ナイトロン サスペンションでバイクの走りを変える方法

ナイトロン サスペンションでバイクの走りを変える方法

ナイトロン サスペンションでバイクの走りを根本から変える全知識

乗り心地が良くなる」と思ってナイトロンを選ぶと、実はそれは副産物で本来の目的ではありません。


📋 この記事でわかること
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ナイトロンとは何か?

英国生まれ・日本組立の高性能サスペンションブランド「NITRON」の成り立ちと、なぜ日本のライダーに支持されているのかを解説します。

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R1・R3・RACE PROの選び方

シリーズ別の構造・機能・価格帯の違いを整理し、自分の走り方に合ったモデルを選ぶポイントを紹介します。

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オーバーホールの費用と時期

1万km毎推奨のメンテナンス費用や期間など、購入後に知っておくべきランニングコストを解説します。


ナイトロン サスペンションの歴史と「日本組立」にこだわる理由



ナイトロンは1998年、英国オックスフォード近郊のウィットニーという町で、サスペンションエンジニアのガイ・エバンス氏がわずか2名のスタッフで立ち上げたブランドです。小さな工房から始まったにもかかわらず、英国の名門サーキット「シルバーストーン」を開発拠点とし、レースで得たデータをフィードバックし続けることで、瞬く間に世界的なサスペンションメーカーへと成長しました。


日本には2005年に正式上陸し、現在は埼玉県春日部市にナイトロンジャパンのファクトリーが置かれています。重要なのは、日本に届く製品はすべてこの国内工場で組み立てられているという点です。部品そのものは英国本社から輸入しますが、最終組み立ては日本人スタッフが担当します。


なぜそんな手間をかけるのでしょうか?


ナイトロンジャパンの開発ライダー・中木亮輔氏はこう語っています。「サスペンションのセッティングは属人的なもので、最適解は個々のライダーで異なります。だから、ナイトロンのサスペンションは基本的にオーダーで製作されます」。つまり、ライダーの体重・身長・走り方・好みといった細かな情報をオーダーシートに記入し、それを基に1本1本が組み上げられる仕組みです。


各ユニットには固有のシリアルナンバーが刻印されており、購入後もそのナンバーで管理・カルテが保管されます。オーバーホールや仕様変更の際にもこのカルテが使われるため、「一度買ったら終わり」ではなく、長く付き合える設計になっています。これはまさに英国的な「いい物を長く使う」という哲学の表れです。


また、ナイトロンはLOTUS ELISE/EXIGEなど四輪用サスペンション市場でもトップシェアを誇り、二輪・四輪の両方で培われた技術が製品に反映されています。世界でイギリス本社以外に製品のプロダクションを委託されているのは、ナイトロンジャパンだけという事実が、その信頼性の高さを物語っています。


参考:ナイトロンジャパンの開発思想やファクトリーの詳細が記載されています。


【NITRON/イギリスのテクノロジーと日本の職人技が融合】サスペンションメーカー・ナイトロンの秘密 | Riders Club


ナイトロン サスペンションがバイクのハンドリングを変える理由

多くのライダーがナイトロンを装着した後、「乗り心地がよくなった」「疲れにくくなった」とコメントします。しかし中木氏は明言しています。「それはナイトロンのメリットではありますが、副次的な効果であり、本来狙った性能ではありません」と。


では本来の目的は何か?答えは「ハンドリングの改善」です。


純正サスペンションはリアが高負荷設定、つまりリアが硬めに設定されている傾向があります。これは大柄なライダーや二人乗りに対応するための設計です。一方でフロントは比較的柔らかめになっています。このフロントとリアの硬さの不均衡が問題を引き起こします。リアが動きにくく、フロントが大きく動いてしまうと、コーナリング中にステアリングの舵角が付きすぎて、オーバーステアの症状が出やすくなるのです。


ナイトロンのリアショックは、ステアリングに自然な舵角がつくようにセッティングされています。結果として、コーナーがより自然に曲がれるようになり、その副産物として乗り心地の向上にもつながります。これが「なんとなく曲がりやすくなった」と感じる正体です。


つまり乗り心地が改善するということですね。


純正との違いをもう少し具体的に整理すると、以下のような変化が起こります。


| 変化 | 詳細 |
|------|------|
| ハンドリング | コーナーで自然な舵角がつき、オーバーステアが減少 |
| 乗り心地 | ギャップ通過がスムーズになる(副次的効果) |
| 疲労感 | 長距離走行での疲れが軽減される |
| セッティング幅 | 体重・荷物・走行スタイルに応じた細かな調整が可能 |


サスペンションを変えただけでバイクのキャラクターが変わる。これは決して大げさな表現ではありません。


参考:ナイトロンと各メーカーの設計思想の違いが詳しく解説されています。


ナイトロン サスペンション R1・R3・RACE PRO の違いと選び方

ナイトロンの製品ラインナップは一見複雑ですが、核心部分は「アジャスターの数」と「リザーバータンクの有無」という2点に集約されます。これさえ理解すれば、自分に合ったモデルを迷わず選べるようになります。


🔵 NTR R1シリーズ(1WAYアジャスター):ストリート・ツーリング向け


R1シリーズはリザーバータンクを持たないシンプル構造で、アジャスターは1つです。このアジャスターはリバウンド(伸び側)とコンプレッション(縮み側)を同時にコントロールし、24段階で調整できます。調整は工具不要のノブ式なので、ツーリング先でも気軽に変更できます。価格は比較的手頃で、モノショックモデルが税込10〜15万円程度が目安です。


- 対象:街乗り・ツーリングメイン、初めてのサスペンション交換を検討している方
- 特徴:シンプル操作で扱いやすく、コストパフォーマンスが高い
- 注意点:オイル量が少なめのため、長時間のサーキット走行での連続使用には不向き


🟡 NTR R3シリーズ(3WAYアジャスター):スポーツ・サーキット向け


R3シリーズは別体式リザーバータンクを持ち、アジャスターが3つ(リバウンド×1、ハイスピードコンプレッション×1、ロースピードコンプレッション×1)搭載されています。R1と比べてオイル量が圧倒的に多く、熱への耐性・長時間走行での安定性に優れます。価格はモノショックで税込15〜22万円前後が目安です。


- 対象:峠道・サーキット走行も楽しむスポーツ志向ライダー
- 特徴:細かいセッティングが可能で、用途に応じた繊細な調整ができる
- ポイント:ハイスピードコンプレッションは路面のギャップ対応、ロースピードはコーナーでの沈み込み対応と役割が分かれている


🔴 RACE PROシリーズ(最高峰モデル):本格レース向け


RACE PROはR3より太いボディ(46mm径)を採用し、オイル量がさらに増量されています。内部温度が100℃近くに達するような過酷なレース環境下でもダンピング特性を維持できる設計です。YZF-R1やGSX-R1000などの大排気量スーパースポーツや、もともと高性能サスを純正装備している車種に向いています。


これが条件です。


| モデル | アジャスター | リザーバー | 主な用途 | 価格目安 |
|--------|------------|-----------|---------|---------|
| R1 | 1WAY | なし | 街乗り・ツーリング | 10〜15万円 |
| R3 | 3WAY | あり | スポーツ・サーキット | 15〜22万円 |
| RACE PRO | 3WAY | あり(大容量) | 本格レース | 22万円〜 |


参考:R1・R3・RACE PROの違いをメーカー公式マニュアルで確認できます。


NITRON Motorcycle User Manual(PDF)| ナイトロンジャパン


ナイトロン サスペンションのセッティング方法:プリロード・サグ・ダンピングの基本

ナイトロンはオーダーシートに基づいてプリセットした状態で出荷されますが、受け取ったら初期設定のクリック数を必ずメモしておくことが大切です。迷ったときにいつでも初期状態に戻せるからです。セッティング変更は大きなリスクではなく、楽しむためのプロセスです。


サグセッティング(最初に必ず行う)


サスペンション調整の土台となるのが「サグ」の確認です。サグとは、静止状態でのサスペンションの縮み量を指し、これによってバイクの姿勢が決まります。ナイトロンジャパンが推奨するストリートユースのサグ値は以下のとおりです。


- 空車サグ(バイクのみ):5〜15mm程度
- 乗車サグ(ライダー乗車時):30〜40mm程度


測定はアクスルシャフト中心から任意の計測点までの距離を、「タイヤ浮かせた状態」「空車接地状態」「乗車接地状態」の3点で計測します。サグが基準外の場合はプリロードで調整します。


ダンピング調整の順番


調整の順番を守ることが、意図しない変化を防ぐ鍵です。


1. プリロード:まず体重・積載に合ったサグを確保する
2. リバウンド(伸び側):バネバネしい動きを抑え、接地感を高める。最強から数クリック戻したところから始めると調整しやすい
3. ロースピードコンプレッション(R3以上):コーナリング時の沈み込みを調整
4. ハイスピードコンプレッション(R3以上):段差やギャップ通過時の跳ね返りを調整


リバウンドが強すぎると、バンプ後にタイヤが路面に戻るのが遅れ、接地感が薄れます。弱すぎると、バネバネと跳ねる感覚になります。これは使えそうです。


プリロード調整の目安


タンデムや荷物の積載時は、通常より2〜3クリック分プリロードを増やすのが基本です。プリロードを変えてもスプリングの硬さ自体は変わりません。あくまでもバネの初期位置を変えることで、サグ量と車高を調整します。


プリロードを増やすと車高が上がり、減らすと下がります。足つきに不満がある場合も、このプリロード調整で数mmの改善が見込めます。


参考:バイクのリアサスセッティング手順をわかりやすく解説しています。


バイクのリアサスセッティング方法|基本編 | Moto-Ace-Team


ナイトロン サスペンションのオーバーホール費用・時期・注意点

高性能サスペンションを導入した後、見落とされがちなのがメンテナンスコストです。ナイトロンは「いい物を長く使う」という思想で設計されていますが、それを実現するためには定期的なオーバーホールが不可欠です。


ナイトロン公式が推奨するオーバーホール時期


- ストリートユース:1万km走行ごと
- レーシングユース:1シーズンごと


一般的なバイクのリアサス交換目安は走行2万km・2年といわれますが、ナイトロンはその半分の1万kmです。精密なオイルと厳格な組み立てだからこそ、定期メンテで初期性能を維持できる設計になっています。


オーバーホール費用の目安


ナイトロンジャパンのサービスセンターでは以下の費用が目安です(税込)。費用にはオーバーホール作業料・オイル代・オイルシール・ダストシール・シャフトブッシュ・ピストンリング・各種Oリングなどの消耗品交換が含まれています。


- モノショック(シングル):概ね2〜3万円台
- ツインショック(2本セット):概ね4〜5万円台


N-PLANレーシングなど一部の認定サービスショップでも依頼可能で、シングルで税込22,000円から対応しています。


注意点:ユーザー自身でのメンテナンスは不可


ナイトロンは高圧窒素ガス封入式モノチューブ構造のため、認定を受けたサービス技術者以外は分解できません。現在日本国内では、ナイトロンジャパンのサービスセンターまたはテクニクスに委託されています。送料は往復ともにユーザー負担となります。


痛いですね。


ただし、オーバーホール時に仕様変更も可能です。別の車種に乗り換えた際も、部品を組み換えることで新しい車体に対応できる点は大きなメリットです。最初に数十万円の出費をしても、長期的に乗り継げるコストパフォーマンスがナイトロンの強みといえます。また、製品購入から3年間の保証が標準付帯されているため、初期不良への安心感もあります。


参考:オーバーホールの詳細な費用・手順・連絡先が確認できます。


メンテナンス(オーバーホール)| NITRON RACING SHOCKS 公式サイト


ナイトロン vs オーリンズ:どちらを選ぶべきかを整理する独自の視点

サスペンション交換を検討するライダーがかならず迷う問いが「ナイトロンかオーリンズか」です。どちらも世界的な高性能ブランドですが、コンセプトと強みは明確に異なります。ここでは検索上位にはあまり出てこない視点を交えて整理します。


「オーダー品か在庫品か」という根本的な違い


ナイトロンは注文を受けてから1本ずつ組み立てます。つまり世界に1本しかない「あなた専用のサスペンション」です。オーリンズは事前に完成品を在庫として持ち、流通させる仕組みです。どちらが優れているではなく、求めるものが違います。


- ナイトロン:自分の体重・走り方・好みに最適化された1本が欲しい人向け
- オーリンズ:今すぐ入手してすぐに取り付けたい、または流通が広いショップで買いたい人向け


セッティング対応という観点での差


ナイトロンのもう一つの強みは、日本人の感覚に合わせてチューニングされる点です。オーリンズは完成品として輸入されますが、ナイトロンは日本国内で組み立てられるため「日本の道路事情」「日本人の体型と乗り方」に合わせた設定が反映されます。


コスト面の比較(参考値)


Webikeの売れ筋ランキングでも両ブランドは常に上位に位置しますが、モノショックで比較した場合の大まかな価格差は以下のとおりです。


- オーリンズ リアショック:概ね8〜15万円(車種による)
- ナイトロン R1:概ね10〜15万円
- ナイトロン R3:概ね15〜22万円


初期費用はほぼ同等か、ナイトロンR3がやや高めです。ただしオーリンズはリセールバリューが高く、バイク売却時にも強みがあるという声もあります。一方でナイトロンは車種変更時に部品の組み換えで対応できるため、「乗り継ぐライダー」にとっては総合的なコストが抑えられる可能性があります。


結論はシンプルです。


- 走り込みたい・セッティングを突き詰めたい → ナイトロンR3またはRACE PRO
- まず試してみたい・コスパ重視 → ナイトロンR1またはオーリンズエントリーモデル
- すぐに取り付けたい・国内サポートが重要 → オーリンズ


どちらも純正比で走りが変わることは間違いありません。迷ったら実際に装着しているライダーのレビューをWebikeやバイクブロスで確認するのが近道です。


参考:オーリンズとナイトロンの設計上の違いについて具体的な説明が掲載されています。




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