧を下げた設定も可能ですが、一般公道では車両指定空気圧を守るのが原則です。ミシュランのPOWER CUP2は、サーキットではフロント210kPa、リア150kPaを推奨していますが、これは特殊な条件下での話。
公道では適正空気圧の厳守が必須です。
バイクがコーナーを曲がる際、バンク角を深くするほどタイヤのグリップ力の作用点は内側へ移動します。直立状態ではタイヤの中央部分が接地していますが、バンクを深めるとタイヤの側面が路面と接触するようになります。
バンク角が深くなると、実は接地面積自体は減少する傾向にあります。タイヤのトレッド面は基本的にフラットに設計されているため、傾ければ傾けるほど路面との接触面積が小さくなるんです。これがコーナリング性能の限界につながります。
参考)バイクレースのバンク角、これ以上深くなったら…… ~木下隆之…
コーナリング中のグリップ力は、摩擦係数と垂直荷重で決まります。バンク角で横Gがほぼ決定され、体重と車重の合計が最大垂直荷重となります。コーナリング中の垂直荷重は基本的に一定なので、重要なのはいかにタイヤのゴムを路面に密着させるかです。
下りコーナーでは、傾斜によりフロントに荷重されやすく、リアの荷重が抜けがちです。これによりリアタイヤの接地感が希薄になり、グリップを失うリスクが高まります。こうした場面では、腰を内側に入れて重心を調整することで、安定感を増すことができます。
参考)【タイヤと路面の接点を感じる”感じるグリップ”】グリップを感…
タイヤがグリップする仕組みには、主に2つの理論があります。1つ目は「凹凸説」で、アスファルトの凹凸にゴムが入り込むことで摩擦力が生まれるという考え方です。2つ目は「凝着説」で、ゴムと路面の分子同士が接着剤のようにくっつくことでグリップが生まれるというものです。
現代のタイヤグリップ理論では、この凝着説が主流となっています。分子と分子がくっつく部分を「真実接触面」と呼び、見かけの接地面積ではなく、この真実接触面がどれだけ増えるかがグリップ力を左右します。
コンチネンタル社の研究では、コンタクトパッチの15%しか実際には接触していないため、グリップ性能を決める要因の98%はコンパウンド(ゴムの材質)の特性だと主張しています。柔らかいコンパウンドを使えば真実接触面積が20〜30%に増加し、硬いコンパウンドなら10%程度に減少します。
荷重がかかるとゴムがたわみ、アスファルトとの接触面積が増えて真実接触面も増加します。ただし、ある荷重に達すると底づき状態となり、それ以上噛み合わなくなります。
このポイントがグリップ限界です。
グリップ力を最大限に活かすには、適切な荷重管理とタイヤコンパウンドの選択が重要ということですね。
レース用のスリックタイヤは溝がなく、接地面積を最大化してグリップ力を高めるために設計されています。しかし、このスリックタイヤを公道で使用すると整備不良違反となります。
参考)スリックタイヤって公道で使っちゃダメなの?どういう違反になる…
道路運送車両の保安基準では、タイヤの接地部の4分の1以上の部分に0.8mm以上の溝が必要と定められています。スリックタイヤにはこの溝がないため、公道走行は違法です。
違反した場合、違反点数2点に加え、二輪車は7,000円、原付は6,000円の反則金が科せられます。さらに、溝のないタイヤは雨天時に排水ができず、ハイドロプレーニング現象が起きやすくなります。これは水膜の上をタイヤが滑走する現象で、制御不能に陥る極めて危険な状態です。
参考)スリックタイヤって公道で使っちゃダメなの?どういう違反になる…
また、ウェア・インジケータ(タイヤの摩耗を示すマーク)が露出した状態も同様に違反となります。タイヤの溝は雨天時の排水だけでなく、路面の微細な凹凸に対応してグリップを確保する役割も果たしています。
タイヤの状態は定期的にチェックし、溝の深さが1.6mm(法定最低は0.8mm)を下回る前に交換するのが安全です。命を預けるパーツだけに、メンテナンスは怠らないようにしましょう。
溝の確認はスリップサインで簡単にできます。

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