

バンク角45度以上で逆にグリップが落ちることがあります
ダウンフォースは、飛行機の翼と逆の力を利用した物理現象です。翼に当たった風の速度が上下で異なることによって、負圧が発生し下方向の力が生まれます。流速が速い下側の方が気圧が低いため、翼が下に吸われていく仕組みです。
参考)バイクのウィング・スポイラーが発生させるダウンフォースってど…
この現象はベルヌーイの定理に基づいています。空気の速度差によって圧力差が生じるため、下面は低圧に、上面は高圧になります。その圧力差によってダウンフォースが生じ、車両が路面に強く押し付けられるのです。
参考)ダウンフォース
つまり空力の基本です。
翼の後端がとがっていることで空気に「循環」が起きているから、上下で流速差が生まれます。
ただし、この循環は見ることができません。
なぜなら空気は前から後ろへ抜けるので、視覚上は循環の動きが負け、上側が遅く見えるからです。
バイクに採用されるウィングも同じ原理で、翼にあてた空気の力で負の揚力、つまりダウンフォースを発生させて地面にタイヤを押さえつけます。高速走行時に車体が浮き上がるのを防ぎ、タイヤの接地圧を高める効果があります。
タイヤのグリップ力は、摩擦力(摩擦係数)と荷重で決まります。タイヤにかかる重量が増える、つまり押さえつける力が増えることがグリップ向上に効果的なのです。
そこで登場するのがダウンフォースです。ダウンフォースが発生することで、車重は増えませんが、タイヤを地面に押さえつける空気の力を手にすることができてグリップ力が向上する仕組みなのです。
グリップが増えれば安全です。
具体的な数値として、KawasakiのZX-10Rでのテスト結果では、時速200kmの時に下方向に2kgのダウンフォースを得ることに成功しています。さらにスピードが上がるにつれてその効果は大きく、300km/h時には約5kgものダウンフォースを発生させるとされています。
タイヤと路面の接地圧が高まることで、コーナリング時の安定性が増し、より高い速度で曲がることが可能になります。ブレーキをかけた際の安定性も増し、より短い距離での停止が可能になるのです。
MotoGPにウイングが登場した理由は、ウィリーの抑制が目的とされています。ダウンフォースを発生させることで、飛行機の翼と逆の力、すなわちタイヤを地面に押さえつける負の揚力が発生します。
参考)【元車両開発関係者が解説】ウイングレットの形状とその効果 -…
そのおかげで、ストレートでの加速時のウィリーを抑制し、効率的に加速につなげられるわけです。バイクが直立した状態では直ぐにウィリーしてしまうので、加速限界=ウィリー限界となってしまいます。
参考)MotoGPマシンの空力性能を徹底分析!!ウィングレットの効…
加速力を高められますね。
ウィリーしにくくする事で加速力を更に高める狙いがあります。ウィングレットがフロントタイヤを地面に押し付けてくれる力を利用して、加速力を高めラップタイム短縮を図るのです。
Ninja H2Rでは、フロント側のダウンフォースが増強されており、急激な加速でもフロントがリフトしない様に制御されます。旋回しながら加速を始めるような状況では、フロントタイヤの浮き上がりを防止するためにアクセルを戻していては、効率良く加速できません。
参考)カワサキ Ninja H2 / H2R はここが凄い!! •…
ただし一番ウイリーを抑制したい低速コーナーの立ち上がりでは、速度が低いためウイングに当たる風速も遅く、あまり機能しないという欠点があります。そのため、ウイングの採用は最初から減速時の安定性が狙いだったようにも考えられます。
グラウンドエフェクトは、路面と底面を通過する空気で負圧を発生させてダウンフォースを生み出す現象です。マシンがフルバンクした時に、路面とサイドカウルの間で発生するダウンフォースは、重心位置においてはバイクを傾けようとするモーメントと等価になります。
参考)【元ヤマハエンジニアから学ぶ】二輪のエアロダイナミクス - …
その結果、遠心力が増加してつり合いが取れます。つまり、同じバンク角でもグラウンドエフェクトが得られるバイクは、遠心力が増加できるだけの速い速度でコーナーを駆け抜けることが可能となるのです。
コーナー速度が上がります。
ただし、これはサイドカウルが地面に近づいた時だけに発生する効果なので、バンク中に急激にダウンフォースが変化することで、マシンをコントロールするのがとても難しくなることが十分予測できます。
バイクの場合、コーナー時のフロントウィングは車と違い、下からの風圧を受けやすくなるので、ダウンフォースが軽減されデメリットとなります。バンク角45度以上でグリップが落ちると、まず定常旋回速度が落ちます。一般的な意味でのコーナリング速度は落ちるはずなのです。
参考)バイクにダウンフォースを使うことの難しさのお話 - グロムと…
グラウンドエフェクトが発揮されている場合、タイヤのグリップ力が飛躍的に高まり、車両が横滑りしにくくなるため、コーナーリング時にも速度をそれほど落とさないで済みます。しかしスカートによる空気圧の遮断が何らかの原因によって阻害されると、ダウンフォースが急激に失われ、マシンは非常に危険な状態となります。
基本的にコーナリングの速度が速くなるのと高速域の安定性が高くなるのがダウンフォースのメリットになりますが、同時に空気抵抗の増加とタイヤの接地圧の増加で進みにくくなってしまうというデメリットも持っています。
参考)【デチューン】バイクが遅くなる5つのカスタム【意味ない】 -…
仮に適切なダウンフォースを得られるエアロパーツをつけていたとしても最高速は落ちてしまう点に注意しておく必要があります。前面投影面積は確実に増加し、翼部分の流体摩擦抵抗も必ず受けます。300km/hを超えるウィリーしない領域においては100害あって一利無しです。
最高速は確実に落ちます。
空気抵抗が悪化する訳ですから、それに伴って燃費も悪化します。現在MotoGPは燃料タンク容量が21Lと厳しく制限されています。空気抵抗が増すことで、エンジン負荷の増加を引き起こし、結果として燃料消費量が増加し、パフォーマンスが制限されるのです。
参考)MotoGP テクニック: 競技における空力の重要性 - パ…
実際、最高速がわずかに落ちたり、ハンドリングに重さが出てもそういった効果を優先するライダーもいます。切り返しの重さなどに出るのですが、これはダウンフォースの有る無しとは別問題で、左右方向に動く時に邪魔者があるかどうかの問題です。
ウイングレットの開発は、シーズン中に変更できないので、本当に難しいのです。単にダウンフォースを意識するならば、大きなものを取り付ければいいのですが、それでは空気抵抗やハンドリングの悪化を招きます。
参考)中須賀克行 通算JSB100勝へのカウントダウン|「狙える記…
📊 ダウンフォースのメリット・デメリット比較
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| グリップ力 | 接地圧向上でコーナリング安定 | バンク角45度超で効果減少 |
| 加速性能 | ウィリー抑制で効率向上 | 低速域では効果が薄い |
| 最高速度 | 高速安定性が増す | 空気抵抗で最高速低下 |
| 燃費 | - | 抵抗増加で燃料消費増 |
| 操縦性 | ブレーキング安定 |
ハンドリングに重さ |
さらに大きなデメリットは、強い横風や突然の突風を受けた場合です。ダウンフォースを大きく発生するウイングを装備した車両で、斜め前から強い風を受けた場合、車体には横方向に押される力がかかり、ウイングからは下方向への力がかかるという、前後左右で違う向きの力が発生します。
その結果ヨーモーメントが発生し、大きなハンドルの振られが発生する可能性があります。ライダーに問題が無くても、突然コントロール不能に陥る可能性があるということです。よほど悪条件が揃わないとそこまでの状況にはなりませんが、効果の大きいウイングほど大きなリスクが潜んでいることは間違いありません。
突風は予測できません。
ウイングレットによる整流を強く意識している車両もあります。ハンドルの振られという形で車体に現れ、直進安定性に大きな問題が発生するため、その乱流を整え、少しでも小さくするための装備がウイングレットなのです。
現在MotoGPで使用されているウイング、ウイングレットは転倒時に破損しやすく、そのまま再スタートすると著しく左右の空力バランスが崩れます。ウイングは速度が増すほど効果を発揮するので、場合によっては危険ですらあります。
コーナーリング時のみならずストレート走行時であっても、グラウンドエフェクト効果が失われた場合に車両はしばしばコントロール不能となります。場合によっては車両が宙を舞うこともあるなど、ドライバーのみならずコースマーシャルや観客をも事故に巻き込む危険性を持つのです。
⚠️ 突風・横風時のリスク
高速道路などで強風の日に走行する場合は、ウイング付きバイクの挙動変化に特に注意が必要です。風の強い日は速度を控えめにし、橋や海沿いなど風の影響を受けやすい場所では車間距離を多めに取ることで、突然のハンドル振動に対応しやすくなります。
MotoGPマシン全車にウイングが付いています。そして近年は市販車もウイング付きが多数登場しています。ダウンフォースも稼ぎつつかも知れませんが、実はそれだけではなく、整流効果で高速域の運動性や安定性、そしてウイリーを抑止する効果もあります。
市販車では公道での実用性を重視した設計になっています。Ducatiのパニガーレシリーズでは、ウイングを備えた2020年モデルのV4のダウンフォースは30%増加し、スーパーレッジェーラV4では50%も増加しています。
参考)https://www.ducati.com/jp/ja/bikes/panigale/superleggera-v4/aerodynamics
設計思想が異なります。
Ninja H2のバックミラーはステー部分が翼断面形状で、後端にガーニーフラップ(L字断面の整流板)を設けてダウンフォースを高めています。
細部まで空力設計が施されているのです。
一方、ネイキッドタイプはカウルが少ないため空気抵抗が大きく、高速での安定感やライダーへの風圧が増す傾向にありますが、その分デザインや街乗りの扱いやすさが優先されるという考え方もあります。フルカウルのスポーツタイプとネイキッドでは、形状が大きく違うためCd値に差が出ます。
空力性能が良いバイクは、同じエンジン排気量でもより高い速度に到達しやすく、燃料消費を抑えながら巡航できる可能性があります。風洞実験などでカウルやスクリーンを微調整したり、部品の突起を減らすだけで数キロ~十数キロの差が出ることがあるため、メーカーはレースシーンのデータを市販車にフィードバックしているわけです。
元ヤマハエンジニアによる二輪のエアロダイナミクス詳細解説
バンク時のグラウンドエフェクトやダウンフォースがバイクの旋回性能に与える影響について、エンジニア視点で詳しく解説されています。
ウィング・スポイラーのダウンフォース発生原理とテスト結果
KawasakiのZX-10Rでの実測データを含む、バイク用ウイングの効果と仕組みを分かりやすく説明した記事です。
車両開発関係者が解説するウイングレットの形状と効果
MotoGPで使用されるウイングレットの開発背景、メリット・デメリット、そして今後の進化予測について専門家が詳しく解説しています。

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