

ヤマハ ディバージョンは、国内では"不人気で1年で消えたバイク"として知られているが、実は海外では10年以上売れ続けたロングセラーモデルだ。
1989年、カワサキのゼファーがネイキッドブームを巻き起こした。シンプルでストレートな外観を持つそのバイクは、当時のライダーから熱狂的な支持を受けた。ところが、ヤマハとデザインをともに手がけるGKデザインは、この流行に真正面から反発した。「高性能を競うだけでも、流行のネイキッドに乗っかるだけでもない、第3の道を作る」という思想のもと、新たなコンセプトのバイクの開発がスタートした。それがディバージョンの原点だ。
そして1991年、型式名XJ400S、車名"Diversion(ディバージョン)"として誕生した。車名はそのまま「進路を変える・方向転換」を意味する英単語だ。
エンジンは空冷DOHC直列4気筒でありながら、あえて2バルブという構成を採用。ボア×ストロークは47.7mm×55.7mmのロングストローク設定で、最高出力は42PSと当時の400ccとしては控えめな数字だった。42PSとは、250ccクラスのスポーツモデルと大差ない水準だ。ただし低中回転域でのフラットなトルク特性は際立っており、日常的なスポーツ走行ではむしろ扱いやすかった。しかも燃費は60km/h走行時に45.0km/Lという高水準を記録している。
ハーフカウルもポイントだ。大型ツアラーのような大きな風防ではなく、日常のライフスタイルに溶け込む程度のコンパクトなカウルを採用。これはデザインの妥協ではなく、「快適性と日常使いの軽快さを両立する」というコンセプトを徹底した結果だった。いわば「中途半端ではなく、ちょうどいい」を狙ったバイクだ。
ところが、国内市場での反応は想定外にも冷たいものだった。ネイキッドブームの真っ只中にあった当時のライダーには、カウルを持つ「スポーツツアラー」というカテゴリーは響かなかった。結果、ディバージョン400はわずか1年で国内販売を終了するという短命に終わった。
ただ、このモデルが"失敗作"だったとは言い切れない。つまり国内タイミングの問題だった。600ccエンジンを積んで欧米向けに同時展開されたXJ600Sは、ヨーロッパと北米で「ちょうどいいサイズ感」として高く評価され、長く売れ続けることになる。
ヤマハ・ディバージョン全モデルの型式・スペックの基本情報(Wikipedia)
ディバージョン400が国内で姿を消したのと入れ替わるように、1992年から日本国内でも販売が開始されたのがディバージョン600(XJ600S)だ。ただし、このモデルの本当の主戦場は欧米だった。
北米ではあえて別名「セカII(Seca II)」として販売されており、"ディバージョン"という名前すら使われていない。北米と欧州のライダーは、ディバージョンを全く別の名前で呼んで愛していたということだ。意外ですね。
このXJ600Sは、400と同じく空冷DOHC2バルブ直列4気筒のロングストローク設定で、最高出力は61PS(日本仕様57PS)。ツーリング志向の穏やかな特性と、コンパクトかつ扱いやすいパッケージングがウケて、外装を変更しながらも2002年モデルまで実に約10年にわたって生産が続いた。国内では1年で消えたのに、海外では10年。これは大きなギャップだ。
さらに上位モデルとして展開されたのがディバージョン900(XJ900S)だ。1995年にデビューしたこのモデルは、892ccの空冷4気筒エンジンを搭載し、89.4PS・最高速度209km/h・0-100km/hは3.9秒という数値を誇った。ディバージョンシリーズの中で唯一シャフトドライブを採用したモデルであり、チェーンのメンテナンスが不要という実用的な恩恵があった。
シャフトドライブが条件です。チェーン清掃・チェーン張り調整の手間がゼロになることは、長距離ツーリングを繰り返すライダーにとって時間と費用の節約に直結する。一般的にチェーン交換コストは部品・工賃込みで1〜2万円程度かかるため、シャフトドライブはランニングコストを長期で見た場合に明確なメリットになる。
ディバージョン900は欧州専用モデルで北米展開はなかった。日本国内での認知度はほぼゼロに近いが、ヨーロッパでは「旅するバイク」として根強いファンを持ち続け、7年以上にわたって大きなモデルチェンジなしで売り続けられた。当時のヤマハは、メーカー純正のタンクバッグからパニアケースまでのアクセサリー展開もあわせて行い、タンデムツーリング需要にも応えていた。
国内ではほぼ無名のディバージョン900についての詳細記事(RIDE HI)
ディバージョンシリーズの最新モデルがXJ6ディバージョン(XJ6 Diversion)だ。2008年に発表され、2009年2月より欧州向け輸出が開始された。日本国内では正規新車販売はなく、プレストコーポレーションが輸入販売する形態をとっていた。つまり、日本では事実上の「並行・正規輸入車」扱いとなるため、販売台数は限られる。
エンジンは先代の空冷から一転、水冷DOHC16バルブ直列4気筒を採用した。ベースになっているのは、なんと一世代前の「YZF-R6」のエンジンだ。ただし単なる流用ではなく、シリンダーヘッド・クランクケース・吸排気系統を一新し、低中速トルクを重視したチューニングが施されている。最高出力は77.5PS(10,000rpm)、最大トルクは6.1kgf·m(8,000rpm)。排気量は599ccだ。
圧縮比は12.2:1と高圧縮設定で、全域でのレスポンスの良さが際立っている。フレームは高張力スチールパイプのダイヤモンドタイプで、横剛性をあえて弱めた設定にすることでフレームのしなりを活かしたスムーズなコーナリングを実現している。足つきに関わるシート高は785mmで、身長が低めのライダーでも比較的不安が少ない高さだ(785mmはコンビニ袋を置く棚ひとつ分の高さにほぼ相当する)。
車重216kgというのも注目だ。同クラスのスポーツバイクと比べて重くも軽くもない、バランスのとれた数値で、街中での取り回しと高速安定性を両立している。タンク容量は17Lで、ユーザーレポートによれば満タンで400km超の航続距離も十分に見込める。これは東京〜名古屋間をほぼノンストップで走れる距離だ。
XJ6ディバージョンには3つのバリエーションが存在する。
| モデル名 | 特徴 |
|---|---|
| XJ6ディバージョン | ハーフカウル。一眼ヘッドライト。バランス型 |
| XJ6 N | フルネイキッド。カウルなし。軽快さを重視 |
| XJ6ディバージョンF | フルカウル。高速走行時の防風性が最高水準 |
それぞれABSあり・なしが選択可能だったことも、当時の同クラスとしては先進的な装備だ。ABS搭載が条件として、緊急ブレーキ時の転倒リスクを大幅に低減できる。
XJ6ディバージョンの日本国内輸入販売元・プレストコーポレーションの公式ページ
XJ6ディバージョンの中古市場での現在の平均価格は、グーバイクによれば2025年時点で約46.6〜50万円前後だ。国産の同年式・同排気量モデルと比べると、やや割安感がある印象だが、それには理由がある。これは使えそうです。
XJ6ディバージョンは海外専用モデルであり、日本での流通台数が絶対的に少ない。現在グーバイクに掲載されている在庫は5〜6台程度に留まる。流通台数が少ないということは、選べる選択肢が限られるうえに、部品の供給状況も国内正規モデルほど安定していない可能性がある点を覚悟しておく必要がある。
①走行距離より整備記録の有無を重視する
XJ6ディバージョンはエンジン耐久性が高い設計で知られており、海外ユーザーの報告では44,000km超走行後もヘッドライト球とスターターリレー交換程度で快調に走るケースもある。単純な走行距離だけで良し悪しを判断するのは危険だ。整備記録(サービスノート)や、直近のオイル交換・タイヤ交換の履歴を確認することが先決だ。
②マフラー交換車は慎重に
XJ6ディバージョンはサイレンサーの形状が特殊なため、社外マフラーへの交換が一般的なモデルより難易度が高い。マフラー交換済み車両の場合、排気音量・車検対応の有無を必ず確認する必要がある。保安基準不適合のマフラーが装着された状態では車検を通過できず、再整備費用が数万円単位で発生するリスクがある。
③輸入車ゆえのパーツ調達難に備える
国産車であれば純正パーツはメーカーから比較的容易に取り寄せられる。しかしXJ6ディバージョンは海外向けモデルのため、純正部品の在庫が国内では限られる場合がある。購入前に、取り扱いショップが海外パーツを調達できるルートを持っているかを確認しておくのが賢明だ。
結論は「整備記録・マフラー状態・パーツ調達力の3点セット確認」です。この3点を事前にクリアできれば、ディバージョン XJ6は維持費の面でも扱いやすい1台になる。バイクブロスやグーバイクなどの総合バイクサイトで最新在庫を確認し、複数店舗で状態を見比べてから決断するのが賢いアプローチだ。
スーパースポーツほど攻撃的でなく、大型ツアラーほど重くもない。ディバージョンはその「ちょうどいい」ポジションを一貫して持ち続けてきた。厳しいところですね、ではなく「それがどれだけ難しいことか」を知れば知るほど、このシリーズへの評価が変わってくる。
XJ6ディバージョンに乗ったライダーのインプレッションに共通するのは「疲れない」という言葉だ。シート座り心地が良く300kmほど走っても痛みが少ない、高速・街中問わず自然なポジションで走れる、エンジンが静かで振動も少ない、などの声が集まる。これはツーリング志向のライダーが1日500km超を走ることを想定した場合に、体への影響として非常に大きなメリットになる。
また、ハーフカウルの防風性については見た目以上の効果がある。コンパクトなカウルだからこそ、車体がスリムでUターンや駐車場での取り回しも苦にならない。フルカウルほどの大きさを必要としないが、ノーカウルのネイキッドと比べると疲労の蓄積が大きく異なってくる。高速道路を1時間走った後の体感差は、ライダーなら実感できるはずだ。
XJ6ディバージョンのエンジンは、YZF-R6ベースという事実から「スポーツ寄りでは?」と思われがちだが、実際は意図的に低中速トルクを持ち上げるセッティングが施されている。街乗りで「下道でパワーを使い切れない」と感じるほど余裕があり、かつ高速道路での追い越しや合流に困ることはない。つまり普段使いからロングツーリングまで1台で対応できるということだ。
さらに独自視点での注目ポイントがある。箱根駅伝の中継バイクとして、XJ6ディバージョンが実際に使用されていたことがある。これはスポーツイベントの現場で長時間・長距離にわたって確実に動き続けることが求められる「プロの仕事用バイク」として選ばれていた証左だ。信頼性と安定性という点で、ディバージョンが実用的に評価されていた現れといえる。いいことですね。
ツーリング用途でのロングライドを想定する場合、荷物の積載性も気になるところだ。XJ6ディバージョンにはグラブバーが装備されており、リアキャリアやサイドバッグをマウントするための加工・増設がしやすい構造になっている。ヤマハ純正オプションやサードパーティのシステムキャリアとの組み合わせで、長距離ツーリングの荷物問題を解決できる。荷物の量と積み方を一度シミュレーションしてから装備を選ぶとムダがない。
XJ6ディバージョンの詳細インプレッションと技術解説(バイクブロス)

キャブレター修理キット に適合するヤマハ XJ400S 4BP に適合するディバージョン 1992-1993 XJ 400 XJ400 400S エンジン用 バイク用キャブレター修理キット キャブレターリビルドキット 交換工具 オーバーホール(セット3)