ピットクルーとバイクレースで勝敗を左右する全知識

ピットクルーとバイクレースで勝敗を左右する全知識

ピットクルーがバイクレースの勝敗を左右する理由と全知識

バイクに乗っている人のほとんどは「ライダーが速ければレースは勝てる」と思っているが、ピット作業で2秒遅れるだけでレース全体で14秒差がついて順位を失う。


この記事でわかること
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ピットクルーとは何か

ライダーを支える「縁の下の力持ち」の役割と、レース結果への具体的な影響を解説します。

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MFJライセンスの取得方法

16歳以上なら取れるピットクルーライセンス。2025年から講習会受講が必須になった最新情報を紹介。

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ピット作業の実践知識

タイヤ交換・給油・サインボード…初めてのピットクルーが知るべき具体的な作業内容と心得を詳解。


ピットクルーのバイクレースにおける役割と重要性


バイクレースを観戦していると、どうしても目が行くのはコース上を駆け抜けるライダーです。しかし、レースの現場を少し深掘りしてみると、ピットの中では全く別の「レース」が繰り広げられていることに気づきます。ピットクルーとは、モータースポーツにおいてレース前の車両整備・点検、レース中の給油やタイヤ交換、転倒などのアクシデント時のマシン復旧・修理を担うチームのことです。


ライダー1人ではこれらの作業をすべてこなすことは不可能です。つまりピットクルーは、レース活動を成立させるうえで絶対に欠かせない存在なのです。


それだけではありません。ピット作業の速さと正確さは、レースの順位に直結します。鈴鹿8時間耐久レース(以下、鈴鹿8耐)を例にとると、1回のピットストップで他チームより2秒遅れるだけで、レース全体では最低7回のピットインがあるため、合計14秒の差がついてしまいます。コース上でライダーが1周あたり0.1秒速く走るのがいかに難しいかを考えると、ピット作業の精度がいかに重要かが分かります。


鈴鹿8耐のトップチームでは、前後タイヤ交換と24リットルの給油を合わせて20秒以内で完了させます。これはブリヂストンのエンジニアが解説しているほど驚異的な速さです。特に給油は通常のセルフスタンドで24リットルを入れると40秒以上かかりますが、トップチームはわずか3秒足らずでこなします。これだけの速さを実現するには、マシン側の専用改造(クイックリリース機構など)と、熟練したクルーの連携が不可欠です。


ピットクルーの役割をまとめると、次のようになります。


- 車両点検・整備:ボルトの合いマーク確認、各部の締め付け確認、マシンの拭き上げ
- タイヤウォーマー管理:走行1時間前からハイグリップタイヤを適正温度に温める管理作業
- 走行データ記録:ラップタイム・周回数・燃費の計測と記録
- サインボード出し:ライダーへの順位・ギャップ情報の伝達
- ピット作業(耐久レース):給油・タイヤ交換・ライダー交代のサポート


つまりピットクルーが担う仕事の範囲は、単なる「整備係」ではありません。データ分析から現場作業まで幅広く、チームの頭脳と手足を同時に担うポジションです。


参考:ブリヂストンが解説する鈴鹿8耐ピット作業の詳細
Vol.10「鈴鹿8耐ピット作業解説」|ブリヂストン EWC特集


ピットクルーライセンス(MFJ)の取得方法と2025年以降の変更点

日本国内でバイクレースのピットクルーとして活動するには、一般財団法人日本モーターサイクルスポーツ協会MFJ)が発行する「ピットクルーライセンス」が必要です。これは、ピットロードへの立ち入りやサインボード出しなど、ピット内外のあらゆる作業に必須の資格です。


取得条件はシンプルで、16歳以上であれば誰でも申請できます。普通自動車免許も二輪免許も不要で、バイクに乗れない人でも取得可能な珍しいライセンスです。


ただし、2025年度からルールが変わりました。これが大きなポイントです。


以前は講習会なしで申請書類と費用を送るだけで取得できましたが、2025年度よりピットクルーライセンスの取得には講習会の受講が義務化されました。一方、講習会受講による追加料金は発生せず、さらに「エンジョイライセンス」が無料で付帯されるようになっています。2025年度の申請料はB区分(65歳以上)で9,860円、C区分(高校生以上64歳まで)で10,510円です。


ライセンス申請は現在WEB申請に対応しており、スマートフォンからも手続きが行えます。デジタル会員証も導入されたため、当日カードを忘れる心配が減ったのはうれしいところです。


項目 内容
取得条件 16歳以上(免許不要)
2025年度申請料(C区分) 10,510円(スポーツ安全保険含む)
2025年度申請料(B区分) 9,860円(スポーツ安全保険含む)
講習会 2025年度より受講必須(追加料金なし)
付帯特典 エンジョイライセンスが無料付帯
申請方法 WEB申請(スマートフォン対応)


申請料にはスポーツ安全保険の掛金が含まれており、万が一の事故にも対応した保険が自動適用される点も安心できます。


ただし注意点があります。ライセンスを持っていることと、チームに登録されていることは別の話です。ライセンスはあくまで「参加資格」であり、実際にピットクルーとして活動するためには、レースに出場するチームへの登録が別途必要になります。登録なしにピットロードへ立ち入るとルール違反となり、チーム全体にペナルティが科せられるため要注意です。


参考:MFJライセンス制度の最新情報(公式)
2025年度からのMFJライセンス制度改定のご案内|MFJ公式


バイクレースのピットクルーが実践するタイヤウォーマーと整備の基本

ピットクルーの仕事は、レース当日だけではありません。金曜日から始まる練習走行に向けて、車両点検・タイヤウォーマー管理・走行データ記録という3つの基本作業を毎走行前に確実にこなす必要があります。


まず車両点検では、ボルトに付けた「合いマーク」(2点をまたいで引いた線)を目視で確認します。線がずれていれば緩んでいるサインなので、増し締めや締め直しが必要です。走行中のボルト脱落はライダーだけでなく他のライダーにも危険を及ぼします。これが基本です。


次にタイヤウォーマーの管理について説明します。バイクレースで使用するハイグリップタイヤは、冷えた状態ではグリップ力がほぼゼロになる特性を持ちます。そのため、走行の約1時間前からタイヤウォーマーという電熱式の暖め器具を装着して、タイヤを適正温度まで温めておく必要があります。冬場はさらに専用カバーをかけて保温するほど温度管理には神経を使います。


タイヤウォーマー本体の価格は決して安くはなく、前後セットで数万円台から高いものは10万円を超えるものもあります。予算が限られているプライベートチームでは毛布などを代用するケースもあるほどです。


走行データの記録も欠かせない作業です。ラップタイム・周回数・燃料消費量を手動でストップウォッチ計測しながら記録します。マシンのラップタイマーが故障するケースを想定し、必ずバックアップで手計測するのがプロの習慣です。


レース当日は、さらにサインボードを出す作業が加わります。サインボードとは、走行中のライダーに「現在何番手か」「後続との差は何秒か」などの情報を知らせる看板です。ライダーが知りたい情報はチームによって違うため、表示の形式も各チームでカスタマイズされています。一般的には手製で作られることも多く、それぞれのチームの個性が表れる道具でもあります。


これら一連の作業を一人で全部こなすのは困難です。人手が足りないチームではピットクルーが雑用も含めてフル回転することになるので、体力面でも相当な覚悟が必要です。厳しいところですね。


ピット作業でのルール違反がチームに与えるペナルティとリスク

ピットクルーとして活動する際、もっとも厳重に注意すべきなのが「ピットロードでのルール遵守」です。単純に思えますが、これを軽視すると深刻な結果を招きます。


ピット内(作業エリア)での作業は問題ありませんが、足元の赤いライン「ピットライン」を超えてピットロードへ出る場合は、ピットクルーライセンスとチーム登録が必須です。ライダー交代・給油・サインボード出しなどの作業も、すべて規定された「作業エリア」内で行わなければなりません。


ルール違反をした場合の罰則は、チーム全体に及びます。具体的には以下のような処分があります。


- ⚠️ ストップ&ゴーペナルティ:違反1回に対して1回のピットインが義務付けられる(順位を大きく下げる致命傷になる)
- ⚠️ 順位降格:レース結果に直接影響する降格処分
- ⚠️ 罰金:場合によっては金銭的なペナルティが発生
- ⚠️ 出場停止:悪質な違反や危険行為・暴力行為では、年単位の出場停止処分が下ることもある


特に注意が必要なのは、ピットクルーの違反がライダーの順位降格として処理される点です。自分の不注意でライダーのレース結果を台無しにしてしまうリスクを常に意識しておく必要があります。


鈴鹿サーキットのレースでは、ピットロードを含む全エリアでオフィシャルが監視しています。「バレなければOK」という考え方は通用しません。飲酒や危険行為も厳格に禁止されており、チームの信頼を損なう行為は一切許されない環境です。


ルール違反のリスクを避けるためには、レース前にMFJ国内競技規則書を読み込んでおくことが重要です。ライセンス取得時に規則書も一緒に届くので、読まずにしまいこまないようにしましょう。ルールを知っていれば防げる違反がほとんどです。


参考:ピットクルーライセンスとルール違反のペナルティについて
ピットクルーライセンスのお話など|浜松から8耐へ


バイク乗りがピットクルーを始める具体的なステップと独自の楽しみ方

「ピットクルーに興味があるけど、どこから始めればいいか分からない」という声はよく聞きます。実はバイクに乗っている人は、すでに大きなアドバンテージを持っています。マシンの構造に対する理解や、サーキットへの親しみがあるからです。


最初のステップはMFJピットクルーライセンスの取得です。費用は1万円程度、2025年度からは講習会受講が必要ですが、WEBで申し込めます。ライセンスさえ取れば、チームへの参加資格が生まれます。


次はチームを探すステップです。SNSや「ジモティー」などのコミュニティサービスで「ピットクルー募集」「耐久レース クルー募集」と検索すると、人手を求めているチームが見つかることがあります。また、地元のバイクショップサーキット走行会に顔を出して「ピットクルーをやってみたい」と話すことも有効な方法です。経験者のつながりから声がかかることも多いです。


実際に参加する前に意識しておきたいポイントをまとめます。


- 🔧 基本的な整備知識を持っておく:ボルトの確認方法やタイヤウォーマーの扱いなど、基礎知識があるとチームへの貢献度が高まります
- 👂 指示を素直に聞く姿勢:初参加のうちはベテランクルーの指示に従い、段階的に役割を覚えていくことが重要です
- ⏰ 時間管理の徹底:レースは分刻みのスケジュールで動きます。遅刻や準備遅れはチーム全体の迷惑になります
- 📋 ルールの事前学習:競技規則書を読み、禁止行為や作業エリアのルールを把握しておきましょう


ピットクルーとしての経験は、レースを単なる「観戦」から「参加」へと変えてくれます。ライダーが無事チェッカーフラッグを受けてピットに帰ってきた瞬間の達成感は、言葉では表現しにくいほどのものがあります。バイク乗りとしての視野が一気に広がる体験です。


また、独自の楽しみ方として「レース戦略への関与」があります。上位チームではピットクルーが走行データをリアルタイムで解析し、ピットインのタイミングや給油量、タイヤ交換の判断に貢献します。単なる作業員ではなく、チームの意思決定に携わる「縁の下の参謀」としての役割も担えるのが、ピットクルーの醍醐味です。


バイクレースをもっと深く楽しみたいと思っているなら、ピットクルーとしての一歩はとても合理的な選択です。ライダーとしての経験を活かしながら、レースの裏側を知り尽くす存在になれます。これは使えそうです。


参考:初めてのピットクルー体験リポート
初めてのピットクルーはやることいっぱい!|RIDERS CLUB




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