

NS400Rの中古相場は、発売当時の価格62万9,000円をはるかに上回る約170万円にまで高騰しています。
『バリバリ伝説』は、しげの秀一氏が1983年から1991年にかけて週刊少年マガジンに連載した全38巻のバイク漫画です。主人公・巨摩郡(こまぐん)が峠からサーキット、そして世界GP舞台へと駆け上がる物語は、当時の10代〜20代ライダーの心を鷲掴みにしました。
漫画の序盤でグンが乗っていたのはホンダCB750F。しかし物語が進み、彼がサーキットレースに本格参入するタイミングで愛車をNS400Rへ乗り換えます。このシーンは読者に強烈なインパクトを与え、「グンの新しい武器=NS400R」という図式が瞬く間に広がりました。
NS400Rが漫画に登場したのはちょうど1985年の発売直後のことで、しげの先生自身もこのバイクに惚れ込んでいたと言われています。リアルタイムでの連動がファン心理に火をつけ、バイクショップのNS400Rの在庫に問い合わせが殺到したとも伝えられています。
| 作品情報 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | バリバリ伝説 |
| 作者 | しげの秀一 |
| 連載誌 | 週刊少年マガジン(講談社) |
| 連載期間 | 1983年〜1991年(全38巻) |
| 主人公の愛車 | CB750F → NS400R(途中乗り換え) |
| 受賞 | 第9回講談社漫画賞・少年部門(1985年) |
グンの乗り換えが描かれたのは漫画の中盤で、彼がアマチュアレースから全日本選手権を目指す流れの中でのことでした。つまり単なる「バイクの紹介」ではなく、主人公の成長と決意を象徴するシーンとしてNS400Rが選ばれたわけです。これが読者の記憶に強く刻まれた大きな理由でしょう。
また漫画の中でグンのNS400Rはトリコロールカラー(ホンダ・レーシングカラー)として描かれており、ロスマンズカラーの車両も当時の読者から人気を集めました。バリバリ伝説が社会現象化したことで、NS400Rはただのバイクではなく「グンの相棒」として語り継がれる存在になったのです。
「2ストV3の咆哮」1985ホンダNS400R:ヤングマシン(NS400Rの詳細スペック・歴史解説)
NS400Rは1985年5月10日に本田技研工業より発売されたレーサーレプリカです。エンジンは水冷2ストローク・90度V型3気筒で、総排気量は387ccというやや中途半端な数字。これにはれっきとした理由があります。
核心は「前バンク2気筒・後バンク1気筒」という気筒配置です。本家WGPマシンNS500は「前バンク1気筒・後バンク2気筒」という逆の配置でした。この違いが市販車としての扱いやすさと保安部品の搭載を両立させるための工夫で、後バンク2気筒にすると排気チャンバーの熱がシートに伝わりやすくなるという現実的な問題を回避するための設計でした。
国内仕様の59psという数字は当時の400ccクラスとしては圧倒的な性能でした。さらに最大トルク5.1kgf-mはクラス最大で、2ストとは思えないほど低回転域から扱いやすいエンジン特性を持っていたとされています。
つまり「レーサーレプリカ=乗りにくい」という常識を覆したモデルでもありました。
前バンク2気筒には電子制御排気デバイスATAC(自動調整トルク増幅排気機構)が搭載されており、エンジン回転数を自動検知して排気容積を変化させる仕組みです。これにより低回転でもトルクが確保でき、高回転域に入ると2ストらしい鋭い加速感が爆発的に出現します。バリバリ伝説でグンが「このバイクは生きている」と感じたような走りの源泉がここにあります。
フレームはコンピュータ解析による軽量・高剛性の角型断面アルミ製ダブルクレードルで、アルマイト処理済み。サスペンションは前後ともに調整可能な豪華仕様で、前輪にはエアアシスト式、後輪にはプロリンクが採用されました。ブレーキにはTRAC(ブレーキトルク応答型アンチダイブ機構)が装備され、制動時のノーズダイブを効果的に抑制します。高価格帯の装備を惜しみなく投入したという意味では、当時の400ccクラスでは異次元の豪華さでした。
ホンダNS400RとNS500の技術的な比較・詳細解説(motorz.jp)
「世界チャンピオンマシンのレプリカ」という鳴り物入りで登場したNS400Rですが、実際にはライバルのスズキRG400Γやヤマハに圧倒的な差をつけることができず、1986年にはわずか2年間という短命で生産終了となりました。これが意外ですね。
なぜそうなったのか。背景にはホンダ社内の複雑な事情がありました。NS500を製作したのはホンダのレース部門であるHRC(Honda Racing Corporation)という組織です。市販車部門からNS500の技術共有を求めても、HRCは「ファクトリーマシンの技術は外に出せない」と首を縦に振りませんでした。つまりNS400Rは、NS500の本当のノウハウを受け継げないまま、前身モデルMVX250Fの技術を転用して開発されたという宿命を背負っていたのです。
さらに当時のホンダのエンジニアたちは、本田宗一郎氏の「4ストロークで勝つ」という理念のもとで育ってきた人材が中心でした。2ストを本気で作りたいというモチベーションよりも、「営業の要求に応えるために作った」という色合いが製品にも出てしまったとも言われています。
この失敗は無駄ではありませんでした。NS400Rの開発経験がHRCと市販車部門の溝を埋める契機となり、その後の共同開発によって生まれたのがNSR250Rです。NSR250Rは2スト250ccクラスの絶対王者として君臨し、空前のヒットを記録しました。結論は「NS400Rはいわばホンダ2スト黄金期の礎」ということですね。
「狂った時代が生んだ不幸」NS400R の生い立ちと評価(bike-lineage.org)
1980年代の中頃、レーサーレプリカ市場は激戦地でした。スズキRG400Γ、ヤマハRZV500R、そしてNS400Rが互いの優劣を競っていた時代です。それぞれのバイクは方向性が微妙に異なり、乗り手の個性を映す鏡のような存在でした。
| モデル名 | メーカー | エンジン形式 | 最高出力(国内) | 価格(当時) |
|---|---|---|---|---|
| NS400R | ホンダ | 水冷2スト V型3気筒 | 59ps | 62万9,000円 |
| RG400Γ | スズキ | 水冷2スト 4気筒 | 59ps | 61万円前後 |
| RZV500R | ヤマハ | 水冷2スト V型4気筒 | 64ps | 69万円前後 |
最高出力だけ見るとNS400RとRG400Γは同じ59psですが、エンジン特性は別物です。RG400Γは4気筒らしい高回転型の鋭い吹け上がりが魅力で、本家WGP500マシン・RG500Γとの設計的な共通点も多く「本物感」では一歩リードしていました。
NS400Rの独自の強みは「低回転からのトルクの厚さ」と「取り回しの軽さ」でした。乾燥重量163kgという数値は同クラスの中でも軽量で、V型3気筒によるコンパクトな車格もあって峠での扱いやすさは高い評価を得ていました。これが条件です。
バリバリ伝説でグンが峠でFZ400Rをぶっちぎるシーンがありますが、あれはNS400Rの軽さとトルク特性があってこそのパフォーマンスです。現実世界でも「ストリートで乗りやすい2スト400」という評価は実際のオーナーから多く聞かれました。
現在の目線から見ると、V型3気筒という気筒数はNS400RとMVX250Fにしか存在しない世界唯一の形式であり、コレクターや2ストマニアにとって希少性という観点からの価値が非常に高い点が最大の魅力と言えるでしょう。唯一無二が条件ではなく、唯一無二そのものがこのバイクの本質です。
「旧車だから安く買えるだろう」と思っている方がいれば、それは大きな誤解です。NS400Rの中古平均価格は2026年2月時点で約171万円(グーバイク調査)に達しており、発売当時の新車価格62万9,000円の実に2.7倍以上に跳ね上がっています。
| 走行距離 | 上限買取価格(目安) | 平均買取価格(目安) |
|---|---|---|
| 〜5,000km | 約105万円 | 約90万円 |
| 5,001〜15,000km | 約94万円 | 約79万円 |
| 15,001〜30,000km | 約83万円 | 約68万円 |
| 30,001km〜 | 約72万円 | 約57万円 |
※2024年7月時点の中古車情報サイトデータをもとにした目安です。販売価格は買取価格の約2倍が目安のため、中古販売価格はさらに高くなります。
相場が高騰している主な理由は3つあります。まず絶版から40年が経過し、現存台数が大幅に減少していること。次に2ストレプリカ全般の旧車市場が2020年以降に急上昇したこと。そしてバリバリ伝説の再評価や、同作者しげの秀一の『頭文字D』人気の高まりによる逆引き需要です。痛いですね、入手難易度も価格も年々上昇しています。
入手を検討する際に注意すべき点も多くあります。NS400Rは水冷2ストロークエンジンのため、整備できるショップが非常に限られます。2ストオイルや冷却水の管理が不適切だったまま長年放置されている個体も市場には存在しており、不動車や要レストア車はそれに見合う追加費用が確実に発生します。
旧車の2スト専門店や旧車オークションを活用するのが現実的なアプローチです。また状態の良い個体はすぐに売れてしまうため、希望条件を登録できるバイク情報サイトのアラート機能を使って情報収集するのが得策でしょう。
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