

原付一種で流れに乗れず、30km/h制限のせいで毎回クルマに追い抜かれているとしたら、それは免許の問題です。
原付一種(50cc以下)に乗っているライダーが最もストレスを感じる場面が、法定速度30km/hの壁と、片側3車線以上の交差点での二段階右折です。
法定速度の話からすると、一般道の流れは40〜50km/hが普通なのに、原付は30km/hまでしか出せません。これが原因で後続車との速度差が生まれ、接触リスクや追い越しによるヒヤリハットが増えます。実際に原付を日常使いしているライダーの多くが「流れに乗れない怖さ」を経験しているはずです。
小型二輪免許(125cc以下)を取得すると、法定速度は一気に60km/hまで引き上げられます。これは普通自動車と同じ制限速度で、交通の流れに自然に乗れるようになります。つまり追い越されるストレスが激減するということです。
二段階右折についても状況は大きく変わります。原付一種では、片側3車線以上の交差点で必ず二段階右折が義務づけられており、これを怠ると交差点右左折方法違反として違反点数1点・反則金3,000円が科せられます。さらに信号のタイミングによっては信号無視も同時に取られ、その場合は違反点数2点・反則金6,000円になるケースもあります。
小型二輪免許を取得した時点で、この二段階右折の義務が完全になくなります。普通自動車と同じ感覚で右折できるので、交差点での判断がシンプルになります。これは時間節約にもなりますし、精神的なストレスの軽減にも直結します。
速度と右折方法、この2点だけでも日常の走りは大きく変わります。
原付一種の法定速度と違反の罰則について詳しくまとめているJAFの資料も参考になります。
小型二輪免許の取得費用は、普通自動車免許の有無によって大きく変わります。これが条件です。
普通自動車免許を持っている場合、AT(オートマ)限定の小型二輪(125cc以下)は技能教習8時間+学科1時間のみで取得できます。費用の相場は6〜10万円で、最短2日間での卒業が可能です。週末を使えば土日だけで取れる計算になります。
一方、MT(マニュアル)の小型二輪は技能教習10時間+学科1時間が必要で、費用は8〜12万円程度、最短でも3日必要です。免許を1枚も持っていない場合は学科教習が26時限増えるため、費用は13〜18万円程度に跳ね上がります。
普通二輪免許(400cc以下)と比較するとどうでしょうか。普通二輪は技能教習が17時間(MT)または15時間(AT)必要で、費用は16〜22万円が相場です。小型二輪のほうが取得費用を平均で5〜10万円ほど抑えられます。これは使えそうです。
一発試験(運転免許試験場)で受験する方法もあり、費用は申請料と試験手数料で合計6,100円と格安ですが、合格率は10〜20%程度と低く、一般的なライダーには現実的ではありません。
下の表で取得方法ごとの目安を整理しておきます。
| 免許の種類 | 所持免許 | 費用の目安 | 最短日数 |
|---|---|---|---|
| AT小型二輪(125cc以下) | 普通自動車免許あり | 6〜10万円 | 最短2日 |
| MT小型二輪(125cc以下) | 普通自動車免許あり | 8〜12万円 | 最短3日 |
| AT小型二輪(125cc以下) | 免許なし | 12〜18万円 | 最短5〜6日 |
| 普通二輪(400cc以下) | 普通自動車免許あり | 10〜15万円 | 最短9日 |
取得費用の相場と教習の流れについては、損保ジャパンのコラムがわかりやすくまとめています。
損保ジャパン|小型二輪免許は最短6日で取得できる?費用や教習所の流れ
小型二輪(125cc以下)の年間維持費がいくらかかるか、実例で見てみましょう。
広島のロイヤルドライビングスクールの指導員・中西さんの場合、年間維持費は約16,000円です。内訳は次のとおりです。
車検がないのは大きなポイントです。250ccを超えるバイクは2年ごとに車検が必要で、費用は1回2〜5万円程度かかります。125cc以下ならこのコストがまるごとゼロです。
任意保険についても、小型二輪(125cc以下)は自動車保険に付帯する「ファミリーバイク特約」が使えます。単体のバイク保険に加入する場合の年間保険料が平均約2.8万円(損害保険料率算出機構2023年度データ)なのに対し、ファミリーバイク特約の追加保険料は年間1〜2万円程度です。この差は毎年続きます。
燃費に関しては、125ccスクーターは1Lあたり40〜55km走るモデルが多く、ガソリン代は1ヶ月あたり1,000〜3,000円程度に収まります。普通車(軽自動車で1Lあたり20km程度)と比べると、同じ距離を走るのにかかる燃料代はおよそ半分以下です。片道10kmの通勤なら月の燃料費が2,000〜3,000円台で収まることも珍しくありません。
125cc以下の維持費の詳細は、ズーリッヒ保険のコラムが税金から保険まで体系的に解説しています。
チューリッヒ保険|原付・バイクの維持費と税金(125cc・250cc・400ccバイク)
小型二輪免許を取得すると、乗れるバイクの幅が一気に広がります。原付一種(50cc以下)と小型二輪(51〜125cc)では、選べる車種数が比較になりません。
国内で販売されている125ccクラスの主なモデルを確認すると、スクーター系だけでもHondaのPCX125・リード125、YAMAHAのNMAX・シグナスグリファスなど充実のラインナップが揃っています。JAPAN BIKE OF THE YEAR 2025で大賞を受賞したのはYAMAHAのXSR125で、ネオクラシックデザインとスポーティな走りが評価されました。MT車ではHondaのCB125R、スズキのGSX-R125、カワサキのZ125 PROなど、スポーツ性の高い選択肢も豊富です。
このラインナップの多彩さが重要です。50cc以下の原付は、国内の車種が近年急激に減少しており、2024〜2025年にかけて主要メーカーが次々と生産終了・廃盤を発表しています。実際、YAMAHAのJOGやHondaのDio110(原付一種)は現行販売が大きく縮小しています。一方125ccクラスは需要が増えており、各メーカーとも積極的に新モデルを投入している状況です。
AT(スクーター系)とMT(ネイキッド・スポーツ系)でもキャラクターが全く異なります。
価格帯は新車で30〜50万円台が中心、中古なら10〜30万円台でも程度のよいモデルが見つかります。50ccに比べると車両価格はやや上がりますが、維持費の低さで長期的にはむしろ経済的です。
小型二輪免許を持っていると、後から普通二輪(400cc以下)にステップアップする際のコストと時間が大幅に抑えられます。これが案外知られていない大きなメリットです。
通常、普通二輪免許を新規で取得する場合は技能教習17時間(MT)が必要で、費用は普通自動車免許持ちでも10〜15万円かかります。しかし、小型二輪MT免許をすでに取得している場合は「小型限定解除」で普通二輪になれます。この場合、追加の技能教習は5時間だけで済み、費用も3〜6万円程度です。
つまり、いきなり普通二輪に挑戦するより、まず小型二輪から始めて乗りながらスキルを磨き、その後ステップアップするルートが、費用・安全性の両面で優れた選択肢になります。
| ルート | 費用の目安 | 技能教習時間 |
|--------|-----------|-------------|
| 最初から普通二輪(MT)を取得 | 10〜15万円 | 17時間 |
| 小型二輪MT → 限定解除で普通二輪 | 8〜12万円 + 3〜6万円 = 合計11〜18万円 | 10時間 + 5時間 |
費用だけを見ると近い数字になりますが、小型二輪から入るルートは「乗れる期間が長い」「125ccで十分と判断すれば解除しなくてもよい」という柔軟性があります。また技術的な習熟度も上がるため、いきなり400ccに乗るより安全です。結論はケースバイケースです。
さらに、小型二輪の正式名称は「普通自動二輪小型限定免許」です。これは普通二輪の一区分として位置づけられており、ステップアップ(限定解除)の枠組みが最初から整っています。将来的に大型二輪(750ccや1000cc超)に乗りたい場合も、小型 → 普通 → 大型というステップが法的にも自然な流れです。
限定解除の詳細と費用については、自動車学校の公式情報も参考にしてください。
原付一種(50cc以下)では二人乗りが法律で禁止されています。これは多くの原付ユーザーが制限として感じている部分です。
小型二輪免許を取得してから1年以上が経過し、かつ乗車定員2名の車両であれば、一般道での二人乗りが認められます。一般道では免許取得1年後から、高速道路では3年後からが基本条件です(小型二輪は高速道路走行不可のため、実質は一般道での二人乗り解禁が主なメリット)。
「免許取得から1年」という条件は、効力が停止されていた期間は含まれないため注意が必要です。たとえば免停処分を受けた期間は1年のカウントに含まれません。
パートナーや家族を乗せて出かけたい場合、原付一種では不可能なことが小型二輪では可能になります。生活の選択肢が広がるということですね。
二人乗りには技術的な注意点もあります。同乗者は加速時に運転者を後ろへ引っ張り、減速時は体重をかけてきます。コーナリングでは恐怖心から外側に体を逃がしがちで、バイクが大回りするリスクがあります。乗せる前に同乗者への「二人乗りのルール説明」を必ずしておくことが大切です。
二人乗りを安全に楽しむためには、まず単独走行でのスキルを十分に積んでから挑戦するのが原則です。
小型二輪の二人乗りの条件については、以下が参考になります。
ロイヤルドライビングスクール広島|小型二輪のメリットとデメリット