タイヤウォーマーでバイクのサーキット走行を安全に楽しむ方法

タイヤウォーマーでバイクのサーキット走行を安全に楽しむ方法

タイヤウォーマーをバイクでサーキット走行する前に知っておくべき全知識

真夏の気温36℃でも、タイヤが最もグリップする60℃にはまだ24℃も足りず、コースイン1周目の転倒リスクは消えません。


🏍️ この記事のポイント3選
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タイヤが「本当にグリップする温度」は夏でも届いていない

ハイグリップタイヤが性能を発揮する温度帯は60℃以上。真夏の炎天下(気温36℃)でも、その差は約24℃あるため、ウォーマーなしのコースイン直後は転倒リスクが高い状態です。

電源は「900W発電機」ではギリギリ足りない

前後2本のウォーマーを同時使用すると700〜980Wを消費。起動時の突入電流を考えると1,600W以上の発電機またはポータブル電源が安全です。

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ウォーマーを使うとタイヤライフが延びてコストが下がる

冷えた状態からの走行でサーキット用タイヤのトレッドがべろべろに削れてしまうのを防ぐことで、タイヤの寿命が延びます。高価なハイグリップタイヤの出費を抑える効果があります。


タイヤウォーマーがバイクのサーキット走行で必要な理由


サーキットへ初めて参加するライダーの多くが「走り出せばすぐにタイヤは温まるだろう」と考えています。それは大きな誤解です。


ハイグリップタイヤが性能を発揮できる温度帯は、一般的に60℃以上とされています。バイクメーカー純正装着レベルのスポーツラジアルでも、走行開始から適温に達するまでに7〜8分前後かかるのが普通です。つまり、コースイン直後の数周は、グリップが本来の水準に達していない状態で走ることになります。


この「温まっていない数周」こそが、サーキット走行会での転倒が集中する場面です。ピレリジャパンのオフィシャルライダーであるディアブロマン氏も「コースイン直後の1周目に転倒、あるいはコースアウトしてしまう参加者をたまに見かける」と指摘しており、実際にプロのインストラクターが「最初の3周はトバさない」を鉄則にしています。


そこで登場するのがタイヤウォーマーです。タイヤウォーマーはレーシングスタンドでバイクを持ち上げ、電気毛布のような構造の布状ヒーターをタイヤに巻き付けて加熱するアイテムです。走行前にあらかじめタイヤを60〜90℃に温めておくことで、コースイン直後から安全にグリップを使える状態を作り出せます。


もう一つ重要なのが内圧(空気圧)との関係です。タイヤが温まると内部の空気が膨張し、空気圧が上昇します。たとえば冷間で1.5kgf/cm²だった空気圧が、走行中に2.0kgf/cm²前後まで上がるケースも珍しくありません。タイヤウォーマーで事前に温めておくと、その内圧変化が「ピット出発時点」から起きているため、コースインの瞬間から設計どおりのグリップを発揮できます。つまりウォーマーは「タイヤ表面を柔らかくするだけ」ではなく、内圧管理のツールでもあるということです。


タイヤウォーマーが必要な理由はここが基本です。


さらに、もう一つ見落とされがちなメリットがあります。タイヤライフが延びるという点です。サーキット用ハイグリップタイヤ(ピレリ・ディアブロスーパーコルサ、ブリヂストン・RS10など)は、温まった状態での使用を前提に設計されています。冷えたまま走り出すと表面がべろべろに削れてしまい、温まる前にトレッドが大量に消耗します。ウォーマーを使うことで、この「無駄な削れ」を防ぎ、タイヤ1セットを長く使えるようになります。


高価なサーキット用タイヤは1セット2〜3万円以上することも多いため、長い目で見るとウォーマーへの投資は十分に回収できます。これは使えそうです。


参考情報:タイヤウォーマーの重要性について詳しく解説されています(グーバイク
【サーキット】バイクのタイヤを温める「タイヤウォーマー」の重要性や選び方を解説 ー グーバイク


タイヤウォーマーのバイク向け種類と選び方のポイント

タイヤウォーマーには大きく分けて2種類の発熱方式があります。それぞれの違いを正しく理解しておくことが、失敗しない選び方の第一歩です。


まず「ニクロム線タイプ」は、電気ストーブと同じ原理でニクロム線に電流を流して発熱させる方式です。構造がシンプルで修理を自分で行いやすく、価格帯は2〜3万円台からと比較的手が届きやすいのが特徴です。ただし適温に達するまでの時間は1時間前後かかるケースが多く、朝イチの準備を早めにスタートする必要があります。


次に「面状発熱体タイプ」は、面全体が均一に発熱するシートヒーターを使った方式です。熱が均一に伝わるため、トレッド面の温度ムラが少なく、適温到達時間が30分程度と短いのが強みです。ただし価格帯は5〜10万円台と高額で、故障した場合はメーカー修理が必要になる点もコスト面で考慮が必要です。


| 項目 | ニクロム線タイプ | 面状発熱体タイプ |
|---|---|---|
| 価格帯 | 2〜3万円台〜 | 5〜10万円台〜 |
| 適温到達時間 | 約60分 | 約30〜40分 |
| 温度均一性 | やや劣る | 高い |
| 修理対応 | 自己修理しやすい | メーカー対応必要 |
| おすすめ対象 | 入門〜中級者 | 本格レース・上級者 |


具体的な製品名でいうと、入門として選ばれることが多いのが「ZiiX(クレバーライト)」で、定価24,200円(前後セット・F120/R180サイズ相当)は国内流通品の中でも最も安価な部類です。ZiiXは「温まりが弱い」という声もありますが、余った毛布をウォーマーの上から被せることで補完でき、コストを抑えて始めたい層には十分な選択肢となっています。


より本格的に使うなら、バトルファクトリー(71,500円前後)やNTR(86,900円前後)、イタリア製のCapit(54,780円前後)などが選ばれています。Capitは「サーモスタットを用いない連続加熱制御」を特長としており、国内有名ショップ・モトコルセでも取り扱いがあります。


ウォーマーの幅サイズがタイヤサイズに合っているかどうかも重要な確認項目です。熱線の幅よりタイヤが細いと、熱線同士が接触して発火の危険があります。購入前には必ず対応タイヤサイズを確認しましょう。幅サイズのチェックが条件です。


タイヤウォーマーをバイクで正しく使うための手順と注意点

タイヤウォーマーは「巻いて電源を入れるだけ」と思われがちですが、正しい手順で使わないと思ったほどタイヤが温まらないことがあります。


まず走行前の準備として、フロントスタンドとリアスタンドでバイクを持ち上げてタイヤを地面から浮かせます。この状態でウォーマーを取り付けて温めるのが基本ですが、さらに効果的な方法があります。車両から外したホイールを地面に平置きし、断熱シートの上で4本重ねて温める方法です。地面や車体のハブからの熱損失を最小化できるため、タイヤ全体をより均一に温めることができます。


温め中は毛布を全体に被せると放熱を大幅に抑えられます。外気温が20℃以上の場合で約40分、10〜15℃以下の寒い日は約60分が目安です(Capitの公式マニュアル参照)。


温度設定は80〜85℃が標準的です。ただし、ストリートタイヤを使用している場合は80℃以上に設定しないよう注意が必要です。ストリートタイヤの動作範囲を超えた過熱はグリップ低下やタイヤへのダメージにつながることがあります。


電源を切り忘れると非常に危険です。タイヤウォーマーは約80℃近くまで加熱するため、ガソリンやオイルが近くにある環境ではすぐに火災につながります。タイヤが温まったら必ず電源を切るか、タイマー機能付きのコントローラーを活用しましょう。


コースインの直前まで巻いておき、走行直前にウォーマーを外してすぐに乗り出すのが理想です。ウォーマーを外してから時間が経つほどタイヤが冷えていくため、外したら迷わずコースインする流れを確立しておきましょう。


空気圧の管理もセットで行います。タイヤウォーマーを装着する直前の「冷間」で空気圧を設定します。ミシュランの推奨設定では、ウォーマーの設定温度を90℃とした上で、冷間時の空気圧を定めています。タイヤメーカーごとに推奨値が異なるため、使用タイヤのメーカー情報を事前に確認するのが原則です。


参考情報:サーキット走行時の空気圧管理について詳しく解説(Moto Ace Team)
バイクでサーキット走行|タイヤ空気圧の適正値を理解してタイムアップを目指す ー Moto Ace Team


タイヤウォーマーのバイク運用に必要な電源と機材の選び方

タイヤウォーマーはウォーマー本体だけを買えば終わりではありません。現地で使うには電源の確保が必須で、機材一式をそろえるとトータルコストが想像以上になることもあります。


まず消費電力から整理します。バイク用タイヤウォーマー(前後2本)を同時使用したときの消費電力は、一般的に700〜980W程度です。起動時の突入電流が加わると瞬間的にさらに高い電力が流れます。そのため、900Wクラスの発電機では「ちょうど足りるかどうか」という状況になりやすく、余裕ある運用のために1,600W以上の発電機が推奨されています。


代表的な選択肢は以下のとおりです。


- 🔌 ホンダ EU18i(定格1,800W):インバーター式で静音、サーキット愛用者に定番
- 🔌 ヤマハ EF23H(定格2,300W):余裕ある電力と高信頼性
- 🔌 アイリスオーヤマ IG-1601(定格1,600W):コストパフォーマンス型で入手しやすい


発電機はサーキット以外でもキャンプや防災用途に活用できるため、「ウォーマーにしか使わない」という抵抗感を減らしやすい点がメリットです。


近年は静音でガスがいらないポータブル電源も選択肢に入ってきています。ピット室内でも使いやすく排気ガスが出ないのが強みです。ただし電池容量が肝心で、1,000Whクラスでは1走行分(約60分の保温)を十分にまかなえない場合があります。2,000〜2,500Whクラスの大容量モデルが現実的な選択肢です。


筑波サーキットのようにピットが埋まりやすいコースでは発電機が必須になる一方、ツインリンクもてぎ(現・モビリティリゾートもてぎ)ではピットの電源が使えるケースが多いといった差もあります。走行予定のサーキットに「電源が使えるか」を事前確認しておくだけで、機材の用意が変わります。


スタンド類も忘れずに準備が必要です。フロントスタンドとリアスタンドがなければウォーマーをタイヤに正しく装着できません。前後セットで2万円前後を見ておくと良いでしょう。延長コードは屋外対応の太いケーブルを用意します。2,000円程度で手に入ります。


ウォーマー運用に必要な機材費の目安をまとめると以下のようになります。


| 機材 | 概算費用 |
|---|---|
| タイヤウォーマー(ZiiX・前後) | 約25,000円 |
| 発電機(1,600Wクラス) | 約70,000〜80,000円 |
| レーシングスタンド(前後) | 約20,000円 |
| 延長コード(屋外用) | 約2,000円 |
| 合計目安 | 約12万円〜 |


これにトランスポーター(トランポ)の費用が加わります。スタンド前後を持ち込むと自走は難しいため、バンや軽トラのレンタルやトレーラーの活用を検討してください。


参考情報:発電機の選び方とタイヤウォーマーの消費電力について詳しく解説
バイクレース使える発電機の選び方とおすすめ品【タイヤウォーマー対応】ー もりバイクブログ


タイヤウォーマーなしでバイクのサーキット走行を安全にこなす「ウォームアップ走行」の技術

タイヤウォーマーがない状態でサーキットに挑む場合でも、正しいウォームアップ走行を実践することで転倒リスクを大幅に下げられます。ウォーマー不要論ではなく、「使えない状況でのベター策」として知っておく価値のある技術です。


まずやってはいけないのが「ダラッと流す走り」です。スローペースで漠然と走っているだけでは、タイヤはほとんど温まりません。タイヤは変形することで内部から発熱する構造になっているため、荷重をかけなければ温度が上がらないのです。外気温や路面温度が低い日では、ゆっくり走ることで逆にタイヤの表面温度が下がってしまうケースもあります。厳しいところですね。


有効な方法は、「コーナーではゆっくりだが、ストレートでは前後に長く荷重をかける」走り方です。加速時はやや高めのギアスロットルをじわっと長く開け、減速時もしっかりブレーキングしてフロントに荷重を乗せながら減速します。バイクが寝ていない直立状態で加減速することで、転倒リスクを最小化しながらタイヤを温められます。これはピレリジャパンのディアブロマン氏が走行会参加者に伝えている実践的なアドバイスです。


「最初の3周は絶対にトバさない」を守るだけで、コースイン直後の転倒リスクを大幅に減らせます。3周が基本です。


もう一つ、外気温が低い日(特に春先や秋口)のコースイン直後には、インターバル後のコースインでも同じウォームアップをやり直す必要があります。20分の休憩でもタイヤ温度は大きく低下するため、「さっき温まっていたから大丈夫」という判断は危険です。


ウォーマーなし・自走でサーキットに通うスタイルのライダーの中には、タイヤ温度計(赤外線温度計)を活用して、コースイン前に現在の表面温度を把握する人もいます。3,000〜5,000円で入手できる非接触型温度計を1本持っておくと、コンディション判断に使えて安心です。これは使えそうです。


参考情報:ディアブロマン直伝のタイヤウォームアップ技術の詳細
サーキットで上手にタイヤを温める方法【ディアブロマン直伝】ー バイクジン




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