

KB4に乗ると、42kgも軽くなったせいで、同じエンジンのニンジャ1000SXより速く感じて驚いてしまいます。
ビモータ(bimota)は、1966年にイタリアで空調設備会社として誕生したブランドです。その後1973年、創業者のひとりであるマッシモ・タンブリーニ氏が中心となりモーターサイクルのフレームビルダーとして活動をスタートさせました。社名「bimota」は、創業者3名の頭文字(Bianchi / Morri / Tamburini)から命名されています。
ビモータはエンジンを自社開発せず、ホンダ・カワサキ・スズキ・ヤマハなどのエンジンを搭載したオリジナルフレームのバイクを少量ハンドメイドで生産し続けてきました。その命名ルールはシンプルで、カワサキエンジンなら「KB」、ホンダなら「HB」というようにエンジンメーカーの頭文字+「B(ビモータ)」で表されます。
KB4は、カワサキエンジンを使った4番目のモデルという意味です。KB1(1978年・Z900/Z1000)、KB2(1981年・Z550系)、KB3(1983年・Z1000J)と続き、約40年ぶりに登場したのがKB4です。意外ですね。
2019年、川崎重工グループのKawasaki Motors Europeが休眠状態だったビモータの再生を支援。新生ビモータの第1弾はスーパーチャージドエンジンを積んだ「テージH2」、そして第2弾として2021年のEICMA(ミラノショー)で市販型が正式発表されたのがKB4です。日本では2022年3月より、カワサキプラザ店を含むビモータ正規取扱店約50店舗で販売が開始されました。
ビモータとカワサキのコラボレーションは、実はKB1より前の1973年にまでさかのぼります。この年、ビモータはカワサキZ1向けのスイングアーム・マグネシウムホイール・外装などのキットパーツを販売していました。フレームが制作されていなかったためナンバリングはされていませんが、いわば「KB0」とも呼べる存在です。つまり、ビモータとカワサキの縁は50年以上に及ぶということですね。
ビモータ(BIMOTA)ってどんなメーカー? KB4の国内販売で注目度上昇|WEBike ニュース
(ビモータのブランド概要・KBシリーズの歴史・ハンドメイド製法について詳しく解説されています)
KB4の心臓部は、カワサキ・ニンジャ1000SXと共通の水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ、排気量1,043ccのエンジンです。最高出力は142PS(104.5kW)/10,000rpm、最大トルクは111N・m(11.3kgf·m)/8,000rpm。このスペックはKawasakiのスポーツツアラーとしてのエンジンキャラクターをそのまま受け継いでいます。
ここが大きなポイントです。ビモータCOOのピエルルイジ・マルコーニ氏は「600ccクラスのような乗り味を1000ccで実現したかった」と語っています。そのために採られたのが、徹底した軽量化と重量配分の最適化です。
車両重量は194kg。同じエンジンを積むニンジャ1000SX(236kg)より42kgも軽く、ホイールベースはZX-10R(1,450mm)より60mm短い1,390mmを実現しています。42kgというのは、体重50kgの人が背中に荷物を背負っているのと同じくらいの差です。これが走行時の軽快感の違いに直結します。
そして最も独創的な仕様が「シート下ラジエター」です。通常、水冷エンジンのバイクはラジエターをエンジン前方(フロントカウル内)に設置します。しかしKB4では、ラジエターをシート下・テールカウル内に水平に近い状態で配置するという独自のレイアウトを採用しています。
これにより実現したのが53.6(前):46.4(後)というビモータが理想とする前後重量配分です。エンジンを前方に寄せることで前荷重を高め、コーナリングのバランスを改善する狙いがあります。フロントカウル左右のエアインテークから取り込まれた空気は、サイドのCFRPダクトを通ってシート下のラジエターへと送られます。つまり機能と造形美が一体になっているということですね。
なお、標準タイヤはピレリ製ハイグリップタイヤ「ディアブロ スーパーコルサSP(または同EVO)」です。これはサーキット走行も想定したラジアルタイヤで、公道での雨天時は慎重に扱う必要があります。
| 項目 | KB4スペック | ニンジャ1000SX(参考) |
|---|---|---|
| 排気量 | 1,043cc | 1,043cc |
| 最高出力 | 142PS/10,000rpm | 141PS/10,000rpm |
| 車両重量 | 194kg | 236kg |
| ホイールベース | 1,390mm | 1,440mm |
| シート高 | 810mm(±8mm) | 820mm |
| 燃料タンク容量 | 19.5L | 19L |
| メーカー希望小売価格 | 4,378,000円 | 約163万円(参考) |
(実際の試乗レビューと共に、シート下ラジエターの構造・重量配分・ライディングポジションなどが詳しく解説されています)
見た目から受ける印象と、実際に乗ったときの印象が大きくかけ離れているのが、KB4の最も際立った特徴です。ボリュームあるカウルの造形、太いアルミ削り出しスイングアーム、セパレートハンドル——これだけ見ると「乗りこなすのが難しそうなクセのあるバイク」と感じるライダーがほとんどでしょう。これは間違いないですね。
しかし実際は、複数のプロライダーや専門メディアが「意外なほどフレンドリー」と口をそろえて評価しています。その理由を分解すると以下のようになります。
まず、エンジン特性が穏やかです。Ninja 1000SX由来の1043cc4気筒は、パワーバンド全域でトルクに満ちながら、低回転域から扱いやすいジェントルなキャラクターを持っています。元MotoGPライダーの中野真矢氏も「走れば走るほど安心感が増していく」と表現しました。3,000rpm付近での街乗りでも過敏なレスポンスはなく、厚いトルクを使って穏やかに走れます。
次に、ライディングポジションが想像より無理のない範囲に収まっています。セパレートハンドルのグリップ位置はトップブリッジ下から生えており、上体の前傾は強めですが、タンクを抱きかかえるような極端な姿勢ではありません。身長170cmのライダーでも腕が遠くなりすぎず、操作しやすいポジションが取れます。シート高は810mmで±8mmの調整が可能です。
そしてフレーム構造が独自のハイブリッド設計になっています。フロント部はスチール鋼管トレリスフレーム、リア部はアルミ削り出しのスイングアームピボットプレートという組み合わせです。この構造がほどよいしなやかさを生み出し、走り始めてすぐに安心感をライダーに与えます。前後オーリンズ製サスペンション(フロント:FG R&T43 NIX30、リア:TTX36)の上質な動きも、乗り心地の良さに大きく貢献しています。
一点注意が必要なのは、渋滞や市街地での低速走行時の話です。前傾が強いポジションは流れている道では許容範囲でも、ダラダラと動く渋滞にハマると肩・腰・両手・首に疲労がたまります。KB4はあくまでストリートスポーツとして作られたバイクであり、ツアラーではありません。これが条件です。
スーパースポーツとは異なる 質の高いストリートスポーツ bimota KB4|Mr.Bike
(実際の試乗に基づくポジション・ハンドリング・電子制御の詳細インプレッションが記載されています)
KB4の価格は、消費税10%込みで4,378,000円(本体価格3,980,000円)です。これはポルシェの中古車やフェラーリの入門グレードに近い水準であり、バイクとしては突出した価格帯です。それでもKB4オーナーたちがこぞって「高すぎない」と言う理由を整理していきましょう。
まず装着パーツのグレードが別格です。フロント・リア共にオーリンズ製フルアジャスタブルサスペンション、ブレンボ製ブレーキキャリパー(フロントφ320mmダブルディスク)、OZレーシング製鍛造アルミホイール。これらは国内の量産スーパースポーツでは「アフターマーケットで後から換装するパーツ」です。1点ずつ単品で揃えれば100万円を超えるのは珍しくありません。これは使えそうです。
さらに外装パーツのほぼすべてがCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製です。フロントカウル、エアダクト、アンダーカバー、マフラーカバー、メーター周りのパネルまで。塗装は職人が一台ずつ手作業で行い、全車両が唯一無二の1台として仕上げられます。
そして、KB4の購入方法は通常の「欲しいときに買いに行く」という形ではありません。初期入荷台数に限りがあるため、カワサキモータースジャパンのWebサイトから購入権を申し込み、販売予定台数を超えた場合は抽選となる仕組みです。抽選は入荷台数に合わせて複数回に分けて実施されました。初期ロットの目標は200台とされており、第5期まで抽選が行われた記録があります。
中古市場でも希少性は変わりません。現時点でグーバイクに登録されているKB4の中古車台数は7台程度で、平均価格は約400万円(2024年時点)と、購入時の価格とほぼ変わらない水準を維持しています。希少な存在です。
なお、KB4にはサーキット走行を主眼に置いたハイパフォーマンス仕様「KB4 RC」も存在します。ビモータのRCシリーズはより軽量化・専用サスセッティングが施されており、KB4とは異なる個性を持っています。
Bimota「KB4」の購入権申込1月17日(月)16時より受付開始|PR TIMES
(カワサキモータースジャパンによる公式プレスリリース。購入権申込の仕組みと抽選制の詳細が記載されています)
KB4を語るとき、多くのメディアがスペックや走りの話に集中しますが、実はオーナーが最も価値を感じているのは「所有体験そのもの」だという視点が、あまり語られていません。意外ですね。
一般的なバイクは「走るための道具」として機能的に評価されます。しかしKB4のオーナーインタビューや購入記には、「ガレージで眺める時間が幸福だ」「乗らない日でも存在感がある」という記述が繰り返し登場します。元MotoGPライダー・中野真矢氏もインプレの中で「ガレージで眺めつつクラフトマンシップを楽しめる」と述べています。
これは他の高性能バイクには少ない感覚です。たとえばスーパースポーツのCBR1000RR-RやGSX-R1000は、走ることに特化した機能美はありますが、工芸品のような「見て楽しむ」要素はほとんどありません。KB4はそこが根本的に異なります。
具体的に言えば、アルミ削り出しのトップブリッジに彫刻のような肉抜き、溶接ビードすら美しく仕上げられたスイングアーム、「VERA PELLE」(本物の皮革)と刻印されたイタリア植物なめし本革のシート、マスキングテープを剥がした跡がかすかに残る手塗りのカラーリング。これらは量産ラインでは絶対に生まれないディテールです。
さらにKB4は台数が限られているため、日本国内で同じバイクとすれ違う確率は極めて低く、ライダーとしての個性を最大限に主張できます。「他と同じものは絶対に造らない」というビモータの哲学は、KB4オーナーにとっての「他人とは違うライダーでいたい」という感情にダイレクトに響きます。
実際にKB4を購入するか否かにかかわらず、このバイクが持つ「乗れるアート」という性質を理解しておくことは、高性能バイクを選ぶときの新たな基準になりえます。単純なスペック比較では測れない価値があるということを、KB4は教えてくれます。バイク選びの視野が広がりますね。
【クラフトマンシップの極意】Bimota KB4を中野真矢がインプレッション|ライダーズクラブ
(中野真矢氏による詳細インプレ。クラフトマンシップ・所有体験・走りの感触が丁寧に語られています)

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