

フレームがアルミ製のほうが「軽くて速い」と思い込んでいると、買取査定で数万円損するかもしれません。
「オフロードの本格レーサーならアルミフレームのほうが軽くて有利」と考えているライダーは少なくありません。しかし KTM 450EXC は、2026年モデルに至るまで一貫して 25CrMo4クロモリスチール製のセントラルダブルクレードル型フレームを採用し続けています。つまりアルミではなく、あえて鉄系素材を選んでいるわけです。
では、なぜKTMはスチールにこだわるのでしょうか?
最大の理由は「コントロールされたたわみ(フレックス)」にあります。エンデューロは岩盤、ルーツ(木の根)、マディなど、路面状況が秒単位で変化します。そうした不整地を走る際、フレームが完全に剛直だとフロントタイヤが弾かれて制御不能になるリスクが高まります。25CrMo4クロモリスチールは高い強度を持ちながら、アルミと比較してほどよい「粘り」と「しなり」を備えており、路面からの衝撃をフレーム自体が吸収する役割を果たします。これがエンデューロライダーにとって「乗りやすさ」や「疲れにくさ」として感じられるのです。
アルミフレームはその剛性の高さが特徴ですが、縦弾性係数(ヤング率)の観点ではスチールの約1/3しかなく、衝撃が直接ライダーの体に伝わりやすい傾向があります。長時間・長距離を走り込むエンデューロ競技では、この差が体力消耗の度合いに直結します。
KTMのエンデューロエンジニアチームは「剛性バランスの最適化」をフレーム設計の最重要テーマとして位置づけており、25CrMo4素材を部位ごとに使い分けることで、ねじれ剛性と縦方向の柔軟性を意図的に両立させています。これは単なる「軽量化」とは異なる次元の設計哲学です。剛性だけ追求するならアルミ、バランスを追求するならクロモリスチール、という理解が基本です。
| 項目 | クロモリスチール(25CrMo4) | アルミ合金 |
|---|---|---|
| しなり(フレックス) | ✅ 大きい(エンデューロ向き) | ⚠️ 小さい(剛直) |
| 衝撃吸収性 | ✅ 高い | ⚠️ やや低い |
| 重量 | ⚠️ やや重い | ✅ 軽い |
| 溶接・修理性 | ✅ 比較的容易 | ⚠️ 専門技術が必要 |
クロモリスチールが条件です。エンデューロという競技のフィールドでは、この素材選択が勝利に直結する判断なのです。
KTM 450EXC が採用している「セントラルダブルクレードル型フレーム」は、エンジンをゆりかご(クレードル)のように2本のパイプで前後から抱え込む設計です。この構造はエンジンをフレームのストレスメンバーとして機能させ、車体全体の剛性確保に貢献しています。どういうことでしょうか?
エンジン自体がフレームの一部として剛性を分担することで、フレームパイプを必要以上に太くしたり厚くしたりせずに済みます。結果として、燃料なし車重はわずか 107.2kg(2026年モデル)という驚異的な軽さを実現しています。450ccの排気量を持つ公道走行可能なバイクとして考えると、これは一般的なオンロード400ccバイクの120〜150kg台と比べても際立った軽さです。体感として、コンビニのレジ袋1袋(約1〜2kg)単位の差が積み重なって、林道での取り回しや坂道での押し歩き、転倒後の引き起こしに大きく効いてきます。
フレームジオメトリも綿密に計算されており、前後サスペンションストローク(フロント300mm・リア310mm)と組み合わせることで、深いギャップや大きな岩越えでも車体姿勢の乱れを最小化する設計です。サスペンションだけでなく、フレームのジオメトリそのものがコーナリング性能を左右します。
また、KTMはフレーム設計の更新を継続的に行っており、2023年モデル以降ではアンチスクワット挙動(加速時のリア沈み込み特性)の最適化が図られています。これによりハードブレーキングからの立ち上がりでのトラクションがより自然になり、ライダーがスロットルを開けやすい状態が作り出されています。つまりフレームはただの「骨格」ではなく、ライディング特性を決定する能動的な設計要素なのです。
参考:KTM公式 2026 KTM 450 EXC-F テクニカルスペック(フレーム・シャシー詳細)
https://www.ktm.com/en-int/models/enduro/4-stroke/2026-ktm-450-excf/technical-specifications.html
メインフレームの素材とは対照的に、リア側のサブフレームには全く異なる素材が使われています。それが「ポリアミド強化アルミニウム製2ピースサブフレーム」です。2023年モデル以降のKTM 450EXCに採用されたこの構造は、ポリアミド60%・アルミニウム40%という複合素材で構成されており、総重量はわずか 1.815kg しかありません。
意外ですね。防弾チョッキにも使われるケブラーと同系統の素材が、バイクのサブフレームに採用されているのです。
この数字の意味をイメージしやすく言うと、500mlのペットボトル飲料を約3.5本分の重さで、シート・リアフェンダー・エアボックスを支える構造体が作れているということです。従来のアルミ単体製サブフレームと比べて大幅な軽量化を達成しながら、コンピュテーショナルダイナミクス(計算流体力学)を駆使した設計により剛性も確保しています。
実走でのインプレッションを見ても、「サブフレームが樹脂とアルミの2ピースになっているが、剛性感が非常に高い。マディでリアフェンダーがぷらぷらしていた20年前とは別物」という評価が寄せられています(off1.jpインプレ記事より)。
2ピース構造の採用には別のメリットもあります。それは損傷時の修理コスト低減です。転倒してサブフレームが損傷した場合、一体型の旧設計では全体交換が必要でしたが、2ピース構造なら損傷した部分のみ交換できます。エンデューロライダーにとって「転倒はつきもの」である以上、この設計変更は長期的な維持費に直結する実用的な改良です。
参考:2024年モデルKTM EXCレンジの実走インプレッション(off1.jp)
https://www.off1.jp/_ct/17634127
「フレームプロテクターはカスタム好きがつけるもの」と思っていませんか。これは多くのKTM 450EXCオーナーが後悔するポイントの一つです。
KTM 450EXCのクロモリスチール製メインフレームは、転倒や石はねによる傷・擦れに対して無防備な状態で出荷されています。傷自体は走行に直接影響しませんが、問題は塗装が剥がれた部分からの錆の進行です。エンデューロ走行では泥水・沢越え・濡れた岩などに常にさらされる環境のため、傷口から錆が広がるスピードはロードバイクの比ではありません。
さらに重要なのが中古査定への影響です。KTM 450EXCの中古市場では、フレームの状態が査定額に直結します。フレームに深い傷や錆があると、査定担当者は「フレーム交換・補修が必要」と判断し、相場から3〜5万円程度の減額要因になるケースがあります。KTM 450EXCの中古買取相場が29.9万円〜120万円と幅広い中で、フレームの状態は上下を大きく左右する要素の一つです。
フレームプロテクターの装着は購入直後が最適です。R-TECH(アールテック)やAcerbis(アチェルビス)などのブランドから、KTM 450EXCの年式ごとに専用設計のフレームプロテクターが販売されており、価格は5,000〜15,000円程度です。結束バンドで固定するだけの簡単装着で、フレームへの傷・ブーツ傷・飛び石傷を確実に防ぎます。
フレームプロテクターは必須です。新車購入時に一緒に注文しておくことで、将来の売却時の査定額を守ることができます。
参考:R-TECH フレームプロテクター(国内代理店 Hills Trading)製品説明
https://www.support.hills-trading.co.jp/CATALOG/R-TECH.pdf
KTM 450EXCのフレームナンバーが刻印されていれば、書類さえそろえれば公道登録(ナンバー取得)できるのでは、と考えているライダーもいます。しかしこれは大きな誤解です。
KTM 450EXC-F(4ストロークモデル)は公道走行用の保安部品(ヘッドライト・テールランプ・ウインカー・ホーン等)を純正装備した状態で出荷されており、正規モデルとして日本でも公道登録が可能です。一方で、同じEXCシリーズでもSIXDAYSや特定の競技専用仕様・年式によっては公道走行不可のモデルが存在します。
問題の核心はここにあります。125XC-WやSXモデルなどは、ナンバーを「取得すること」自体は役所への申請上可能でも、公道を走る資格(排ガス規制・騒音規制適合)を持っていないのです。ナンバーを取得するのは「税金を払う証明書としてのプレートをもらう」行為であり、走行許可とは別の話です(KTM京都 公式ブログより)。
KTM 450EXC-Fが正規に公道登録された場合、排気量449.9ccの小型二輪(251cc以上)として扱われ、2年ごとの車検が必要になります。車検費用は重量税(2年分3,800円〜)・自賠責保険・検査手数料などを含めると最低でも2万円前後かかります。加えて年間の軽自動車税も6,000円(251cc〜)となり、250ccクラスとは税負担が変わる点も頭に入れておく必要があります。
フレームの仕様はそのままに、「公道仕様のEXC-Fか」「競技専用モデルか」をディーラーに確認することが原則です。迷ったときは購入前にKTM正規ディーラーへの問い合わせを1つのアクションとして行うのが最も確実です。
参考:KTM京都 公式ブログ「公道走行不可モデルの登録について」
https://www.ktm-kyoto.com/single-post/2018/08/28/公道走行不可モデルの登録について
フレームの設計要素の中で、ライダーからあまり注目されないのが「アンチスクワット特性」です。しかしこれは、エンデューロのタイムや疲労度に直接関係する非常に重要な要素です。
アンチスクワットとは、加速時にリアサスペンションが沈み込む(スクワット)動作に抵抗する力のことです。フレームのジオメトリ、具体的にはスイングアームピボット位置・チェーンライン・エンジンマウント位置の三者関係によってアンチスクワット値が決まります。KTM 450EXCの2023年モデル以降のフレーム設計では、このアンチスクワット挙動を再最適化したことが公式に発表されています。これは性能の話です。
アンチスクワット値が高すぎると、加速時にリアが突っ張ってグリップを失い、コーナー立ち上がりでスリップしやすくなります。逆に低すぎると、スロットルを開けるたびにリアが沈んでパワーが逃げ、スピードに乗れません。KTMのエンジニアたちは、林道の上り坂やルーツセクションでライダーが「自然にスロットルを開け続けられる」領域を狙ってこの値を設定しています。
実際にエンデューロ競技に出場するライダーには、フレームのエンジンマウント位置やスイングアームピボットの状態を定期点検することを意識してほしいポイントです。ボルトの緩みや偏摩耗が生じると、アンチスクワット値が設計値からズレてハンドリングが不安定になります。エンジンマウントボルトのトルク管理(一般的に規定トルク値はサービスマニュアルに記載)は、サスペンション整備と同じ優先度で行うべきメンテナンスです。
フレームは静的な骨格ではなく、走行中に動的に機能する設計部品です。KTM 450EXCを本来の性能で楽しむには、フレーム設計の意図を理解したうえで乗ることが求められます。それが「READY TO RACE」というKTMの哲学を体現することにつながります。
| チェック項目 | 頻度の目安 | 影響箇所 |
|---|---|---|
| エンジンマウントボルトの締め付けトルク確認 | 10〜15時間走行ごと | ハンドリング・アンチスクワット |
| スイングアームピボットの偏摩耗確認 | シーズン毎 | リアトラクション・旋回性 |
| フレームのクラック・溶接部チェック | 重転倒後・定期 | 安全性・車体剛性 |
| フレームプロテクターの状態確認 | 月1回 | 錆・塗装保護・査定額 |

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