トレール バイクの物理現象|操縦安定性と旋回メカニズム

トレール バイクの物理現象|操縦安定性と旋回メカニズム

トレール バイクの物理現象

バンク中のトレール量は縮むほどグリップ破綻します

この記事の3ポイント要約
🔧
トレールとキャスター角が安定性を決める

トレール量100mm前後とキャスター角25°が一般的なロードバイクの設定で、この数値が直進安定性と旋回性のバランスを左右する

⚙️
サスペンションの動きでトレール量が変化

ブレーキやバンク時にフロントが縮むとトレール量が減少し、低速ターンでは最低限のトレール量確保が転倒回避の鍵

🏍️
ジャイロ効果は補助的な役割

バイクの安定性は主にトレールによる復元力で、ジャイロ効果は回転速度に依存する二次的要素にすぎない

トレール バイクの基本構造と役割


トレール量とは、ステアリング軸の延長線が地面と交わる点と、前輪の接地点との水平距離のことです。一般的なロードバイクでは100mm前後、ミニバイクで70~80mm、クルーザーでは110mm以上に設定されています。


つまり100mmが基本です。


この数値が大きいほどハンドルが真っ直ぐに戻ろうとする復元力が強くなり、グリップ感が増します。逆にトレール量が少なくなると復元力が減少し、走行時にハンドルがふらついたり、転倒リスクが高まるのです。


トレール量は前輪の外径、キャスター角フロントフォークのオフセット量によって決まります。前タイヤの外径が大きくなるとトレール量が増え、直進安定性が高まる方向に働きます。バイクの操縦安定性を語る上で、トレール量は最も重要な要素の一つなのです。


市販車のトレール設定は車種によって異なり、ホンダVFR800Fではキャスター角25°30'でトレール量95mm、ホンダレブルではキャスター角28°でトレール量110mmとなっています。


トレール量がバイクのハンドリング特性に与える影響

トレール量の変化は、バイクのハンドリング特性に直結します。トレール量が大きいと方向安定性が高くなる一方、旋回性は低下します。つまり直進は安定するものの、ハンドルが重く感じられ、曲がりにくくなるということですね。


参考)https://gra-npo.org/lecture/ride/trail_controll/trail_con_ride_1.html


逆にトレール量が小さいと旋回性は向上しますが、方向安定性が犠牲になります。ハンドルが軽くなりすぎて、低速スラロームではフロントからすっぽ抜ける感覚が生じることもあるのです。郵便配達で使われるカブPROは、このハンドルの軽さとフロントのすっぽ抜け感が顕著な例として知られています。


トレール量が0の場合、復元力が働かないため車輪が左右に回転して非常に不安定になります。


参考)https://gra-npo.org/lecture/ride/trail_controll/trail_con_ride_2.html


実験的にはキャスター角0°トレール0mmという自転車も試作されていますが、実用性には疑問が残ります。一方で、キャスター角がついていればトレール量が0でも高い直進安定性は保たれることが知られており、自転車の輪回しの原理と似ています。


トレール量の適正値は走行状況によって変わるため、ライディングによってトレール量をコントロールすることが、オートバイの楽しみでもあり評価基準でもあるのです。


キャスター角とトレール量の相互関係

キャスター角とは、路面に対するステアリング中心軸の角度を表す数値です。現在は路面から垂直に立ち上がった線とステア軸の角度を表記するのが主流で、角度が小さいほどフロントフォークが立っている状態になります。


具体的な数値例を見ていきます。


スーパースポーツバイクでは23°~24°、ネイキッドツアラーで25°~26°、クルーザーでは28°~30°が一般的な設定です。ホンダCB750FOURでは63°と表記されていましたが、これは旧式の表記法で、現代的に表現すると27°になります。


キャスター角が小さい(フォークが立っている)と、高速時に車体を傾けた際にフロントタイヤが軽快に素早く切れます。逆にキャスター角が大きい(フォークが寝ている)と、高速時の直進安定性が強くなりますが、ハンドリングはマイルドになります。


キャスター角とトレール量は密接に関係しており、キャスター角が大きいほどトレール量も長くなる傾向があります。ヤマハのYZF-R1ではキャスター角24°00'でトレール量102mmと、キャスター角は立っているものの相応のトレール量を確保しています。この設定により、機敏なハンドリングと十分な安定性を両立させているわけですね。


サスペンション動作によるトレール バイクの変化

テレスコピック形式のフロントサスペンションでは、サスペンションの動きによってトレール量が変化します。乗車している状態(1G'時)と、ブレーキを強くかけて大きく縮んでいる時(残ストローク時)では、トレール量の大きさが異なるのです。


ブレーキをかけるとフロントサスペンションが縮み、トレール量が減少します。


バンク中のターン時には、旋回力(旋回荷重)によってサスペンションが縮み、トレール量が減ることで方向安定性が減り、旋回性が増します。しかし特に低速時には、安定を保つために最低限以上のトレール量を保つ必要があることが分かっています。


30km/h以下の低速でターンをしている時、大きな荷重によってサスペンションが大きく縮んだ状態で、さらに深くバンクさせてタイヤに大きな旋回モーメントが働く場面では、トレール量が十分に残されていることが重要です。


トレール量が少ない状態でバンクし、ハンドルが切れた時には接地点が前に前に移動して、最終的に接地しなくなりグリップ破綻が起きます。低速Uターンでの転倒はこのメカニズムと関係しているケースが多いのです。


GRAのトレール解析ページでは、安定限界トレール量の考え方について詳しく解説されています。

トレール バイクとジャイロ効果の関係性

バイクの安定性を語る際、ジャイロ効果がよく話題に上りますが、実はトレールによる復元力の方が主要な役割を果たしています。ジャイロ効果とは、回転する車輪の回転軸を外からの力に対して変えさせまいとする抵抗力のことです。


参考)自転車の安定の秘密:ジャイロ効果、トレイル、そして物理学が導…


車輪が回転していると、バイクが傾いた時にジャイロ効果によってハンドルが自動的に傾いた方向へ切られます。ハンドルが切れると車体はカーブを描き始め、遠心力が発生してバランスを回復させるのです。


これは補助的な効果ですね。


研究によると、ジャイロ効果なし、トレールゼロの単純化したバイクでも力学的に安定であることが分かっています。つまりバイクの安定性にはジャイロ効果以外の要素、特にトレールが重要な役割を果たしているということです。


ホイールが軽いとジャイロ効果が減少し、バイクの切り返しが軽くなります。また、サスペンションへの負担が減ってタイヤが追従しやすくなり、燃費向上や加速・ブレーキ性能の向上にも繋がります。


バイクの安定性に関する研究ノートでは、ジャイロ効果を含めた複数の要素が安定性にどう寄与するかが詳しく解説されています。

低速ターンでのトレール バイク管理テクニック

低速ターン、特にUターンは多くのライダーにとって難関テクニックです。Uターンなどの極低速時の転倒でもレバーは折れやすく、特にクラッチレバーが折れると修理場所まで自走するのさえ難しくなります。


参考)バイクあるあるトラブル③ Uターンで転んじゃう! - For…


転倒は「スピードがそこそこ出ている状態から、少し小さく回り始めた時」に起きやすく、その理由はエンストかクラッチの切り過ぎです。歩く速度以下で車体が垂直、エンジン回転がアイドリング状態であれば、エンストしてもバイクは倒れません。


参考)ターン上達のコツ&安全安心のブレーキ能力向上方法


低速ターンを成功させるポイントは3つです。


  • エンストさせない(半クラッチをうまく使う)
  • フロントブレーキは使わない(リアだけを使う)
  • 視線はターンの先へ向ける

フロントブレーキを使わない理由は、ブレーキングでフロントサスペンションが縮み、トレール量が減少して転倒リスクが高まるためです。リアブレーキのみで速度を調整することで、トレール量を適切に保てます。


目安は歩く速度以下を維持することです。目線は内側を向き、肩・ひじ・手に余計な力を入れずに、笑顔でゆっくり行うのがコツですね。クラッチ操作能力を向上させ、フルステアを維持できるようになると、低速ターンの成功率が格段に上がります。


たとえ低速時であっても転倒はできるだけ避けたいものですが、Uターンでのゆるゴケの可能性は想定しておいた方が良いでしょう。転倒時には高い確率でレバーが折れたり曲がったりするため、予備のレバーや工具を携帯しておくと安心です。


トレール バイクの高速走行時の挙動特性

高速走行時には、トレール量とキャスター角の組み合わせがバイクの挙動に大きく影響します。一般的にキャスター角が大きければ直進安定性が高く、小さければクイックなハンドリングになります。


参考)それぞれのモデルの直進安定性や旋回性が数値でわかる!! スペ…


スペックシートを読み解けば、バイクの性格がよく分かります。


トレール量の長いクルーザーなどでは、前輪幅が広いこともあってブレーキトルクステアが強くなります。ブレーキトルクステアとは、バンク中にブレーキをかけた際に車体を起こそうとする力のことです。


参考)【元ヤマハエンジニアから学ぶ】二輪運動力学からライディングを…


逆にトレール量が短いヤマハのトリシティでは、ブレーキトルクステアが小さいためバンク中に安定します。スーパースポーツでもハイグリップタイヤを履かせると、起きる力が強くなるモデルもあります。


これは知っておくと得します。



バンク角が変化すると、実際のトレール量も変化します。バイクがリーンすることでタイヤの接地点がイン側へ移動し、見かけ上のトレール量が変わるのです。この現象を理解していると、深いバンク角でのコーナリング時の挙動が予測しやすくなります。


車体を深く傾けて旋回速度を上げることは、転倒しやすく、かつ転倒時のダメージが大きくなることを意味します。速く走るためにリスクを増大させる走りは、トレール量の変化も含めて総合的に判断する必要があるわけですね。


ライダースクラブのブレーキトルクステア解説では、バンク時のトレール変化とブレーキングの関係が詳しく解説されています。

トレール バイクの調整カスタマイズ方法

トレール量の調整は、バイクのハンドリング特性を変える有効な手段ですが、慎重に行う必要があります。トレール量はハンドルのオフセット(中心からフォークがどれだけ離れているか)が変わらない限りは直接変更できないため、前後の車高調整で対応するのが一般的です。


ノーマル状態が最も無難です。


フロントを下げるとキャスター角が立ち、トレール量が減少します。これにより機敏なハンドリングが得られますが、直進安定性は低下し、転倒リスクが高まる可能性があります。逆にフロントを上げるとキャスター角が寝て、トレール量が増加し、安定性が向上します。


前輪の外径を変更することでもトレール量は変化します。タイヤの外径が大きくなるとトレール量が増え、直進安定性が高まる方向に働きます。ただし、ホイールサイズの変更は他の諸元にも影響を与えるため、総合的な判断が必要です。


トレール量が少なくなると、走行時にハンドルがふらついたり、ブレたりして非常に危険です。例えばトレール量172.3mmから大きく減少させた場合、ハンドルの復元力が減少してコントロールが難しくなります。


参考)BEARDS BLOG


カスタマイズを行う場合は、まず自分の走行スタイルと求める特性を明確にすることが重要ですね。サーキット走行を重視するなら機敏性を、ツーリングを重視するなら安定性を優先した設定が望ましいでしょう。専門店に相談しながら、段階的に調整していくのが安全な方法です。




特殊洗剤・ハイトレール・2リットル サビ、くすみ、水垢、油汚れなどの洗浄に最適! 漁船用船体浄化クリーナー・トラックやバスなどにも使用可!