

2ストロークなのにガソリンとオイルを混合しなくてもエンジンが動きます。
ハスクバーナTE300は293.2ccの水冷2ストロークエンジンを搭載するエンデューロマシンだ。2024年モデルから採用されたTBI(スロットルボディインジェクション)は、スロットルフラップの前後に2本のインジェクターを配置し、電子制御の排気バルブと組み合わせて混合気を精密にコントロールする。これにより、かつての2ストロークが持っていた「特定の回転域でしか使えない」というピーキーな特性がほぼ解消された。
つまり、低回転から高回転まで使えるエンジンということですね。
パワーの出かたはとてもリニアで、スロットルを開けた量に比例して回転数が上昇する感覚がある。オフロード専門メディア・Dirt Bike Magazineのテストによると、TE300はパワーピークに近づいても「ヒット」ではなく「サージング(増幅)」という表現がふさわしく、急激なパワーの立ち上がりに驚かされることがない。エンジン単体重量はわずか24.6kgと極めてコンパクトで、カウンターバランサーシャフトの採用によって振動も大幅に抑えられている。振動が50%以上削減されているという点はオーナーレビューでも繰り返し言及されており、「まるで4ストに乗り換えたかのよう」という感想が多い。
2ストロークは振動が激しいという先入観を持っているライダーほど、試乗すると驚くことになる。また、エンジンマネージメントシステムが現在の回転数と負荷に応じてオイル供給量を自動調整するため、ガスとオイルを手で混合する必要がまったくない。燃料タンクにガソリンを、フレーム上部のフィラーキャップから専用2ストオイルを補充するだけで運用できる。これは知っておくと維持コスト計算がしやすくなるポイントだ。
参考:ハスクバーナ公式サイト TE 300 2025年モデルのエンジン・TBI仕様詳細
https://www.husqvarna-motorcycles.com/ja-jp/models/enduro/2-stroke/te-300-2025.html
「300ccの2ストロークは上級者専用」という声は根強い。しかし現行のTE300は、その固定観念を大きく覆す性能を持っている。ウェビックのユーザーレビューでは「ベータRR2T 300やシェルコSE300と比べるとかなりマイルドな仕様で、普通にコースで乗る程度なら女性でも乗れる程優しい乗り味」という評価が寄せられている。これがこのバイクの最大の特徴の一つだ。
意外ですね。
TBIによるスムーズなパワーデリバリーは、エンデューロライダーのジャンキー稲垣氏のインプレでも詳細に述べられている。「振動というネガフィルターを取り外してみた2スト300の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい」という表現は、このバイクがいかに従来の2ストへの先入観を崩すかを端的に示している。極低回転でもエンストの気配がなく、4ストのトレールバイクに近いフレキシブルさを持ちながら、アクセルを開ければ一気に2スト特有の鋭い加速感が顔を出す。二面性を持ったエンジンだと言えばわかりやすいかもしれない。
一方で、全くのオフロード未経験者にとっては「優しい」と言い切れないレベルのパワーがある点は正直に伝えておきたい。シート高は950mm前後と高く、足つき性に課題を感じるライダーも少なくない。ZETA RACINGが販売するWP XACT対応のローダウンインナーキット(‐30mm〜‐50mmの3段階調整)を使うと、サスペンション性能を犠牲にせずにシート高を下げることができる。足つき不安が購入の障壁になっているなら、そのような専用パーツを検討してみることをおすすめする。
参考:バイクブロスによるハスクバーナ2024エンデューロモデルの国内メディア試乗レポート(TBI変更点の詳細あり)
https://www.bikebros.co.jp/vb/feat/20231227-hqv/
2024年モデルへのフルモデルチェンジで最も大きな進化の一つが足回りだ。フロントフォークはWP製のXACTクローズドカートリッジ(48mm正立式)に刷新され、全長が12mm延長されて940mmとなっている。従来のXPLOR(オープンカートリッジ式)からの乗り換えでも明確に違いがわかるほど滑らかな動作で、バイクブロスの試乗記では「ファクトリーモデルのXPLOR PROにも匹敵するのではないか」という表現が使われるほど高い評価を受けている。これは使えそうです。
リアはWP製XACTリンク式モノショックで、プリロード・コンプレッション(高速・低速)・リバウンドの調整が可能だ。コンプレッションとリバウンドは工具不要のハンドアジャスターで調整できる点も実用的で、走行現場でのセッティング変更が容易になった。KTMのエンデューロモデルがリンクレス式を採用するのに対し、ハスクバーナはリンク式を選択しており、これが乗り味の大きな違いを生んでいる。リンク式はコンプライアンス(しなやかさ)が高く、岩や根など荒れた路面での吸収性に優れるという特性がある。
車両重量は半乾燥で107kgほど。東京駅の改札機と同程度の重さ、と言うとピンとこないかもしれないが、同排気量の4ストロークエンデューロモデルが115〜120kgほどであることを考えると、10kg前後の差がある。オフロードの場面では10kgの差は非常に大きく、転倒からの引き起こしや斜面でのバランス保持において、軽量さは直接的なメリットになる。車体の重量バランスも優れており、エンジンやコンポーネントが車体中心に集中配置されているため、左右への倒し込みや切り返しが非常にスムーズだ。軽さと重心の低さが両立しているということですね。
TE300の主要スペックをまとめると以下のようになる。
| 項目 | スペック |
|------|---------|
| エンジン | 水冷2ストローク単気筒 293.2cc |
| 燃料供給 | TBI(Keihin製 Φ39mmスロットルボディ) |
| 変速機 | 6速 |
| 車両重量 | 約107kg(半乾燥) |
| シート高 | 950mm前後 |
| フロントサスペンション | WP XACT 48倒立フォーク |
| リアサスペンション | WP XACT リンク式モノショック |
| エンジン単体重量 | 24.6kg |
2025年モデルのTE300は、日本国内での参考価格が税込165万円前後となっている(TE300 Heritageは165.40万円、バイクセンサー掲載情報より)。同グループのKTM 300 EXCとの比較では、基本的なエンジンやサスペンションのユニットは共通ながら、リアサスペンションがリンク式(ハスクバーナ)かリンクレス式(KTM)かという点が最大の差異だ。これが原則です。
加えて、サブフレームの素材にも違いがある。KTMがアルミ製を採用するのに対し、ハスクバーナはポリアミド繊維の樹脂製を採用している。変形リスクが低く、ステーの成型が容易なためマウント類の精度が高い。また、ヘッドライトにはLEDを採用し、光量は従来モデルの約3倍となる900ルーメンを実現している。林道ツーリングで夜間や樹林帯の暗所を走る場面では、この明るさは実用上の大きなアドバンテージになる。
参考:バイクブロスによるTE300の車種ガイドページ(スペック・ライバル比較を掲載)
https://www.bikebros.co.jp/vb/offroad/oguide/obg-70/
国内外のインプレでは「エンデューロレース向け」として紹介されることが多いTE300だが、実際にはファンライドや林道ツーリングでの評価も非常に高い。理由は「低速でも死なないエンジン」にある。どれだけ回転数を落としてもスロットルを開ければ即座に回復し、意図的に失速させようとしない限りエンストしない。これはトレールバイクでは当たり前の性質だが、従来の高回転型2ストロークレーサーには期待できなかった特性だ。
🌲 林道ツーリングでの注意点
- TE300iとTE300の区別:一部の年式(特に国内仕様)ではナンバー取得不可のクローズドコース専用モデルが存在する。購入前に必ず公道走行対応かどうかを確認すること
- オイル補充のサイクル:TBI搭載モデルは電子制御でオイルが自動供給されるが、2ストオイルの残量確認は走行前のルーティンチェックに含めるべき
- タイヤ選択:標準装備のオフロードタイヤは公道走行時に騒音や偏磨耗が生じやすい。ツーリングメインであればデュアルパーパスタイヤへの交換も選択肢に入れたい
独自の視点で述べると、TE300は「オフロードのスポーツカー」という表現がしっくりくる。走りの楽しさはフルスペックで享受しながら、TBIの恩恵で日常的な扱いやすさも確保されている。エンデューロレースに出る予定がなくても、週末に山の林道を気持ちよく走りたいライダーにとって、これだけの軽量・ハイパワーマシンに乗れる選択肢は他にほとんどない。結論は「買える環境にあるなら試乗してみる価値がある一台」です。
以下の点を整理しておくと購入の判断がしやすい。
🏁 こんなライダーにTE300はおすすめ
- オフロードバイクに乗ったことがある中級者以上で、さらなる軽量・ハイパフォーマンスを求めている
- エンデューロイベントや林道ツーリングを本格的に楽しみたい
- 2ストロークに興味があるが「難しそう」と感じて踏み出せていない
- 車体をコンパクトに感じたい(4ストと比べてシートやボディが一回り小さく感じる)
⚠️ 購入前に確認すべきこと
- 年式と仕様による公道走行可否(国内仕様のTE300iはクローズドコース専用の場合がある)
- シート高950mmに対する自分の足つき確認と、必要に応じたローダウンキット導入の検討
- 2ストオイルの定期補充コスト(年間維持費として月に数百円〜1,000円程度は見込んでおく)
参考:ダートスポーツ(増田書店)掲載のTE250/300 国内プレス試乗インプレッション(バランサー搭載の振動低減効果を詳述)
https://www.zokeisha.co.jp/dirtsports/archives/24832

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