

KTMより安いのに、実は中身がほぼ同じエンジンで乗り味だけ違うバイクを選ばないと、20万円以上の出費が丸ごと損になります。
GASGASは1985年、スペインのカタルーニャ地方の小さな街「サルト」で生まれたオフロードブランドです。創業当初からトライアル競技に強みを持ち、1993年以降FIMトライアル世界選手権で15回ものタイトルを獲得するという圧倒的な実績を誇っています。日本でも早くからトライアル愛好家の間で知名度は高く、「ガスガスといえばトライアル」というイメージが定着していました。
しかし2019年、KTMグループ(ピエラー・モビリティAG)がGASGASを買収したことで、ブランドの方向性は大きく変わります。見た目こそGASGASのレッドカラーを維持していますが、内部のコンポーネントはKTMおよびハスクバーナと多くを共有する「新生GASGAS」として生まれ変わりました。これは単なる塗り替えではなく、WPサスペンション共同開発のクロモリフレーム、高性能エンジン、油圧クラッチなどKTMグループのテクノロジーを全面的に継承していることを意味します。
つまり今のガスガスは、ブランドとしてはスペイン生まれながら、中身はオーストリア発のKTMグループ製テクノロジーで動いているという二面性を持っています。これが「ガスガスって結局KTMと何が違うの?」という疑問につながりやすいポイントです。結論から言えば、同じプラットフォームを使いながらもチューニング・セッティングで明確に乗り味を差別化しており、とりわけGASGASは「マイルドでフレンドリー」という独自のキャラクターを確立しています。
| 項目 | GASGAS | KTM | Husqvarna |
|---|---|---|---|
| 発祥 | スペイン🇪🇸 | オーストリア🇦🇹 | スウェーデン🇸🇪 |
| グループ | KTM(ピエラー・モビリティAG)傘下 | ||
| エンジン | 基本コンポーネントを共有 | ||
| 乗り味の傾向 | マイルド・フレンドリー | シャープ・スポーティ | 中間的 |
| 価格(例:EC250F) | 148万8,000円〜 | やや高め | |
| リヤサス形式 | リンク式 | リンクレス | リンク式 |
参考:ガスガスブランドの概要と世界選手権実績について
GASGAS – JAIA 日本自動車輸入組合
ガスガスのエンデューロモデルで最も多く聞かれる評判が「マイルドで乗りやすい」というものです。これはKTMやハスクバーナと並べて試乗した複数のインプレッサーが口を揃える評価で、単なる印象論ではなくフレーム・サスペンション・エンジンセッティングの組み合わせから来る明確な個性です。
オフロード専門誌の試乗記では「KTM、ハスクバーナと比べ、GASGASは明らかに異なっていた。パワーがないわけではありません。優しくて、フレンドリー。でも、開ければしっかりパワーがあります」という表現が使われています。また「シート高がスペック上は同じなのに、体感でKTMよりも1.5cmくらい低く感じる」というコメントも複数あり、日本人体型のライダーへの適合性が高いことが実感されています。
具体的な乗り心地を数値で確認すると、EC250Fの車重は約105.6kg(半乾燥)です。一般的な国産公道バイク250ccクラスが約134〜150kgであることと比べると、差は約30〜45kg。軽さの感覚をイメージするなら、「大型スーツケース(約25kg)分の重さがそのまま消えた状態」と考えると分かりやすいでしょう。これがオフロードでの取り回しやすさに直結しています。
サスペンションの評価も高く、WP製の倒立フロントフォーク(φ48mm)とリンク式リヤショックの組み合わせは「初期から良く動き、大きなギャップでも難なくショックを吸収する」との評価が多く見られます。
エンジン面では、EC250Fに搭載される水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ(249.9cc)は推定45馬力前後。ユーロ5規制に適合しながらこの性能を発揮しており、油圧クラッチの採用によりレバー操作が軽く「クラッチに苦労させられた」という経験がある人ほど驚くはずです。
乗りやすさが条件です。これがガスガスを選ぶ最大の理由になり得ます。
参考:EC250Fの詳細試乗インプレッション(Motor-Fan)
2025年モデルのGASGASエンデューロラインナップと日本での希望小売価格は以下の通りです(2024年8月改定後)。
| モデル | エンジン | 価格(税込) | 公道登録 |
|---|---|---|---|
| EC 250 | 2スト250cc | 141万円 | ✅ 可(TPI仕様) |
| EC 300 | 2スト300cc | 145万4,000円 | ❌ 不可(競技専用) |
| EC 250F | 4スト250cc | 148万8,000円 | ✅ 可 |
| EC 350F | 4スト350cc | 156万7,000円 | ✅ 可(要車検) |
選び方のポイントは用途と公道登録の有無です。初めてKTMグループのレーサーに触れるライダーや、トレール(CRF250L・WR250Rなど)からのステップアップを考えているライダーには、4スト250ccのEC250Fがまず第一の候補になります。扱いやすさが際立っており、「トレールの完全な上位互換」と形容するライダーもいます。
一方でパワーと汎用性のバランスを重視するなら、EC350Fが注目されています。4スト250ccに比べて全域でトルクが増し、高速道路を含む長距離ツーリングにも対応しやすくなります。ただし排気量351cc超なので250ccモデルにはない車検が必要になり、維持コストは上がる点に注意が必要です。
2スト250ccのEC250は、TPI(トランスファーポートインジェクション)採用によりナンバー取得が可能な公道走行OKモデルという希少な存在です。現在、新車で公道走行できる2ストロークバイクは国内ではほぼこのKTM系モデルに限られており、「2ストで公道を走りたい」という需要に応える唯一に近い選択肢です。これはかなりの強みです。
2スト300ccのEC300は競技専用車両です。ナンバーを取得しての公道走行は不可で、ディーラーでもナンバー付きでの販売は行っていません。ハードエンデューロ競技へのアタックを最優先に考えるライダー向けのモデルです。
参考:2025年モデル価格改定の詳細(ヤングマシン)
エンデューロの雄も値上げ! GASGASが'24ストリートモデル/'25オフロードモデル価格を改定 – ヤングマシン
エンデューロイメージが強いガスガスですが、2022年から日本市場に登場した公道専用ストリートモデル「SM700」と「ES700」は、バイク好きの間で想定以上の注目を集めています。この2モデルは、KTM 690 エンデューロRをベースにした水冷単気筒700cc(実質693cc)エンジンを搭載し、価格は2024年モデルで175万9,000円(税込)と設定されています。
SM700はモタードスタイル、ES700はデュアルパーパス(アドベンチャー系)スタイルという棲み分けです。SM700のシート高は898mm、ES700は935mmと高めですが、スリムな車体のおかげでシート高の数字ほど足つきが悪くないという評価が多く見られます。身長170cmのライダーでも片足でしっかり接地できるという声があります。
試乗インプレッションでは共通して「低回転からの弾けるようなトルク」が評価されています。水冷単気筒エンジンは意外なほどスムーズで、街乗りから峠道、高速道路まで幅広くこなせるオールラウンド性が魅力です。モタード色の強いSM700はコーナーリングの楽しさが際立つ一方、ES700はリアフューエルタンク採用によるユニークな重心設計で、オフロード走行時の安定感も確保されています。
ただし175万9,000円という価格は決して安くはなく、同じ単気筒系の競合と比べて「エンデューロブランドのストリートモデル」という希少性への対価も含まれています。国産大型バイクと同等かそれ以上の維持費・車検費用がかかる点も考慮が必要です。それが条件です。
参考:SM700・ES700の試乗レポート詳細(MotoMegane/バイクブロス)
【試乗レポート】ガスガス ES700/SM700「弾けるトルクと軽快ハンドリング」 – MC Web
多くのライダーが見落としがちなポイントがあります。KTM・ハスクバーナ・GASGASは基本プラットフォームを共有しているにもかかわらず、GASGASの価格設定はKTMより少し安く設定されている傾向があります。海外の比較試乗でも「KTMより$350〜$700ほど安い」という数値が示されており、日本市場でも同様の傾向が見られます。
ここで重要なのは「安い=性能が落ちる」ではないという点です。フレームはKTMグループ共通のクロモリ製で、WPサスペンションも同系統のものを使用。エンジンの基本コンポーネントも共有されています。違うのはチューニングの方向性とサスセッティング、一部パーツのグレードです。GASGASのほうがブラケット類がアルミ鋳造製などコストダウンされている部分はあるものの、オフロードのフィールドで実感できるほどのデメリットになるかというと、多くのライダーは「ほぼ気にならない」と評価しています。
さらに注目すべきは、GASGASのエンデューロモデルにはKTMとは異なりリンク式リヤサスが採用されている点です。これは接地感の豊かさやトラクション特性の面でライダーによっては有利に働く設計で、「ハスクバーナと同じリンク式を採用しているGASGASは、トラクション面でKTMより良いと感じた」という評価もあります。
まとめると、同じKTMグループの技術基盤を使いつつ「フレンドリーな乗り味+やや安い価格」というポジショニングがGASGASの本質的な強みです。
- 初めてKTMグループのレーサーを買うなら、まずGASGASから入るのは合理的な選択です
- 競技での細かい差よりも、日常的な乗りやすさや取り回しを重視するなら特に向いています
- 価格差を部品・メンテナンス費用に回す、という使い方でトータルコストが抑えられます
GASGASのパーツはKTMグループのネットワーク(全国のKTMディーラーでも対応)で調達できるため、外車特有の「パーツが入手しにくい」というリスクもほとんど解消されています。これは使えそうです。
参考:KTM系エンデューロレーサーの比較と各モデルの用途解説
KTM系エンデューロレーサー どれを買えばいい? – ゆるはすブログ
参考:GASGASとKTM・ハスクバーナの乗り比べインプレ
30台ものKTMファミリーから、いったい何を買うべきか…ベストバイはコレだ! – off1.jp