

世界王者のヘルメット選びは、実はあなたのヘルメット選びの参考にもなる。
ジョアン・ミルは1997年9月1日、スペイン・マヨルカ島のパルマ・デ・マヨルカで生まれたレーサーです。父親がマヨルカ島でショップを営んでいた影響もあって、幼少期はスケートボードに親しんでいましたが、やがてバイクレースの世界へ踏み込んでいきます。
2015年にロードレース世界選手権に参戦を開始し、2017年にはMoto3クラスで年間10勝を挙げてチャンピオンを獲得。2018年にMoto2クラスへ昇格するとルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞、そして2019年からはチーム・スズキ・エクスターとしてMotoGP最高峰クラスに挑みます。
2020年は特別な年でした。コロナ禍による変則シーズンを戦い抜き、スズキに20年ぶりとなるMotoGP最高峰タイトルをもたらしたのです。23歳での戴冠は、世界中のバイクファンを驚かせました。
しかしスズキのMotoGP撤退を受け、2023年からはRepsol Honda Teamへ移籍。マルク・マルケスとともにホンダのチームメイトとなります。2024年シーズンはランキング21位と苦戦しつつも、Honda HRC Castrolより2026年まで契約を延長。2025年には日本GPでフロントローを獲得するなど、着実に復調の兆しを見せています。
ゼッケン「36」を身につけ、世界の舞台で走り続けるミルの存在感は今も健在です。
Honda Racing公式サイトによるジョアン・ミルの詳細プロフィール(Honda HRC公式)
2024年まで、ジョアン・ミルはイタリアの名門ヘルメットブランド「AGV」を使用していました。それが2025年から日本メーカーの「OGK KABUTO(オージーケーカブト)」に変更されたのです。意外ですね。
このきっかけは、実はとても人間くさいものでした。スーパーバイク世界選手権(WSBK)に参戦するレミー・ガードナー選手と、ミル選手のマネージャーが同一人物であったことが大きなポイントです。ガードナーは2022年からカブトを着用しており、そのつながりでカブト側がマネージャーのパコ・サンチェス氏にアプローチしたことが縁のはじまりでした。
さらに、ミルの大の親友であるティト・ラバト選手もカブトを着用しており、ラバトから「性能が素晴らしい」との評判をすでに聞いていたことも、ミルをテストへと動かした重要な要因です。
2024年11月のバルセロナ公式テストで、ミルは黒塗りのF-17を初めて装着しました。結果は「即一発OK」。ミル自身は「風の巻き込みがなく、素晴らしい!フィッティングの良さや静寂性、高速でまったくヘルメットがブレないことに感動した」とコメントしています。つまり、性能への満足度が条件です。
2025年1月6日、オージーケーカブトはジョアン・ミルとの正式契約を発表。MotoGP世界王者が日本製ヘルメットを選んだニュースは、国内のバイク業界に大きな話題をもたらしました。
ジョアンミルのKabuto契約に関する詳細報道(AUTOSPORT web)
F-17 Mipsは「全方向型エアロダイナミクス」を核心コンセプトに開発されたKabutoのフラッグシップモデルです。MotoGPという世界最高峰の舞台で求められる性能を満たすために、複数の独自技術が詰め込まれています。
まず特徴的なのが「ウェイクスタビライザー(特許取得)」です。CFD(3次元数値流体解析)を駆使して開発されたこのデバイスは、走行中に発生する帽体付近の気流をコントロールし、揚力や空気抵抗を低減します。バイクが時速200kmを超えるような状況でも、ヘルメットが安定して首への負担を減らす設計です。
もうひとつが「クレストスポイラー(特許出願中)」。ヘルメット上部の気流をあえて乱すことで浮き上がろうとする力を抑制し、弓状のデバイス形状が幅広い角度で効果を発揮します。高速走行中のコーナリングでも集中力を維持できるのはこの技術があるためです。
帽体構造には「A.C.T.-2」を採用。FRP(繊維強化プラスチック)を基調とした高強度複合素材が使われており、FEM(有限要素法)による構造解析で各部の強度が最適化されています。チンガード部分にも高強度有機繊維を配置し、MFJの厳しい安全基準を高い水準でクリアしています。
規格はJIS規格取得およびMFJ公認。つまり、国内のモータースポーツ競技でも使用できます。これが条件です。
さらに内装はCOOLMAX®生地を使用し、全パーツを取り外して洗えるフル脱着システムを採用。インカム取り付け専用スペースや眼鏡対応チークパッドなど、ツーリングライダーにも嬉しい装備が充実しています。
OGK KABUTO F-17 Mipsの技術詳細ページ(OGK KABUTO公式)
「MIPS(Multi-Directional Impact Protection System)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これはスウェーデンのMips社が開発した、脳を守るための衝撃吸収技術です。
通常のヘルメットは、真上からの直角衝撃には強く設計されています。しかし実際の転倒や衝突では、真上から垂直に力がかかることはほとんどありません。多くの場合は「斜めからの衝撃(斜角衝撃)」であり、この際にヘルメットごと頭が回転することで脳に回転力が加わるのです。
MIPSはこの問題を解決するために、ヘルメット内側に低摩擦の滑走層を組み込みます。衝突時にこの層がわずか10〜15mmの範囲でスライドし、頭に伝わる回転エネルギーの一部を吸収して方向転換させます。脳に伝わる回転力を軽減するため、脳震盪などのダメージリスクを下げる効果が複数の研究で確認されています。
厳しいところですね、と感じるかもしれませんが、バイクの転倒は斜め着地がほとんどのため、この技術は市販ヘルメットにとって非常に重要な意味を持ちます。
F-17 Mips JOAN MIRは、このMIPS技術と前述の空力技術、A.C.T.-2帽体構造をすべて統合しています。世界最高峰のMotoGPで求められる安全基準を市販モデルに落とし込んだ仕様です。
加えて、緊急時に救助者がスムーズにヘルメットを外せる「エマージェンシーシステム(特許出願中)」も搭載。アクシデント時に内装ウレタン材を引き抜く方式で、頬への負担を最小限に抑えながらヘルメットを外せる独自構造です。これは知っておくと得する情報です。
MIPSヘルメットの効果と通常ヘルメットとの安全性の違い(EUROGEAR)
「F-17 Mips JOAN MIR」のグラフィックは、ミル選手の故郷であるスペイン・マヨルカ島の自然からインスピレーションを得ています。イタリア・マルケ州ペーザロを拠点に活動するグラフィックスタジオ「スターラインデザイナーズ」が手がけた、オリジナルのアートワークです。
カラーは「イエローレッド」の1色展開。鮮やかなイエローを基調に情熱的なレッドを配し、オリーブやモンステラなど南国植物のリーフ模様をシャドーで全体に表現しています。前側はホンダをイメージした赤、後側はグレーと黒をメインに蛍光イエローが配されています。後頭部には「MIR」の文字とレーシングナンバー「36」を刻んだドッグタグモチーフが入り、ミルのパーソナルな世界観を演出しています。
製品仕様をまとめると以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | F-17 Mips JOAN MIR |
| 価格 | 税込 73,700円(税抜 67,000円) |
| カラー | イエローレッド(1色展開) |
| サイズ | XS / S / M / L / XL / XXL(6サイズ) |
| 規格 | JIS規格・MFJ公認 |
| 同梱品 | Pinlock®インナーシールド・ウィンドシャッター・リキッドボトルキット・スペシャルステッカー(B6サイズ) |
| 販売形態 | 数量限定発売 |
数量限定モデルのため、完売となる可能性があります。サイズはXS(頭周54〜55cm)からXXL(63〜64cm)まで対応しており、自分の頭周を測ってから購入するのが基本です。ヘルメットは試着なしでのサイズ選びは避けましょう。頭の形によって同じサイズ表示でも装着感が大きく異なるためです。
なお、本製品には蛍光塗料が使用されているため、一般塗料と比べて紫外線で色あせしやすい点には注意が必要です。保管時は直射日光を避けることをお勧めします。
また、F-17 Mips JOAN MIRにはPinlock®インナーシールドが同梱されています。これはシールドの内側に装着する曇り止めレンズで、外気温との温度差でシールドが曇るのを防ぐ効果があります。冬季や雨天時のツーリングで特に威力を発揮します。
F-17 Mips JOAN MIRの製品詳細と仕様一覧(Webike News)
多くの記事では語られない、ジョアンミルとKabutoの組み合わせが生んだ特別な一幕があります。2025年MotoGP第17戦、もてぎ(ツインリンクもてぎ)で開催された日本グランプリにおいて、ミルは通常のシグネチャーモデルとは別の「一戦限定スペシャルヘルメット」を着用しました。
そのデザインは、世界的人気アニメ「呪術廻戦」とのコラボレーション仕様。日本GPという舞台に向けて、Kabutoが日本のファンへ贈った企画です。ミル自身もこのデザインに大きな興味を示し、日本の漫画・アニメ文化をヘルメットに落とし込んだ異色のコラボが実現しました。
これは知っておくと話が広がる情報ですね。
MotoGPのような最高峰レースであっても、ヘルメットのグラフィックはライダー本人や開催地への敬意を反映する「ものがたり」を持っています。ミルの場合、シーズン通常仕様はマヨルカ島の自然、そして日本GPでは呪術廻戦という、ライダーと開催地の文化をつなぐ表現として機能しました。
バイク乗りとしてヘルメットを選ぶとき、デザインの背景にある「ストーリー」を知ることは、選択そのものをより深みのある体験にします。F-17 Mips JOAN MIRのイエローレッドカラーも、マヨルカの大地・植物・ホンダへのリスペクトという物語が重なっています。意外ですね。
OGK KABUTOは1948年に大阪で創業した日本メーカーです。企画・開発・安全試験をすべて国内で行うこだわりを持ち続けており、MotoGPという世界最高峰の舞台にそのブランドが立つことは、日本のバイクユーザーにとっても誇れることです。
ヘルメットは「かぶれれば何でもいい」ではなく、技術・文化・選手の意志が重なった選択です。ジョアンミルが世界の舞台で選んだF-17 Mipsは、その好例といえるでしょう。
ジョアンミルの2025日本GP「呪術廻戦」ヘルメット着用詳細(AUTOSPORT web)