

満タンにするほど、コーナーでのハンドリングが重くなり転倒リスクが上がります。
バイクを選ぶとき、スペック表の「燃料タンク容量」をどこまで意識していますか。この数字はツーリング計画を立てるうえで、実は最も重要な指標のひとつです。
国産バイクの現行モデルを排気量クラス別に見ると、タンク容量には明確な傾向があります。
| 排気量クラス | 代表的なタンク容量 | 代表車種の例 |
|---|---|---|
| 原付一種(50cc) | 3〜5L | Honda ダックス125:3.8L |
| 125ccクラス | 5〜8L | Honda CT125ハンターカブ:5.3L |
| 250ccクラス | 11〜17L | Vストローム250:17L、Rebel250:11L |
| 400ccクラス | 14〜18L | Honda CBR400R:17L |
| 大型(600〜1000cc) | 14〜21L | Kawasaki Z900RS:17L |
| アドベンチャー系(大型) | 18〜25L | Honda CRF1100L Africa Twin AS ES:24L |
注目したいのは、250ccクラスのVストローム250が17Lという大容量を持っている点です。これは同クラスのRebel250(11L)の約1.5倍。同じ排気量でもバイクのキャラクターや設計コンセプトによって、容量が大きく変わることがわかります。
また、興味深いのはバイクの全体的な傾向として、現行モデルは1980〜2000年代前半の旧モデルより燃料タンク容量が少なくなっているという事実です。これが意外なところですね。例えばホンダ「ゴールドウイング」は現行モデル21Lに対して、旧世代は25Lを搭載していました。これは電子制御インジェクションの普及による燃費改善が背景にあり、タンクを小さくしても航続距離を確保できるようになったためです。つまり容量が小さい=航続距離が短いとは一概に言えないのです。
アドベンチャー系バイクがタンク容量を大きく設定しているのは、人里離れた未舗装路や地方の山道など、ガソリンスタンドが少ないエリアを走ることを想定しているからです。一方でスーパースポーツ系は14〜16Lに抑えているケースが多く、軽量化を優先した設計になっています。
バイク選びの段階でタンク容量を確認するのは基本です。
参考:バイクの燃料タンク容量ランキングや車種別スペック詳細は、メーカー公式サイトやグーバイク等で確認できます。
けっこう重要なバイクの「燃料タンク容量」 じつは昔よりも少なくなっている? - バイクのニュース(二輪専門メディア・2023年)
「満タンで何キロ走れるか」を知ることは、ガス欠防止と給油計画の基本です。計算式はシンプルで、タンク容量(L)× WMTCモード燃費(km/L)= 航続距離の目安となります。
たとえばホンダ「GB350」を例に計算してみます。タンク容量は15L、WMTCモード燃費は39.4km/Lなので、15 × 39.4 = 591km が理論上の航続距離です。これは東京〜大阪間(約500km)を余裕でカバーできる距離になります。
ただし、このWMTCモード値はあくまで標準的な走行条件下での数値です。実際には以下のような要因で燃費が変わります。
- 🏙️ 市街地の渋滞走行:カタログ値より20〜30%落ちることも
- 🏔️ 山岳路のアップダウン:登り区間は特に燃費が悪化しやすい
- 💨 高速道路での高回転走行:回転数が上がり燃費が下がる
- 🎒 荷物の重量増加:キャンプ道具を積むと消費量が増える
こうした実情を考えると、安全マージンとして航続距離の計算値から20〜30%引いた距離を「実用的な航続距離」として覚えておくのが現実的です。GB350なら591kmの80%=約470kmが目安になります。
一番確実な方法は、自分で「満タン法」による実燃費計測をすることです。①満タンにしてトリップメーターを0にリセット → ②いつも通り走行 → ③次の給油時に再び満タンにして、走行距離÷給油量で実燃費が出ます。自分の乗り方での実燃費を知ることで、給油タイミングの判断が格段に正確になります。
これが基本です。
参考:航続距離の考え方や計算方法、WMTCモード値の活用については以下の記事が参考になります。
ツーリングで『ガス欠』にならないために絶対に知っておくべき知識 - HondaGO BIKE LAB(Honda公式、2024年)
「リザーブタンク」という名称から、多くのライダーが「別のタンクが存在する」と思いがちです。これは誤解です。リザーブは別タンクではなく、ひとつのガソリンタンク内に設けられた「パイプの高さの違い」 によって実現されています。
通常走行時(コック:ON)は、タンク底面より高い位置にあるパイプからガソリンが供給されます。このパイプの高さよりガソリン液面が下がると、エンジンへの供給が途絶えてガス欠症状が起こります。この状態でコックをRES(リザーブ)に切り替えると、タンク底面まで届く低い位置のパイプに切り替わり、「パイプの高さの差分」に相当するガソリンが予備として使えるという仕組みです。
リザーブの容量は一般的に1〜4L程度で、車種によって異なります。燃費次第ですが、約50km走行できるように設計されているケースが多いです。ヤマハ「SR400」を例にすると、リザーブ容量2.2L×実燃費約25〜30km/Lで、50〜60km程度の走行が可能な計算になります。
ただし注意したい点があります。
リザーブを使い終わった後に給油したら、必ずコックをON位置に戻すことが必要です。RESのままにしておくと、次にガス欠症状が起きたときに切り替えるリザーブがなくなります。実際にこのミスでガス欠に見舞われるライダーは少なくありません。
また、最近のインジェクション搭載バイクにはフューエルコック自体がない車種も増えています。その場合は燃料計や残量警告灯に頼ることになるため、警告灯点灯後に走れる距離を事前に把握しておくことが重要です。
リザーブがあることに頼りすぎず、早めの給油が原則です。
参考:リザーブタンクの仕組みや使い方の詳細は以下が参考になります。
バイクのリザーブタンクとは?役割や仕組み、正しい使い方 - グーバイク(2024年)
多くのライダーは「タンク容量が大きい=安心」と考えています。しかし、ガソリンの重さが走行性能に与える影響を意識しているライダーは少数派です。
ガソリンの比重は約0.73〜0.76です。これを踏まえると、タンク容量20LのバイクにGA油が満タンに入ると、約15kgの重さがバイクの高い位置(タンク部分)に乗ることになります。15kgというのは、軽い一眼レフカメラを10台持つほどの重さに相当し、バイクの重心を明確に上げます。
重心が上がることで以下のような影響が出ます。
- コーナリング時:バンクのきっかけが重く感じられる
- 取り回し(押し引き)時:フラつきやすく、特にUターンなどで差が出る
- 急制動時:重心が高い分、前のめりになる力が大きくなる
ホンダ「Africa Twin AS ES(24Lタンク)」の場合、満タン(約18kg)と空タンクでは車両重量が約18kg変わることになります。これは体重60kgのライダーが乗るバイクを想定したとき、荷物30%増に相当するほどの変化です。
サーキット走行会などに参加するときは、満タンではなくタンク半分程度で走行することを推奨しているインストラクターも多く、スポーツ走行を楽しむなら意図的にガソリン量を絞るという考え方は実は理にかなっています。
ツーリングでは航続距離のために多く積みたい、スポーツ走行では軽くしたいという二律背反があります。自分の走り方に合わせて給油タイミングを使い分けることが重要です。この点を意識するだけで、乗り心地や疲労感にも違いが出てきます。
重心の高さは見落とされがちなポイントですね。
「タンク容量が大きいほど良い」という考え方は、ツーリングスタイルによっては必ずしも正しくありません。重量・重心の問題はすでに触れましたが、ここではより実践的な給油計画の組み立て方と、自分のバイクに合ったタンク容量の考え方を整理します。
給油計画の基本的な手順は以下のとおりです。
1. 実燃費を把握する(満タン法で自分の乗り方での燃費を計測)
2. 安全マージンを確保する(計算値の70〜80%を実用航続距離とする)
3. 給油ポイントを事前に調べる(ガソリンスタンドの営業時間も確認)
4. 残量の目安走行距離を覚えておく(トリップメーターを活用)
特に地方ツーリングで重要なのが「③給油ポイントの事前確認」です。2015年時点のデータでは、全国にガソリンスタンドが150km以上ない空白地帯が16ヵ所、100km以上ない空白地帯が83ヵ所確認されています。リザーブの50kmだけを頼りにしていると、スタンド到達前に完全なガス欠となるリスクがある場所が日本にはまだ存在するのです。
また、一般道だけでなく高速道路のSA・PAの給油情報も事前確認が有効です。SAによってはガソリンスタンドが未設置のケースもあります。
タンク容量と給油計画を組み合わせるなら、給油ポイントの検索にはGoogleマップやGSアプリが便利です。ルート作成時に「100kmごとに給油できる場所があるか」をチェックするだけで、ガス欠リスクを大きく下げられます。
ツーリング出発前に残量確認と給油計画を済ませるのが条件です。
参考:ガス欠対策とツーリングの計画については以下の記事が詳しいです。
~準備次第でガス欠は回避できる~給油のタイミングは事前に決めておく - BikeJIN(2017年)