

トラスフレームのバイクは「外装なしでも美しい」と言われるが、実は転倒1回で廃車になるリスクがある。
「トラスフレーム」という言葉を聞いても、ピンとこないライダーも多いかもしれません。しかし一度その構造を理解すると、バイク選びの視点が大きく変わります。
トラスフレームとは、細い鋼管(スチールパイプ)を複数の三角形に組み合わせて骨格を作る構造のことです。身近な例で言うと、東京タワーや鉄道橋を思い浮かべてください。あの細い鉄骨が無数の三角形に組まれているのが、まさにトラス構造です。三角形は「変形しにくい」という力学的な特性を持っており、同じ重量の材料を使った場合でも、四角形より圧倒的に強い骨格を作れます。
バイクのフレームに話を戻すと、パイプを三角形に配置することで「軽量でありながら高剛性」を実現できるのがトラスフレームの最大の強みです。これはツインスパーフレーム(アルミフレーム)が剛性をアルミの分厚さで稼ぐのとは、根本的な考え方が違います。
なお、よく混同される「トレリスフレーム」という言葉があります。「トレリス」はイタリア語・英語で「格子」を意味し、見た目から名付けられた呼び名です。厳密に言えば、溶接で組み合わせたものはトラス構造ではなくラーメン構造に分類されます。しかし現在のバイク業界では、スチールパイプを格子状に組んだフレーム全般をトラスフレームまたはトレリスフレームとまとめて呼ぶのが一般的です。
メーカーによって呼び方が違うのも特徴の一つです。ホンダやスズキは「トラスフレーム」、カワサキは「トレリスフレーム」と表記しています。どちらも同じ構造と考えてOKです。
| 呼び名 | 意味 | 主な使用メーカー |
|---|---|---|
| トラスフレーム | 三角構造の骨格(建築用語が語源) | ホンダ、スズキ、Ducati、KTM |
| トレリスフレーム | 格子状の骨格(見た目から) | カワサキ、BMW |
これが基本です。
参考:トラスとトレリスの違い、業界での使われ方について詳しく解説されています。
「トラス」と「トレリス」は同じ? 別モノ? バイクのフレーム構造に見られる呼び名の違いとは? – バイクのニュース
トラスフレームの特性を正しく理解するためには、他のフレームと比べてみるのが一番わかりやすい方法です。代表的なフレームには、ダブルクレードルフレーム・ツインスパーフレーム(アルミ)・バックボーンフレームなどがあります。
まず、トラスフレーム最大のメリットは「設計の自由度が高い」点です。パイプの太さや長さ、配置を変えるだけで、必要な場所に必要な強度を集中させることができます。これはアルミのツインスパーフレームが金型コストの関係で設計変更が難しいのとは対照的です。また、スチールパイプを素材に使うため、溶接作業さえできれば製造設備への初期投資がツインスパーより少なく済むという側面もあります。これが欧州の小ロット生産メーカーに好まれる大きな理由です。
走りの面では、スチールパイプ特有の「しなり」がハンドリングのいい意味での遊びを生み、アルミフレームの剛性とは異なる柔らかさのある乗り味が得られます。街乗りやワインディングで「自分でバイクをコントロールしている感覚」を強く感じられるのは、この特性があるからです。
一方のデメリットも見ておきましょう。最大の課題は製造コストと量産性の低さです。数十か所以上に及ぶ溶接を、高精度に行うには熟練の職人技が必要で、工場の自動化ラインで量産するのが非常に難しい構造です。国産バイクへの採用例が少ない最大の理由がこれです。年間数万台規模での量産が必要な国産メーカーにとって、トラスフレームはコスト面でハードルが高いのです。
| 比較項目 | トラスフレーム | アルミツインスパー | ダブルクレードル |
|---|---|---|---|
| 軽量性 | ◎ | △ | |
| 剛性 | ◎ | ○ | |
| 設計自由度 | ◎ | △ | ○ |
| 量産性 | × | ◎ | ○ |
| 修理のしやすさ | △ | × | ○ |
| 見た目の美しさ | ◎ | ○ | △ |
つまり「性能・美しさ・設計自由度」と「量産性・修理コスト」がトレードオフの関係にあるということですね。
参考:各フレーム形式の特徴とメリット・デメリットを詳しく比較した記事です。
フレーム形状ごとのメリットとデメリットとは? – Webikeプラス
トラスフレームを採用するバイクは、国産・外車合わせて多数あります。ただし、国産車はごく限られたモデルのみで、主役は圧倒的に欧州メーカーです。ここでは代表的なモデルを紹介します。
まず外車から見ていきましょう。Ducati(ドゥカティ) はトラスフレーム(トレリスフレーム)を代名詞にしてきたメーカーで、Monster 900、916、748、998、Hypermotardなど多くの名車に採用されています。ただし現行のMonsterシリーズはモノコックフレームに変更されており、往年のトラスフレームを好むファンにとっては惜しまれている部分でもあります。
KTM(ケーティーエム) はDukeシリーズ全般(125〜1290cc)、RCシリーズ(RC390など)にトラスフレームを採用しています。特にKTM 390 Dukeは車重わずか149kgの軽量ボディにトラスフレームを組み合わせており、「フレームがガッチリしていてクイックなハンドリング」とオーナーからも高い評価を受けています。
国産車ではスズキ SV650が最も有名です。水冷645cc・90°Vツインエンジンを搭載し、スチール製トラスパイプフレームを採用。装備重量199kgの軽量ボディでありながら、Vツインらしいトルクフルな特性と扱いやすさが高く評価されてきました。燃費はWMTCモード値で24.4km/L、タンク容量14Lで約340kmの航続距離というバランスの良さも魅力です。残念ながら2025年に生産終了となりましたが、中古市場での人気は依然として高いモデルです。
ホンダ VTR250も国産トラスフレームの代表格です。1997年から2016年まで生産され、「トラス構造のピボットレスフレーム」を採用した250ccスポーツ。入門用として長く愛され、現在も中古市場での根強い人気があります。
これは使えそうです。自分が狙っているバイクがトラスフレームかどうかを確認するだけで、乗り味の傾向がある程度予測できるようになります。
ここが、多くのライダーが見落としがちな重要なポイントです。
トラスフレームは細いパイプが複雑に組み合わさった構造のため、一見すると繊細に見えますが、構造自体は非常に堅牢です。しかし問題は損傷したときの修理難易度とコストにあります。
バイクのフレームは一般的に、転倒や事故による損傷が激しい場合、「フレーム交換」という対処になります。バイクのフレーム交換には、車台番号の職権打刻手続きを含めると、ショップへの工賃だけで20〜25万円程度かかるとも言われています。トラスフレームの場合は溶接箇所が非常に多く、正確な補修には熟練した溶接技術が必要なため、さらにコストが上がるケースもあります。
溶接で組まれたトラスフレームは、強い外力が加わると「歪み」が生じることがあります。修正機にかけても溶接部分の強度が落ちてしまい、フレーム剛性がグズグズになるケースもあるため、大きな損傷の場合は「修理せず廃車、または新しいフレームへ交換」という判断になることも少なくありません。これは特に中古でトラスフレームバイクを買う場合に知っておくべき事実です。
中古でトラスフレームバイクを購入する際は、フレームの溶接部分の塗装割れや錆、ストッパー部分の凹みを必ず確認しましょう。これらは転倒歴・事故歴のサインになります。走行安全性に直接影響するため、見た目では問題なさそうに見えても、溶接部分に異常があるバイクは避けるのが賢明です。
トラスフレームバイクを長く愛車にするために取り組むべきことがあります。日常的なメンテナンスで特に意識したいのは、フレームの定期的な目視点検です。サビの初期段階なら、タッチアップペイントや防錆スプレーで早期対処できます。フレームへのサビや塗装剥がれを放置すると、溶接部分から腐食が進み取り返しがつかなくなります。定期的にフレームを清掃・確認する習慣をつけるのが原則です。
参考:中古バイク購入時のフレームチェックポイントや注意事項が詳しくまとめられています。
VTR250が価格高騰する5つの理由|中古相場と今後の予測を徹底解説
「なぜ国産バイクにはトラスフレームが少ないのか?」という疑問を持ったことがあるライダーも多いのではないでしょうか。これには、バイクメーカーの生産哲学と市場規模という、ふたつの根本的な理由があります。
まず生産規模の問題です。ホンダやスズキ、カワサキ、ヤマハのような大手国産メーカーは、1車種あたりの年間生産台数が多く、コスト管理と品質の均一化が最優先課題です。トラスフレームは溶接箇所が数十か所を超えることも珍しくなく、一か所でも精度がずれれば製品の品質に影響します。自動化ラインでの量産が難しく、熟練工の手作業に頼ざるを得ない面が大きいため、大量生産を前提とした国産バイクには採用しにくい構造です。
一方、DucatiやKTM、MV Agusta、Biomotaといった欧州の中小規模メーカーは、1モデルあたりの生産台数が国産に比べてはるかに少ない傾向があります。少量生産ならば熟練工が丁寧に仕上げても生産計画が成立するため、トラスフレームが現実的な選択肢になります。その結果、欧州メーカーの「少量・高品質・高付加価値」という路線とトラスフレームの特性が見事に一致しているわけです。
また、設計自由度の高さも欧州メーカーに好まれる理由のひとつです。新しいエンジンを載せる際に、金型を作り直す必要がなく、パイプの配置を変えるだけで対応できるトラスフレームは、小ロット・多品種生産のメーカーにとって非常に都合が良い構造です。
もうひとつ、意外と知られていない視点があります。スズキ TL1000S(1997年)は量産車として世界初のオールアルミ製トラス構造フレームを採用しており、国産メーカーがトラスフレームの可能性に挑戦してきた歴史があります。後継のSV1000/Sでも高真空アルミダイキャスト製法によるトラスフレームが採用されています。つまり、技術的に不可能だから採用しないのではなく、コストと量産性のバランスから「あえて採用しない」という判断がなされているのです。これはバイク好きとして知っておいて損はない話です。
参考:国産・外車を含めたトラス・トレリスフレーム採用モデルの詳細リストが確認できます。
「トラス」と「トレリス」は同じ? 別モノ? バイクのフレーム構造に見られる呼び名の違いとは? – バイクのニュース

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