

フロントフォークを外して走ると、急ブレーキ時のコーナリングラインがむしろ乱れなくなります。
Tesi H2 Teraの価格を一言で表すとすれば、「ハンドメイドのスーパーチャージドクロスオーバーとして、世界規模で見てもトップクラスの価格帯」です。まず世界の主要市場の価格を整理してみましょう。
| 市場 | 価格 | 日本円換算(参考) |
|------|------|-------------------|
| 欧州(イタリア基準) | 約40,800ユーロ | 約650万〜680万円 |
| 英国 | £34,468 | 約708万円 |
| 米国 | 約$69,995〜 | 約1,050万円〜 |
| フィリピン | 400万ペソ以下 | 約970万円 |
| 日本 | 準備中(未発表) | 約866万〜1,000万円超と予測 |
※換算レートは参考値です。日本国内価格は2025年10月時点で未発表。
日本では旧モデルのTesi H2が税込866万8,000円(本体価格788万円)で発売されました。TERAはアドベンチャー寄りのクロスオーバー仕様ですが、標準でアクラポビッチ製チタンマフラー、オーリンズTTX36サスペンション前後、OZレーシング製鍛造ホイールを装備しているため、旧Tesi H2を超える価格設定になると国内メディア各社も予測しています。
1,000万円近い価格は現実的か?と疑問に感じるライダーも多いと思いますが、比較対象として、トップグレードのドゥカティ ムルティストラーダV4 Pikes PeakやBMW M1000XRが30万円〜40万円前後(欧州)であることを考えると、Teraのプレミアム度は「さらにひと回り上」の世界観です。
つまり、価格設定の高さには相応の根拠があります。エンジン単体(カワサキH2 SX)が新車で約220万円以上、オーリンズのサスペンションがペアで数十万円、ブレンボStylemaブレーキも高額パーツであることを積み上げると、ある意味での「適正価格」と理解できます。
カワサキとの提携がもたらした恩恵として、通常のビモータよりはるかに広いサービスネットワークが使えるのも大きなポイントです。英国では既にカワサキ正規ディーラー5店舗がビモータ取扱店として指定されており、年間整備費は£180(約3.7万円)程度と報告されています。
カワサキモータースジャパン公式:bimota Tesi H2 TERA 国内販売予定のご案内
Teraの核心にあるのは、カワサキ製998cc スーパーチャージャー付き直列4気筒エンジンです。このエンジンの搭載形式について「Ninja H2と同じ」と思われがちですが、実際はH2 SX(スポーツツアラー)および Z H2(ネイキッド)と共通の仕様で、最高出力200PS(147.1kW)に設定されています。純粋なNinja H2の228PSより出力を抑え、実用域でのトルク感と扱いやすさを優先した設計です。
エンジン以外の主要スペックを確認しましょう。
| 項目 | スペック |
|------|----------|
| エンジン | 998cc 水冷DOHC 4バルブ 直列4気筒 + スーパーチャージャー |
| 最高出力 | 200PS(147.1kW)/ 11,000rpm |
| 最大トルク | 137Nm(13.9kgm)/ 8,500rpm |
| 車重(乾燥) | 195〜214kg |
| シート高 | 820±30mm(820〜850mm調整可) |
| ホイールベース | 1,445〜1,454mm |
| 燃料タンク容量 | 17〜22L(仕様による) |
| フロントサスペンション | ハブセンターステアリング + オーリンズTTX36 |
| リアサスペンション | オーリンズTTX36(モノショック) |
| フロントブレーキ | 330mmディスク ×2、ブレンボStylema 4ポッド |
| リアブレーキ | 220mmディスク、ブレンボ2ポッド |
| タイヤ(F/R) | 120/70 ZR17 / 190〜200/55 ZR17 |
| 変速機 | 6速リターン(クイックシフター上下対応) |
0〜100km/hを公称3.5秒でこなし、0〜200km/hも8.2秒というスペックは驚異的です。参考として、この3.5秒という数字はスポーツカーのフェラーリ296 GTBとほぼ同等の加速力に相当します。
スーパーチャージャーが生み出す音も大きな特徴で、5,000〜6,000rpm付近でスロットルを軽く開けると、コンプレッサー独特の「ヒューン」という音が聞こえます。これは一般的なNAエンジンでは絶対に体験できない感覚で、オーナーレビューでも「エンジンの音が好きすぎる」という声が多く見られます。
燃費は穏やかな走行で40mpg(約17km/L)程度と、MCNの計測では想定外に良好でした。スーパーチャージドバイクは燃費が極端に悪いと思われがちですが、これは覚えておきたい事実です。
Webike NEWS:ビモータ「Tesi H2 TERA」の国内導入が決定! 詳細スペックと主要諸元
Tesi H2 Teraで最も注目すべき技術が「ハブセンターステアリング(TESIシステム)」です。これが何なのかを理解すると、このバイクの魅力が一気に深まります。
通常のバイクはフロントフォーク(テレスコピック式)が「操舵」と「衝撃吸収」の両方を担当しています。ブレーキをかけるとフォークが沈み込み(ダイブ)、車体が前傾姿勢になります。この前傾がキャスター角とトレールを変化させ、ハンドリングが微妙にブレてしまうのが構造上の限界です。
TESIシステムはこの問題をゼロにしました。「操舵」と「衝撃吸収」を完全に分離した仕組みです。フロントにスイングアームを使って衝撃を吸収し、ハンドルの動きはパンタグラフ状のリンクを通じて前輪ハブのみに伝達されます。ブレーキをかけてもキャスター角は変化しません。
これが原則です。
その実用的な効果として、MCNのテストでは「コーナー進入中にブレーキをかけてもラインが変わらない」「ウェット路面での安定感が普通のバイクとは次元が違う」と報告されています。Ducati MultistradaやBMW M1000XRなどの競合が電子制御サスペンションで同様の動きに近づけようとしているのに対し、TeraはメカニカルなTESI構造で物理的に解決しているのが興味深いですね。
ただし、このシステムにはメンテナンス上の注意点があります。ハブ内部のベアリングやリンク機構は、走行5,000〜10,000kmごとに点検・整備が推奨されており、熟練メカニックが担当する必要があります。整備費は部品込みで約10万円規模になることもあるとされています。厳しいところですね。
TERaではさらに改良が加えられ、ステアリング切れ角が片側35度(旧Tesi H2比で+8度)まで拡大されました。これによりUターンや低速での扱いやすさが大幅に向上しています。旧Tesi H2の19度という切れ角は日常走行では不便でしたが、Teraはその弱点を克服しています。
RIDE HI:TESI H2ハブセンターステアリングを世界初完全分解!仕組みを徹底解説
価格帯が800万〜1,000万円前後という市場を俯瞰すると、Teraがいかに独自のポジションを占めているかが分かります。同じ価格帯の代表的なモデルと比較してみましょう。
| モデル | 価格目安(欧州) | 出力 | 特徴 |
|--------|----------------|------|------|
| Bimota Tesi H2 Tera | 約40,800ユーロ | 200PS | ハブセンターステアリング、スーパーチャージャー |
| Ducati Multistrada V4 Pikes Peak | 約30,000ユーロ以上 | 185PS | 電子制御サスペンション、最高級装備 |
| BMW M1000XR | 約28,000〜32,000ユーロ | 210PS | M性能、電子制御フル装備 |
| Kawasaki Ninja H2 | 約29,000〜35,000ユーロ | 228PS | スーパーチャージャー、フルカウル |
価格だけを見ると、DucatiやBMWは「半値か7割の予算でも買える」ことになります。しかしTeraが提供するものは単なる性能の話ではありません。
ビモータ・リミニの職人が一台一台ハンドメイドで組み上げるという製造方法、航空宇宙産業に使われる接着剤でフロントスイングアームを固定するほどの精度、全てのボルトがドームヘッドの高品質品で統一された仕上がり、これらは量産ラインでは生まれない独自の価値です。
結論は「目的が違う」ということです。BMW M1000XRやMultistradaは「最強の万能バイク」を目指したもの。対してTeraは「世界に一台しかないような特別な体験を乗り物にしたもの」という方向性です。
実用面でのデメリットも正直に挙げておくと、標準装着のAnlasタイヤは400マイル(約640km)という非常に短い寿命が指摘されており、多くのオーナーが早めにPirelli Diablo Rosso IV Corsaなどへの交換を選択しています。また、電子制御サスペンションが標準装備ではなく(オプションで追加可能)、この点ではDucatiやBMWに一歩譲ります。
これは使えそうな情報ですね。タイヤ交換コストを購入前に見積もっておくことで、維持費の計画が立てやすくなります。
MCN(Motorcycle News):2025 Bimota Tesi H2 Tera フルレビュー|価格・スペック・乗り比べ評価(英語)
Tesi H2 Teraは「買うだけ」では終わらないバイクです。価格と同様に維持費・管理のコストをあらかじめ把握しておくことが、後悔のない購入につながります。
まずエンジン系の維持費については、H2 SXエンジンと完全共通なので、カワサキ正規ディーラーでの対応が可能です。英国のオーナーレポートでは年間整備費が£180(約3.7万円)と報告されており、これはスーパーチャージドバイクとしては意外なほど低コストです。日本でもカワサキプラザでのオイル交換・定期点検が適用できる見通しです。
一方で、ハブセンターステアリング部分の整備はより専門的です。前述の通り、ハブ内ベアリングの交換や清掃は5,000〜10,000kmごとの実施が推奨されており、費用は部品込みで約10万円が目安。ただし、この整備を誤ると操舵フィールに直接影響するため、認定を受けたメカニックへの依頼が原則です。
タイヤについては注意が必要です。標準のAnlas Scorpaタイヤは400マイル(約640km)という短い寿命が多くのレビューで指摘されています。ロングツーリングに行く前にタイヤをチェックすることが大切です。Pirelli Diablo Rosso IV CorsaやBridgestone Battlax S22などのロードタイヤへの換装を早めに検討する方が、コストと走りの両面で有利です。
📋 維持費チェックリスト(年間概算)
- 🔧 定期点検・オイル交換:約3〜5万円(カワサキディーラー)
- 🛞 タイヤ交換(年1〜2回):前後セット約5〜10万円(銘柄による)
- ⚙️ ハブセンターステア整備(5,000〜10,000kmごと):約10万円
- 🔩 消耗品(ブレーキパッド、チェーンなど):約3〜5万円
- 🏠 任意保険:高額バイクのため年間20万円以上になるケースも
車両価格が高い分、任意保険料も通常のバイクより高くなります。車両価格に応じた車両保険を付けるかどうかも含め、保険内容の見直しが重要です。保険の選択で年間数万円の差が出ることもあるため、購入前に複数社への見積もりを比較しておくことをおすすめします。
くるまのニュース:ビモータ「Tesi H2 TERA」日本導入決定、英国価格と搭載装備の詳細
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