

TZ750を手に入れても、日本の公道で乗ると前科がつく可能性があります。
TZ750は「市販レーサー」です。これは一般の市販バイクではありません。
ヤマハが1974年から製造・販売したTZ750は、フォーミュラ750クラスへの参戦を目的として設計されたピュアレーシングマシンです。ウィンカー、ヘッドライト、テールランプ、バックミラーといった保安部品を一切持たないため、道路運送車両法が定める「保安基準」を満たすことができません。
日本では、保安基準に適合しない車両で公道を走ることは、道路運送車両法の違反にあたります。保安基準に適合しなくなるような改造を行った場合、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。これは刑事罰です。
罰金だけで終わりません。
整備命令に従わない場合はさらに「50万円以下の罰金」も加わりますし、万一事故を起こした場合は任意保険すら適用されない可能性があります。不正改造車には保険契約自体を締結できないか、締結していても保険金が支払われないケースがあるのです。結果として、事故の損害をすべて自己負担することになりかねません。
英国やフランス、アメリカでは過去に公道登録の実例があったという情報もありますが、日本国内においてはTZ750、TZ500のナンバー取得は事実上不可能とされています。国内で所有している方も、ナンバーが取れないため公道走行はできない状態のまま保管しているケースが大半です。
つまり公道走行は法的リスクが大きいです。
TZ750を所有したいなら、展示やサーキット走行に限定した楽しみ方を最初から想定しておくことが必須の条件です。
参考リンク(道路運送車両法における不正改造の罰則について)。
国土交通省:不正改造に対する罰則等
スペックを見れば、なぜ禁止されたかがわかります。
TZ750の誕生は1974年。ヤマハが当時の市販レーサーTZ350の並列2気筒エンジンを横に2つ連結し、水冷2ストローク並列4気筒エンジンを作り上げました。排気量は初期型で694cc(のちに747ccに拡大)、最高出力は初期型で90PS(1979年型では130bhp=約130馬力)を発生しています。
これを当時の公道用大型バイクと比べてみましょう。同じ1970年代にヒットしたカワサキZ1(903cc)の馬力が82PSでした。TZ750の130馬力という数字は、Z1より約50馬力も上を行く異次元のパフォーマンスです。ちょうど軽自動車1台分の出力を2輪の車体に詰め込んだようなイメージです。
車重も徹底的に削ぎ落とされています。
1974年初期型のTZ750Aは車両重量が約145kg程度とされており、公道用750ccバイクが200kg前後あることを考えると、圧倒的な軽さです。パワーウェイトレシオ(1kgあたりの馬力)は現代のスーパースポーツと比較しても見劣りしないレベルです。
変速機は6速を装備。始動方式は押しがけのみで、セルモーターすら持ちません。これはすべて「公道走行」ではなく「レースで勝つこと」に振り切った設計思想の結果です。
意外なことですね。
1974年から1979年の間に製造されたTZ750の総生産台数は567台(諸説あり)とされており、F1マシンに近い感覚のレーシングマシンが6年間で567台という数字は、決して大量生産ではありません。
参考リンク(ヤマハ公式のTZ750諸元・歴史について)。
ヤマハ発動機コミュニケーションプラザ:1974年 TZ750
TZ750のデビュー戦は、まさに「出たとこ勝負」でした。
1974年のデイトナ200マイルレース。当時MVアグスタから移籍したばかりのジャコモ・アゴスチーニがTZ750のファクトリー仕様に乗り、この一戦でデビューウィンを飾ります。2位にはケニー・ロバーツが続き、ヤマハは初戦でワン・ツーフィニッシュを達成しました。
しかしこのデビュー戦の前後には「ルール上の混乱」も起きていました。これが知られざる事実です。
1974年3月31日のFIM春期会議において、なんとTZ750が「フォーミュラ750の規定に適合しない」という決定が下されたのです。TZ750は「一般市販車」ではなく「市販レーサー」であるという解釈から、出場資格なしと判定されました。翌1975年からはF750の規定が「25台以上生産されたエンジン搭載車」へと変更され、TZ750はようやく正式に出場資格を得ることができました。
これが条件です。
その後TZ750は、ケニー・ロバーツ、スティーブ・ベイカー、ジョニー・チェコットらの手によってフォーミュラ750クラスを席巻。スティーブ・ベイカーはデイトナ200マイルで5勝を挙げ、1977年のフォーミュラ750世界選手権タイトルを獲得しています。これはアメリカ人ライダーとして初のFIMタイトルでした。
さらに驚くのは「ダートトラック」での活躍です。
1975年、ケニー・ロバーツはTZ750のエンジンをダートトラック専用フレームに搭載した「TZ750ダートトラッカー」でAMAのインディ・マイルに挑戦。ロードレース用の水冷4気筒エンジンでダートを走るという前代未聞のマシンで劇的な勝利を収めました。しかし、あまりの性能差からAMAはシーズン終了後にこのようなマシンを事実上禁止。TZ750ダートトラッカーは1年でその活躍に幕を下ろしました。
参考リンク(ケニー・ロバーツのTZ750ダートトラッカーについて)。
LAWRENCE:伝説のヤマハTZ750ダートトラッカー!
TZ750は「所有するだけ」でも相当な覚悟が必要です。
2025年8月にイギリスのオークションに登場した個体は、1975年デイトナ200でジーン・ロメロが実際に乗り優勝した車両(シリアルナンバー409000295)で、予想落札価格が約1390万円(7万ポンド相当)という驚愕の値が付きました。もちろんこれはレースヒストリーと優勝記録を持つ超プレミアム個体です。
一方、1978年型の一般的なプライベーターマシン(TZ750E)は同じオークションで約470万円(3万2400ドル)で落札されており、こちらが「相場感のある価格帯」と言えます。それでも国産中型バイクが新車で50〜100万円台であることを考えれば、桁違いの世界です。
厳しいところですね。
TZ750を入手するための主な手段は次のとおりです。海外オークション(BonhamsやRMサザビーズなど)への参加、国内外のクラシックバイクイベントや人脈を通じた個人売買、専門ディーラーへの問い合わせなどが現実的な選択肢です。ただし輸送コストや関税・通関費用が別途数十万円単位でかかることも念頭に置いておく必要があります。
入手後もメンテナンスコストが課題です。
TZ750は2ストロークエンジンのため、ピストン、シリンダー、クランクシャフトなどの消耗品交換が定期的に必要です。50年近く前のマシンとなると、純正部品の入手はほぼ不可能なケースも多く、ワンオフ製作や海外からの取り寄せになります。維持費はバイク本体の価格に匹敵するほどかかることも珍しくありません。
保存目的であれば、防錆・防湿管理と定期的なエンジン保管オイルの処理が最低限必要です。クラシックバイク専門の整備業者に相談することをおすすめします。
TZ750の走りを体感する方法は、所有だけではありません。
最もアクセスしやすい選択肢は「TZ750レプリカ」です。RZ250Rをベースにした外装レプリカがカスタムバイクとして存在しており、国内でも過去に販売事例があります(グーバイクで297万円で掲載された事例など)。公道走行可能な仕様に仕上げられたものもあり、外観でTZ750のスタイルを楽しめます。これは使えそうです。
もうひとつの選択肢が「クラシックレースイベントへの参加観戦」です。
日本では筑波サーキットや鈴鹿サーキット、富士スピードウェイなどでヒストリックレースやクラシックバイクのデモ走行が定期的に開催されます。ヤマハのコミュニケーションプラザ(静岡県袋井市)では、ケニー・ロバーツが実際にTZ750に乗ってデモ走行を行ったイベント(2018年)の映像も公開されており、生きたマシンとしてのTZ750を間近で見るチャンスがあります。
2ストロークの感覚を公道で体験したいなら、TZ750の設計思想を受け継いだ市販公道車という選点で「TZR250」や「RZ350」といった2ストロークスポーツに乗ることも一つの道です。これらは現在でも中古車市場で流通しており、TZ750の"DNA"を公道上で感じられる最も現実的な手段です。
サーキットで2ストロークの爆発的な加速を体感したいなら、TZ125やTZ250(TZの小排気量版)を入手してサーキット走行会に参加するという方法もあります。大排気量に比べればコストが現実的で、TZシリーズ特有のパワーバンドの感覚を体験できます。
まずは人脈作りが基本です。
バイクショーや国内のクラシックレースイベントに参加し、TZ750オーナーや愛好家のコミュニティに入ることが、最終的にTZ750に乗れる機会を手に入れる最短ルートです。欲しいマシンの情報を発信し続けることで、入手のチャンスが生まれます。
参考リンク(ヤマハコミュニケーションプラザのレースマシン展示情報)。
ヤマハ発動機:最大排気量・最速のロードレーサー(TZ750展示情報)
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