

新品タイヤに交換しても、なぜかコーナリングがぎこちないと感じたことはありませんか。
バイクのサスペンションは「なんとなく動いていれば問題ない」と思っているライダーが多いですが、実はエンジンオイルと同じか、それ以上に定期的なメンテナンスが必要な部品です。テクニクス(Technix)は2002年1月に埼玉県春日部市で創業した、バイク用サスペンション専門ファクトリーです。
代表の井上浩伸氏は、創業後の2003年にアメリカへ渡り、モトクロッサーのサスペンションチューニングで世界的に知られる「MX-TECH社」と技術提携を結びました。さらにヨーロッパのサスペンションメーカーでも理論を学んでいます。その後、世界9か国のサスペンションチューニング専門業者やメーカーと技術提携・情報交換を続け、国内トップクラスの技術力と知識を構築してきました。これは意外ですね。
現在のテクニクスは、スタッフの大半が整備士資格を保有し、国内4メーカー(ホンダ・ヤマハ・カワサキ・スズキ)の純正フロントフォーク・リアショックをはじめ、MARZOCCHI、WP、SACHS、OHLINSといった海外製サスペンションまで幅広く対応しています。つまり、ほぼすべてのバイクに対応できるということです。
テクニクスの依頼件数を見ると、オーダーの約8割はメンテナンス(オーバーホール) で、残りの2割がチューニング(リバルビングなど)です。これは「サスペンションのプロに任せたい」という普通の公道ライダーが主な利用者であることを示しています。高価なアフターパーツを導入しなくても、純正サスペンションのフルメンテナンスだけで走りが劇的に変わるケースが多いからです。
▶ テクニクス公式サイト(サービス詳細・料金・注文方法を確認)
サスペンションのオーバーホールというと「高そう」「自分には関係ない」と感じるライダーも少なくありません。でも実際の料金は意外とリーズナブルです。
テクニクスの基本オーバーホール(フルメンテナンス)の料金目安は以下のとおりです。
| 部位 | 料金(税込目安) | 推奨サイクル |
|---|---|---|
| フロントフォーク(2本1台分) | 約3万円〜 | 1万km または 2年ごと |
| リアモノショック(1本) | 約2万円〜 | 1万km または 2年ごと |
1万km走行でのオーバーホールを年1万円の維持費と考えると、月あたりにすると約833円です。これはコーヒー1杯分以下のコストで愛車のサスペンション性能を常時最良の状態に保てる計算になります。これは使えそうです。
テクニクスの作業工程は非常に丁寧で、受入時の写真撮影とアジャスター値の記録から始まり、完全分解 → 超音波洗浄機と手作業による洗浄 → インナーチューブの研磨(マイクロスクラッチ加工)→ 消耗品全交換 → 専用バキュームポンプによる完全エア抜き → 組み立て → WORK REPORT同梱という流れです。
特に注目したいのが、ショックバキュームポンプによる完全エア抜きです。通常の手作業ではほぼ不可能とされるオイル内の完全なエア抜きを、専用機器で実現しています。エアが残留したサスペンションは、高速・高負荷での走行時にキャビテーションを起こし、減衰力が突然抜けるような不安定な挙動につながります。これが基本です。
また、テクニクスは400種類以上・40,000個以上の消耗部品を自社倉庫に在庫しています。これにより通常の作業は「ショップ到着から1週間ほど」で完了します。海外メーカーのパーツ取り寄せに数週間かかる一般ショップとは、スピードが全く異なります。
▶ バイクブロス・テクニクス特集(オーバーホールの詳細な作業工程写真つき解説)
ここが最も重要なポイントです。サスペンションの劣化は「ある日突然やってくるのではなく、組まれた日から性能がカウントダウンされていく」と井上代表は語っています。
サスペンション内部のオイルは、狭い通路を高速でかき混ぜられ、油温が最大120℃・作動速度が5m/s超という過酷な条件にさらされ続けています。5,000km以上走行したリアショックのオイルは、新品と比べて目で見てわかるほど汚濁・変色しています。そのオイルで動いているのが、今まさに乗り続けているバイクのサスペンションです。
問題は、劣化が徐々に進行するため、ライダーがその変化に慣れてしまう点です。「最近、路面の凹凸が以前より気になるな」「コーナーで少し腰砕け感があるな」という感覚は、実はサスペンション劣化のサインであることが多いです。ところが、少しずつ悪化していくため「こんなもの」と思い込んでしまうライダーが後を絶ちません。
エンジンオイルを3,000〜5,000kmごとに交換している人でも、サスペンションオーバーホールを一度も実施したことがないライダーは珍しくありません。タイヤに年間2〜3万円をかけても、サスペンションのメンテナンスに無頓着なままでは、新品タイヤの本来のグリップ性能を引き出せていないのです。厳しいところですね。
テクニクスが公道ライダーに推奨するオーバーホールサイクルは「1万kmまたは2年ごと」です。中古車を購入した場合は、前オーナーのメンテナンス履歴が不明なため、まずサスペンションのオーバーホールから入ることが最善策とされています。走行距離が短くても、年式が古い車両はオイルが酸化・劣化しているため注意が必要です。
▶ バイクブロス・オフロードTGR特集(サスペンションメンテの重要性と実例解説)
メンテナンスで性能を「元に戻す」だけでなく、チューニングで性能を「さらに引き上げる」という選択肢がテクニクスにはあります。代表的なメニューが「リバルビング」と「TASC(タスク)」です。
リバルビングとは、サスペンション内部のピストンに重ねられたシム(薄い金属の円盤)の枚数・組み合わせを変更し、減衰特性のカーブそのものを作り直す作業です。フロントフォークのフルメンテナンス(約2万円〜)に2万円強を追加するだけで、ライダーの体重・体格・走り方・使用シーンに合わせた専用の減衰特性が得られます。つまり、オーダーメイドの足回りということです。
TASC(Technix Advanced Smart Cartridge)は、純正のフロントフォークのアウター・インナーチューブをそのまま流用しながら、内部構造だけをカートリッジ式に丸ごと入れ替えるアップグレードキットです。ダンパーロッドフォークをカートリッジフォーク化することで、以下のメリットが得られます。
- 🎯 速度感応型の減衰力:ゆっくりな動きにはソフト、速い動きにはしっかり対応
- 🎯 キャビテーション防止:オイル内部の気泡発生を大幅に抑制
- 🎯 コンプレッション&リバウンド調整機能の後付け実現
- 🎯 車体側の加工ゼロ:ボルトオンで取り付け可能
TASCの対応車種は、ホンダCBR250RR・CB1300SF・GROMからヤマハMT-09・MT-07、カワサキNinja400・ZX-25R、KTM DUKEシリーズ、トライアンフ・ドゥカティのスクランブラーまで幅広くラインアップされています。乗っているバイクが対応車種かどうかはテクニクス公式サイトで確認できます。
SKFフォークシールも見逃せないオプションです。スウェーデン発祥のSKF製シールは、純正OEMシールと比べてフリクションを最大25〜45%低減(チタンコートインナーチューブとの組み合わせでは75%低減)します。KTMが2012年モデルから純正採用するほどの実力パーツです。フルメンテナンスの際に追加するだけで体感できる変化が得られます。
▶ テクニクス公式・TASCカートリッジ詳細(対応車種リスト・カートリッジフォークとダンパーロッドフォークの違い)
「埼玉まで行けない」と思っているライダーも、テクニクスのサービスを活用できます。依頼方法は主に3つあります。
支払い方法は「代金引換」または「銀行振込」の2通りです。宅配を利用する場合、梱包には十分な注意が必要で、テクニクス公式サイトの「ご依頼時の注意」ページに梱包方法の詳細が記載されています。輸送中にサスペンションが箱から飛び出してしまう事例が多発しているため、必ず確認してから送付しましょう。
宅配依頼でも、テクニクスのスタッフは「長年の経験から、お客様が不満に思っている点を現状のデータからある程度割り出すことができる」と井上代表が述べています。受入時にサスペンションの状態を詳細にチェックし、作業後はアジャスター値などを記したWORK REPORTを同梱して返送してくれます。遠方でも安心です。
なお、テクニクスでは「完全非分解タイプ」のリアショックにも「テクニクス・ザ・レストア」という独自アプローチで対応しています。メーカーが分解を想定していない封入型のショックでも、切削加工とテクニクス製オーダーパーツを製作することで分解・オーバーホールを実現するという、国内では珍しいサービスです。長年乗り続けた旧車・絶版車ライダーにとっても選択肢になり得ます。
▶ テクニクス公式・依頼方法(宅配・持ち込み・ショップ経由の詳細フロー)
これは、一般的なサスペンション記事ではほとんど触れられない、独自の視点です。テクニクスにオーバーホールやチューニングを依頼しても、帰宅後のプリロード・減衰力アジャスターの基本設定を理解していないと、その効果を半分も体感できない可能性があります。
サスペンションのセッティングは大きく3段階に分かれます。まずはプリロード(バネの初期荷重)の設定で、ライダーが乗車した状態でサスが沈む量「サグ」を基準に合わせることが出発点になります。フロントは車体重量の25〜30%、リアは20〜25%ストロークするのが基本です。
次に減衰力の調整です。伸び側(リバウンド)は路面を離れたタイヤが元の位置に戻るスピードを制御し、縮み側(コンプレッション)は路面からの入力でサスが縮むスピードを制御します。テクニクスのTASCや各種リバルビングを施した後も、このアジャスターの設定次第で走りの印象は大きく変わります。セッティングガイドが条件です。
TASCを依頼すると、テクニクスから「各使用フィールドに合わせたアジャスター値」が記載されたセッティングガイドが同梱されて返送されます。ツーリング用・峠走行用・サーキット用といった用途別の初期値が示されているため、まずはその数値に設定して走り出し、そこから微調整していく方法が最も効率的です。
プリロードを変えただけで「車高が変わり、コーナリングのバンク角の感覚まで変わる」という体験をするライダーも多くいます。サスペンションとタイヤのバランスを正しく整えると、同じバイクとは思えないほど走りが変わります。せっかくテクニクスに依頼するなら、基本のセッティング知識も合わせて身につけておくと、投資対効果が大きく高まります。
▶ バイクブロス・サスセッティング講座(プリロード・ダンパーの調整順序と基礎知識)

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