

リップタイヤという言葉を聞いて、「見た目がカッコいいだけのカスタム」だと思っているなら、それは間違いで、リム幅がタイヤのプロファイルを変形させてコーナーで急にグリップを失うことがあります。
バイクのタイヤを語るとき、「リップ」という単語が複数の意味で使われることがあります。まず整理しておく必要があります。
一つ目は、タイヤ自体の構造部品としての「ビードリップ(タイヤリップ)」です。タイヤのサイドウォール下端にある、ホイールのリムに引っかかるゴム製の縁(エッジ)のことで、これがホイールにしっかり噛み合うことでタイヤは空気を保持できます。チューブレスタイヤではこの部分の気密性が特に重要で、ビードシートと呼ばれるリムの溝に正確に嵌まらないとエア漏れや最悪の場合はタイヤ脱落につながります。
二つ目は、カスタムスタイルとしての「アウトリップ」です。バイクのホイールのリム(外縁部分)がフェンダーよりも外側に張り出す状態を指し、主にスクーターやカスタム車で見られます。ホイールリムが外に出ているように見えることから「リップが出ている=アウトリップ」と呼ばれるスタイルです。
つまり「リップタイヤ バイク タイヤ」という検索をするライダーには、「タイヤ構造のビード部分を知りたい」人と「アウトリップカスタムをしたい」人の両方が混在しています。どちらの意味かを把握した上でタイヤ選びや交換作業を進めることが、失敗のない第一歩です。
バイクのタイヤ交換でビード部分を正しく理解している人は意外に少ないです。ビードリップがきちんとリムに嵌まっているかは、走行中のエア漏れ防止に直結します。特にチューブレスタイヤでは「ビードが上がった」状態(正常に装着された状態)を確認する工程が必須です。
ブリヂストン:二輪車用タイヤサイズ表記の公式解説ページ(タイヤ幅・リム径・扁平率の見方)
タイヤとリム幅の組み合わせは、見た目以上に走行性能に直結します。これが基本です。
バイクのタイヤには「標準リム幅」と「適用リム幅(許容リム幅)」の2種類が各メーカーによって設定されています。標準リム幅はそのタイヤが最も性能を発揮できるリム幅、適用リム幅はそのタイヤが「一応装着できる」範囲です。適用リム幅は標準リム幅から±0.5〜1インチ(約12〜25mm)程度の幅を持たせて設定されるのが一般的です。
問題が起きるのは、この「適用リム幅の範囲外」にあるホイールにタイヤを組もうとしたときです。純正のホイールに対して幅の広いタイヤを無理に履かせると、タイヤのプロファイル(断面の形)が「▲」のように鋭角になります。これがどれほど危険かというと、バイクを一定以上バンクさせた瞬間に急激にグリップが失われる可能性があります。つまり、コーナリング中に突然転倒するリスクです。
逆に、純正より細いタイヤを太いリムに無理に組むと今度はプロファイルが横に潰れた形になり、直進安定性が損なわれます。意外ですね。
| リム幅とタイヤ幅の組み合わせ | タイヤの形状変化 | 主なリスク |
|---|---|---|
| リムが太すぎる(タイヤ細) | 横に潰れた形 | 直進安定性の低下 |
| ちょうど良い(適正) | 正常な丸いアーチ | 正常なグリップ |
| リムが細すぎる(タイヤ太) | ▲型に尖った形 | バンク時の急激なグリップ喪失 |
一般的なバイク用タイヤの適合リム幅の目安をまとめると次のとおりです。
- タイヤ幅100〜110mm → 標準リム幅 2.50〜2.75インチ
- タイヤ幅120〜130mm → 標準リム幅 3.00〜3.50インチ
- タイヤ幅150〜160mm → 標準リム幅 4.00〜4.50インチ
- タイヤ幅180〜190mm → 標準リム幅 5.50〜6.00インチ
タイヤを選ぶときは、まず自分のバイクのホイールに刻印されているリム幅を確認することが最初のステップです。これさえ確認すれば大丈夫です。
グーバイク:リム幅別バイクタイヤ幅適合表(コンチネンタル参考)と選び方の解説
アウトリップスタイルは「かっこいい」だけで済まない場合があります。法的リスクを正しく理解しておく必要があります。
アウトリップとは、ホイールのリム(外縁)がフェンダーの外側に張り出している状態のカスタムスタイルです。主に引っ張りタイヤ(タイヤをリムより細いサイズにして無理に組み込む手法)と組み合わせ、ホイールリムをフェンダーよりも外に出して見せるスタイルです。見た目の迫力は確かにあります。
しかし、保安基準では以下のとおりです。
✅ タイヤ本体のはみ出しは「10mm未満」ならOK(2017年6月の保安基準改正以降)
❌ ホイールのリムのはみ出しは「1mmでも」NG
この点が重要です。アウトリップスタイルでは「タイヤよりリムが外に出ている」状態が目的ですが、リム自体がフェンダーから出ていると保安基準違反(不正改造)となります。車検不適合となるだけでなく、公道を走行した場合は道路交通法第62条「整備不良車両の運転の禁止」に該当します。
🔴 摘発された場合の罰則(バイク・二輪車の場合)
- 整備不良(軽微):違反点数1点 + 反則金7,000円
- 整備不良(重大):違反点数2点 + 反則金7,000円
- 不正改造:6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
整備不良での反則金だけで済めばまだ良い方で、悪質と判断されると不正改造扱いとなり、最大30万円の罰金が科される可能性があります。痛いですね。
アウトリップスタイルを楽しみたい場合は「タイヤのみ、かつ10mm未満のはみ出し」に収めることが条件です。リムがフェンダーから出た瞬間にアウトとなります。車検前には必ず専門店でチェックしてもらうことを強くおすすめします。
タイヤワールド館ベスト:はみ出しタイヤと車検・保安基準の詳細解説
「リップタイヤ」として販売されている製品も存在します。それが何なのかを確認しておきましょう。
MAXXISが販売している「MA-R1 レーシングバイクリップ タイヤ」のように、製品名に「リップ」を含むバイク用タイヤがあります。これは特殊なレーシングコンパウンドを採用した、主に原付・スクーター向けの方向性パターンタイヤです。「コーナリングでの高いグリップ」と「ストレートでの安定したトラクション」を両立させる設計がされています。
一方で、バイクタイヤ全般を理解する上で重要な分類があります。
| タイヤ種類 | 晴天グリップ | 雨天グリップ | 耐久性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| スリックタイヤ | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐ | 低い | サーキット専用(公道不可) |
| ハイグリップタイヤ | ⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐ | 低〜中 | 峠・スポーツ走行 |
| スポーツタイヤ | ⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐ | 中 | 街乗り〜スポーツ |
| ツーリングタイヤ | ⭐⭐ | ⭐⭐⭐ | 高い | 長距離ツーリング |
ここで重要な注意点があります。ハイグリップタイヤは「温度依存性が高い」という特性があります。タイヤが十分に温まっていない冷間時(走り始め数km程度)は、ノーマルタイヤと同等かそれ以下のグリップしか発揮しない場合があります。走り始めにいきなりフルバンクするのは非常に危険です。
また、スリックタイヤは溝のない競技専用タイヤで、公道走行は道路運送車両法で禁止されています。「For Competition」と刻印されているタイヤを公道で使うと即違反です。これは必須の知識です。
MAXXIS MA-R1のようなレーシングコンパウンド系のタイヤを一般道で使用する場合も、十分なウォームアップ走行が必要です。最初の5〜10kmは急激なバンクや急制動を避けて、タイヤに熱を入れることが先決です。
ナップス:バイクタイヤの選び方完全ガイド(種類・サイズ・グリップ性能の比較)
タイヤリップ(ビード)の脱着は、知識なく挑むと30分が3時間になることもあります。
タイヤ交換の際、最初のハードルが「ビード落とし(ビードブレイク)」です。タイヤのビード(リップ部分)はホイールのビードシートに強い摩擦と気圧で密着しているため、手の力だけでは外れません。特に長年使用したタイヤは、ゴムが硬化してホイールに張り付いており、余計に手ごわくなります。
ビード落としの主な方法:
- 🔧 タイヤレバー2本を使う方法:コストゼロだが技術が必要。レバーをタイヤとリムの間に差し込み、リム側に力をかけていく。一気にやろうとせず、少しずつ全周で落としていくのがポイントです。
- 🛠️ ビードブレーカー(専用工具)を使う方法:約3,000〜8,000円で購入可能。圧倒的に楽で、タイヤやホイールに傷がつくリスクも低い。これが最もおすすめです。
失敗しやすいポイントと対策:
1. 空気を完全に抜き忘れる→ エアバルブのムシゴムを外して完全脱気
2. 対角線側のビードを落とし込まずに引き抜こうとする→ まず反対側のビードをリムの中央(ドロップセンター部)に落とし込む
3. リムガードやビードリップを傷つける→ タイヤレバーは必ずリムプロテクター(100円〜)を使って当てる
新品タイヤを組み込む際は、ビード部分(リップ)にビードクリーム(または石けん水)を塗ることで、ビードが滑ってリムに落ちやすくなります。これを省くとビードが上がらず、コンプレッサーを使っても入らないケースがあります。
工賃の相場として、バイクショップでのタイヤ交換工賃はタイヤ1本あたり2,000〜5,000円程度が一般的です。自分でやれば工具代(ビードブレーカー含めて1万円程度)を初期投資するだけで、その後はほぼ無料でできます。年2回タイヤ交換するなら、2〜3年で元が取れる計算です。
これは使えそうです。ただし、初めてのタイヤ交換はビードが上がらなかったり、リムを傷つけたりするリスクがあります。最初の1回はショップで作業を見学させてもらい、手順を体で覚えてから自作業に移行するのが現実的です。
グーバイク:バイクのタイヤのビード落としの方法と手順を写真付きで解説
どんなに良いタイヤを選んでも、空気圧と寿命の管理を怠ると性能はゼロに等しくなります。
バイクのタイヤ空気圧は、車体メーカーが指定した値(車両のスイングアームやシートカウル裏などに記載されていることが多い)を基本とします。指定値から大幅にずれると、次のような問題が生じます。
空気圧が低すぎる場合(多くのライダーが無意識にやってしまう):
- タイヤの接地面が増えてグリップが上がると思われがちですが、実際には摩擦係数は接触面積によって大きく変化しないため、グリップ向上効果はほぼありません。
- むしろ、タイヤ温度が上昇しやすく、バーストリスクが高まります。
- 燃費が悪化し、タイヤの偏摩耗が加速します。
空気圧が高すぎる場合:
- 接地面積が減り、タイヤ中央部だけが摩耗する「センター減り」が早まります。
- 乗り心地が硬くなり、路面の段差で振動が大きくなります。
空気圧チェックは最低でも月1回が基本です。バイクのタイヤは自動車よりも空気が抜けやすい傾向があり、月に0.1〜0.2kPa程度の自然減圧が起こります。朝の走行前(タイヤが冷えた状態)に計測するのが正確な値を得るコツです。
タイヤ寿命の目安:
| 使用状況 | おおよその寿命(走行距離) |
|---|---|
| ツーリング中心(一般道) | 1万〜2万5,000km |
| 峠・スポーツ走行中心 | 5,000〜7,000km |
| ハイグリップタイヤ使用 | 3,000〜5,000km |
| 製造年数での限界(使用頻度に関わらず) | 製造から3〜5年 |
ここで特に注意すべき点があります。製造から3〜5年が経過したタイヤは、溝が十分に残っていてもゴムが硬化・劣化しているため、グリップ性能が大幅に落ちています。バイクのタイヤの製造年はサイドウォールに4桁の数字で刻印されており(例:「2423」=2024年第23週製造)、購入時に必ず確認する習慣をつけましょう。
また、道路運送車両の保安基準では、バイクのタイヤ溝の最低深さは0.8mmと定められています。スリップサイン(タイヤ側面の三角マーク延長線上にある溝の盛り上がり部分)が1箇所でも露出すると整備不良として違反の対象となり、違反点数2点・反則金7,000円(二輪の場合)が科せられます。スリップサインは定期的なチェックが必要です。
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