

片側に転倒しただけで、あなたの修理費は約38万円になります。
アプリリアRS660が2021年にデビューして間もなく、世界規模で非常に重大なリコールが実施されました。原因はエンジン内部のコンロッド(コネクティングロッド)で、部品サプライヤー側の熱処理が適切でなかったことで強度が基準値を下回り、走行中に破損するリスクがあることが判明したものです。
このリコールの対象は、RS660とTuono 660を合わせて約700台(北米だけでも308台)に上りました。最悪のケースでは時速120kmで走行中に異音と振動が発生し、油圧警告灯が点灯、その後エンジンが完全に破損するという壊滅的な故障も実際に報告されています。走行距離わずか約2,500km(1,400マイル)未満での事例もありました。
アプリリアの対応は迅速かつ徹底的でした。コンロッドの部分交換ではなく、エンジンアッセンブリーを丸ごと新品に無償交換するという対策をとり、リコール完了後は工場保証も更新されています。エンジン交換の作業時間は約346分(約6時間)とされており、本格的なエンジン載せ替え作業です。これは初代RSV4でも同様のエンジン交換リコールが実施されたことがあり、アプリリアというブランドが抱える品質管理の課題を象徴する出来事でもありました。
つまり初期型RS660は、リコール対応さえ済んでいれば「新品エンジン搭載車」ということですね。
初期型の中古車を検討する際に最も優先すべきチェック項目は、このリコール対応の完了記録です。整備手帳やディーラーの記録で、エンジン交換が完了していることを書面で確認できない車両は、どれだけ車体価格が安くても購入を見送るべきです。消費者庁・国土交通省の事故情報データバンクにも、渋滞時のオーバーヒートや燃料供給不良によるエンストに関する実際の不具合報告が登録されており、初期モデルの問題が公的機関にも記録されています。
アプリリアRS660に関する公的な不具合・リコール情報が確認できる参考リンクです。
消費者庁 事故情報データバンク:アプリリアRS660の不具合事例(国土交通省報告)
オーナーコミュニティで圧倒的に報告件数が多いトラブルが、エンジンからのオイル漏れです。「イタ車の持病」と揶揄されることもありますが、RS660の場合、漏れが発生しやすい箇所はある程度特定されています。主な箇所は、エンジンサイドカバー(ステーターカバー・クラッチカバー)のガスケット、ウォーターポンプのシール部分、オイルパンとエンジンの接合部、そしてオイルフィルターアダプター周辺などです。
注目すべき点があります。
これらの漏れの原因として、一部のオーナーや整備士から「工場出荷時のボルトの締め付けトルクが不足していた可能性がある」という指摘が複数のコミュニティで報告されています。つまり、製造過程での管理不徹底が要因の一つになっているかもしれないということです。実際に、各カバーのボルトをトルクレンチで適正値まで増し締めするだけで、多くのオイル漏れが解消したという報告が国内外のオーナーから届いています。これは逆に言えば、信頼できるディーラーが納車前にしっかりとしたPDI(Pre-Delivery Inspection=納車前点検)を実施してくれれば、防げた可能性がある問題です。
ウォーターポンプのシール部分については特に注意が必要です。ここからはエンジンオイルと冷却水(クーラント)の両方が漏れる可能性があり、どちらが漏れているかによって対処法が異なります。冷却水が漏れている場合、放置するとオーバーヒートを引き起こし、エンジン本体への深刻なダメージにつながります。渋滞時のオーバーヒート問題が消費者庁の事故情報データバンクに登録されている事実を見ても、熱管理への注意は怠れません。
オイル漏れの発見は早いほど被害が少なくて済みます。洗車時にエンジン周りを拭き取り確認する、定期的にオイルレベルを点検するという二つの習慣が、大きなトラブルを未然に防ぐ最短ルートです。
RS660には標準装備(または設定変更で使用可能)のオートクイックシフター(AQS)が搭載されており、これはこのバイクの大きな魅力の一つです。しかし、ここにもいくつかのトラブルが報告されています。特に初期モデルで問題になったのが、シフトレバーを固定する部品の不具合です。極稀に走行中にシフトレバーが正常な位置から外れてしまうケースが報告されており、現行モデルでは対策品に変更されているとされています。
電子的な面では、エンジン始動直後にAQSが作動しない「ロックアウト」現象が一部の個体で確認されています。また、特に低回転域(5,000回転以下)やスロットル開度が小さい場面で、シフトアップ・ダウンの動作がギクシャクするという声も少なくありません。国内のヤフー知恵袋でも「1速から2速のシフトアップが点滅したままで正常に機能しない」といった具体的な相談が寄せられています。
これはある程度仕様の範囲です。
RS660の公的な不具合情報には、渋滞時のオーバーヒートからエンストへと至る問題も記録されています。街乗りで渋滞にはまると、冷却が追いつかずに水温が上昇し、同時にガソリン残量が少ない状態が重なると、燃料タンク周辺でガソリンが気化して供給不良が発生し、エンストに至るというパターンです。これはエンジンの熱設計に由来する問題で、特に夏場の都市部での使用には注意が必要です。
渋滞が多い都市部でのライディングに不安を感じた場合、走行中はできるだけクラッチを使って低速でエンジンに負荷をかけないよう走ったり、停車時間が長い場合はエンジンを一時的に切るといった対処法が有効です。水温計の表示に日頃から注意を払う習慣もつけておきましょう。
多くのRS660オーナーが購入後に驚くトラブルの一つが、低速時のリアブレーキの鳴きです。信号待ちからの発進・停止の際に「キーキー」「ゴゴゴ」という金属音が鳴るもので、多くの車両でほぼ共通して発生する現象です。安全性への直接的な影響は少ないものの、精神的なストレスは少なくありません。
対策として最も効果的とされているのが、ブレーキパッドの「慣らし」を意図的に行う方法です。安全が確保された場所で中速域(40〜50km/h程度)からリアブレーキのみで強めに減速する操作を数回繰り返すことで、パッドとディスクローターの当たり面が整い、鳴きが収まることがあります。それでも改善しない場合は、ブレーキパッドの端面をヤスリで少し削る「面取り」や、ブレーキクリーナーでのディスク清掃が次の手です。根本的に解決したいなら、鳴きにくい特性の社外ブレーキパッドへの交換が最終手段となります。
外装品質についても見ておく必要があります。
RS660の美しいイタリアンデザインに惚れ込んで購入したオーナーから、「塗装が薄くて飛び石の傷がつきやすい」「カウルのプラスチックの爪が脆くて、脱着時に割れた」という意見が複数報告されています。特にマット塗装仕様の車両は非常にデリケートで、グローブが軽く擦れただけでも跡が残ることがあります。100馬力の高性能と充実した電子制御を実現するために、外装コストをある程度抑えた設計になっていると考えるのが自然です。
これは事前に対策できます。
購入後すぐに透明な保護フィルム(ペイントプロテクションフィルム)をタンクや主要なカウル面に施工しておくことで、飛び石や擦り傷のリスクを大幅に減らせます。費用は施工範囲によって数万円〜となりますが、カウル交換の費用(片側約18万円)と比べれば、圧倒的にコストパフォーマンスの高い自衛策です。
RS660を選ぶ上で故障リスクを大きく左右する要素が二つあります。一つ目は「年式」、二つ目は「ディーラー」です。この二点を理解しておくだけで、購入後の満足度は大きく変わります。
年式については、オーナーコミュニティの情報を総合すると、2021〜2022年モデル(初期型)にトラブルが集中している傾向が明確にあります。コンロッドのリコール問題、オイル漏れの頻発、シフトレバーの部品不良といった多くの問題は初期型に集中しており、2023年以降のモデルでは品質が改善されているという声が国内外のオーナーから多く聞かれます。Redditの海外オーナーコミュニティでは、2021年式で25,000kmを走っても大きなトラブルが一度もないという声がある一方で、初期型の問題報告が圧倒的に多いのも事実です。つまり、新車または2023年以降の高年式中古車を選ぶことが、最もシンプルかつ効果的な故障リスク対策です。
初期型中古車を選ぶ場合は必須の確認事項があります。エンジンリコールの対応完了記録(書面)、オイル漏れの痕跡の有無(エンジン下部や各カバー接合部を目視)、シフトレバーの対策部品への交換有無、そして過去の整備記録の有無です。これら全てが確認できない車両は、どれだけ価格が魅力的でも候補から外すのが賢明です。
ディーラー選びも同様に重要です。
アプリリアの正規ディーラーであっても、PDI(納車前点検)の丁寧さや担当メカニックの習熟度にはばらつきがあります。オイル漏れの一因がボルトのトルク不足という事実を踏まえると、経験豊富で丁寧なメカニックが納車前に各部を適切に点検・整備してくれるかどうかで、初期トラブルの発生率が大きく変わります。購入前に実際に店舗を訪問し、スタッフの受け応えを確かめたり、インターネットの口コミを参考にしたりして、長期的に信頼関係を築けるディーラーを選ぶことをおすすめします。遠方でも信頼できる正規ディーラーを選ぶ価値は十分にあります。
アプリリア正規ディーラーの一覧・詳細は以下から確認できます。
RS660を長く楽しむには、維持費の現実をあらかじめ把握しておくことが必要です。国産バイクと同じ感覚で考えていると、維持費の高さに面食らうことになります。
定期メンテナンスの費用を具体的に見ると、オイル交換1回が純正オイルで約1万8千円(国産600ccクラスの約2倍)、前後タイヤ交換が純正ピレリ製で約9万円(国産600ccクラスの約1.5倍)が目安となります。さらに、アプリリアが指定するバルブクリアランス調整は数千kmごとに推奨されており、その費用もディーラー工賃込みで相応の額になります。万が一転倒した場合は深刻です。サイドカウル片側の交換だけで約18万円、両側・ミラー・フェンダー等の交換を含めると1回の転倒で30〜38万円以上の出費になることも珍しくありません。コンパクトで軽量なバイクだからこそ油断しやすい点です。
コスト削減の方法はあります。
欧州の並行輸入パーツサイト「Omnia Racing」などを活用すると、純正パーツを約25%割安で入手できるという報告があります。合法的な範囲でパーツを賢く調達すれば、年間で数万円単位のコスト削減も可能です。また、メーカー保証が終了するタイミングで「延長保証」に加入しておくことは、予期せぬ高額修理費用に備える上で非常に有効な手段です。外車オーナーとして想定外の出費を最小限に抑えるための保険として、購入時にディーラーで必ず確認するようにしましょう。
2年間で総計どれくらいの維持費がかかるかを実際に公開しているオーナーの動画も参考になります。
長期オーナーの声を見ると、4年目に初めて「エレクトロニックガスコントロール」部品の交換が必要になったオーナーや、納車10か月でセンサー系の不具合に遭遇したオーナーの事例が見られる一方で、2021年式で25,000kmを走破しても大きなトラブルに遭遇していないオーナーも存在します。故障の頻度や内容には個体差があることも、RS660の特徴と言えます。部品の取り寄せには2〜3週間かかるケースが多く、修理中の代車や移動手段の確保も事前に考えておくと安心です。
RS660の走行性能と維持費の実態について詳しく解説した参考ページです。
aprilia RS 660 ('23) 試乗で感じた走行性能と維持費の真実

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