ハイドロプレーニング現象の速度を計算してバイクを守る方法

ハイドロプレーニング現象の速度を計算してバイクを守る方法

ハイドロプレーニング現象の速度を計算してバイクのリスクを把握する

タイヤの空気圧を1kPaでも下げると、ハイドロプレーニングの発生速度が約6km/h早まって転倒リスクが跳ね上がります。


この記事でわかること
💡
計算式「V=63√P」とは?

NASAが導き出したハイドロプレーニング発生速度の計算式を、バイク乗りの視点でわかりやすく解説します。

⚠️
タイヤの状態が発生速度を左右する

タイヤ溝の残量と空気圧が、ハイドロプレーニングが起きる速度を大きく変える仕組みと、具体的な数値を紹介します。

🛡️
万が一の場面での正しい対処法

もしハイドロプレーニングが発生してしまったとき、バイクライダーが取るべき行動を整理して解説します。


ハイドロプレーニング現象とはバイクライダーが知るべき基本メカニズム


ハイドロプレーニング現象とは、濡れた路面を走行中にタイヤと路面の間に水の膜が形成され、タイヤが路面から浮いてしまう現象です。アクアプレーニング現象とも呼ばれます。この状態に陥ると、ハンドル操作もブレーキもまったく効かなくなります。


バイクは車と違い、2輪という構造上、ハイドロプレーニングが起きた瞬間にバランスを保つことが格段に難しくなります。4輪の車であれば多少の水膜でも車体が支えられる場面があるのに対し、バイクは前後どちらかのタイヤが浮いただけでも転倒につながるリスクがあります。これが大きな違いです。


ハイドロプレーニング現象が発生するには、大きく3つの要素が絡み合います。


  • 🌧️ 水の量(路面の水深):水たまりやわだちに溜まった水が多いほど発生しやすくなります。目安として水深がタイヤの溝の深さを超えた段階でリスクが一気に高まります。
  • 💨 走行速度:速度が高いほどタイヤの排水が追い付かなくなり、水膜が形成されやすくなります。ブリヂストンの実験では時速80km付近からタイヤの一部が浮き始め、時速100kmではほぼ全体が浮いた状態になることが確認されています。
  • 🔧 タイヤの状態(溝の深さ・空気圧):溝が浅いタイヤや空気圧が低いタイヤは排水能力が著しく低下します。結果として、通常より低い速度域でもハイドロプレーニングが起きてしまいます。


雨の日の高速道路は特に注意が必要です。一般道と比べてスピードが落ちにくいうえ、わだちに水が溜まりやすい環境が重なります。「雨だから気をつけている」だけでは不十分で、タイヤの状態まで把握しておくことが原則です。


参考:ブリヂストンタイヤ「ハイドロプレーニング現象とは?危険性と予防策」
https://tire.bridgestone.co.jp/about/driving/rainy/


ハイドロプレーニング現象の発生速度をNASAの計算式で算出する方法

実はハイドロプレーニングが発生し始める速度は、NASAが導き出した計算式で予測することができます。その式がこちらです。


記号 意味 単位
V ハイドロプレーニング発生限界速度 km/h
P タイヤの空気圧 kgf/cm²


$$V = 63\sqrt{P}$$


この式は「水深がタイヤの溝より深い状態」という前提条件のもとで成立します。つまり「路面の水が完全にタイヤの溝をオーバーする深さにある」ときに、この計算速度以上で走るとハイドロプレーニングが発生するということです。


具体的な数値で見てみましょう。


空気圧(kgf/cm²) 計算式 発生限界速度の目安
1.5(低め・空気が抜け気味) 63 × √1.5 ≒ 63 × 1.22 約 77 km/h
2.0(一般的な標準値) 63 × √2.0 ≒ 63 × 1.41 約 89 km/h
2.5(やや高め) 63 × √2.5 ≒ 63 × 1.58 約 100 km/h
3.0(高め) 63 × √3.0 ≒ 63 × 1.73 約 109 km/h


空気圧が2.0kgf/cm²のバイクは、大雨で水深がタイヤの溝を超えている路面を約89km/h以上で走った瞬間にハイドロプレーニングが発生し得るということです。これは驚きですね。


逆に言えば、空気圧を規定値よりわずか0.5上げて2.5にするだけで、限界速度が89km/hから100km/hへと約11km/hも高まる計算になります。もちろん「空気圧を高めれば完全に安全」というわけではなく、タイヤの溝の状態や水深という前提条件が変われば話は別です。ただ、空気圧の管理が直接リスクの数値に直結していることは覚えておけばOKです。


注意点として、この計算式はあくまで「水深がタイヤ溝より深い場面」を前提にしています。ゲリラ豪雨や冠水路面など、極端に水が多い状況を想定した計算式として理解してください。


参考:webcartop「【危険】浅溝タイヤは80km/hでも濡れた路面で「浮く」ことがある!」
https://www.webcartop.jp/2016/07/45583/2/


ハイドロプレーニング現象はタイヤ溝の残量で発生速度が大きく変わる

計算式「V=63√P」は空気圧だけを変数にしていますが、実際の現場ではタイヤ溝の残量が「前提条件」そのものを左右します。つまり溝が浅ければ、わずかな雨でも水深がタイヤの溝を超えやすくなり、この計算式が「すでに成立している状態」に陥りやすくなるということです。


タイヤ溝の残量とリスクの関係は、以下のように理解するとわかりやすいです。


タイヤ溝の残量 状態の目安 ハイドロプレーニングリスク
8mm前後 新品に近い状態 90km/h以上で注意
4mm前後 交換を検討すべきライン 70〜80km/hから注意
3mm前後 危険領域 60km/h前後でも注意
1.6mm(スリップサイン露出) 法律上の使用限度(整備不良) 50km/h以下でも発生の可能性


バイク用タイヤの法定基準は溝の深さ0.8mm以上と定められており(道路運送車両の保安基準)、スリップサインが露出した状態で走行すると整備不良として罰則の対象となります。ここが条件です。


ただし注意したいのは、スリップサインが出ていないからといって安心できない点です。タイヤ溝が4mm以下になるとハイドロプレーニングのリスクが急激に高まり、3mm以下では「ちょっとした大雨」でも計算式の前提条件が満たされやすくなります。厳しいところですね。


一般道の走行速度帯(時速40〜60km程度)でも、タイヤ溝が3mm以下で冠水気味の路面を走れば、ハイドロプレーニングは十分に起こり得ます。「高速道路だけ気をつければいい」という考え方はダメです。


バイク専門店やガソリンスタンドで2週間に1回程度、タイヤの溝深さと空気圧を同時に確認する習慣をつけると、こうしたリスクを事前に把握しやすくなります。


参考:ダンロップタイヤ「ハイドロプレーニング現象について」
https://tyre.dunlop.co.jp/knowledge/tyrecheck/trouble_hydro


ハイドロプレーニング現象が起きたときのバイクでの正しい対処法

万が一、走行中にハイドロプレーニング現象が起きてしまったとき、ライダーはどう対応すればよいのでしょうか?


まず大前提として、「何もしない」が基本です。ハンドルを切ったり、急ブレーキをかけたりすると、わずかに残っているバランスをさらに崩してしまいます。急激な操作は転倒の引き金です。


正しい対処の流れは以下の通りです。


  1. 🚫 急ハンドル・急ブレーキを絶対に行わない:水膜の上にいる状態でタイヤに力をかけても空回りするだけで、逆に車体が不安定になります。
  2. ⬇️ アクセルをゆっくりと戻して速度を落とすエンジンブレーキを緩やかにかけながら自然に減速させます。スピードが落ちるにつれてタイヤが路面を再びグリップし始めます。
  3. グリップが回復するまで待つ:タイヤが路面に戻るまでの数秒間、焦らずにバイクの挙動を感じ取ります。
  4. 👀 グリップ回復後は慎重に走行再開:再び同じ状況が起こらないよう、速度を大きく落として走行を続けます。


ハイドロプレーニングは「数秒間」のことが多いです。その短い時間に余計な操作をしないことが、転倒を防ぐ最大のポイントです。


また、走行前の段階での予防が何よりも重要です。雨天走行が予想される日には、出発前に必ずタイヤの空気圧と溝の状態を確認してください。タイヤ空気圧チェッカーは500円〜2,000円程度で入手でき、スマートフォンバルブキャップ型センサーを使えば走行中もリアルタイムで確認できます。これは使えそうです。


参考:グーバイク「ハンドルがとられる現象、ハイドロプレーニングを回避するライテク
https://www.goobike.com/magazine/ride/technique/41/


ハイドロプレーニング現象を防ぐバイク乗りだけが知っている事前対策の盲点

ここからは、一般的な記事ではあまり触れられない「バイク特有の盲点」について解説します。


バイクと四輪車では、タイヤの形状がそもそも異なります。四輪車のタイヤは断面が比較的フラットですが、バイクのタイヤはコーナリングのために断面が丸みを帯びたアーチ形状をしています。直進中はタイヤのセンター部分しか接地していないため、トレッド面全体の排水性能が均等に機能しているわけではありません。これが条件です。


つまり、センター部分の溝が先に摩耗するバイクのタイヤは、「外見上は溝が残っているように見えても、実際に接地している中央部分の排水能力はすでに低下している」という状態になりやすいのです。意外ですね。


この点から言えることが2つあります。


  • 🔍 タイヤのセンター部分の溝を重点的に確認する:サイドの溝がまだ残っていても、センターが偏摩耗しているケースがあります。センター溝が3mm以下になっていたら、早めの交換を検討するのが原則です。
  • 💧 走行中の轍(わだち)を意識して避ける:四輪車が繰り返し走ることでできるわだちは、水が特に溜まりやすい場所です。バイクはわだちを避けて走れる横幅の余裕があるため、雨天時は意識的にわだちの外側を走ることでリスクを下げられます。


さらに「雨の降り始め」には特別な注意が必要です。路面に積もった油分や汚れが雨水と混ざり合い、最も滑りやすい状態が生まれます。雨が降り始めてから最初の15〜30分間は、乾いた路面よりも摩擦係数が大きく下がります。ブリヂストンの資料でも「雨の降り始めは特に滑りやすい」と明記されています。


この時間帯に高速走行を避けるだけで、ハイドロプレーニングとスリップの両方のリスクを同時に下げることができます。つまり「濡れ始めた路面こそ最も危険」だということです。


雨天時の走行装備として、視認性を高めるレインウェアや滑り止め効果の高いライディングシューズも、間接的な安全対策として有効です。雨の中でもペダル・ステップ操作の精度が上がるため、いざというときの反応に差が出ます。


参考:autocar.jp「サイトウサトシのタイヤノハナシ~ハイドロプレーニング」
https://www.autocar.jp/post/1132538






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