

トラスフレームのバイクは「見た目がカッコいいだけ」と思っていると、購入後に後悔するかもしれません。
トラスフレームとは、細いスチールパイプを三角形(トラス)の形状に組み合わせて作るフレーム構造のことです。「トレリスフレーム」と呼ばれることもあり、この2つはほぼ同義で使われています。ただし厳密には、トラスは「三角形の組み合わせで構成された構造体」を指す建築・工学用語で、トレリスは「格子状」を意味するため、パイプの見た目に着目した表現です。
三角形がなぜ強いのか、少しだけ理解しておくと役立ちます。四角形(正方形)は外から力が加わると変形しやすいのに対し、三角形は一辺に力が加わっても他の二辺が突っ張るため形が崩れません。これが「トラス構造」の根本原理です。東京タワーや鉄道の鉄橋をよく見ると、無数の三角形が連なっているのがわかるはず。あの構造と同じ原理がバイクのフレームに使われています。
つまり、軽いパイプの組み合わせでありながら高い剛性を確保できるのが基本です。
バイクにおいてトラスフレームが最初に広く注目されたのは、1985年にイタリアのビモータ(Bimota)が「db1」に採用した頃だとされています。その後、DucatiやKTMなど多くの欧州メーカーが積極的に採用し、現在に至っています。
国産メーカーでも採用例はあります。ホンダはVTRシリーズ(1997年〜2016年最終型)に「トラス構造のピボットレスフレーム」として採用。スズキはSV650/Xに「スチール製トラスパイプフレーム」を採用し続けました(SV650は2025年に生産終了)。ヤマハは1987年の「SDR」に、カワサキはNinja H2やZX-25Rシリーズなど幅広い車種に「トレリスフレーム」として採用しています。意外と国産にも使われているということですね。
| フレーム名称 | 主な素材 | 代表車種 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| トラス(トレリス)フレーム | スチール | SV650、KTM Duke、Ducati Monster | 軽量・高剛性・設計自由度高 |
| ダブルクレードルフレーム | スチール | CB400SF、XJR1300 | エンジンを囲う、ネイキッドに多い |
| ツインスパー(ダブルチューブ)フレーム | アルミ | Ninja ZX-10R、YZF-R1 | 超高剛性、SS系に多い |
| バックボーン(ダイヤモンド)フレーム | スチール | CBR250RR、GPZ900R | エンジンを剛性部材として活用 |
バイクに採用される主なフレーム形式を比較すると、トラスフレームは「軽量・高剛性・見た目の美しさ」という3点において突出した特性を持っています。ただし、他のフレームにはないデメリットも存在します。この点は後述のセクションで詳しく触れます。
参考:バイクのフレーム形状ごとのメリット・デメリットを詳細に解説した権威ある専門記事です。
フレーム形状ごとのメリットとデメリットとは? – Webikeプラス
トラスフレームを採用したバイクを具体的に知っておくと、購入時の選択肢が広がります。以下に国産・外車の代表的なモデルをまとめました。
🔴 Ducati(ドゥカティ)
Ducatiはトラスフレームの代名詞的存在です。Monster M900(1993年〜)、916、748、998、Hypermotardなど、スポーツ系の多くにトラス(トレリス)フレームを採用してきました。ただし、現行のPanigaleシリーズはモノコックフレームへ移行しており、最新のMonsterシリーズも2021年モデルからアルミフレームに変更されています。「Ducati=トラスフレーム」というイメージは過去のものになりつつあります。これは意外な事実です。
🟣 KTM(ケーティーエム)
KTMは現在もトラス(トレリス)フレームを積極的に採用するメーカーの筆頭です。125 DUKEから1290 Super DUKE Rまで、Dukeシリーズ全体にスチール製トレリスフレームを採用しています。2022年型RC390では、フレームの刷新により重量を1.5kg削減しながら剛性を大幅に向上させるという成果を達成しました。軽量化と高剛性の両立がここまで進化しているということですね。
🟠 Suzuki(スズキ)
SV650はスズキが誇るトラスフレーム採用の代表モデルです。650ccのVツインエンジンを支えるスチール製トラスパイプフレームは、軽量かつ剛性バランスに優れ、車体重量200kgを切る軽さを実現しました(乾燥重量:193kg)。スリムなフレームとVツインエンジンの組み合わせが生み出す独特のフォルムは、多くのライダーに愛されています。2025年に惜しまれながら生産終了となりましたが、中古市場では依然として高い人気を誇ります。
🔵 Honda(ホンダ)
ホンダのVTR250は、250ccクラスでトラスフレームを採用した珍しい存在です。「トラス構造のピボットレスフレーム」として、2016年の生産終了まで採用し続けました。クランクケースを支点にスイングアームを取り付けることで、後輪からの振動を軽減するという独自の設計が特徴です。
🔵 Kawasaki(カワサキ)
カワサキはNinja H2 / H2 SX(200馬力超)、Ninja ZX-25R、ZX-4R、Ninja 250/400、Z650RS、Z900RSなど幅広い車種にトレリスフレームを採用しています。250ccの並列4気筒を支えるZX-25Rにもトレリスフレームが使われているのは、剛性設計の観点から非常に理にかなった選択です。
参考:トラスフレーム採用バイクの国産・外車を幅広くまとめた一覧記事です。
トラスフレーム採用バイク一覧|美しい格子フレームに惚れる名車たち
トラスフレームの最大のメリットは、「高剛性・軽量・設計自由度の高さ」という3点の同時実現です。これは他のフレーム形式ではなかなか達成できない組み合わせです。
まず剛性について見てみます。三角形の集合体であるトラス構造は、ブリッジ(橋)や鉄塔と同じ原理で力を分散・吸収します。短いパイプを多数組み合わせることで、一か所に力が集中せず全体で荷重を受け止めます。これが、細いパイプの集合体なのに高い強度を持つ理由です。
次に軽量性についてです。太いアルミ製のツインスパーフレームのように「素材の断面積を大きくして剛性を稼ぐ」アプローチとは異なり、トラスフレームは「形(三角形)で剛性を稼ぐ」アプローチを取ります。そのため、パイプ1本1本を細くできる分、素材量を減らして軽量化が可能です。KTMの2022年型RC390は、このアプローチでメインフレームを700g、サブフレームを800g、合計1.5kgの軽量化を達成しました。たったパイプの配置見直しだけで1.5kg減は、確かに驚異的です。
そして、乗り味の観点からも大きな利点があります。スチール(鉄)パイプはアルミと異なり、適度なしなりを持ちます。剛性が高すぎると、コーナリング時にフレームが一切たわらずタイヤからの情報を受け流してしまいます。スチール製トラスフレームは、剛性と適度なしなやかさを共存させやすい構造です。SV650の試乗インプレッションでは、「ペースが上がるほどに頼もしさを実感し、サスペンションを含めてしなやかさがある」という評価が多く見られます。これは使えそうな知識です。
また、設計の自由度が高いという点も重要なメリットです。短いパイプの長さ・太さ・角度を組み合わせることで、剛性の強い部分・柔らかい部分を自由にコントロールできます。場所ごとに径の異なるパイプが使われているのはそのためで、無闇にパイプを張り巡らせているわけではありません。適材適所な補強が可能なのが原則です。
参考:SV650のトラスフレームが走行性能にどう影響するかを詳しく解説しています。
スタイリングに騙されるな。SVのスポーツが開花する。SUZUKI SV650試乗記
トラスフレームが非常に優れた構造であることは間違いありません。ただし、見落とされがちなデメリットも存在します。知らずに選ぶと、維持費や修理費に関して想定外の出費につながるリスクがあります。
最大のデメリットは、製造に熟練した溶接技術が必要なことです。短いパイプを三角形に正確に組み合わせて溶接する工程は、大型の板を切り出して溶接するアルミツインスパーフレームとは根本的に手間が違います。溶接箇所が非常に多いため、一台を仕上げるのに要する工数が格段に増えます。これが国産バイクへのトラスフレーム採用が限られる最大の理由です。国産メーカーは年間何万台という規模で生産しますが、そのラインにトラスフレームを組み込むのはコストと製造効率の両面で大きなハードルがあります。量産に向かないのが条件です。
逆に欧州メーカーが採用例が多いのは、生産台数が比較的少なく、熟練工による少量生産に向いているためです。Ducatiがトレリスフレームで名を馳せた背景にはこういった事情もあります。
また、フレームが損傷した際の修理費用が高くなる点も注意が必要です。一般的なバイクのフレーム修正費用は数万〜十数万円が目安ですが、複数のパイプが絡み合うトラス構造のフレームが転倒や事故で変形した場合、特定の溶接箇所の再溶接・パイプ交換が必要になることがあります。対応できるショップが限られるため、工賃が高くなる傾向があります。ショップ選びが重要です。
さらに、サイドカバーや外装パーツの取り付けに制約が生じる場合があります。フレームにパイプが多数張り出しているため、汎用のカウルやパーツが合わないケースがあります。カスタムを楽しみたい場合は、対応パーツの種類と価格を事前に確認することをおすすめします。
維持コストが気になる場合、購入前にディーラーや専門ショップにフレーム損傷時の修理実績と費用感を確認しておくのが賢明です。特に中古でトラスフレームのバイクを購入する際は、フレームの歪みや溶接部のクラックを事前にチェックしてもらいましょう。フレームチェックが条件です。
参考:「トラスとトレリスの違い」から国産採用事情まで詳細にまとめた専門記事です。
「トラス」と「トレリス」は同じ? 別モノ? バイクのフレーム構造 – Yahoo!カービュー
「トラスフレームとアルミツインスパーフレーム、どちらが優れているのか」という疑問を持つライダーは少なくありません。結論から言えば、どちらが絶対的に優れているということはなく、バイクの用途と乗り手の好みによって答えが変わります。
アルミ製ツインスパーフレームは、MotoGPをはじめとするスーパースポーツ系バイクに採用されています。断面積の大きなアルミ板を組み合わせることで超高剛性を実現し、リッタースーパースポーツのような極限の走行性能に対応できます。しかし、剛性が非常に高い分、スチールのような「しなり」がほぼありません。路面の凹凸からの衝撃が直接ライダーに伝わりやすく、長距離ツーリングでは疲労につながりやすい側面もあります。
一方、スチール製トラスフレームは、スポーツ走行を楽しみつつ日常的な使いやすさも確保したいライダーに向いています。SV650のユーザーが「ペースが上がるほど頼もしさを感じる」と評価するのも、適度な剛性バランスが生み出す乗り味の賜物です。
以下の基準で選ぶとわかりやすいです。
| 比較項目 | トラス(スチール)フレーム | ツインスパー(アルミ)フレーム |
|---|---|---|
| 乗り味 | しなやか・適度な柔軟性あり | 硬い・レスポンスが鋭い |
| 軽量性 | 設計次第で十分軽い | 同一形状ならアルミの方が軽い |
| 振動吸収 | 鉄のしなりが振動を一部吸収 | 振動が直接伝わりやすい |
| 修理のしやすさ | 溶接修理は可能だが技術が要る | アルミ溶接はさらに難しい |
| 用途 | ツーリング〜スポーツ走行全般 | サーキット・ハイスピード走行 |
| デザイン | メカニカルな骨格美がある | 外装に隠れてほぼ見えない |
「アルミフレームが最新・最強」という思い込みは要注意です。フレームに求められる要素は剛性だけではなく、適切なしなりや振動吸収も重要な性能のひとつです。スチール製トラスフレームが現在も多くのメーカーに採用され続けているのは、コスト面だけでなく乗り味の優位性があるからだと理解しておくと、バイク選びの視野が広がります。
フレームの違いが気になるライダーは、実際に試乗してアルミフレームのバイクとスチールトラスフレームのバイクを乗り比べてみるのが一番の近道です。試乗が最善です。
トラスフレームのバイクを選ぶ際に、他の情報サイトではあまり触れられない独自の視点があります。それは「フレームが露出している」ことで生まれるメリットとデメリットです。
トラスフレームのバイクはネイキッドスタイルとの相性が非常に良く、フレームがむき出しになって外から見えるデザインが多くなります。見た目の美しさが際立つ一方で、フレームそのものが「外気にさらされている」という事実を忘れてはいけません。
まず錆(さび)の問題です。スチール製トラスフレームは、アルミフレームと異なり鉄素材のため錆びます。新車時は塗装やコーティングで保護されていますが、走行中の飛び石や小傷によって塗装が剥がれると、そこから錆が発生しやすくなります。特にフレーム溶接部のつなぎ目付近は塗装が薄くなりやすく、水分が溜まりやすいポイントです。
定期的なフレームの目視確認と、傷を見つけたらタッチアップペイントで早めに補修することが、長持ちさせる基本です。年に1〜2回、フレーム全体を確認する習慣が大切です。
カスタムについては、パイプ部分にラッピングやカラーペイントを施してフレームを個性的に演出するカスタムが人気です。市販のフレームスライダーやエンジンガードを装着する際も、フレームのパイプ配置を把握しておく必要があります。装着位置の選択に自由度がある半面、取り付けに対応する汎用品が少ない場合もあります。購入前にカスタムパーツのラインアップを確認しておくと安心です。
また、フレームを保護する観点からは「立ちゴケ対策」も重要です。SV650のオーナーレビューでは「取り回しがリッターバイクより重く感じる」という声もあります。エンジンガードやフレームスライダーを装着しておくことで、万一の転倒時にフレームへのダメージを最小限に抑えられます。フレームスライダーは必須といえます。
フレームが見えるバイクは、乗るたびにその構造美を楽しめる特別な存在です。適切なケアを続けることで、10年後も美しいフレームを維持できます。長く大切に乗るためのメンテナンス習慣を最初から身につけておくと得です。
参考:SV650のオーナー目線でトラスフレームの魅力を語ったリアルな声を紹介しています。
オーナーが語る!スズキ「SV650」ってぶっちゃけどうなのよ! – Webike