

社外マフラーに交換しただけで、事故時に任意保険が下りなくなることがある。
バイクに乗り続けていると、必ずどこかのタイミングで「アフターマーケット部品」という言葉に出会います。消耗品の交換時期に調べはじめたり、カスタムに興味を持ちはじめたりした際に目にする機会が多いワードです。ただ、純正品やOEM品との違いをきちんと理解している人は意外に少ないのが現実です。
まず「純正品(Genuine Parts)」とは、バイクメーカーが自社ブランドで供給する補修部品のことです。ホンダ車ならホンダ純正、ヤマハ車ならヤマハ純正という具合で、車体と同じメーカーが保証する部品です。品質や適合性は折り紙付きですが、価格は高め設定になっています。
次に「OEM部品(OEMパーツ)」は、正規メーカーの管理下で外部メーカーが製造した部品です。実は純正部品として市販されているものの中にも、製造は別会社というケースが少なくありません。つまり「純正品と全く同じ工場で作られた部品が、別ブランドで販売されている」ケースがあるということです。
そして「アフターマーケット部品」とは、純正メーカーとは別の独立したサードパーティメーカーが製造・販売する部品全般を指します。カスタムパーツから補修用部品まで種類は幅広く、価格帯も品質のバラつきも大きいのが特徴です。
アフターマーケット部品は純正より劣るというイメージを持たれがちですが、それは必ずしも正しくありません。ブレンボ(Brembo)製のブレーキキャリパーや、オーリンズ(Öhlins)製のサスペンションのように、純正よりも高性能・高品質として定評のある製品が多数存在します。これは使えそうです。
市場規模でみると、2024年の日本の自動車アフターマーケット市場は前年比105.5%の22兆1,235億円(矢野経済研究所調べ)に達しており、世界全体では2030年に6,600億ドル規模に達すると予測されています。バイク用部品はその一部ですが、専用パーツの品揃えは年々拡充されています。
選択肢が豊富という点がメリットです。
日本の自動車アフターマーケット市場規模(矢野経済研究所)の詳細データが確認できます。
自動車アフターマーケット市場に関する調査を実施(2025年)|矢野経済研究所
バイクのカスタムでアフターマーケット部品を選ぶとき、見落とされがちなのが「保安基準への適合」という問題です。バイクが公道を走行するためには、国土交通省が定める保安基準を満たしている必要があります。排気量251cc以上は車検で確認されますが、250cc以下のバイクも保安基準は適用されるため、違反すれば交通違反になります。
特にライダーが交換しやすい「マフラー」は、もっともトラブルが多い箇所です。マフラーを社外品に換える場合、JMCA(全国二輪車用品連合会)の政府認証を取得しているかどうかが重要な判断基準になります。
| 年式 | 近接排気騒音の基準値 |
|---|---|
| 2000年以前(250cc以上) | 99dB以下 |
| 2001〜2013年(250cc以上) | 94dB以下 |
| 2014年4月以降 | 車種基準値+5dB以内 |
2010年4月以降に生産・通関された国産・輸入バイクにおいては、JMCA認証なしのマフラーを公道で使用することは原則として禁止されています。また、触媒付きの車両でマフラーを交換する場合は「排出ガス試験結果証明書(通称:ガスレポ)」の提出も車検時に必要です。JMCA認証マフラーにはガスレポが必ず付属しますが、中古車で社外マフラー付き車両を購入した場合に書類が引き継がれていないことがあるので注意が必要です。書類は条件が揃わないと再発行もできないため、購入前の確認が大切です。
不正改造として認定された場合の罰則は厳しく、道路運送車両法により6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。車検に通ったとしても、路上で警察に検挙されて保安基準不適合の判断を受けた場合も同様です。罰金刑は前科として残るリスクがあります。これは厳しいところですね。
マフラー以外にも保安基準が適用される箇所は多く、たとえば以下のパーツも要注意です。
- ホイール:JWL認定品以外は車検不合格。海外製カスタムホイールには無認定品が混在している
- ウインカー:超小型LEDタイプはEマーク取得品でなければ保安基準不適合
- バックミラー:2006年12月31日以降製造のバイクは左右両側取り付けが義務。鏡面面積69㎠以上が必要
- ナンバープレート周辺:2021年10月以降登録車は取り付け角度が厳密に規定されている
バイクカスタムで保安基準を逐一チェックするなら、Webike newsの記事が参考になります。
【違法?合法?】あなたの愛車は大丈夫?カスタムを楽しむための保安基準まとめ|Webike
「社外パーツをつけていても保険は関係ない」と思っているライダーは少なくありません。実は、これは大きな誤解です。
任意保険(バイク保険)の契約には、車両の状態を正確に告知する義務があります。アフターマーケット部品を装着してバイクの状態が変化した場合、その変更を保険会社に申告しなければ「告知義務違反」となる可能性があります。告知義務違反が認定された場合、事故時に保険会社から保険金の支払いを拒否されることがあります。
特に注意すべきケースは次のとおりです。
- エンジンや駆動系のチューニングパーツ交換:馬力・トルクが大幅に変わる場合は申告が必要
- ホイールの材質・サイズ変更:重量バランスや制動距離に影響するため変更申告が必要
- ブレーキ系部品の変更:ブレーキキャリパー本体の交換などは要申告
- 車検証記載の諸元(全幅・全高・重量など)が変わるカスタム:構造変更が必要な場合がある
もちろん「パッド交換や消耗品レベルの社外品への切り替え」は申告不要なケースがほとんどです。境界線は「車両の性能・外寸・重量が変わるかどうか」と考えておけば大丈夫です。
申告を怠ったまま事故が発生した場合、修理費用が全額自己負担になるリスクがあります。金額にして数十万〜数百万円規模の損失につながることもあり、これは無視できないデメリットです。痛いですね。
保険申告が必要かどうか迷ったときは、保険会社のサポートデスクに1本電話するだけで確認できます。変更内容を伝えるだけなので、手続きの手間もほとんどかかりません。確認する、これだけ覚えておけばOKです。
JMCA全国二輪車用品連合会のマフラーに関する公式Q&Aは、車検と認証の関係を詳細に解説しています。
アフターマーケット部品には、純正同等以上の品質を持つ信頼性の高いものから、安価ではあるが耐久性や精度に問題があるものまで、玉石混淆の状態です。ライダーにとって「どれを選べばいいか」は悩ましい問題ですが、いくつかの基準を持つことで選択肢は絞り込めます。
① 認証・規格マークを確認する
国内で販売されているアフターマーケット部品には、信頼性の目安となる規格マークがあります。
- JMCA政府認証マーク:マフラー。騒音値・排出ガス基準をクリアした証明
- JWL規格:ホイール。軽合金製ディスクホイールの日本の強度基準
- Eマーク:欧州ECE規則に適合。ウインカーなど灯火類の信頼性の目安
これらのマークがない海外製格安品は、見た目は同じでも強度不足や精度不良があるケースがあります。特に走行中に大きな負荷がかかるホイールやブレーキ系は、価格だけで選ぶのは禁物です。
② 部位ごとの「コスパ優先」と「品質優先」を分ける
すべての部品を高品質なアフターマーケット品にする必要はありません。部位によって優先順位を変えるのが賢い選び方です。
| 部位 | 推奨の選択 | 理由 |
|---|---|---|
| ブレーキパッド | 信頼ブランド社外品 | 制動性能・耐久性に直結 |
| エアフィルター | 社外品でコスパ可 | 交換頻度が高く純正は割高 |
| マフラー | JMCA認証品のみ | 法規制・車検・保険に関係 |
| サスペンション | 予算次第で社外品 | 乗り心地に大きく影響 |
| ホイール | JWL認定品のみ | 走行安全性に直結 |
| ミラー・灯火類 | 保安基準適合品のみ | 違反・車検不合格のリスク |
③ メーカー・ブランドの評判を調べる
日本国内で実績のある社外パーツメーカーを選ぶことで、品質のリスクを大幅に下げられます。ブレーキパッドであればDaytona・ENDLESS・VESRAH・SBSなど、サスペンションであればオーリンズ・ナイトロンなど、カテゴリごとに定評のあるブランドがあります。
Webikeやナップス(NAPS)などバイク用品専門店のユーザーレビューは、実際の使用感を調べるのに役立ちます。これは使えそうです。
バイクのブレーキパッド選びの詳細インプレッションはこちらが参考になります。
ブレーキタッチにこだわればバイクはもっと楽しくなる!ブレーキパッド一斉インプレッション|RIDERS CLUB
アフターマーケット部品をうまく活用すると、バイクの維持費を大幅に抑えることができます。純正部品の価格と比べたとき、消耗品の分野では特に差が顕著です。
たとえばブレーキパッドの場合、純正品の実売価格が前後セットで7,000〜10,000円程度であるのに対して、信頼性の高いアフターマーケット品(デイトナ ゴールデンパッドなど)は3,000〜5,000円程度で購入できます。年間に複数回交換する走行距離の多いライダーにとっては、年間で1万円以上の節約につながります。
オイルフィルターも同様です。純正品の価格が1,000〜1,500円ほどのところ、同等品質のアフターマーケット品なら500〜700円で手に入ることもあります。消耗品の話に限れば、アフターマーケット部品の活用は節約の定番です。
一方で「安すぎる部品」には落とし穴もあります。通販サイト(特に海外ECサイト)で極端に安価に出回っているバイク用部品の中には、粗悪品や偽造品が混じっているケースが報告されています。米国のFTC(連邦取引委員会)も偽造自動車部品の急増に警告を発しており、安全性に直結するブレーキ系やステアリング系の部品は価格だけで選ぶと命取りになりかねません。
価格が純正の1/3以下の場合は、品質証明が必要です。
もう一つ、あまり知られていない節約ポイントがあります。バイクのリアサスペンションやフロントフォークのオーバーホール時に使用するスプリングやダンパーオイルも、アフターマーケット品から選べます。純正のスプリングを高品質社外品に変更することで、体重・ライディングスタイルに合わせたセッティングが可能になり、燃費と乗り心地を同時に改善できる場合があります。これは知っておくと得ですね。
コストを抑えつつ信頼できる部品を探すなら、Webike・ナップス・2りんかんなど実店舗を持つ専門店のオンラインショップで、レビュー件数の多い商品から選ぶ方法が安全です。レビュー数が50件以上あるものを目安に絞り込むと、選択ミスのリスクを下げられます。
一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)のバイク不正改造防止ページでは、法令遵守の観点からの部品選びについての見解が確認できます。