

リンク機構のグリスが切れると、ニードルベアリングが焼き付いて色が変わるほど高温になります。
バイクのリアサスペンションには、大きく分けて「ツインサス」「モノサス(リンクなし)」「リンク式モノサス」の3種類があります。現代のスポーツバイクや中〜大型バイクの多くは、このうちリンク式モノサスを採用しています。
リンクとは、スイングアームとリアショック(ダンパーユニット)を接続する三角形の金属部品のことです。「ただの繋ぎ手」ではありません。このリンクがあることで、スイングアームが動いたときにショックユニットへ伝わるストローク量を意図的に変化させることができるのです。
具体的な構造を確認しておきましょう。リンクは「スイングアーム」「リアショック」「テンションロッド(プッシュロッド)」という3つの部品と連結しています。スイングアームが路面から力を受けて動くと、その動きがリンクを介してリアショックに伝わります。ここで重要なのは、スイングアームの動き量とショックのストローク量が「1対1」ではないという点です。
この比率のことを「レシオ」または「リンク比」と呼びます。リアタイヤが10mm動いたとき、ショックが5mmしか動かない場合はリンク比が2ということになります。このレシオが一定ではなく、ストロークの深さに応じて変化する構造こそがリンク機構の核心です。
つまり「リンク比が変わる」ということです。
ツインサスやリンクなしのモノサスは部品点数が少なく製造コストを抑えられますが、サスペンションの動きが入力に対して比較的リニアになります。一方リンク式は部品が増える分コストがかかるものの、同じショックユニットを使いながらまったく異なる乗り味を実現できます。コスト重視のビジネスバイクや軽量スクーターにリンク機構が搭載されていないのはそのためです。
参考:スイングアームとリンク機構の詳細な仕組みについて、ホンダが公式に解説しています。
リンク機構を搭載する最大の理由が「プログレッシブ効果(ライジングレート効果)」です。この言葉を聞いたことはあっても、何がどう変わるのか実感しにくい方も多いでしょう。
プログレッシブとは「段階的に変化する」という意味です。サスペンションの文脈では、ストロークが浅いうちは反発力が小さく(柔らかい)、深く沈むほど反発力が強くなる(硬くなる)特性を指します。
イメージしやすいように例を挙げましょう。
これが実現できる理由はリンクの形状と取り付け位置にあります。スイングアームが深く押し込まれる(大きなストローク)につれて、リンクの角度が変わり、ショックユニットへの伝達効率が上昇します。つまり同じ入力でもショックのピストンが速く動くようになり、減衰力も大きくなるのです。
リンク機構がない場合は、バネ定数が一定のバネを使う限り、小さな衝撃に合わせてセッティングすれば大きな衝撃では底付きしやすくなり、大きな衝撃に合わせれば日常の乗り心地が硬くなるというトレードオフが生じます。リンク機構はこのジレンマを解消するために生まれました。
これは使えそうです。
モトクロスバイクの世界でこの技術が先に発達したのも納得がいきます。ジャンプで数メートル飛んで着地するような衝撃と、通常の路面走行で生じる細かい振動を、同じサスペンションで両立させる必要があったからです。1970年代後半にモトクロス競技の現場から生まれたこの技術が、1980年代以降に公道用スポーツバイクへと普及していきました。
参考:リンク式モノサスのプログレッシブ効果についてグラフと合わせて詳しく解説されています。
リンク式モノサスとは?リンク機構でサスペンションストロークを最適化|clicccar
リンク式サスペンションは各メーカーによって独自の名称がつけられており、構造や設計思想にも微妙な違いがあります。名前が違うだけで本質は同じだと思われがちですが、内部構造には各社のこだわりが反映されています。
名称や内部構造こそ異なりますが、「リンクを介してプログレッシブ効果を生み出す」という基本思想はすべて共通しています。これが基本です。
なお、KTMのエンデューロモデル(EXCシリーズ)は「リンクレス」をアイデンティティとしており、ショックユニットを直接スイングアームに取り付けています。リンクレスは初期の動きがフラットで、スロットルワーク一つでフロントを持ち上げやすいという特性があります。同じKTMでもモトクロッサーのSXシリーズはリンク付きを採用するなど、用途によって使い分けがされている点も興味深いところです。
参考:各メーカーのリンク式サスペンションの命名や採用モデルの歴史について詳しくまとめられています。
【Q&A】クラシックな2本ショックと高性能な1本サスの違い|ヤングマシン
中古バイクの売り文句として「リンク廻りオーバーホール済み」という言葉をよく目にします。これを見ると「自分のバイクは大丈夫か?」と不安になるライダーも多いでしょう。しかし実際には「シールが機能していればグリスアップは不要」というのが正確な答えです。
リンク機構の内部にはニードルベアリングが使われており、グリスが潤滑剤として不可欠な役割を果たしています。そのグリスは外部からのシールで密閉されており、シールが正常な状態であれば内部のグリスが流出することはありません。理論上はシールが健全であれば10万km走っても問題ありません。
ではなぜグリスが減るのか。答えはリアタイヤが原因です。走行中、リアタイヤが回転することで砂・小石・砂利などを遠心力で後方に飛ばします。その飛散した異物が、まさにリンクのシール部に当たり続けます。リンクは常にストロークするため隙間が生じやすく、適切なサイズの石がシールに噛み込んだままサスペンションが動くと、ゴム製のシールはあっさりと破れてしまいます。
厳しいところですね。
グリスが抜けた状態でリンクが動き続けると、ニードルベアリングが金属どうし直接こすれ合い、摩耗が一気に進みます。そのまま放置すると各部品のクリアランスが広がり、最終的には全パーツ交換が必要になります。バイクショップでのリンク周りのオーバーホール工賃は車種にもよりますが、工賃だけで5,500〜9,900円程度、部品代が加わればさらに高額になります。
グリスの状態を日常的に確認するベストな方法は洗車のタイミングです。洗車時にリンク周辺(テンションロッドや「おにぎり」と呼ばれる三角形部品の根元)に水をかけてみてください。水をはっきりはじくような部位があれば、内部からグリスが微量に漏れ出しているサインです。グリスは粘性が高いのでエンジンオイルのようにダラダラ垂れることはありませんが、漏れが疑われる場合は次のタイヤ交換やスプロケット交換と同時にリンクの分解点検を依頼すると、作業費用を効率的に抑えられます。
オフロードバイクで泥道を頻繁に走る場合はシールの消耗が特に早く、グリスニップルから強制給油できる機構を持つモデルも存在します。ハンドポンプで押し込み、グリスが外にはみ出てきたらOKという、建設機械と同様の仕組みです。
参考:リンクのグリスアップが本当に必要かどうかを、内部構造とシールの状態から詳しく解説した記事です。
バイクのリンク機構にグリスアップはホントに必要?|MOTO-ACE Blog
足つきを改善したいライダーにとって、ローダウンリンクは魅力的な選択肢です。純正リアショックをそのまま使いながら車高を下げられるコストパフォーマンスの高いパーツで、価格は車種にもよりますが1万円前後〜3万円台で入手できるものも多くあります。
しかしここに、多くのライダーが見落とすリスクが潜んでいます。
ローダウンリンクはリンクのレバー比(リンク比)を変更することで車高を下げる仕組みです。純正のリンク比は「プログレッシブ効果が最大に発揮されるよう」メーカーが精密に設計したものです。それをローダウン目的のリンクに交換すると、ストローク量の変化特性が大きく崩れます。
具体的に何が起きるかというと、次のような変化があります。
ローダウン後は元の状態と乗り味が変わっているため、プリロードの再調整が推奨されます。ショックのプリロードは「イニシャル調整リング」を工具で回すことで変更でき、リアサスのサグ(沈み量)を体重に合わせて設定し直すことが重要です。足つき改善のためにローダウンリンクを選ぶこと自体は問題ありません。ただし「足がつくようになった」だけで満足せず、サスペンションのセッティングを必ず見直すことが条件です。
リアのプリロードを調整しても乗り心地に違和感があるなら、ショックユニット自体を低車高対応のものに交換する選択肢もあります。オーリンズやYSSなどのアフターマーケットサスメーカーは、車種別に専用設計のショックユニットを提供しており、ローダウンと性能維持を両立しやすい製品が揃っています。
参考:バイクのローダウン方法と、プロリンク・リンク方式の仕組みを踏まえたデメリットについて実例とともに解説されています。
バイクのローダウンのメリット・デメリット!方法や費用についても解説|BIKEMAN
リンク機構の仕組みを理解すると、サスペンションのセッティングに対する考え方が変わってきます。特にリアサスのプリロード調整は、リンク機構の特性と密接に関わっており、正しく理解しておくことが快適な走行に直結します。
セッティングの基本は「サグ(沈み量)の確認」から始まります。サグとは、ライダーが乗車したときにリアサスが沈む量のことです。一般的な目安として、街乗り中心であればリアのフルストローク量の25〜30%、サーキット走行主体であれば20〜25%が適正とされています。
| 用途 | リアサグの目安 |
|---|---|
| 街乗り・ツーリング | フルストロークの25〜30%(例:ストローク100mmなら25〜30mm) |
| スポーツ走行 | フルストロークの20〜25% |
| ふたり乗り・荷物積載 | プリロードを強め、サグを小さく調整 |
サグが大きすぎる(沈み過ぎ)とプリロードが弱い状態で、コーナリング時の安定感が損なわれます。サグが小さすぎる(沈みが少ない)とサスペンションが動きにくくなり、路面からの衝撃がライダーに直接伝わります。
リンク機構が備わっているバイクでは、スイングアームのストロークとショックのストロークが非線形の関係にあります。このため、サグの数値だけでなく「ストロークの浅い範囲での動き出し」と「深い範囲での踏ん張り感」の両方を実走行で確認することが大切です。
調整の順番はシンプルです。まずプリロードで適正なサグを出し、その後に伸び側減衰・圧側減衰の順で調整するのが原則です。初めてセッティングに挑戦するなら「プリロードだけ」に絞ってまず変化を体感するのがおすすめです。フックレンチ1本あれば多くの車種でリアのプリロード調整が可能で、工具の価格も1,000〜3,000円程度です。これだけ覚えておけばOKです。
なお、プリロードを調整してもいまいち動き出しが硬く感じる、または奥での粘りがない、という場合はバネレートそのものが体重や用途に合っていない可能性があります。その場合はショックユニットごとの交換、または専門ショップでのスプリング単体交換(スプリングのみなら1本5,000〜15,000円前後)が有効な手段です。
参考:リアサスのプリロード調整の具体的な方法と、調整後の走行チェックポイントが詳しく掲載されています。
ライテクをマナボウ 34 サスペンションの調整はプリロードから|クシタニ

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